優雅じゃない青山くん   作:ねをん

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今回めっちゃ短いです…


小学生時代

AFOに会い、個性を受け取ってからというもの、俺は学校でいじめられなくなった。

 

ずいぶんわかりやすいものだ、とも思った。

だが、幼稚園児程度の子供にとって、善悪の区別など曖昧なものなのだろう。結局のところ、彼らはただ“わかりやすい異物”だった俺を叩いていただけにすぎない。

 

もっとも、だからといって同級生たちと仲良くなれる気には、もうなれなかった。

それは失望というより、諦めに近い感情だった。

 

俺はもともと、人と深く関わって生きてこられるような人間ではない。

誰かをそばに置いたところで、どうせ理解なんてされなくて、ただつらいだけだ。そんなことを、子供ながらに理解してしまっていた。

 

その代わりと言っては何だが、俺は人と関わる時間のすべてを戦闘訓練に費やした。

 

幸い、我が家には金があった。

個性訓練に必要な知識や環境も、それなりに揃っていた。

 

俺は父に頼み込み、戦闘訓練用の地下施設まで作ってもらった。

AFOに何か感づかれるのではないかと思い、真の目的は伏せたまま用意してもらったのだが、結局あちらから何か言われることはなかった。

 

羽虫(スパイ)の近況など気にしていないのか。

それとも、知ったうえで歯牙にもかけていないのか。

 

どちらにせよ、こちらにとっては好都合だった。

 

今はまだ到底届かない。

それでも、いつかその喉笛に牙を突き立ててやる。

そんな未来を夢見ながら、俺は訓練を続けた。

 

ここで、ネビルレーザー(仮称)について、現時点でわかっていることを記しておこうと思う。

 

ネビルレーザーとは、AFOから与えられた俺の個性だ。

能力そのものは単純で、おへそからレーザーを発射するというものらしい。

 

……らしい、というのは、最初の印象だけならそうとしか思えなかったからだ。

 

ただし、この個性には明確な欠点がある。

一秒以上撃ち続けると、腹を壊すのだ。

 

ここだけ聞けば、なんて弱い能力なんだと思うかもしれない。

実際、俺自身も能力の使い方を探る中で、そのあまりの使いづらさに絶句した。

 

AFOが粗悪品を押しつけやがった、と何度憎んだかわからない。

 

だが、考え続けるうちに、そもそも“ネビルレーザーは弱い”という評価自体がおかしいのではないか、と思うようになった。

 

そもそも個性とは、身体能力の延長線上にあるものだ。

決して、外付けの装備や道具ではない。

 

つまり、「一秒以上撃つと腹を壊す」という現象も、能力そのものの欠陥と断じるのは早計だ。

個性が本来、呼吸するように扱えて当然の“身体機能”なのだとすれば、単にこの能力の出力に対して、俺自身の身体がまだ追いついていないだけ――そう考えるほうが自然だった。

 

その結果として、副作用のような症状が出ているにすぎない。

 

加えて、個性というものは、持ち主の認識や基礎身体能力によって大きく成長する。

この点も見逃せない特徴だ。

 

そして、この二点を踏まえたうえでネビルレーザーを観察していくと、いくつか面白い事実が見えてきた。

 

まず第一に、ネビルレーザーは“レーザー光線”ではない可能性が高い。

 

AFOの説明や見た目から、俺も最初は当然レーザーだと思っていた。

だが、よくよく検証してみると、どうにもそれだけでは説明がつかなかった。

 

そもそもレーザーとは、光を一点に集中させ、その熱で対象を焼き切る性質を持つ。

ならば、岩盤に撃ち込めば表面は高熱で融解するはずだ。

 

しかし、ネビルレーザーで岩盤を撃ってみると、結果は違った。

岩盤は表面を焼かれるのではなく、貫通し、粉砕されたのだ。

 

威力そのものにも驚いたが、注目すべきはそこではない。

岩盤の表面に、熱で溶けた痕跡がほとんど見られなかったことだ。

 

つまりこれは熱線ではなく、むしろ一種の衝撃波に近い性質を持っていると考えたほうがいい。

ネビルレーザーのエネルギー源は熱ではなく、別種のエネルギーなのではないか――そう仮定できる。

 

さらに、ネビルレーザーを地面に向けて撃つと、自分の身体を加速させることができる。

この現象から考えても、発射されているものは単なる“光子”ではなく、何らかの質量を伴った力場、あるいは物質に近いものだと推測できた。

 

ここで、もう一度ネビルレーザーの欠点について考えてみる。

 

ネビルレーザーの副作用は、「撃つと内臓に負担がかかる」ではない。

あくまで、「腹を壊す」なのだ。

 

つまりこれは、発射時の反動による物理的ダメージというよりも、体内に存在する何らかのエネルギーが急激に失われることで身体のバランスが崩れ、結果として腹部に症状が出ているのではないか――そんな仮説が立てられた。

 

そして図書館でさまざまな文献を漁るうち、俺はひとつの答えにたどり着いた。

 

ネビルレーザーとして発射しているものは、中国拳法でいうところの“氣”なのではないか。

 

中国拳法における“氣”とは、丹田――おへその少し下に位置する部位――で生み出されるエネルギーのことだとされている。

これを用いることで、驚異的な身体能力を発揮できる、という伝承も多い。

 

そして興味深いことに、“氣”を酷使すると丹田に急激な負担がかかり、吐血や激しい腹痛を引き起こすという記述もあった。

これは、ネビルレーザーの副作用とあまりにも酷似していた。

 

つまり、ネビルレーザーという技は、身体を鍛えたこともなく、“氣”という概念すら理解していない人間が、いきなりリュウの波動拳を撃たされているようなものなのではないか。

 

そう考えると、「腹を壊す」程度で済んでいるだけまだマシなのかもしれない。

 

……というわけで、俺の小学生時代は、ネビルレーザーを撃っては腹を壊し、しかしその感覚を忘れないうちにトイレで座禅を組む――そんなルーティンを延々とこなす日々となった。

 

あれ、これもしかして、戦闘訓練用の地下施設、あんまり意味なくないか?

 

そんなふうに、どこかで冷静にツッコミを入れられる程度には余裕も出てきたころ、俺の小学生時代は終わりを迎えた。

 

そして俺は、いよいよ中学生になったのだった。

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