アテンション・プリンセス~空っぽのワタシ、魔法少女になります~   作:樫丹鏡花

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4.オブセッション-Obsession-

私室の低いテーブルに、紙が二枚並んでいた。羽根川の家紋も透かしも入っていない、コピー用紙よりわずかに厚い紙。手帳から書き写す作業を、わたくしはもう三十分近く続けている。手帳のページを開き、「毛利」「ユカリ」「カノン」の三つの丸を順に指でなぞる。丸の形が三つとも微妙に違う。急いで描いたもの、ゆっくり描いたもの、二度なぞって太くしたもの。描いた時の速度が、そのまま線の太さに残っている。丸を確かめる作業は、名前を思い出すためではなく、その夜どれだけ迷ったかを思い出すための作業だった。

この部屋そのものが、羽根川の一族がこのビルの上層に構える住まいの中では、異例な場所だった。客を通す応接間と違って、ここには他人を招いた記憶がほとんどない。壁は白に近い灰色で統一され、家具は革張りの椅子が一脚とこの低いテーブル、それに書棚が一つあるだけだった。書棚の中身は新聞の縮刷版と法律の全集で占められていて、飾るための本は一冊もない。壁にも、写真の類は一枚も掛かっていない。この住まいの誰の部屋にも、わたくしの写った額はどこにも見当たらなかったが、それはこの部屋も例外ではなかった。カノンが越してきてから、充電器のコードや脱ぎ捨てられたカーディガンといった私物がソファの端に少しずつ増えてきたことだけが、この部屋のここ数か月の唯一の変化だった。

一枚目の紙に、わたくしは自分の線を引く。上部構造そのものへの接近。毛利のような迂回を経ずに、直接その輪郭に触れるための線。起点に「白」と書き、そこから伸ばした線の途中に小さな四角を三つ置く。劇場、内親王、降りられない立場。四角の外側に、鉛筆でごく小さく「来月・福祉音楽会」と書き添える。礼子様が過去に二度、体調の許す年にだけ臨席したという記録が、新聞社の縮刷データベースに残っていた。確度の低い情報だが、線を伸ばす足がかりとしては悪くない。四角の中身はまだ埋まっていない。伝聞と推測だけで組んだ線に、確かな重さはまだなかった。もう一本、別の色のペンで、起点を「八人目」に取る線を引く。桃の少女、界隈の格の外にいるはずの存在について、検分すべき項目を箇条書きにする。旧名の消え方、変身の異物感、A1という装置との距離。それから、この子はまだ自分が「八人目」であることを知らない、という一点。知らないことをこちらが利用できる時間には、いつか終わりが来る。その終わりがいつなのかは、まだ計算のうちに入っていなかった。線の先の余白に、わたくしは「サクラ」と書いた。あの人の紙面を使う線も、右の隅に細く一本添えておく。書くことより、書かせないことの方が武器になる場面の方が、あの人の紙面には多い。使い分けをいつ切り替えるかだけが、まだ決まっていなかった。

書いた「サクラ」の字の脇で、ペン先が止まる。丸を描こうとして、描けなかった。毛利、ユカリ、カノン。これまでの三つの丸は、迷わず描けた。所有と選別の意思が、そのつどはっきりしていたからだ。この名前だけは、丸で囲むことの意味が定まらない。駒として数えるための丸なのか、それとも別の何かのための印なのか、わたくし自身、まだ言葉を持っていない。数秒、ペン先を紙から浮かせたまま、何も描かなかった。丸は、次の紙に持ち越すことにする。

二枚目の紙には、毛利の描いている盤面を写す。今日の茶室で聞いた語彙を、そのまま並べる。選挙、信任、凍結。三つの言葉を三角形の頂点に置き、内側に「上書きの制度化」と書いた。その下に、今日聞いた数字だけを三つ書き足す。出稿量一・八倍、討論会二回、広報予算二割増——毛利の口から出た数字だけを拾い、感想はどこにも添えない。毛利の線は単純だった。単純さこそが、あの男の武器なのかもしれない。わたくしの線が複雑になるのは、複雑にしなければ届かない場所を狙っているからだ。そう思ってから、思ったこと自体に苦笑する。単純な男の紙と、複雑なわたくしの紙を並べて、どちらが早く目的に着くかは、今夜の材料だけでは分からなかった。

玄関の方で物音がした。時計を見ると、午後十一時をとうに過ぎている。テーブルの紙をそのままに、廊下へ出る。三和土に、いつもとは違う揃え方の靴があった。カノンの靴は、いつもなら爪先を扉に向けてきちんと並んでいる。寝る前の習慣のように几帳面な並べ方をする子だった。今夜は片方だけ脱ぎ捨てられたような角度で転がり、もう片方はその上に重なっていた。靴の底に薄く泥がついている。この建物の周りに、泥のつく地面はない。玄関脇の靴箱の上に、コンビニのビニール袋が一つ置かれていた。中身は確認しないまま、袋の口だけを覗く。レシートの端が見えた。

袋を持ち上げると、煙草の匂いがかすかに移っていた。カノンは煙草を吸わない。生前も、今も。誰かのそばに長く座っていた証拠として、匂いはレシートより雄弁だった。レシートの印字を確認する。時刻は二十三時五十二分、店名はこの建物から歩いて二十分以上かかる、別の路線の駅前の店だった。近所の店なら五分で着く。二十分の距離を歩く理由を、わたくしはまだ持っていなかった。品目欄には、チューハイの缶が二本並んでいる。一本はカノンの分として飲み干せるとしても、もう一本の行方は、この袋の中のどこにもなかった。袋の底には、まだうっすら湿り気の残るおしぼりが一枚、丸めて入っている。使用済みのものを持ち帰ってくる時点で、店の中で何かを食べてきたことだけは確かだった。エントランスの入退館ログを端末で確認する。カノンの認証は二十一時六分に外出、記録はそこで途切れている——本来ならこのビルの出入りは全て記録される仕様のはずで、途切れること自体が新しい事実だった。二時間四十六分。その空白のどこかに、二十分歩いた駅前と、煙草の匂いのする時間があった。

玄関の鍵が回る音がした。わたくしはリビングに戻り、紙を重ねる素振りだけはしておく。カノンが入ってくる。髪が少し湿っていて、頬が外気で赤くなっている。悪びれた様子は、髪の一筋ほどもなかった。靴を脱ぐ動作もいつも通りの雑さで、床に散らばった靴の並びを直そうともしない。わたくしの視線に気づいているのかいないのか、まっすぐこちらを見て、笑いかけてくる。生前の映像で何度も確認した角度の笑い方だった。

「どちらへ、いらしていましたの」

「散歩」カノンは靴下のまま廊下を歩きながら答える。「なんとなく歩きたくなって。まあいいか、って思って」

「お一人で?」

「うん。まあ、途中まではね」

カノンはそれ以上を続けなかった。「途中まで」の先に何があったのかを、わたくしは追わなかった。声の高さも、語尾の落とし方も、H.K.のフォルダで何十回も確認した型そのままだった。何かに追われて出たのでも、誰かと喧嘩をして出たのでもない——ただ歩きたくなった、という一文だけが理由の全てだった。わたくしはあのフォルダの記憶を辿ってみる。生前のカノンが外に出るとき、そこには必ず手前に理由があった。SNSの反応、誰かの一言、行き場のなさ。理由のない外出そのものが、あのフォルダのどこにも存在しない型だった。口調は寸分違わず本物で、その口調が運んでいる中身だけが、記録の外から来ていた。

どこで、誰と、何時間——問いかけるための言葉が喉まで来て、止まった。わたくしはそれを声にしなかった。「……そうですの」とだけ返して、カノンの横を通り過ぎる。カノンはキッチンの方へ歩いていき、冷蔵庫を開ける音が響いた。扉越しに、声だけが飛んでくる。「そっちは、また紙になんか書いてたの」「ええ、少し」「ふうん」。それ以上の追及はなかった。興味の重心が、もう別のところに移っている声だった。

テーブルに戻り、紙の上に手を置いたまま、しばらく分類の作業に入れずにいた。管理の失敗、と分類しかけて、その語を消す。管理という言葉は、カノンをまだ制御できる対象として扱う前提の上に立っている。成長、と分類しかけて、それも消す。成長という言葉には、こちらが望んだ方向への変化という含みがある。どちらの語も、今夜見たものの正確な名前ではなかった。いつもなら、分類の紙には遅くとも五分のうちに一語を書き込む。今夜はその五分を、とうに超えていた。分類の紙の上、カノンの名の隣は、しばらく空白のままにしておく。分類語が決まらないまま紙を閉じるのは、初めてのことだった。

窓の外では、十月末の乾いた空気が街灯の光を硬く見せている。今夜は小雨も止み、大手町の灯りが輪郭のまま並んでいた。空気が乾いているせいで、遠くの車の音まで、思ったより近くに聞こえる。冷蔵庫の扉が閉まる音、カノンが何かを噛む小さな音が、リビングの奥から届く。季節が一段、冷え込みの方へ寄った夜だった。

テーブルの上、二枚のシナリオを並べて見る。毛利の三角形と、わたくしの二本の線。線の先に、丸のないまま置かれた「サクラ」の字。ペンにキャップを戻し、二枚の紙をそれぞれ別のクリアファイルに収める。毛利の紙は透明、わたくしの紙は不透明の紺色。透明度の違いにまで意味を持たせる癖が、いつからか身についていた。この部屋に来るまで、わたくしは盤面を組む側にいるつもりだった。今夜初めて、組んだはずの盤面の外から、駒が勝手に動いて戻ってくるのを見た。予定を書き換える側だったはずのわたくしが、今夜は書き換えられる側に回っている——その事実だけを、声には出さず、紙の余白に小さく書き留めた。

 

 


 

会議室の楕円形テーブルは、目黒合同庁舎の家具の中でもいちばん傷が浅かった。使われる頻度が低いからではない。天板を定期的に張り替える予算が、この部屋にだけついているからだった。壁際のモニターには、Jの通信待機画面が青く灯っている。回線の遅延を示す小さな輪が、画面の隅で一定の速さで回り続けていた。天井の隅、防犯カメラの黒いドームは今日も無言でこちらを向いている。壁の時計は庁舎のサーバー時刻より四十秒進んでいることを、Qはすでに確認済みだった。先月の通知にあった暖房設定の切り替えは、この部屋ではすでに済んでいる。空調の吹き出し口から出る風が、今日から温かい方に変わっていた。切り替えの通知そのものは、あの解散表明の朝に既読処理した二件のうちの一件だった。Qは定位置に着き、先週分の議事メモをテーブルの端に伏せて置いた。持参したファイルの中身は、あらかじめ順番を並べ替えてある。今日の議題二号が最も重い案件になることは、事前に配布された資料の厚みと、綴じ紐の締まり方の固さだけで分かっていた。開始予定時刻の三分前、Kが入室する。

椅子を引く音、腰を下ろす音、それから椅子そのものが低く軋む音。銀縁の眼鏡が天井の蛍光灯を一瞬だけ反射し、細身の上体が資料の束の上にまっすぐ伸びた。ネクタイは先週と同じ紺色だったが、結び目の高さがわずかに違う。着任からひと月あまり、この部屋でこの一連の音を聞くのは、Qにとってすでに十数回目になる。

「前回議事録、確認済みということでよろしいですね」

新しいKが問い、Qは頷きだけを返した。承認の署名は、開始前にすでに済ませてある。前回は捜査車両の配置見直しが議題の中心で、今日ほどの厚みはなかった。「議題二号から。継続案件です」議事次第に目を落とすことすらせず、Kが続けた。所要時間の見込みは四十分、終了予定は十時十分。先週の会議は五十五分かかっていたから、今日の見積もりはそれより短い。短く見積もる根拠を、Kは説明しなかった。一号議題はすでに持ち回り決裁で片づいており、この場では読み上げられない。承認欄には三名分の印影だけが並び、朱肉の乾き方から押された順番まで推測できた。

「前任から引き継いだ判断は、当面、維持します」——これまでの定例会議で、Kは毎回この一文を枕に置いてきた。今日はその枕がなかった。「適格者運用について、当面の期間を終えたと判断します。以後は個別案件ごとに見直しを行います。選挙後の体制整備に、間に合わせる必要がありますので」最後の一言だけが、理由らしい理由として付け加えられた。

言い終えるのとほぼ同時に、隣に控えていた事務官が一枚の紙をQの前に置いた。件名、「変身適格者の予備調査について(伺)」。文書番号は捜企二第一一七号。用紙はいつもの通達より薄く、右上には受付印を押すための空欄が四角く抜いてある。起案者の欄には「捜査企画課・第二係」とだけ印字され、個人名はどこにもない。決裁ルートは係長、課長、部長と三段の四角が並び、部長までの印はすでに埋まっていた。最後の一段、長官決裁の欄だけが空白のまま、Kの署名を待っている。施行日の欄には「決裁後、速やかに」という文言が仮置きされ、保存年限は「永年」と印字されていた。分類記号は秘密文書には一段足りない「庁外秘」で、閲覧できる範囲がこの部屋にいる人間より広いことを示していた。左上の穴には、綴じるための紐がまだ通されていない。

Kは万年筆ではなく、内ポケットから登録印を取り出した。印面を一度確かめ、朱肉を軽く二度押し当ててから、長官決裁の欄にまっすぐ下ろす。傾きも、位置のずれもなかった。捺印から署名までの動作に、迷いを見せるための間はどこにもない。空白だった最後の一段が、そこで初めて埋まった。印の縁に、前任の印とは違う書体の登録番号が薄く読み取れた。

決裁と同時に、伺の末尾に付記されていた実施細目が効力を持つ。捜査企画課は年内をめどに調査基準案をまとめ、来年一月の定例会議で報告する。基準案の中身はまだ白紙で、対象年齢、観測期間、除外条件といった項目名だけが並んでいた。今日の決裁は、この白紙の項目を埋める作業に着手する許可でしかない。

かつてでA1が口にしていた言葉を、Qは記録の中から呼び出すことができる。無闇に適格者を増やすな。あの一文は誰かの決裁を経て発せられたものではなく、ただそう言われた、というだけの重みで運用されてきた。この機関でこれまでに適格者として運用された例は、タチバナ・サクラただ一人だった。命名も、力の分与も、決裁を経ない例外として処理され、書類上はどこにも記録が残っていない。あの夜のことを、Qは第三者の記録としてではなく、後から伝え聞いた経緯としてしか持っていない。今、目の前にある紙は、その例外を制度の内側に組み込み直そうとしていた。書式が一枚増えるということは、次の例外がもう例外ではなくなるということでもある。二人目、三人目という数え方が、この先の議事録には普通に登場するようになるのかもしれない。教義が変わる瞬間は、書式の形でQの手元に届いた。宣言らしい宣言は、どこにもなかった。

モニターの中でJの映像が起動した。背景には見慣れた出動待機室の壁が映っている。制服の襟元にわずかな光の反射があり、これがJの姿だと確認できるのは、その反射のわずかなずれ方によってだった。「失礼します。定刻通りの接続です」名乗りと確認を先に済ませてから、間を置かずに問う。「新人が入ってくる、ということですか」

Kは伺の写しに視線を落としたまま答えた。「検討中です」

「その方は」Jが続けた。「——どの書類で、名前をもらうんですか」

サクラの命名の前例を踏まえた問いだと、Qにはすぐ分かった。Kは今度は視線を上げ、モニターの中のJを見た。「命名の手続きについても、検討中です」同じ語を二度重ねることに、迷いの色はなかった。前任なら、この問いに直接答えず、別の話題へ静かに切り替えていただろう。書式の外側にあるものを、書式の中の言葉だけで受け止める応答だった。検討中という言葉を、Kはこの会議ですでに二度使っている。二度目までは、まだ同じ重さで使えている、とQは記録した。Jはそれ以上を重ねなかった。

議題は捜査凍結の実務に移った。選挙期間中の背後関係捜査凍結を受け、Qの照会権限のうち三件が本日付で止まる。照会コード「FR2」、妖精関連の通信ログ照会、所管は総務省の情報流通行政局、直近の利用実績は九月末の一件のみ、凍結期限は投開票日の翌日まで。「SP9」、SNS投稿者の身元照会、所管は合同捜査本部、今年に入ってからの利用件数は十一件、凍結期限も同じく投開票日の翌日まで。「FA4」、資金移動業者の口座照会、所管は財務省と金融庁の合同窓口、凍結期限だけが他の二件よりも五日長く設定されている。五日の差について、事務官は「先方の決裁が一段多いだけです」と説明したが、その一段が何を指すのかまでは答えなかった。理由の欄はいずれも空白だった。Qはコードと期限を順に声に出し、耳から返るものと画面の文字を照合した。「エフアール2」「エスピー9」「エフエー4」。三度とも、ずれはなかった。権限の失効そのものは、システム側で自動的に処理される。Qが手で行うのは、失効予定の三件を紙の台帳に書き写す作業だけだった。台帳は縦罫の入った古い形式で、コード、所管、凍結期限、備考の四列しかない。備考の欄には、三件とも「選挙特例」とだけ書き込んだ。同じ書式が使われ始めたのがいつからか、Qは台帳の最初のページを見たことがない。ページの余白は、まだ半分近く残っている。

Jの応答に、今日は遅れがあった。十時十七分、一問目「新人が入ってくる、ということですか」への沈黙は〇・三秒。十時十八分、二問目「どの書類で」の方は〇・五秒だった。基準の〇・二秒からの開きが、一問目より二問目で大きくなっている。遅れの大きさそのものより、遅れが問いを重ねるごとに伸びていくという形を、Qは今日初めて記録した。一つの会話の中で遅れが加速していく例は、これまでの記録のどこにもなかった。

Kが席を立つ。椅子の軋みは、着任の朝に聞いたものより幾分か細かった。音量そのものより、音の続く長さの方が短くなっている。次に気づくまで、この観測をどこにも書き足さないことにする。事務官が資料をまとめ、モニターの中のJの映像が先に切れた。切断の前に一言もなかったことを、Qは特に気にしなかった。定刻通りの接続を告げるのと同じ律儀さで、定刻通りに切れることもある。

散会の挨拶をKが述べる前に、Qはすでに伺の写しをクリアファイルへ収めていた。角を揃え、留め具を閉じる。決裁済みの一枚は、名前のつかないファイルの棚に置くべきものではない。それでも、これまでの通達を綴じてきた棚とも、少し違う場所に収めるべきだという判断だけが、今の段階でQの手元にあった。基準案の報告が来年一月に上がってくれば、この一枚はその報告書の隣に並ぶことになる。今はまだ、隣に並べる相手のいない一枚だった。窓の外、公孫樹の並木はまだ緑と黄が半分ずつだった。先週より黄の方がわずかに広い。資料室に戻ったら、この一枚をどの棚に置くかを、Qはまだ決めていない。廊下を歩く間に、決めればいいことだった。

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