優雅じゃない青山くん   作:ねをん

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中学生時代

とある都内の私立中学。

 

そこは、優れた家柄と優秀な学力、その両方を兼ね備えた者だけが入学を許される超エリート校だった。

 

だが、そんな学校の中にも、ひときわ目を引く存在というものはいる。

 

「ねえねえ、聞いた? 今年、特待生が二人いるんだって」

 

「えー、すご。うちの学校、ただでさえ難しいのに……。身体能力もあって頭もいいって、どうなってるんだろうね」

 

「しかも二人とも金髪の超イケメンらしいよ。片方はすっごく明るくて話も面白いらしくて、もう一人は無口で、あんまり学校にも来ないんだって。でも、そういうミステリアスな感じが逆にいいっていうか……」

 

「えー、そんなの見に行くしかないじゃん!」

 

今年は、数年に一度出るかどうかという特待生が、同時に二人も現れた。

そのせいもあって、上級生まで含め、学校中がその噂でもちきりだった。

 

そんな中、渦中の一人はというと――

 

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やあ!

突然だけど、僕は物間寧人。自分で言うのもなんだけど、天資英明の男さ。

 

神は二物を与えない、なんて言うけれど、僕には頭脳、身体能力、容姿の三拍子がそろってしまっているんだから困るよね。

 

もちろん、そんな僕にもコンプレックスくらいはあるんだけど……。

まあ、そこはそれ。少し明るく振る舞ってみせれば、あっという間にクラスの人気者さ。まいっちゃうね、ほんと。

 

ただ、中学入試っていう最高の晴れ舞台では、僕がぶっちぎりで一番目立てると思ってたんだよね。

なのに、どうやら今年は特待生がもう一人いるらしい。

 

それが、クラスの隅で静かに座っているあいつ――青山優雅だ。

 

授業の休み時間になると、あいつはいつも目を閉じて深呼吸をしながら、何かに集中している。

まるで何かに取り憑かれたみたいに、ずっとそんなことをしているんだ。

 

なぜか、僕の次くらいには女子人気も高いらしいけど……。

僕から言わせれば、あんなのただの地味なやつだろ。

 

身なりにも気を使っていないし、せっかくの美しく輝く金髪だってぼさぼさのままで、前髪が目元にかかっている。

……まあ、たまに目が合ったときに見える、あのアメジストみたいに深い瞳の輝きには、少しだけ僕も目を奪われることがあるんだけど。

 

そんなわけで、何かと気に食わないやつではあった。

けれど、あいつは学校を休むことも多いし、そもそも僕とは属しているコミュニティが違う。関わる機会なんてほとんどない。

 

だから、そこまで意識していたわけじゃなかった。

 

――あんな事件に巻き込まれるまでは。

 

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俺、青山優雅は中学生になった。

 

とはいえ、生活そのものはあまり変わっていない。

小学生のころと同じようなルーティンを、相変わらず回し続けている。

 

変わったことがあるとすれば、とりあえず中国拳法における発勁の習得が終わったことくらいだろうか。

 

中国拳法における“氣”の運用は、ざっくり分けると次の三つに分類できる。

 

① 発勁:氣を一気に体外へ放出する

② 暗勁:目に見えない、静かな氣の打撃

③ 金剛躯:肉体そのものを鋼のように鍛え上げる

 

俺がこの中で習得できたのは、ひとまず発勁だけだ。

というのも、ネビルレーザー自体が、思いきり“体外放出の極致”みたいな技だったからだろう。

 

“氣”というものの存在を認識できた時点で、その方向性に関してだけは、ある程度扱える下地がすでにできていたわけだ。

 

改めて振り返ると、基礎技も撃てないのに、必殺技だけデバフ付きで使えるってどういう状態なんだよ……ほんとに。

 

ただ、残りの二つ――暗勁と金剛躯に関しては、さすがに習得が難しかった。

中国三千年の歴史は伊達じゃない。

 

ネビルレーザーも、まだまだ実戦で気軽に使える代物じゃない。

一秒以上放出すると腹を壊すというデメリットも、結局改善されていないしな。

 

本当にピーキーな性能をしている。

継戦能力が皆無じゃねえか。

 

まあ、そんなふうに特訓を続けながら、最近はヴィジランテとしての活動もするようになった。

 

やはり、戦闘経験に勝る訓練はない。

 

幸い、役所に提出した個性届も――ドクターのところで診断書を出してもらった。まさかのアフターフォロー付きだ――AFOに知られている個性も、どちらもネビルレーザーで通っている。

 

だから、ヴィジランテ姿の俺が俺だと気づかれるはずはない。

それはかなりありがたいポイントだった。

 

氣を溜めている最中は、青白いエフェクトがきらきらと漏れてしまうが、まあその程度は誤差の範囲だろう。

実際、ヴィジランテ活動ではほとんど個性を使っていないしな。

 

個性社会となった今、人間の研鑽というものは、どこか過去の遺物みたいな扱いを受けている。

身体能力そのものが変化し、“人間”という枠組みからして見直さざるを得なくなったのだから、当然といえば当然だろう。

 

その流れのあおりを最も受けたのは、武術界だ。

今の社会で武術を学んでいる人間なんて、ごく少数だろう。

 

だが、それでも無視できない強さは確かに存在する。

現に、一部のプロヒーロー――たとえばガンヘッドやミルコは、それを主力のひとつとして戦っている。

 

特に中国拳法の“型”というやつは、自分にとっての究極の正解を教えてくれる。

しかもルーティンとして繰り返すことで、常に身体に刻み込まれていく。

 

戦闘中の一瞬に集中力を極限まで高め、最高の一撃を叩き込める。

その点に関しては、どんな個性にも代えがたい価値があると思っている。

 

なので、正直なところ、個性の力に頼りきっているだけのチンピラ相手なら、個性を使わずとも拳法だけで勝ててしまうのが現状だ。

 

ただし、ヴィジランテ活動はどうしても夜遅くなりがちで、そのせいで翌日の学校に遅刻しやすいのが欠点ではあるが。

 

両親には、「一定以上の成績さえ収めるなら、好きにやっていい」と言われている。

だからこそ、そこだけはちゃんとしておかないといけない。

 

今通っている中学校は名門校ということもあって、倍率の高いヒーロー科への合格者を出すために、かなりしっかりした実技プログラムが組まれている。

そもそも中学入試の時点で、実技試験が含まれていたくらいだ。

 

まあ、年々ささやかれる“個性特異点”の話を考えれば、実技を重視する流れ自体は当然なのかもしれない。

富裕層の間では、特にそういう危機感が強いのだろう。

 

そしてもちろん、俺は実技で一位をキープし続けている。

 

……ただ、筆記では物間とかいうやつに連勝を許してしまっているが。

 

正直、あいつのことは苦手だ。

何かにつけてマウントを取ろうとしてくるし。

 

ただ、少なくとも認めてはいる。

自分でも相当努力を積んできたという自覚があるからこそ、あいつが同じように努力してきたことも、なんとなくわかるからだ。

 

――ただ、まさかあんなことになるなんて思ってもみなかった。

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