魔法少女まどか☆マギカ+13RIDERS 作:テイルス
たった一人の少女を生かすため、数多の人間を犠牲に払ったある世界。
2つの世界は、何の脈絡もなく交差し、鹿目まどかに不思議な夢を見せた。
運命を変えるため、彼女は契約を交わすと共に、幾度目かの朝を迎える――――。
どうして、こんなことになっているんだろう――――?
「こっちよ、走ってまどかっ!!」
長く黒い後ろ髪の女の子に手を引かれながら、わたしは走り続けていました。
誰もいないショッピングモールを抜けて、駐車場に入り、やがて薄闇で続くスロープを上ります。
誰もいない方へ……誰もいない方へ……!
わたしの心は、それだけに囚われていました。一体、何から逃げているのか、今は思い出すことがありません。ただ、わたしたちが逃げ続けている人たちの恐ろしさだけが身に沁みています。
「みーつけた♪」
わたしたちの逃げる先、通せんぼをするように誰かが立ちふさがりました。
その人はゴツゴツとした銀色の鎧で全身を覆い、素顔を隠しています。男の人だとわかるのは、その人から発する声だけです。
黒髪の少女は瞬時に走る方向を転回し、鎧の人から逃げ出します。わたしも懸命に彼女の手を握り、後に続きます。
しばらく走ると、わたしたちの足下に銃弾が飛び、火花が散りました。右を向けば、今度は緑色の鎧を纏う人が銃を突きつけていたのです。
わたしたちは側にある鉄扉を開けて、非常階段を上ります。
しかし、一番上には紫色の鎧を纏う人が待ち構えていました。
「クハハッ、弱いヤツから喰われる……わかってるな?」
わたしたちは途中にある別の鉄扉を開けて、非常階段から脱出します。
だだっ広く薄闇が広がる駐車場を駆けて駆けて駆け続けて――――とっくに息を切らしていたわたしは彼女と繋がっている手を離し、そこで立ち止まってしまいました。
「まどか…!」
「ご、ごめん……先に行って」
「できない! あなたを助けられなければ、わたしは――――!」
彼女は決して、わたしを見捨てようとはしませんでした。その場で崩れそうになるわたしに再び、手を差し伸べてくれるのです。それが嬉しく思うと同時に、この子の足を引っ張っちゃっているんだという悲しみもあって、わたしが汗と一緒に一筋の涙を流した時でした。
「いつまで逃げるつもりだ」
不意に男の人の声がして、わたしたちは振り向きました。
12人の人影。その誰もが見たこともない鎧と仮面で自分の姿を覆い隠し、わたしたちに殺意を向けながら、ゆっくりと近づいてきます。彼らはわたしたちと同じ人間であるはずなのに、仮面を着けているせいでそれがわからなくなって――――わたしの目には、その12人が怪物の様に思えて仕方がありません。
わたしの疲れた両足は、恐怖によってガクガクと震え始めました。
早くここから逃げ出したい。そう思うけれど、わたしの足はそんな思いとは逆に力が抜けて、その場でへなへなと座り込んでしまいます。
12人の一人――不気味な動物を象った仮面の騎士が、わたしたちに向けて言いました。
「一度大きな力を持った者は、それ相応の宿命を負う。そいつから逃れることは出来ん。例え逃れられたとしても、その先に待つのは――――絶望だ」
「ゲームから逃げ出すことはできないんだよ、お嬢さんたち♪」
「ま、運がなかったと諦めてくれ」
彼らの姿を見て、声を聞く内に――――わたしの大切な人たちの最期の姿が、思い浮かんでは消えていきます。
素敵な衣装はボロボロとなり、首があらぬ方向に曲げられた――――憧れの先輩。
白いマントが破かれて、血の滲む身体を横たわらせた――――小学校からの幼馴染。
赤いノースリーブが身体と共に撃ちぬかれ、血だまりの海に倒れた――――秘密の友達。
全員が、とても優劣のつけられないわたしの最高の仲間たちで――――その全てを奪ったのが、目の前にいる仮面の騎士たちなのです。
「下がって、まどか。こいつらはわたしが倒す」
彼女がわたしを庇うように前に出て――――12人もの相手に怯まず、黒光りする拳銃を両手に構えました。
「ダメ……! わたしだけ逃げるなんてこと、できない! あなたと一緒に逃げることができないなら――――」
――――わたしも、戦わなきゃいけない。
そう決めて、立ち上がろうとすると――――
「一人で充分よ」
彼女は、自分とわたしの間に見えない壁を張り、遮ってしまいました。
「え!?」
見えない壁の向こうから、黒髪の少女は涙を浮かべた笑顔で、わたしに言いました。
「まどか、あなたは私の最後の希望なの。まどかをこれ以上、死なせたくはない。だから――――」
――――私がいなくなっても、生きて。
「え…………?」
一瞬、その言葉の意味を理解することができませんでした。
それ以降、彼女は二度と私の方に顔を向けることはなく、迫り来る12人の敵を迎え討とうとしていました。
その背中から、覚悟というには程遠い、一抹の闘志が見えるような気がしました。
「そんな……いやだよ……」
彼女がこれから、何をするつもりなのかを悟ってしまい――――
「まずはお前からか! みんな、かかれぃ!!」
仮面の騎士が一斉に黒髪の少女に飛びかかって――――
彼女も、それらを迎え討つために駆け出しました。
「だ……だめえええええぇぇぇぇっ!!」
わたしが叫ぶと同時に――――黒髪の少女は12種類もの攻撃を受けて、その生命を儚く散らし始めました。
「どうして……」
握った手が、どんどん冷たくなっていく。
強く気高く、いつもどこか哀しげだった瞳は、とっくに開ききっている。
わたしはその瞼を、そっと撫でるように閉じてあげます。すると、まるで眠っているだけのように見える――――彼女の死に顔がありました。
「こんなの、あんまりだよ……どうしてこんなひどいことができるのぉ!?」
溢れだす涙とともに、わたしが仮面の騎士たちに訴えると、その中の一人が言いました。
「こんな方法でしか、俺たちは願いを叶えることが出来ないんだ」
「お嬢さんたちがミラーワールドを閉じようなんてバカなことを考えるから、こういう目に遭うんだ」
「そんな……だって……だって、わたしたちは……!」
「先に願いを叶えてもらえた甘ちゃんに、俺たちの気持ちなんてわかるはずがないんだよ」
そう言って別の騎士が、わたしの言葉を遮り――――その痛烈な一言で、わたしは何も言い返すことができなくなりました。
「お前もコイツの後を追うか、鹿目まどか……?」
12人の騎士がわたしを取り囲み、各々の武器をわたしに向けて構えます。
それでも、わたしは彼女の死体を抱きしめることしかしませんでした。
どうしてこんなことになってしまったんだろう――――?
わたしは心の中で何度も何度もそう呟きながら、迫り来る死に脅えて、歯の根を震わせる――――その時でした。
グアアアアアアアアッ!!
そんな、獣の咆哮が響き渡りました。
その瞬間、わたしを取り囲む騎士たちは、うねり飛ぶ何かに次々とはね飛ばされてゆきました。そしてその何かは長く赤い身体で渦を描くように、わたしの周りを囲んで回ります。
その正体は、とても雄々しく赤いドラゴンでした。大蛇の様に巨大で長い胴を持つ東洋のドラゴンは、その頑強な胴でとぐろを巻き、起き上がってくる騎士たちを威嚇しています。
その龍の登場に呆気にとられているわたしの側で、カツンという靴音が響き。
思わず振り向くと、そこには――――あの12人と同じような姿をした一人の騎士が、一振りの剣を持ってそこにいました。
ぴっちりとした赤いスーツの上に、上半身を中心に包む銀色の鎧。仮面から覗く赤い光は、虫の目の様な楕円の形。
その騎士は、あの12人とは違いわたしに対する殺意を持っていないみたいで、むしろ、わたしを守るようにそこに立っているだけです。でも……
「あ……あなたは、誰……? あなたもわたしたちを……」
殺そうとするの?
そう尋ねずにはいられなくて――――わたしは質問を、喉に詰まらせてしまいます。
赤い騎士は嘆くように言いました。
「わからないんだ……」
「え……?」
「わからないんだ……この戦いを止めるべきなのか、最後までやり通すべきなのか……」
その言葉に導かれるように、わたしは12人の騎士たちの方に目をやります。
彼らは、いつの間にか現れた怪物たちと戦っていました。その中で、彼らは仲間同士でも衝突し互いを傷つけ合っています。
騎士の武器と怪物の爪・牙がぶつかり合う音が響く中、巨大な蜘蛛が糸を吐き騎士の一人を捕らえると、その糸を引っ張って口に運び――――
「ぎゃああああああっ!!」
足の方から、がきゅごきゅと音を立てて噛み砕いてしまうのを見てしまいました。
「き……きゃああああっ!!」
思わず、わたしは顔を覆ってしまいます。
「そんな……あんまりだよ! こんなのってないよ!!」
いつ、誰か死ぬのかわからない。そんな悪夢のような光景に対して、わたしは涙声で叫びました。
「どうして……どうしてあの人たちは戦うの? 人を傷つけて、生命を奪って、最期には自分が死んでしまうかも知れないのに……」
迷う騎士は言いました。
「俺以外のみんなが、この戦いに勝ち残らなければならない理由がある。どの理由も重くて、大事で、切なくて……だからみんなは、他人を犠牲にすることを気にしない。気にしたら、その時点で負けだから」
「そんな……そんなこと、絶対間違ってるよ!!」
「ああ、俺もそう思う。でもさ、みんなこの戦いに、希望を求めているんだよね」
希望――――?
こんな――――こんな酷い戦いに、みんなが……?
だとしたら、この戦いを止めてはいけない――――?
「それでもキミは、この戦いを止めるべきだと思う? 止めるとしたら、どうやって止めればいいと思う?」
騎士は混乱するわたしにそう訊き返し、答えを求めてきました。
俯きがちの仮面は、真剣な表情にも哀愁の表情にも見えて――――見ているわたしの心が掻きむしられるほどの切実さで。
それでも、弱虫なわたしの口は動かなくて……尋ねられた答えを、一言も返すことが出来ないのです。
やがて、諦めたように顔を背ける騎士を見て、わたしの心はきゅううっと縮みました。
――わたし、なんてダメなんだろう……
心も体も何もかもが弱い自分が、どんな綺麗事を言っても、それは理想論でしかなくて――――
今のわたしには、この人を納得させる言葉を口にすることが出来ない……
だから――――
「いつか……」
「……?」
「いつか、その答えを見つけられる自分になる。みんなが仲良く笑い合える道を、わたしは探す。どんなに時間がかかっても」
わたしは騎士に約束して、お願いします。
自分の答えが見つかるまで待ってて欲しい、と。
そして、今どんな願いも叶えることができる奇跡の力は――――次に繋げるために使います。
NEXT ROOPS......
PUELLA MAGICAS × 13 RIDERS
どもども。お引越しをしてきたテイルスと申します。
以前は「小説家になろう」さんのサイトで好き勝手かいておりましたが、ご存知の通り、随分前にオリジナル小説以外は掲載できないようになりまして……
代わりのHPを立ち上げて今まで掲載しておりましたが、このたび、このハーメルンという投稿サイトとの邂逅を経て、是非ともこちらに掲載したいと思い、HPを引き払ってやってきました。
前HPから閲覧にいらっしゃった方、ご足労ありがとうございます。第2話から前掲載時とは別の展開を披露する予定ですので、楽しみにしてて下さい、永遠に(嘘)
目標はただ一つ、完結です! 応援よろしくお願いします!