アテンション・プリンセス~空っぽのワタシ、魔法少女になります~ 作:樫丹鏡花
月曜日に、アオイはいなかった。
火曜日にもいなかった。
水曜日は、×××××が公園の前を通ったのが午後五時を過ぎていたので、もしかしたら入れ違いになったのかもしれなかった。公園のベンチには濡れたティッシュが落ちていた。それがアオイのものかどうか分からなかった。たぶん関係ない。
×××××は改札のほうへ歩きながら、気にしないようにした。気にしないようにしている、という事実はあったが、実際に気にならなくなったかどうかは別の話だった。
木曜日。
学校の帰り、×××××は渋谷の地下道を抜けた。地下道は蛍光灯の光が多く、人の流れが速く、特定の誰かを目で追えるような場所ではなかった。それでも、流れに逆らってくる何かを無意識に探していた。探していた、と気づいたのは改札を抜けた後で、気づいても特に何も変わらなかった。
公園は五十メートルほど先にある。
曲がらないで帰れた。帰った。
金曜日の放課後、×××××は美術室の前の廊下で三分ほど立っていた。
理由はなかった——正確には、美術室の前の廊下が帰り道のどこにも存在しない、ということを考えずに立っていたのだった。気がついて、引き返した。
廊下の窓から、学校の裏手の住宅地が見えた。屋根が並んでいた。空が白かった。
授業中に何度か、アオイのことを考えた。考えていた、というより、気づいたら考えていた——という感触だった。気づいて、別のことを考えるようにした。別のことが続かなかった。
アオイが「来ない方がいい」と言うときがあるとしたら、どんな言葉で言うだろうか。
そういうことを考えていた、と帰り道で思った。考える意味は特になかった。
土曜日の午後、×××××はいつのまにか公園にいた。
いつのまにか、というのは言葉を選んでいる。選んでいるが、他に言い方がなかった。家を出たのは午後一時過ぎで、書店で立ち読みをしようとしていたはずだった。書店は駅の近くにあり、公園は駅から七分ほど歩いた方向にある。行こうとすれば行ける距離ではあるが、書店への道順と公園への道順は途中まで同じで、途中で分かれる。
×××××は分かれるところで公園の方向に曲がっていた。
曲がったことに気づいたのは曲がった後で、引き返そうとは思わなかった。引き返そうとは思わなかった、ということを、何かの言い訳のように反芻した。
ベンチを見た。
アオイはいなかった。
いつもの場所に、いない。それだけのことが、しばらく飲み込めなかった。飲み込めないというより——飲み込む必要があるような気がしていなかった、という感じに近かった。毎日いた場所にいない、ということが、事実として積み重なると、当たり前のように空白になっていくような。
×××××は缶ジュースを買って、ベンチの隅に座った。
ジュースは炭酸で、思ったより甘かった。飲みながら、特に何も考えなかった。
光を見たのは、ジュースを飲み終えてから十分か十五分後のことだった。
はっきり「見た」というより、見たような気がした——というのが最初の反応だった。
道路の向こうに雑居ビルが見えた。四階か五階建て。一階には何かの飲食店が入っていた。看板が古く、何の店なのか離れた場所からは読めなかった。ビルの外壁は濃い灰色で、窓は小さく、午後の光の加減では内側が見えなかった。
そのビルの上の階の窓から、青い光が一瞬、漏れた。
漏れた、と言っても、数秒もなかった。窓の内側で何かが発光して、消えた。光源が動いたのか固定だったのかも分からなかった。
×××××はベンチに座ったまま、そのビルを見ていた。
もう一度光が出ることはなかった。窓は暗いままだった。通行人が何人か前を通ったが、誰もビルに目をやらなかった。誰も気づかなかったのか、気にしなかったのか、そもそも出ていなかったのか——判断のしようがなかった。
缶の飲み口が少し冷たくなっていた。握りすぎていたのかもしれなかった。
立ち上がろうとして、立ち上がらなかった。
もし青いのだとしたら。
そこで考えを止めた。止めた、というのは正確ではなかった——止まった、というほうが近かった。頭の中で何かが続こうとして、続く前に静かになった。
ジュースの缶をゴミ箱に捨てて、×××××は帰った。
縁石に何かが置いてあった。
月曜日の帰りのことだった。
いつもアオイが座っている縁石——公園の入り口に近い、あの縁石。×××××が通り過ぎようとして、足が止まった。止まった理由を考える前に、足元に目が行っていた。
折りたたんだ紙が一枚、縁石の端に置いてあった。雨が降っていなかったので濡れていなかった。折り目は二つで、丁寧だった。飛ばされないように、縁石の段差の内側に押し込むようにして置いてあった。
誰かがここに置いたのだ。
手に取って、開いた。
細いボールペンの字で、一文だけ書いてあった。
「しばらく来ない方がいい」
それだけだった。
差出人の名前はなかった。宛名もなかった。日付もなかった。ただその一文だけが、白い紙の中央よりやや上に書いてあった。
×××××は紙を持ったまま、縁石のあたりを見渡した。人が近くにいた——通り過ぎた会社員、自転車、ショッピングバッグを両手に持った女性——誰もこちらに目をやらなかった。
アオイの字かどうかは分からなかった。比べるものがなかった。
紙を折り直して、制服のポケットに入れた。
電車の中で、×××××はポケットの中の紙を指先で確かめた。折り目の感触が分かった。
来ない方がいい。
言葉をもう一度頭の中で読んだ。来ない方がいい。
来るな、ではなかった。来てはいけない、でもなかった。来ない方がいい。
三つの言い方はそれぞれ違うのか同じなのか、×××××には判断できなかった。判断できないことが分かった上で、なんとなく違う気がした。感触として、の話で、論理としての根拠はなかった。
来ない方がいい、という言葉は——書いた人間が、来ることを想定した上で書いている。来ることは考えられないから書かなくていい、ということではなく、来ることを前提にしていて、その上で「いい」と「よくない」を比較して、後者を選んで書いている。
そういうことなのかもしれなかった。
そういうことではないかもしれなかった。
電車が揺れた。立っていた乗客が一人、隣の人にぶつかって、すみません、と言った。すみません、と言われた方は言葉を返さなかった。
×××××はつり革を握り直した。
来ない方がいい、という文章を書いた人間が、×××××が読むことを想定していた場合——それはつまり、その人間が、×××××がそこに来ることを知っていた、ということになる。
毎日あそこを通っていることを。
あの縁石に座ることを。
缶ジュースを買って、ベンチに座っていたことを。
土曜日に一人で来ていたことを。
どこまで知っているのか分からなかった。ただ、「来ない方がいい」と書かれた紙が置いてあった、という事実だけがあった。
電車が次の駅に止まった。ドアが開いた。人が乗ってきた。
家に帰ってから、×××××は夕飯を食べて、風呂に入って、宿題を半分やった。
紙はポケットから出して、机の上に置いた。折ったままにしていた。開かなかった。
読んだ文字は覚えていた。開く必要はなかった。
宿題の残りをやりながら、来ない方がいい、ということはつまり、来ない方がいい何かがある、ということだ、と考えた。何かある、というのは——危ないということかもしれないし、来てほしくないということかもしれないし、来ても意味がないということかもしれなかった。
三つのどれかとも、×××××には確認する方法がなかった。
確認する方法がないから、来ない方がいい、という言葉の意味の解釈は、来ない方がいいと書いた人間の意図ではなく、読んだ×××××がどう受け取るか、という話になる。
来ない方がいい、と書いた人間が何を意図していたとしても、それは×××××の外にある話で——×××××の中にあるのは、紙の一文字ずつを目で追って、ポケットに入れて、電車の中でもう一度頭の中で読んだ、という事実だけだった。
ペンを置いた。
机の上の紙を見た。折り目が二つあって、紙の色は白くて、特に何も変わっていなかった。
来ない方がいい、は、来るな、とは違う気がする。
気がする、だけで、確認はできない。
×××××はそのことを、確認できないまま、机の引き出しに紙をしまった。
路地の奥は暗かった。
渋谷のどこにでもある路地で、幅は肩と肩の間に人一人入ればきつい程度しかなかった。左側の壁は飲食店の裏口で、換気扇が低い音を立てていた。右側の壁は駐輪場のシャッターで、サビの模様が水の流れた跡に沿っていた。地面はコンクリートで、真ん中に細い排水溝があって、その中に煙草の吸殻が二本と、たぶん誰かの痰が落ちていた。
ヒノデ・カノンは壁に背中をつけて立っていた。
変身はしていない。スマートフォンを両手で持って、画面を自分に向けていた。液晶が出している光だけが、路地の暗さの中でカノンの顔のあたりを照らしていた。その光の色が、少し赤かった。
「早くしなよ」
スマートフォンから声がした。女の子の声に似ていたが、女の子の声より少し均質だった。呼吸の揺れがなかった。
「分かってる」とカノンは言った。
「分かってるって言いながら、もう三日経ってるよ」
カノンは換気扇の音を聞いた。換気扇はカノンの言葉に興味がなく、ただ回っていた。
「三日くらい、いいだろ」
「よくない。カノンちゃんのリソースが削れてく。逃げ続ける方が消耗するの、青の方だけじゃないんだよ」
「知ってる」
「知ってるなら」
「知ってるから言ってんの」
声が止まった。止まり方が少し機械的だった——人間が黙るときは、黙る前に一呼吸あることが多い。この声にはそれがなかった。ただ音が来るか来ないか、だけだった。
カノンは画面から目を離して、排水溝の煙草を見た。吸殻の先端は焦げていた。誰かが最後まで吸ったのかどうかは分からなかった。
「カノンちゃん、あの青の子」
しばらくして声が言った。
「何」
「もうそろそろ限界みたいだよ」
カノンは返事をしなかった。
「逃げ続けても消耗するだけだから。あなたと戦う前に勝手に削れていく、って言ったら聞こえが悪いけど——要するに、チャンスだってこと」
「チャンスって言うな」
「なんで?」
「チャンスって言い方が嫌いだから」
もう一度、間があった。今度は一秒くらい。
「……カノンちゃん、そういうの気にしてたの」
「気にしてないけど嫌いなんだよ」
返ってきた言葉はなかった。カノンは壁にもたれた背中のあたりに、レンガの継ぎ目の凹凸が当たっているのを感じた。当たっていた。当たり続けていた。気にしなければどうということもなかったが、一度気になると少し痛かった。
「あなたが取らなくても」と声が言った。「誰かが取る。そういうことだよ、カノンちゃん」
カノンはその言葉を聞いた。
聞いた、というだけで、他には何もなかった。
誰かが取る。
カノンは知っていた。知っていることが、どうかしているのかもしれなかった。知っていて、それでも三日間路地の暗さに背中をつけていた。一日の中で、変身した時間より変身していない時間の方がずっと長かった。変身していない時間に、カノンは何もしていない。起きて、どこかに行って、どこかに座って、スマートフォンと話して、また立って、歩いて——それだけだった。
「あの子、また来てるよ」
「え」とカノンは言った。
「青の子についてくる一般人。今日も来てた。毎日あの辺うろうろしてるんだよね」
「……何しに来てんだろ」
「さあ。妖精が見てないから分からない。でも、いた」
カノンは少し間を置いてから言った。「変な子だな」
「そう?」
「そう。普通来ないだろ、来るなって言われたら」
「来るなって言われたの?」
「知らない。でも青の雰囲気的に、そういうこと言いそう」
「でも来てた」
「だから変な子だって言ってんだろ」
換気扇がひとつ、別の音を出した。ベアリングが疲れているような、くぐもった音だった。それからまた元の音に戻った。
カノンは画面を見た。
液晶の赤は、呼吸のように揺れていた。揺れている、というのは正確ではなかった——揺れているように見えた、が正確だったかもしれない。光が一定だとしても、見ている側の目が疲れていれば揺れて見える。カノンが今疲れているかどうかは、自分でも分からなかった。疲れの感触が、普通の感触と区別できなくなっていた。
変身のたびに何かが焼け落ちる、というのを最初に実感したのは、初めての戦闘から三日後だった。焼け落ちる、と言っても痛みではなかった。痛みなら分かりやすかった——痛いところを守ればよかった。焼け落ちたのは何かもっと説明しにくいもので、たとえば戦闘の前日に笑ったことの理由を、翌日には覚えていない、という感じだった。笑ったこと自体は覚えていた。なぜ笑ったのかが出てこなかった。
別に笑いたくて笑っていたわけでもなかったから、問題はなかった。
問題がないということが、問題なのかもしれなかった。でもそれも、今日の自分には特に引っかかりがなかった。
「カノンちゃん」
「何」
「青の子、自爆するかもしれない」
カノンの目が、画面から離れた。画面ではなく、路地の奥の暗さを見た。暗さには何もなかった。排水溝と、壁と、空気だけがあった。
「……何で知ってんの」
「観測してるから。妖精同士でね、状態は分かるから」
「あいつの妖精が喋ってんの?」
「喋ってないよ。でも状態は見える。リソースが、ね——もうほとんど残ってない」
カノンは声を出さなかった。
「だから、チャンスって言ったんだけど」
「チャンスって言うなって言っただろ」
「……うん、ごめん」
謝り方が少し変だった。謝っているのに、謝った後に間がなかった。謝ったからこの話題は終わり、と処理した——そういう謝り方だった。
カノンは壁から背中を離した。
路地に立って、両手でスマートフォンを持ったまま、少し考えた。考えた、というのは言いすぎで、何かを整理しようとして、整理の途中で止まった、という方が近かった。
自爆。
その言葉の意味を、カノンは知っていた。知っていたが、実際にやった奴はこれまでに見たことがなかった。やらない、のではなく、やる前に誰かに奪われる、というのが普通の流れだった。奪われることを「使い切られる」とは言わない——外から奪われることと、自分の手で使い切ることは、全然違う話だった。
外から奪われるのは負けだ。カノンはそれを分かっていた。負けることへの恐怖ではなかった——負けた場合に何が起きるかへの恐怖も、正直あまりなかった。ただ、負けたくない、という意志が、理由より先にあった。理由が出てくるより速く、体が動くのが、カノンの戦い方だった。
でも自爆は。
自爆は負けではない、とカノンは思った。思って、その感触を確かめた。確かめて——合っている気がした。自爆は誰かに奪われることではなく、自分で手放すことだ。手放す側が選んでいる。誰かに選ばせない、という選択だった。
それをカノンは、どう呼べばいいのか分からなかった。
「取る前に使い切られたら、どうなるの」とカノンは言った。
「リソースが消えるだけだよ。魔法少女としての能力が使えなくなる」
「それだけ?」
「それだけ。怪我はしないよ」
「そう」
「カノンちゃんとしては、困る話だけどね」
「困るよ」
「でしょ」
カノンは排水溝を見た。煙草の吸殻はまだそこにあった。それが誰かの手から離れてここに来るまでに、どういう経緯があったのかは分からなかった。最初から路地で吸ったのかもしれないし、どこか別の場所から流れてきたのかもしれない。どちらでもよかった。ただ、ここにある、という事実だけがあった。
「私が取らなきゃ」とカノンは言った。
声に確認するように、でも声には向けずに、路地の奥の暗さに向けて言った。
「誰かが取る。そういうことでしょ」
声は何も言わなかった。
カノンはそれを確認してから、スマートフォンをポケットにしまった。画面の赤が消えると、路地は暗さだけになった。換気扇の音が続いていた。排水溝の中に、さっきから動いていない煙草があった。
誰かが取る。
その言葉を自分で言った後、カノンは少しだけ違和感を感じた。感じた、というのは感情の話ではなく、喉のあたりの感触だった——言葉を出した後、その言葉が喉に少しだけ残っている感じ。言い切った後に滑らかに消えるのではなく、引っかかりが残る感じ。
なんで引っかかるのか。
カノンには分からなかった。
理由は分からなかったが、その引っかかりが、三日間路地の暗さに背中をつけていた理由と、たぶん同じところから来ている気がした。気がする、だけで、確認はできなかった。
換気扇がまた別の音を出した。くぐもった音がして、しばらくして戻った。
カノンは路地の入り口に向かって歩き始めた。
「カノンちゃん」と声が言った。
「何」
「頑張ってね」
「頑張るって言葉、嫌いなんだけど」
「そうなの?」
「そう」
「……なんで?」
カノンは路地の入り口で立ち止まった。渋谷の光と音が、路地の外から来ていた。人の流れる音、車の音、どこかから音楽の断片。それらが全部まとめてやってきた。
「頑張れって言う奴は、大抵、頑張ってない側にいるから」
声は少し止まってから言った。「……カノンちゃん、そういうこと考えてたんだ」
「考えてないよ」とカノンは言った。「思っただけ」
それから路地を出た。
渋谷の光の中に出ると、目が少し眩んだ。
眩んだ、という感触は一瞬で消えた。光に慣れた目で、カノンは前を見た。前には人が流れていた。さっきより多かった、少なかった——カノンには判断できなかった。判断する必要がなかった。
歩いた。
歩きながら、カノンは青の子のことを考えた。考えた、というより——思い出した、の方が近かった。
あの子は今どこにいるのか。
路地にいたとき、声は「毎日あの辺うろうろしてる」と言った。あの辺、というのが渋谷のどのあたりかは特定していなかった。「あの辺」で通じると思って言ったのか、「あの辺」以上の情報を持っていないのか——どちらか分からなかった。
変な子だと思った。
来るな、と言われていない場合でも、あの状況で来る子はたぶん普通じゃない。普通かどうかで話をするなら、カノン自身も普通ではなかったが——あの子の普通じゃなさは、カノンとは方向が違う気がした。カノンは方向が分かっている。どっちを向いているかを知っている上で、その方向に動いている。あの子は——どっちを向いているか、自分で分かっているのかどうか、分からなかった。
分からないまま来る。
分からないまま、来ない方がいいと言われても来る。
それがカノンには、何か、うまく処理できなかった。
処理できない感触が、また喉のあたりに残った。今朝から三回目だった。数えていたわけではなかったが、同じ場所に同じ感触が来るので、自然に分かった。
カノンは人ごみの中を歩き続けた。
スマートフォンはポケットの中で、音を出さなかった。
夜が来るまでに、カノンは決める必要があった。
決める、というのが具体的に何かを意味するのかは、まだよく分からなかった。ただ、夜が来ることは決まっていた。夜が来れば、何かが動く。誰かが取る、という言葉の「誰か」が動く可能性が、夜の方が昼より高かった。
カノンが動かなければ、動く側は別の誰かだった。
私が取らなきゃ、誰かが取る。
さっき自分で言った言葉が、また喉のあたりに残っていた。今度は少し長く残っていた。
残る理由を、カノンは考えなかった。
考えなかった、ということを、後になって思い出すこともたぶんなかった。
渋谷の人ごみは流れ続けていた。カノンは流れの中を歩いて、歩いて、歩いて——あるところで、足が止まった。
止まった理由を、考える前に足が動き出していた。
向かう方向は、決まっていた。