アテンション・プリンセス~空っぽのワタシ、魔法少女になります~   作:樫丹鏡花

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8.オニキス-Onyx-

重い靴の音が来た。

A1とカノンの間に割って入った直後——サクラはその音に気づいた。ひとつではなかった。複数の足音が、公園の外周に沿って近づいてきていた。木立の向こうから来ていた。葉が揺れる前に音が届いた。

「A1」

「聞こえてる」

Qからの通信が来た。

「北側と西側に機動隊が展開中。東側に警視庁特殊部隊——封鎖ライン、形成しています」

「……全部で何人ですか」

「数えてもしょうがない」とA1が言った。「動く」

カノンが止まった。

木立の方を見ていた。炎が指先で揺れたまま、でも攻撃はしなかった。「……数えてもしょうがない、か」と言った。感情がなかった。感情がないまま「そうかもしれないな」と言った。

「ヒノデ・カノン——」

「やめてその呼び方。堅い」

「任意同行をお願いします」

カノンがA1を見た。「今夜は変わった言い方するね、さっきより」

「今夜はそういう夜です」

「へー」とカノンが言った。前に出るか後ろに引くか決めていない足の位置のまま、機動隊の音の方向を見ていた。「……多いな。ちゃんと来たんだな」

「来ました」

「じゃあ——」

カノンが前に出た。後ろに引かなかった。

 

サクラが後ろから線を引いた。

カノンの足元に、二本。

「邪魔」とカノンが言ったが止まった。止まって、でも消耗して突っ切る気配だった。

「サクラ、下がれ」とA1が言った。

「……どこまで」

「十メートル」

サクラが下がった。線は下がっても効いていた。カノンの前進が二歩分重くなっていた。

A1が細い棒を取り出した。

展開した。光が短く出た。カノンが「それ知ってる」と言った。「効くんでしょ、俺に」

「はい」

「——来るな、って言っても来るんでしょ」

「来ます」

「そうか」とカノンが言った。「まあ、いいか」

攻撃が来た。

右手の炎が前に伸びた。A1が棒を縦に立てた。当たった瞬間に光が出た。炎の輪郭がわずかに乱れた——でも消えなかった。「へー」とカノンが言った。「全部は消えないんだ」

「全部じゃないです」

「じゃあ次」

また来た。

A1が動いた。線を回り込んで、カノンの側面に入ろうとした。カノンが向きを変えた。向きを変えた瞬間に、Qから通信が来た。

「変身者、三名確認——黄、現在公園北東・東側封鎖ラインに接触中。緑、外周の西側——機動隊と接触、結界展開中。紫は公園内——どこかに消えた。追えていない」

「J、紫を探せ」

「探しています」

「見つかるか」

「……分からない」という返答だった。JがA1に「分からない」を返したのは珍しかった。サクラには分かった。見つからないかもしれない、ということだった。

 

キヅキが声を出した。

機動隊のいる方向に向かって、出した。

声が広がった——それは分かった。空間の空気の動き方が変わった。でも機動隊のシールドは動かなかった。前進も後退もしなかった。「……あれ」とキヅキが思った。声が「入っていかない」という感触があった。「届いてる。でも、変わらない」

防具の中にいる人間に、声は届く。でも声が届いた先で「向く」という選択が起きない。シールドが変わらない。

「……届いてるのに、変わらない」

キヅキがもう一度声を出した。今度は横の方向に向けた。木立の外に、スマートフォンの光が見えた。白い画面が夜の中で光っていた。「あそこなら——」

声が向かった。

白い光が動いた。画面がキヅキの方向に向いた。

でも機動隊は動かなかった。

「——音の向く先を変えても、封鎖ラインは変わらない」

自分の内側で言った。誰かに向けて言ったのではなかった。イヤーカフの中で妖精が「キヅキ」と言った。「今夜は——届かせる感じじゃないのかも」

「……そうかもしれない」とキヅキは言った。「でも声が出てる。それだけで、ある」

出ることが先で、届くかどうかは後。

今夜はそういう夜かもしれない、と思いながら、もう一度声を出した。出た。誰も向かなかった。でも出た。

 

ミドリが「ここにいて」と言って地面に手を当てた。

足元から来た。場所が自分のものになった。

西側の機動隊が封鎖ラインを保っていた。突進してこない。ただ囲んでいる。「……何を待ってるんですか」とミドリは思った。でも言わなかった。言っても返ってこない相手に言葉は出しなかった。

結界が広がった。半径四メートル——その内側に、誰もいなかった。

ミドリは守るために変身した。守るためには誰かがここにいる必要があった。誰もいなければ、守れない。結界を展開している間は動けない。

「……来てほしい」

誰かに向けて言ったのではなかった。

「来ないなら——ここにいるだけだ」

機動隊が動かない。

ミドリが動けない。

どちらも「動かない」という状態が続いていたが、それは同じ意味ではなかった。ミドリは選んで動かなかった。機動隊は待って動かなかった。その違いだけが、今この場所にあるものだった。

防具の上の方から光が照らされた。

——A1のマグライトではなかった。機動隊の車両についたライトだった。照らされた範囲が広く、白かった。結界の輪郭が光の中に浮かんだ。「……きれいだな」とミドリは思った。きれいだと思ったことに、あまり根拠がなかった。でもそう思った。

「撮れてる、撮れてる」という声が遠くの方で聞こえた。

サーカスの人間が来ていた。封鎖ラインの外側に押し出されたまま、スマートフォンを向けていた。ミドリの結界が光の中に浮かんでいる場面を撮っていた。

ミドリには関係がなかった。

「ここにいて」と地面に向かってもう一度言った。

 

Qから通信が来た。

「東側の撮影者——封鎖ラインの外に押し出されました。建物の角の陰から引き続き撮影中ですが、中の映像は撮れていません。サーカスの記録は現時点で『外側の包囲の輪郭』のみです」

「中が撮れないことを分かってるか」とA1が言った。カノンとの戦闘の間に聞いていた。

「おそらく把握していない。想定外だと思われます」

「——そうか」

「機動隊そのものが壁になってる、ということです。今夜のKの判断の一つがそこにあります」

A1が棒でカノンの炎を一本いなした。「記録させることより、完遂することを選んだ」

「そうです」

カノンが「何の話してんの」と言った。戦闘の間に通信が続いていたことへの、あきれた質問だった。

「今夜の話です」

「ふーん」

「逃げ道がありません」

「知ってる」とカノンが言った。「知ってて来てる」

「なぜ」

「——なんとなく」

棒がカノンの前腕をかすめた。炎が散った。瞬間的に周囲の草が焦げた匂いがした。カノンが「熱くないんだけど、散るのは嫌だ」と言った。感情として言っているようではなかった。事実として言っていた。

「今夜は諦めてください」

「まだ分かんない」

「分かりません」

「A1も分かんないんじゃん」

「……俺が分かんないのとは別の話だ」

カノンが少し止まった。「——じゃあ、A1は分かってんの。今夜のこと」

「動けばわかります」

「答えになってない」

「今夜はそれだけです」とA1が言った。

カノンが「……まあいいか」と言って、また前に出てきた。

 

Qからの通信が来た。

「現在の状況——4名の包囲が完了しました。J・機動隊・特殊部隊で三重の封鎖ライン。A1、次の段階へ。Kの許可が出ています」

「了解」

「サクラ、後方で待機。今夜は見ていてください」

サクラが「……はい」と言った。

下がりながら、サクラは4人の方向を見た。

キヅキが声を出している。届いていない。でも出ている。

ミドリが結界を張っている。誰も来ていない。でも張っている。

ユカリがどこかにいる。姿が見えない。見えなくなってから、まだ見つかっていない。

カノンがA1に向かっていく。前に出続けている。止まらない。

4人がそれぞれ動いている。でも逃げ道がない。封鎖ラインは動かない。

「どちらの側にも近づく権限がない」とサクラは思った。

今夜は、見ている夜だ。見ているだけの夜が、ある。

サクラが見ていた。

 

「ユカリ——見つけました」

Jの通信が来た。

「どこにいますか」

「公園の中央に近い木の上——変身を維持しています。動いていない。ただ見ています」

「接触できますか」

「……分かりません。近づくと消えます。消えた後、また別の木にいます」

「繰り返すか」

「繰り返しています。逃げているのか、観察しているのか——判断できません」

「どちらでもいい。今夜は制圧優先です」

Jが少し間を置いた。

「——J」

「把握しています」

通信が切れた。

サクラはユカリがいると言われた方向を見た。木が暗くて、何も見えなかった。どこかに誰かがいる、という感触だけが、暗い葉の輪郭に乗っていた気がした。

「今夜——ユカリは何を見てるんだろう」

声に出した。A1に向けたのでもなかった。

通信の向こうでA1がカノンを押し留めながら「知らん」と言った。

「知りたいわけじゃないんですが」

「それならなぜ言う」

「——なんとなくです」

「……そうか」

ユカリが二方向から同時に来た。

Jの方向と、木の上から。

Jが通信車両の方向に転がった。通信が一拍、乱れた。Qが「——J、回線切り替え」と言った。10秒で戻った。準備されていた。

「やっぱりそうか」とユカリが言った。

声が暗い木立から来た。どこから来たか分からなかった。

「どこにいても、バックアップがある」

「K機関はそういう組織です」とサクラは言った。

「……そうだね」

静かな声だった。怒っていなかった。確認した声だった。

「それで——続けますか」とサクラが言った。

長い間があった。

「……今夜は、まだ」

「まだ続けますか」

「まだ、考えてる」

 

封鎖ラインが完成した。

北・西・東の三方向から、機動隊と特殊部隊のラインが公園の外周に沿って揃った。

内側に4人がいた。

逃げる方向が、ない。

「Kより確認——今夜は完遂します。A1、次段階の許可を与えます」

「了解」

サクラが見ていた。

4人が——それぞれの動機で、それぞれの場所に、それぞれのまま、ここにいた。

合意してここに来たのではなかった。言葉を交わしてここに立っているのでもなかった。妖精が全員をここに集めた。「誰かが動かした」という言葉がサクラの頭の中に残っていた。

誰が、何のために——今夜はまだ分からない。

でも4人はここにいる。

そして制度が来た。

A1が動き始めた。

 

 

 


 

 

「移動901、状況開始」

Qの声が来た。

A1がケースを開いた。

光が展開された。懐中電灯より少し大きくて、でも懐中電灯よりずっと白い光が、夜の公園に広がった。

サクラは後方から見ていた。

A1が動いた。

カノンの方向に向かって、まっすぐ。迂回しなかった。迷わなかった。A1の動きは迷わない。迷う機能がどこかに入っていないみたいに、いつもまっすぐ動く。

光がカノンに当たった。

「——え?」

カノンが言った。

炎の輪郭が崩れ始めた。崩れ方が、戦闘のときの散り方と違った。散るのではなく、消える。消えていく。衣装の端から、色が抜けていくように。

「なんで」

カノンが言った。「なんでいきなり消えるの」

驚いた顔だった。戦っている顔じゃなかった。「え、何、これ」という顔だった。変身が解けて、制服に戻った。普通の制服。普通の少女の格好。

その一瞬の、カノンの姿が、サクラには何かに似ていた気がした。

何に似ているか、すぐには出てこなかった。

飛んできたものがあった。特殊部隊の方向から来た細いワイヤーが、カノンの手首に巻きついた。

「……え」とカノンが言った。

手首を見た。繋がれていることを確認した。確認してから、また顔を上げた。

「本当に?本当に捕まえるの?」

拍子抜けしたような声だった。

「マジで?」

 

A1が動いた。次の方向へ。

光の届く範囲が変わった。

サクラは見ていた。

キヅキがいる方向。

声が出ていた。木立の上の方に向けて、出ていた。でも光の方が速かった。A1の光がキヅキに当たる前に、キヅキは声を出しかけていた。出かけた声が、途中でなくなった。

変身が解けた瞬間に、キヅキの顔が少し変わった。

何かを気づいた顔だった。

「——あ」

普通の声で、一言だけ出た。

さっきまでの声と、明らかに違った。壁から返ってこない。空間に満ちない。ただそこにある声。キヅキの声。

ワイヤーが飛んだ。

「分かった、分かった。抵抗しない」

キヅキが両手首を前に差し出しながら言った。手を差し出す動作が、速かった。考えてから差し出したのではなかった。「抵抗しない」という判断が、もう終わっていた。

イヤーカフは変身が解けた後もまだ右耳にあった。妖精がそこから「キヅキ」と言った。

キヅキは答えなかった。答える余裕がなかったのかもしれないし、今は答えたくなかったのかもしれない。どちらか、サクラには分からなかった。

 

ミドリのところまで、少し時間がかかった。

結界の中にA1が踏み込んでいく。

ミドリが「ここにいて」と言った。もう一度、地面に向かって。来てほしいから言った。でも結界に向かって入ってくるのは制圧のための人間で、守るための人間ではなかった。

光が当たった。

足元から来た変身が、足元から解けていく感触があった——と後でミドリは思ったかもしれない、とサクラは考えた。地面との接続が断たれた感触。ミドリの「場所」が終わった。

「ここにいて」

また言った。言ったが、誰も来なかった。

変身が解けて、膝をついた。

特殊部隊員が近づいてきた。

「……大丈夫です」

ミドリが言った。先に言った。聞かれる前に。「立てます」と言って、立った。立ってから、手首を差し出した。差し出す前に一度だけ、部隊員の顔を見た。

「誰も怪我しませんでしたか」

ミドリが聞いた。

部隊員が答えなかった。

 

ユカリを見つけるのが最後だった。

Jが「ここにいます」と通信してきた。座標を言った。木の上。変身を維持したまま動かない。近づくと消える、の繰り返しが終わって、ただ一ヶ所に止まっていた。

「なぜ止まったんですか」とA1が通信で聞いた。

「……分かりません。止まることにしたのかと思いますが、確認できていません」

A1が向かった。

ユカリの方向に光を向けた。

光が当たる前に、ユカリが変身を解いた。

自分で解いた。

光が当たる前に。

「……拘束するなら、自分でします」

ユカリが言った。

両手首を前に出した。表情がなかった。A1の光が当たっていない状態で変身を解いたのに、変身が解けていた。手錠を持った部隊員が近づいてきた。ワイヤーがかかった。

「冷たい」とユカリが思った——それはサクラには聞こえなかったが、後で分かる言葉だった。冷たい、という感触を、ユカリはただ温度として認識した。怒りとして認識しなかった。

 

サクラが後方から見ていた。

4人が順に変身を解除されて、普通の格好に戻っていった。一人ずつ。丁寧に、A1が一人ずつ制圧していった。制圧という言葉が正しいかどうか、サクラには分からなかった。

「……終わった」

という感触が来た。

「終わった、という言葉の意味が分からない」

声に出てはいなかった。A1に向けた言葉でもなかった。どこにも向けられないまま、頭の中で出た。「終わって、何が始まるんですか」という問いが続いた。

答えが来なかった。

当然だった。

「A1」と無線で呼んだ。

「なに」

「A1って——今夜、疲れましたか」

間が少しあった。

「疲れはしない」

声は変わらなかった。今夜ずっとそうだったように、いつもの声だった。制圧の前と後で、声の温度が変わらない。

「……そうですか」とサクラは言った。

「いいな」とは言わなかった。

でも、思った。少しだけ。

 

カノンが手首を繋がれたまま立っていた。

「……まあ、いっか」

言った。独り言のように言った。「捕まった感じがしない」という顔だった。怒っていなかった。悲しんでいなかった。「まあいっか」という状態が、カノンの今の正直な場所だった。

A1が近づいた。

カノンが気づいて顔を上げた。

「A1って」カノンが言った。「疲れないんですか」

「疲れません」

カノンが少し止まった。

「……いいな」

小さい声だった。それだけだった。戦う気もなかった。怒る気もなかった。「いいな」という言葉が、次の感情に行く前に出てきてしまった、という感じだった。

「いいな」という言葉が、無線越しにサクラの方向にも届いた。

サクラが聞こえた、と思った瞬間、少し前に自分が「いいな」と思ったことを、思い出した。

音の種類が違った。カノンが言った「いいな」と、サクラが思った「いいな」は、同じ言葉だったが、どこか違う場所から来ていた。どこが違うのかを整理しようとしたが、機動隊の車両がエンジンをかけた音がして、それが途切れた。

 

バスに4人が乗せられた。

別々の車両だった。一緒にしなかった。理由はサクラには分からなかった。Qの通信に聞いていいか考えて、やめた。今聞く必要がないことのような気がした。

カノンが乗り込む前に聞いた。「行き先は?」

誰も答えなかった。

「……まあいいか」

乗った。

キヅキが乗せられる直前に、空を見た。見上げた。東京の夜空で、星は見えなかった。

「——聴こえてる?」

キヅキが言った。誰に向けるともなく。イヤーカフに向けたのでもなかった。答えは来なかった。

「出た、それでいい」

キヅキが言って、乗った。

ミドリが乗る前に「誰も怪我しませんでしたか」をもう一度言った。今度も誰も答えなかった。ミドリが乗った。

ユカリが最後だった。

乗り込む前に一度だけ振り返った。どこを見ているか分からなかった。代々木公園の木立の方向でも、機動隊の方向でも、K機関のバスの方向でも、なかった気がした。

どこにもない何かを見ていた。

それから乗った。

 

車両が動き始めた。

サクラが立っていた。

公園の外周のあたりに、K機関のバスとサクラと、A1と、Qからの通信と。それだけが残った。

「……終わりましたか」とサクラは通信に向かって言った。

「はい」とQが言った。「Kより確認——制圧完了。お疲れ様でした」

お疲れ様でした、という言葉が、今夜初めて出てきた言葉だった。

「……Q」

「なんですか」

「今夜は——正しかったですか」

Qが少し間を置いた。

「Kの判断です」

「Kの判断が正しいかどうかは」

「……現時点では判断できません。続きは庁舎で話しましょう」

通信が切れた。

A1が近くにいた。ケースを閉じていた。閉じた音がした。

「A1」

「なに」

「カノンが——『いいな』って言ってました」

「聞こえてた」

「……そうですか」

「なに」

「いえ」

A1がケースを持って、バスに向かって歩き始めた。サクラが後からついた。

木立の間から、ビルの灯りが見えた。東京の夜は光が多くて、空が暗くならない。何かが終わっても、光は変わらなかった。光は続いていた。

サクラが歩きながら、なんとなく「向こう」の方向に思った。

——結果だけ言うと、4人が拘束されました。負けた夜、だと思う。誰が負けたのかが、ちょっとよく分からないんですが。

後ろからA1の声が来た。

「また何か言おうとしてる」

「……声に出してないんですけど」

「顔に出てる」

「顔に出るんですか」

「今夜だけ」

「……今夜だけ、どういうことですか」

A1が答えなかった。

今夜だけ、の意味は教えてもらえなかった。

サクラはバスに乗った。

 

 

 

 

 

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