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前回までのあらすじ
A組の担任である相澤先生は、いきなり初日から入学式をボイコットしてしまったぞ!!
おいおい、教師として大丈夫なのか!? 校長からまたこっぴどくお説教されるのはお前なんだぜ、イレイザー!
そんなことはさておいて、代わりに行うことになったのは『個性把握テスト』だ!!
ここでは中学の時にやっていた体力テストを、個性を解禁して自身の本当の限界を知ってもらう!
なかなかワクワクするだろー!
しかーし、厳しい相澤先生の提示した条件によって、なんと最下位は即除籍されてしまうそうだ!!
これは入学初日からなかなかヘヴィーだぜ……!
がんばれ! 一年A組!! こんな時こそ“Plus Ultra(プルス・ウルトラ)”……!
……っていたい! いたいって!!
ちょっと、イレイザ……じゃなかった相澤先生! 今いい感じのナレーションを入れてる最中なんだから!
え? 私情を挟みすぎだって……? ちょっと、どこに連れてかれるのー!?
◇
(ん? 今どこからか変なナレーションが入ったような……? ……気のせいか!)
今回行う『個性把握テスト』は、オーソドックスな8種類の体力テストを個性ありで試して、その総合順位が出るというものになっている。
俺的に活躍できそうなのは、持久走くらいか……?
というのも、ネビルレーザーの副産物である『氣』による全身の強化によって戦闘スタイルはだいぶ安定したものの、いまいちネビルレーザー本体を使えるタイミングがないのだ。だって街中でむやみに振り回すには危なすぎるし……。
氣を使いこなせるにつれて、相乗効果でネビルレーザーの威力も格段に跳ね上がったというのだから笑えない。
一点突破の出力勝負なら誰にも負けない自信はあるのだが、いかんせん今回のテストは全身の力を総合的に使うものが多い。そりゃ体力テストなのだから当たり前なのだが、ネビルレーザーの一点集中的な出力よりは、高水準なアベレージを出せる全身強化の方がコスパがいいのだ。
ただ、俺の全身強化はあくまで副産物。
純粋な身体強化系の個性とギリギリ張り合える程度だから……。
あれ、これ俺もしかして本気で除籍の可能性あるくない……?
気を引き締めねば……!
第一種目:50メートル走
「飯田、3秒04!」
おいおい、一番最初から早すぎだろ……あんなの見せられたらみんなやる気なくしちゃうよー……。
眼鏡くんは足からバイクの気筒のようなものが生えていると思っていたが、どうやらそのまんま足にエンジンがついているような個性らしい。
ただ、あの爆発的なスピードを完璧に制御しているところを見るに、やはり本人の素質や並々ならぬ努力を感じざるを得ない。
その次のペアは、雰囲気がふわっと緩めなショートカットの女子と、立派な尻尾が生えている男子だった。
「尾白、5秒49!」
「麗日、7秒15!」
ショートカットの女の子の方は、何をやったのかパッと見では分からなかった。
女子にしては速い方だが特段個性を使ったようには見えない。ただ、50メートル走の直前に自分の体の色々なところに触れていたことを思うと、発動条件は五指で触れる接触型なのかもしれない……。
そして、尻尾が生えている男子――尾白くん。
こいつは強い、と確信した。
見たところ異形型っぽいのだが、異形型にしては身体的変化が少なく、他の異形型と比べても単純な身体能力の強化倍率が低いように感じる。
実際、今回の50メートル走では、尻尾を上手く地面に突いて推進力に変えながら、四足歩行とも言わんばかりの走りで高スコアを取っていた。
しかし、彼の本当の利点はそこではないのだろう。
あの人の首ほどもある太い尻尾は、本来人間が二足歩行に進化する過程で、バランスが取れず捨てたとされる器官だ。もしそれを自在に使いこなし、猿のような縦横無尽の機動力を生み出せるなら……。
あの大きな尻尾による圧倒的な体幹とバランス力、そしてリーチを駆使して近接戦を仕掛けられたらと想像するだけで、ゾクッと肌が粟立つ。
こいつは将来、市街地などの狭い空間での近接戦闘において最強の一角になるかもしれないな……俺は素直にそう評価する。
その佇まいから察するに、すでに何かしらの武術を修めているのだろう。よければこの後、手合わせしてほしいくらいだ。
そんなことを考えていると、次は俺の番だった。
隣のレーンに立つ女子に目を向ける。肌が鮮やかなビビッドピンクの女の子だ。
その特徴的な肌と彼女自身の整った顔立ちが合わさり、どこか妖艶で目を奪われてしまうような、不思議な美しさを放っている。
しかし、よくよくその表情を見ると、どこか緊張で硬くなっている様子だった。
「もしかして緊張してる?」
「そりゃ、もちろん!! 私の個性、入試の時は相性良かったけど……正直今回のテストではあんまり相性よくないもん……」
「奇遇だな。俺もだよ」
「その割には、あんまり緊張してないように見えるけど……?」
「そりゃ、そう見せてるだけだよ。ヒーローなんて虚勢張ってなんぼだろ」
「あはは! それはそうだね! なんか話してたらちょっと元気出てきたかも!」
「そりゃよかった。お互い頑張ろうな。俺は青山優雅」
「私、芦戸三奈! 悪いけど負けないからね!」
そう言って、ニッと白い歯を見せて笑ってくる。どうやら元々はこういう活発で明るい性格のようだ。
だが、嫌いじゃない。
「もちろん! 俺も負ける気はないよ」
俺も負けじとそう答えた。
「位置について……よーい……」
先生の合図に合わせて、俺と芦戸さんはクラウチングスタートの姿勢をとる。
その瞬間、意識がぐっと深くなり、ゾーンへと没入していく。
世界から余計な色が消え、周囲の雑音が遠のいていく。
俺は自分自身の身体の内側へと全神経を集中させた。
『氣』というのは、ある意味で血液のようなものであり、強力なエネルギー源だ。
ただし人間はそれを無意識のうちに使っている。それもそうだ。血液における血管やポンプの役割である心臓のような器官が、氣には明確に存在しない。
だからこそ、自分の身体の状態を俯瞰し、意思の力で氣を体の隅々まで巡らせていく。火事場の馬鹿力やアスリートのいう『ゾーン』は、無意識にこの意思による循環を行っている状態なのだ。
筋繊維の一本一本にまで意識を向け、氣を満たしていく。
身体と空間が自然と一体化し、境目が薄れていく――俺は今、風になる。
「ドン!」
信号が鳴った瞬間、俺は全身の力を爆発させて地面を蹴り飛ばした。
俺の身体が淡く発光し、走った道筋に光の軌跡を残していく。
その光子は光の帯となり、ゴールまで減速することなく真っ直ぐに伸びていった。
「青山、4秒58!」
「芦戸、5秒50!」
なんとか4秒台を叩き出すことができ、胸を撫で下ろす。
「ちょっとー!! めっちゃ速いじゃん! どこが苦手なのー!」
「そんなこと言うんなら、芦戸さんだってめっちゃ速いじゃん」
「青山に言われてもあんまり嬉しくない……」
彼女はちょっと納得のいかないような目で見つめてくるが、彼女も間違いなく十分な実力者だ。
もともと運動神経が良いのだろう。スタート時は勢いよく飛び出し、最高速に達したタイミングで足裏から溶解液を分泌し、地面を滑るように駆け抜けていた。
あのスピードの中で体を支える体幹、繊細な個性のコントロール力と瞬発的な判断力。一つでも欠けていれば転倒する神技のような走りだった。
馬鹿正直にネビルレーザーだけを使って挑んでいたら、負けていたのは間違いなく俺の方だ。
やはりここは世界有数のヒーロー育成機関、雄英高校。全く、気を抜けない。
「ねーねー、青山の個性ってさー……」
芦戸さんはなおも興味津々に話しかけてくる。どうやらかなりのおしゃべり好きらしい。
しょうがない、付き合うことにするか……そう思って会話を続けようとした時、彼女がパッと視線を投げた。
「あー!! 次走るの切島じゃん!」
「知り合いなの?」
「うん! 中学が一緒だったんだー! あいつ、すごく良いやつなんだよ!」
切島と呼ばれた男は、鮮やかな真紅のド派手なツンツン頭をしていた。
しかし、よく見ると髪の根本が少し茶色く、染め残しがある。
なんか根は良いやつそうだな。高校入学に合わせて気合を入れて染めてきたのだろうか?
気になって芦戸さんに尋ねてみる。
「あの髪、すごく派手だけど染めてるのかな?」
「しーっ!! あいつ、色々頑張ってるんだからあんまり触れてあげないで! 心機一転したかったみたいでさ……ああ見えて、すごく良いやつだから!」
焦ったように小声で制しながら、切島くんを心配そうに見つめる芦戸さん。友達想いの本当に良い子だな、と素直に思った。
そんな切島くんの隣のレーンには、モモちゃんが立っていた。
二人のスタートが少し遅れているのは、モモちゃんが「どこまでが個性の使用範囲として認められるのか」を相澤先生に念入りに確認していたかららしい。
そりゃそうだ。モモちゃんの『創造』なら、50メートルほどの長い棒を作り出して倒すだけでゴールインになりかねない。
遠目に見える相澤先生の疲弊した表情が切ない。ご愁傷様です。
どうやら協議の結果、背中に装着する小型のジェットパックなら使用OKとなったようだ。
(いや、それだけでも十分無法な気もするけどなー……)という言葉は胸の中にしまっておく。
そして、勢いよく二人がスタートを切った。
「八百万、3秒48!」
「切島、4秒32!」
モモちゃんは暫定一位の飯田くんに次ぐ、全体二位の驚異的な記録を叩き出していた。
さすがモモちゃん!(妄信)
それにしても、切島くんがここまで速いのは意外だった。
彼の個性は見たところ、全身を硬化させる能力のようだ。
その能力は「全身に個性を巡らせる」「自分の意志で物性を変形・維持する」という点において、肉体と精神の強固な結びつきが必要となる。そのプロセスは、俺の使っている『氣』の概念と非常に似ている気がした。
彼も無意識のうちに、氣による肉体強化を行えているのかもしれない。
機会があれば、硬化中の感覚や身体能力の引き上げ方について詳しく聞いてみたいところだ。
そんな考察に没頭していると、いつの間にかモモちゃんがすぐ目の前に立っていた。
「優雅さん! 私、頑張りましたわ!」
パァッと花が咲いたような笑顔で、俺の言葉を待つように見つめてくる。
いや、すごい記録だけど、わざわざ俺に真っ先に報告しに来なくても……。
というか、なぜか朝よりも距離感が近くないか……?
(ちょ、近い……距離が近すぎるってモモちゃん……恥ずかしいから……!)
急激な密着感に、なんだか一気に気疲れしてしまう。
モモちゃんはなぜか俺の隣から離れようとせず、嬉しそうに俺の顔ばかり見て話すものだから、気を利かせた(?)芦戸さんは遠慮して切島くんの方へ話しかけに行ってしまった。
(もー、モモちゃんは人見知りなんだから……俺以外とも話しに行けばいいのに……)
そんな盛大な勘違いをしつつ、モモちゃんと一緒に残りの生徒の測定を眺めていると、どうやら次が最後のペアのようだった。
今朝、教室で大殺気立っていた爆発頭と、それに恐る恐る絡まれていた緑のモジャモジャ頭の男子。
二人は元からの知り合いなのだろうか。
そんなことを思っているうちに、二人のテストが始まった。
「爆速ターボ!!」
スタートの瞬間、爆発頭――爆豪が叫ぶと同時に両手のひらから眩い閃光が弾け、連続した爆風の推進力で一気に加速していく!
「爆豪、4秒13!」
「緑谷、7秒02!」
……なんて素晴らしい技術なんだ。正直、思わず見惚れてしまった。
個性の分類としては俺のネビルレーザーと同じ放出・推進系だろう。だが、あの圧倒的なコントロール力と応用力。爆発という広範囲かつ危険な個性を、サポートアイテムなしでここまで精密に推進力として扱い切るセンスに、心底舌を巻いてしまう。
俺のレーザーとは真逆の性質とはいえ、個性をここまで汎用性の高い武器へと昇華させている姿は見習うしかなかった。
――だが。
それを差し引いても、どうしても見過ごせない点があった。
あいつはわざわざ、隣のレーンを走る緑谷くんを爆風で吹き飛ばしながらゴールしたのだ。
正直、あいつの態度は到底ヒーローを目指す者のそれとは思えない。
あれほど素晴らしい個性と、それを自在に扱える天賦の才能に恵まれておきながら、どうして他人に寛容になれないのか。あれだけの技術があれば、隣のレーンに爆風を巻き込まないように走ることだって容易ではないにしろなにか方法はあっただろうに。
だめだ。どう考えてもあいつとは仲良くなれそうにない。
ヒーローになれるという、誰もが羨む圧倒的な恵まれた環境にいるというのに。なぜそんなチンケなプライドや攻撃性で他人を傷つけてしまうのか。
――俺は、どんなになりたいと願っても、もう純粋なヒーローにはなれないというのに。
胸の奥から、ドロリとした怨嗟に近い恨み節が次々と湧き上がってくる。
(だめだ……! こいつと深く関わっちゃいけない……!)
俺は俺だ。今は『青山優雅』を演じ切らなきゃいけないんだ。
暗い影を落とす俺の横顔を、モモちゃんが心配そうな瞳で見つめていることにも、今の俺は気づくことができなかった――。
『筆者の個人的嬉しかったこと』
わーい!!
昨日の夜、人生初の10評価貰っちゃったー!!
これはもう頑張って書くしかないなー
まあけどまずやる気を出すために日課の日間ランキングランキング回りでもするかー
<“この小説がなぜか日間ランキングに入っている“>
ん?ゴシゴシ(思わず目を擦る)
うそやろ…
……はっ!!(正気に戻る)
本当にありがとうございます!!
もともと二次創作の土壌としてファンが根強いヒロアカが原作ということを加味してもランキングに乗れたのは見てくれている皆様のおかげだと思うので、本当に感謝しかありません。
実は今、何をとち狂ったのか、東南アジアを1人で二ヶ月間旅をしている最中でして、だいぶメンタルがやられていた時に、この嬉しいニュースで作者は息を吹き返しました!!
今後も細々と執筆を続けていきますのでどうぞよろしくお願いします。