ガールズ&パンツァー・スイーツ   作:氷川蛍

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ごめんなさい……どうしても文字数を絞れませんでした。
つぎこそ絶対に終わって見せます。
本当にダラダラ続くのは嫌なのですが、まだ文章力が未熟なためまとめきれなかった事をお詫びします。


中盤戦、 激戦です!!

 Ⅳ号と38tが難を逃れた頃、もう一方の線上で三号突撃砲が、花びら舞い散る四つ辻の真ん中で白旗を揚げていた。

 

「慢心成るかなローマ、気高さの礎は今や海の泡よ……無念」

 

 車長エルヴィンと装填手カエサルは自分達の頭に降る花びらに無上の悔しさと、ある種の終幕妄想の中にいた。

停車し身動きとれなくなった三凸の中で、左衛門佐とおりょうが唇を噛んでいた。

降る花は敗北という悲しみの上に、最期の涙、注ぐ送り火の色鮮やかな思い出のように、競技参加が終わった世界を演出していた。

とどめの一撃の後、コメットが打ち上げた空砲から降る花びらの涙。

 

「完敗というヤツか……ああ蜃気楼よ……」

「ああ、渡るに早い川だった……」

「夜明けは遠かった……」

「天王寺……」

 

 市街地という町を区切ったロードサーキットでは攻撃力が優れていても砲撃の自由度が狭い三凸には不向きにして不利な状況だったが、なにより自分達に終焉の初撃を刺したのがMk.VICだった事が泣き所だった。

そんな小粒な戦車が、思わぬ戦法で自分達を討ち崩すとは思いもよらなかった。

足の速い軽戦車は、町どころか舗装されていない小さな辻までを我が物顔で走り、右から左からと、豆鉄砲を撃ってきたが、空き缶を蹴飛ばすように軽い音を聞き相手を見誤ってしまった。

ひたすらにコメットに挟まれる事を注視して、もう一つの敵であるMk.VICを軽んじた。

 これが慢心による敗北だった。

最初は装甲に当たる軽やかな音で弾かれる相手の攻撃を笑ったのもつかの間。

履帯の間と転輪部分に集弾されてあっという間に脱履、そのまま自重に引きずられ車輪は用水路の蓋をかち割り三凸は腹を見せていた。

その無様な様のトドメをコメットに撃ち抜かれ、四つ辻の中程に車体を回していた。

最初は何が起こったのか解らなかったが、ハッチから顔を出したカエサルの言葉は上のごとくであった。

落ちてくる花びらを手に拾って。

 

「……慢心のゴリアテ……気高き小兵ダビデに敗れる……」

「それだ……」

 

 納得の敗北、歴女チームは怠慢に奢った負けを互いに言い聞かせ、敗退の交信をⅣ号西住みほの元に届けた。

そしてその報告を聞くⅣ号は、同じく危機的状況にあるM3リーとの交信の真っ最中であり救出と合流に走っていた。

 

「いやいやいやいや!!! こないでー!!!」

 

 一年生チームはMk.VICと神奈川要を車長に頂くコメットの攻撃に追い回されていた。

ブロックという程きちんとした町割りではない中、懸命に砲塔を回し撃ち返しながらの逃走だったが、先に三凸がリタイアした事が猛烈なプレッシャーになり、あっちだこっちだと混乱状態の中を走り続けていた。

 

「隊長!! 隊長!! どうしたらいいですかー!!!」

「落ち着いて、もうすぐ合流するから」

 

 懸ける言葉にも丁寧さを持つ西住みほだったが、事態の急転を収集するのには優しすぎる声で、のっぴきならないデスレースに入っている一年生の悲鳴の合唱を止めるには至らなかった。

 そのうえで心配ごとは多かった。

何せ先に逃げた生徒会チーム38tを今現在自分達の所在を見失っている状態、戦力が分散しすぎてしまった今、Ⅳ号は単独で戦わなくてはならない位置にいた。

 

 

 

 

 

「美しいわ……やっぱり戦車道には花が似合う」

 

 規定数の砲弾の中に、わざわざ花びらを摘めた空砲を持ち、それを打ち上げられた事は山巌澪にとってこのうえない喜びだった。

黎明学園名物ともいえる「送りの花びら」自両の前でリタイアした者に対する同じ競技者としての敬意を込めた花の雨の中、キューポラから姿を現した山巌の姿は、開会式場の設置されている大型ビジョンレオポルトに映し出され、同学園子女達の黄色い声の賞賛を溢れんばかりに受けていた。

 

「うつくしゅうございますぅぅ、お嬢様ぁ。みえますか、操様」

「良くみえておる」

「操様のお若い頃にそっくりで……久々とはいえ涙が出ますぅう」

「本当に良い娘となった」

 

 画面に凛と映る澪の姿に、山巌重機令嬢付きのばあやは涙を流していた。

隣では折り目正しいスーツ姿の男性スタッフがカメラを手に、仕事を離れられない山巌重機会長にして澪の祖母である山巌操の元に中継を繋げている。

スタンド席には似たような形で、各所子女の姿を撮影するカメラが星座の星のように並んでいた。

学園艦で過ごす親元を離れた大事な娘達の姿を一瞬たりとも逃さぬように、スタッフとして送られた会社員達は忙しなく走り回り、時々名刺の交換をしている。

 なにより凄いのは黎明学園の生徒達の黄色い大歓声。

山巌部長にはそれぐらい、彼女の端麗な容姿と戦車道に走る姿にうっとりした目線を向ける女生徒がたくさんいた。

きっと今回もたくさんの写真の売り買いがされる程に。

 そんな事は露ほどにも知らない山巌の元に神奈川からの無線が入っていた。

 

「現在M3リーを接敵中です。蛇行して走っていますが十分に追い詰めています。そろそろそちらに顔を出すかもしれません、押してくださいますか」

「了解……すぐに向かいます。ただし私が撃ってしまってもよろしくて?」

「東小川2丁目より東上させないでください、そこではさみこみましょう。演算距離で撃手はお任せいたします。」

「よろしくてよ。追っかけているのはフロプシー? すぐに計算をしてちょうだい」

 

 悠々とした動きから機敏に回頭するコメット。

花びらを飾ったダークグリーンの駿馬は速度を上げて走って行く。

標的は大洗Ⅳ号に合流しようとしているM3リー。

 そして大洗一年生達は悲鳴の嵐の中で四苦八苦していた。

一も二もなく西住隊長の所に戻りたいと考えているのに、行く先を小粒の戦車に抑えられ、ついには町工場の駐車場の中を突っ切る形になっていた。

畑道に繋がる、小さな町工場は道路より一段下がった通りに位置する。そこから裏道に繋が所まで工場の横を摺り子木の傷を違いに付け合いながら走る

 

「香里奈ちゃん!!! がんばって!! がんばって!!」

 

 小柄な坂口佳利奈が馬乗りになってまたいだ操縦桿。

黄色いながらも、意味や言葉を介さなくなった奇声と砂煙を上げて密集している工場の小道を走っていく。

戦車に押されて垣根は倒され、履帯にブロック塀が削られる音が濁音の連打で鳴り響く。

 

「いいのかな? いいのかな? 家とか壊しちゃって……」

「もう!! いいいよー、じゃないとー、もうこわいー!! 撃つ、もう撃つぅぅぅ!!」

 

 必死に通信をしながらも、迫る豆タンクに怯える宇津木優希は37㎜砲にかじりついて叫ぶ大野あやの腰にしがみついていた。

ペリスコープから見え隠れする敵は小さいのに絶え間なく攻撃してくる。

小型の砲塔は弾切れを知らないのかという勢い、背面を追い立てられる側の二人は砲塔を回して打ち返して見るものの、的が小さいうえに俊敏な移動に対応できていなかった。

 

「うわぁぁぁぁん当たらないよぉー」

「おちつけー!! 向こうのは当たってもいたくないからー!!」

 

 互いが走っているし、Mk.VICの弾は軽い。

当たっても痛くはないが、打撃の音が響き続ける事に一年生達の心は参っていた。

そして思いも寄らぬ一撃に白旗を揚げることになる。

 

 

「正面向かい右44°、的行進速度30キロ、会敵予想は8秒」

「了解、修正6秒、装填良し!!」

「てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 大きく手を奮った山巌部長のコメットからの砲撃は、工場の柵を影に道以外を猛進していたM3リー対して隣り合う家を挟んだまま発射されていた。

 進んでくるM3リーに対してコメットは対向車線側で腰を据えて待ち構え、リーに発射される弾道計算+速度は追いかけていたMk.VICの乗員との情報交換でばっちり計算されていた。

完全な計算に基づいた目隠し撃ちは、見事に75㎜主砲の根本ペリスコープの間に亀裂をいれる大鉈を振るっていた。

激突の衝撃で主砲は根っこから折れ、鉄扉のカバーごと吹っ飛ぶという派手な映像に観客は唸ったが、なにより凄かったのは角度を取って目方撃ちをしたのが民家を水平に置いた事。

何事もなかったかのように、間に入った家を三軒ほど吹き飛ばした事だった。

斜め向こう、最初の家は全壊、次の並ぶ家をそれぞれ半壊にさせる弾道跡は、開会式場のモニターにはっきりと映されており、度肝を抜く攻撃に歓声と新築の栄誉に預かった家族の喜びの声が立ち上っていた。

竜巻の後がごとく、疾風で切り開かれた砲弾の道、その果てで一年生チームの大半は目を回し、そのまま工場の街灯に激突して白旗を揚げていた。

 

 撃墜の花を降らし、手を挙げる神奈川。

後ろを追いかけていたコードネームフロプシー事Mk.VICの少女達は手を打ち合い、声をあげていた。

 

「良き妻、経営者となる私達に家計簿のミスはなくってよ!!」

 

 質実剛健、令嬢達の心得は無駄なき家計。

強い事で有名な算術の道はここでしっかりと証明されていた。

 

 

 

 

 

「わーん、全然見えない所から撃たれましたぁ」

 

 半べその通信が入った大洗Ⅳ号は少しの沈黙をしていた。

主力だった三凸を失ったのも痛かったが、十分を待たずにM3がリタイアしたのには驚くばかりだった。

これで大洗女子に残った車両は脱兎の逃走から行方不明の生徒会チーム38tと、偵察に出た時にごり押しの積み木崩しを敢行し履帯を壊して修理中のバレーボール部チームが乗機する八九式。

どちらも攻撃力は期待できない車両だ。

芳しくない自分達の側を思い、武部沙織は仲間の脱落に眉を下げていた。

 

「強いよ……全然弱くないじゃん。弱いから景気付けにやろうって話じゃなかったぁ?」

「弱くないですよ。向こうはチームワークが良いんですよ。お互いの立ち位置を良く知っているし、そこから何処を結べば一番簡単に相手を撃てるのかを知り尽くしてます……やっぱり、経験がものを言ってますよ」

 

 への字口の抗議する武部に秋山は率直な感想を返した。

チームワーク、異種の戦車を入れてこれだけ走っていても即座に足並みをそろえられるのは、50戦の実績がなせる技。

負けても負けても、試合を続けてきたこのチームの持つ洞察力と、市街地マップを測る瞬発計算型戦術には正直敬服せざる得なかった。

そしてこの形こそが大洗が必要としている戦い方の一端でもあるのでは唸っていた。

完全に詰められている状態に秋山優香里も理屈がわかっても手出しのしようが追いつかないのに唇を噛んで顔をしかめていた。

 

「うん、黎明学園さんは強いです……でもまだ私達は負けてないです」

 

 秋山の言葉に項垂れていた武部に対して砲手として座っていた五十鈴華は気持ちを切り替えていた。

おっとりした顔立ちと長い髪、物静かで丁寧な言葉には覇気があった。

自然に咲き誇る花を、あえて人の手によって高御の美に彩る道にいた五十鈴は相手の強さを認めつつも挑む事の価値を良く知っていた。

優しげな目が笑みを浮かべ、同じく秋山優香里も挑む者としての喜びで拳を握った。

沈む友達に何も言えずにいた西住みほも顔を上げる。

 

「そうだよ、まだ負けてない」

「向こうの台詞じゃないですけど、ドーンと胸借りて行きましょう!!」

「そうだね、私達の方が挑戦者なんだし!! 怖いから告白しないなんて卑怯者にはなりたくない、一生懸命をぶつけてガツンと告って華々しく……」

「散ったらダメだろ」

 

 Ⅳ号に乗る仲間達の前向きな心が、無機質な鉄の籠である戦車の中を軽やかな声で彩る。

 

「私達も引かない、頑張ろう!!」

 

 思い上がっていた。

50戦50敗もした学校なら簡単に勝てるに違いないという甘い考えで試合に臨んだ事を、大洗Ⅳ号のメンバー認めた。

互いの顔を見て、落ち込む心を叩くように手を重ねて。

自分達の方が挑戦者である事を思い出して声を挙げた。

 

「頑張ろう。ここから先簡単には抜かせないと思い知らせましょう!!」

 

 

 

 

 大洗Ⅳ号が、市街地でコメット二両と軽戦車の包囲網をかいくぐり反撃の攻撃を開始し始めた頃、黎明Ⅳ号はゆっくりと水の中を進んでいた。

 

「……から……へ、途中のサークル……曲がった……目印はピンクの……」

「オッケー、オッケー……予定どおり、しまむらの駐車場だな」

「その前に……こちらが撃つかも……」

「それはダメさ、最後はⅣ号で決めるんだ。一両一回は見せ場を作るのが鉄則だぜーい!!」

 

 潜望鏡から外を見ながらマップを読んでいる小原の後ろで、赤橋は自分が踏むアクセルの感覚に戦いていた。

アクセルが重いというのもあるのだが、履帯の振動が水中にいる事で微妙なクッションのように響き渡るのが怖い。

耳に入った水のせいで世界に流れるシビアな音に、大きなゴミ袋を被したような鈍い反射が波状しまくる。

水が車体にぶつかって、そのうち中に入り込むのではという思いに心が押しつぶされそうだった。

 

「こうなるってわかっていても怖いわ……」

「なんで潜っちゃうのよ……怖い、上から行けばいいのにぃぃぃ」

 

 しごく当然のご意見に、非常灯で赤色の影を作った小原の笑みが言い返した。

 

「何言ってるんだよ。各々が乗った戦車のかっこいいところを見せる。これがうちの戦車道なんだよ。用途に従ったかっこのいい競い方を見せずに、ただ相手に向かってこなくそーって突っ込むだけだったら競技的にいっても美しくもない」

「……乙女の口から美しいとか出るとは驚きだわ……」

「かっこいい所って大事なの……なんか色々変な指示が書いてあったけど」

 

 振動怖さに赤橋の背中に寄り添い、引っ詰めた髪を帽子に入れて両手で押さえた黄瀬は不思議そうに聞いた。

黎明学園の作戦は最初から大雑把で、なのに経験の成せる業なのかタイミングは合うという奇蹟を続けてきている。

そんな中、何個か意味不明な指示があった事を思い出していた。

送りの花を撃つために、定数砲弾を5発も減らし、打ち勝った時や作戦行動では中継されるカメラに向かって良い形で戦車を座らせるなどという変な項目がたくさんあった。

およそ真剣な試合には関係なさそうな指示項目。

可笑しくない? と怖いながらも首を傾げた黄瀬に小原は同じように首を傾げて。

 

「大事だよー、私達は戦車の美しさに惹かれて戦車道をやってきた。勝ち負けも大事だけど試合を見に来てくれる人達の前で戦車が美しく写る事も大事なんだ」

「撃ち合いなのに?」

「撃つって言ったって競技だし、やぱり芸術点高く競いたいじゃん」

「それてって大事なの?」

「料理道だってそうだろ、ただ食べられれば良いってもじゃないだろ。スイートだって綺麗にデコレートするからうまみが増すってヤツ……それと一緒さ」

「それは一理あるなー」

 

 赤橋は確かにそうだと頷いた。

自分達の志した道に照らし合わせれば確かに必要な事なのかもしれないという漠然とした思い。

飾られたケーキの角度にこだわる事は、戦車の写り映えを気にする事は似ていると少し吹いた。

 そんな愉快な理解を見せた赤橋の背に、下奉千代は小さく笑っていた。

 

「まあまあ、Ⅳ号潜水戦車で水をくぐって最後の詰めを戦うってのは前から夢だったんだよね。前回はプラウダとの交流戦でやりたかったんだけど……湖畔で仕度してるうちに文字通り書記長に沈められちゃってさー。サンダースの時はファイヤフライに打ち負かされたし。今回は市街地に用水路が多かったから是非に成功させたいんだよね」

「おーう!! そうだぜー」

 

 長年の夢だった潜水戦車の隠密活動兼渡河シーン。

二人は顔を合わせて喜ぶが、それが解っていても赤橋達は気が気でない。

水の流れに揺さぶられて碧野のすでに船酔いの様相だ。

そのしかめっ面の梅干し口を小原は吹き出しそうになりながら、涙声で頼んだ。

 

「一回外の空気プリーズ……」

「良し良し、調度最後の仕込みがあるから上がってやる。そしたら後は詰めだからたのむぜー」

 

 黎明Ⅳ号は着々とコメット達が得物を追い詰める最後のステージに近づいていた。

 

 

 

 

 

「その角を右に!!」

 

 西住みほの声に冷泉麻子は惚けた口調とは相反するキレのあるカーブを決めていた。

その後ろを追随する砲弾。

一歩前を撃ち。逃げ込む側をもう一両のコメットが塞ぐように吠える。

市街戦の利点は早さを相殺できる事にもある。いくら足の速いコメットとはいえⅣ号が角から角へと蛇行の道を取れば、後ろを詰める車両は同じように速度を落として角を回らざる得ない、付きつ離れつでの定まらない距離で砲撃を続けても当てられる確立は少ない。

だがしかし、コメットが一両ではない事が大問題だった。

 

「停車!!! 着弾後切り返して左!!」

 

 常にキューポラに姿を見せる西住みほは、後ろのコメットの砲弾が飛ぶタイミングと、曲がるタイミングで家を挟んで反対にいるコメットの攻撃を測っていた。

そうでもしないと相手は完全な計算で家ごと間を縫って砲撃してくる。

今のところは中空打撃で目方撃ちをしてくれているが、もし水平に構えられたらデットエンドは限りなく近く、フィニッシュのテープは砲弾の鉄槌によって切られる事に成りかねない。

 

「ここから……なんとか海岸線に向かって逃げられれば……八九式と合流できるのに……」

「わっわっわっ」

 

 親指を噛んで外を見ていた西住の体が急に下に引かれる。

軽い音ともに、小波のような掃射。

それに気が付いた秋山に引っ張られて中に降りる。

 自分達を追い詰めるのは何もコメット二両だけではないMk.VICもまた細かく道を走って間を詰めている事に、眉をしかめるが止まって考えている暇はない。

 

「武部さん、生徒会チームと連絡とれましたか?」

「うん、なんかとにかくこっちに向かってはいるらしいよ。えーと県道416から……岡本石井病院ってところの前を……」

「前に来てるんですね、だったらここを左に!!」

 

 味方を近づけて相手の二両を分断してバラす。

同じ条件、同じ土俵を作る事が大切。

 西住の咄嗟の指示にも冷泉は顔色一つ変えずに舵を切っていた。

斬り込んだ左の路地は狭い、車体を灯籠にぶつけるギリギリをすり切りで入って行く。

左口神社、今は簡素な形になっているが主神を猿田彦命にもつ由緒正しい社。

緑青を浮かび上がらせる竹居筒の鳥居をと主殿を組み合わせた小さな社だが、マップ完全に頭に入れている黎明学園側も、さすがに神様の家を射界にいれて吹き飛ばすなんて事は出来ないはず。

そこで合流するしかない。

二両になれば互いにはさみ合い乱打戦になるかもしれないが、チャンスは広がる……

 

「もらいましたわ!!」

「……前にっ」

 

 顔を出していた西住の声が固まる。

県道416からは無い道を自ら踏み倒して突撃してきたコメットは、神社の小道に向かって射界を張っていた。

大洗Ⅳ号が背中に社を背負う形を作られている、その前をコメットが構えている。

それだけではなく後ろにも迫る音が聞こえる。

 

「……」

 

 Ⅳ号が避けたら神社は木っ端微塵という問題もあるが、避けたとしても後ろのコメットが腰を据えて構えていたら逃げられない。

瞬時の指示は秋山の肩を叩いていた。

装填……砲撃……

世界が薄い青の緊張を纏った時、黄色の悲鳴はⅣ号を狙った砲塔に激突していた。

 

「とぉっちゃぁぁあああぁあああぁあ」

 

 生徒会チームの38t。

Ⅳ号に向かって水平に砲塔を晒していたコメットに38tはものの見事にはまり込むようにぶつかっていた。

周りにある木製の電柱をひっぱり、ブロック塀を横に滑らして。

ぶつかり、構えていたコメットの砲塔を根本から左にそらした形の中で、金属同士が石臼のように削り合う激しい研磨音を響かせて38tは砲塔を回し、河島桃は絶叫の雄叫びを上げていた。

 

「ぬぉぉぉぉ!!! あたれぇぇぇぇ!!」

 

 そして回りきらなかった38tの砲塔は見事に弾を外していた。

ぶつかっているのだから当然射角は取れないのだが、桃の狂乱の合いの手は決まっていた。

 

「桃ちゃん……ここで外す?」

「やかましいぞー!! もう一発ぅぅぅ!!!」

 

 砲塔内に響く絶叫に反して今度は討つ事もできなかったが。

 いきなり横から砲塔を曲げる勢いで当たってきた38tの姿に、キューポラから顔を出した神奈川要は顔を青くしていた。

自分から向かって右手から来た車両は、ブレーキなんぞお構いなしのノンストップ隕石のごとくでぶつかってきた。

これは最初から砲塔を曲げようとしての全力いなのか? それとも滑り込んだギリギリで撃ち込もうとしていたのか?

考えようもなかったが、予想外の攻撃が見せたダメージは大きかった。

コメットのキューポラの下では砲手が砲塔回頭部分の破損の報告を叫んでいる。

これを直そうにも食い込んだ38tをどかせる術がない。

 

「なんて事するのよ!! くぅぅぅ」

 

 そしてこの二台がのぶつかった瞬間をⅣ号西住は見逃さなかった。

38tは横からコメットの砲塔に激突し、砲塔と地面の間に車体を詰めてしまっている。

これを救出する術も時間もない。

 

「切り返し、38tを避けて左へ!!」

 

 ぶつかった衝撃で少しだけ右にずれたコメット、それを撃つため回頭している38t。

動かない砲塔の下で砲塔を動かして抵抗する二両の間を、ほんの少しの隙間、それを縫ってⅣ号をナイフのように斬り込ませた。

履帯がこすれ合う金切り音。

火花の散る中をⅣ号は駆け抜けた。

 

「砲塔回転!! 撃って!!」

 

 このタイミングは経験があった。

秋山が間違うハズもなく、構えた五十鈴が外さない形。

前回の聖グロリアーナでも見せた切り返しからの撃ち込みは見事にコメット砲塔の側面を抉っていた。

キューポラから乗り出していた神奈川が衝撃で体を振り落とされる。

落ちたところで猛気立ち上がる砂の下から見たのは、自両コメット敗退の白旗だった。

 

「あああ……」

「神奈川さん!! 下がって!! 大洗の38tもそのままにしていなさい!!」

 

 山巌部長の声は、白旗に項垂れた神奈川を慰めるものではなかった。

ここまでⅣ号を詰めて置いて最後の一区画で取り逃がす訳にはいかない。

すでに軽戦車Mk.CIV事コードネームフロプシーは先の通りで構え、Ⅳ号を追い立てている、この先の開けた場所である東小川4丁目にあるしまむらの駐車場が最後の決戦地。

逃がすわけにはいかない。

むろんその事を神奈川要も理解していた。手を振って自両コメットから顔を出していた仲間に叫んだ。

 

「閉めて!!! 部長!! 行って下さい!!」

 

 声に呼応するように猛然と追いかけ始めた山巌コメット、そしてその驚くべき行動に河島桃は失神していた。

黎明学園山巌部長搭乗のコメットは真っ直ぐ辻の真ん中でかち合わせになった二両を踏みつぶしていた。

 

 正確には、コメットの砲塔を押した形で停車している38tのキューポラから後ろの部分に迷うことなく上っていた。

Ⅳ号にはギリギリ通れた道をコメットでは通る事が出来ない。

だがそこは戦車だ、乗り上げて踏み越して行く事だって出来る。

38tがコメットにぶつかった時、その時に引っ張ってきた電柱やブロックが調度登坂できる形に崩れていたのを足台にして。

履帯は登坂する大きな音をあげて、38tの車体の後ろ半分を踏み越え用具箱とマフラー諸々を削岩の破砕音をあげて踏みつぶしていく。

会長の角谷と小山に引っ張られ、キューポラの下に伏せた河島桃は白目を剥いた状態でうわごとを警笛のように鳴らしていた。

 

「だめぇぇぇぇ……もうダメぇぇぇ」

「しっかりして桃ちゃん」

「すげー事するなー」

 

 難関を越える戦車の姿に開会式場は騒然としつつも、近場で車体を踏まれ履帯との隙間を無くしてしまった38tをジャッジした審判の姿に唸っていた。

 

「すごいのみせてもらったわ……」

「初めて見た」

 

 戦車が見せる登坂力という魅力を余すことなく見せたコメットは最後の詰めに向かって走って行く。

耳元には大詰めの駐車場にⅣ号を押し込めた後、返り討ちにされたフロプシーの報告が届いていた。

 

「いいですわ、最後ですからね。差し合いましょう!!」

 

 416号への道をふさがれたⅣ号もまた、路地から出てきたコメットとの勝負を覚悟していた。

決戦の場、しまむらの駐車場に二両の戦車は向かい合っていた。

 




早く終わって何も考えずにガルパンを見たいです。
サントラ予約しました。
つぎはおわりだからきっと短くなると思うのです。重ねて終われなくてごめんなさい。
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