「そういうことね。 分かったわ」
現在、足を負傷したイッセーは姫島先輩と、自身で踏ん切りを付けた様子のアーシアに治療されている。 その間、俺は状況を説明していた。
「はぐれ悪魔祓いを倒すなんて凄いね」
「……それも一撃」
木場はいつものイケメンスマイルで感心したように、小猫ちゃんはフリードの倒れている場所を見て何か考えながら呟くように言う。
「油断してたからな」
「でもカンナ。 『はぐれ
少し険しい表情のリアス部長は怒っていた。
普通の魔術師としか教えていないのだからそう思われても仕方ない。
教えてない俺が悪いのだから素直に謝ることにした。
「すいませんでした」
「……熱くなりすぎたわ。 その事は魔術師であるカンナがよく解ってるものね。 だから、次からは私たちを頼りなさい。 カンナもオカルト研究部の一員で私のかわいい後輩なんだから」
「はい、ありがとうございます」
表情を和らげてリアス部長はそう言ってくれた。
リアス部長めっちゃいいヒト! 悪魔だけど!
この世界で生まれてたら俺このヒトの下僕になってたよ!
「さて」
リアス部長は視線をフリードが倒れている方へ向ける。 その顔は、以前討伐したはぐれ悪魔バイサーを消滅させた時に見せた表情以上に冷えきっている。
「よくも私のかわいい下僕をかわいがってくれたわね? 私は自分の所有物を傷つける輩は絶対に許さないことにしているの。 気絶してようが容赦しないわ」
右手にバイサーを消し去ったドス黒い魔力が集束する。
アーメン、フリード。 君のことは少しの間だけ忘れないよ。 来世は一方さんとして頑張ってね?
俺が心の中で不在の神に十字を切っている間に、集束が完了し、今まさに放とうとした時。
「! 部長、この家に堕天使らしき者たちが複数近づいてますわ。 このままでは、こちらが不利になります」
姫島先輩が若干焦った様子で声を上げる。
数は三つ。 一つはレイナーレ、もう一つがイッセーが悪魔になってから襲われたという堕天使カラワーナだろう。 最後の一つは知らない。
レイナーレは直接戦った感覚で言えば実力は中級堕天使、ほかの二人は前に斃したドーナシークと大差無いぐらいに感じるので下級堕天使。
正直このメンバーなら焦る必要もないし、数的にも此方が有利ではないか? それとも俺の感知機能がまた失敗してるのか?
分からんからここは黙って置こう。
リアス部長はフリードをひと睨みし、右手に集まった魔力を霧散させた。
「……カンナは転移魔術使える?」
「ええ、移動用と緊急用がありますよ」
「朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地へ帰還するわ。 ジャンプの用意を。 カンナも転移の用意を」
「はい」
「……了解です」
姫島先輩が呪文を唱え始める。 そこに声を上げたのはイッセー。
「部長! あの子も一緒に!」
「無理よ。 この魔方陣は私の眷属しかジャンプできないわ」
「そ、そんな……。 ! じゃあ鳴上は!」
すると、イッセーは術式を書いていた俺を縋るような目で見てきた。
こっちに来たか。 いや予想はしてたよ。 でもねイッセー、俺の転移はかなりリスキーなんだ。 だって失敗したら常人は即死コースまっしぐら。 それだったら走って逃げた方がまだ生存できる可能性がある。
それを言うわけにもいかず、首を横に振った。
「悪りぃ、できない」
嘘をついた。
我ながら最低だな。
後で怒られても仕方ない。
「アーシア!」
姫島先輩の詠唱が終わり、俺の術式も完成した。
「イッセーさん。 また……、また会いましょう」
床の魔方陣が青く光り、術式が辺りを赤く照らす、次の瞬間。 オカ研メンバーは転移した。
「……あれ? カンナさんはどうして残ってるんですか?」
「俺、一度も
頼れって言われた直後にコレだもん。リアス部長たぶん怒るだろうな。 ……待てよ、速攻で終わらせればバレないんじゃ。 ほらよく言うだろ? バレなきゃ犯罪じゃないって。
「そ、そんなこと言わずに転移を! 早くしないとレイナーレ様たちが」
「来ないよ」
焦りと戸惑いを隠せずあたふたするアーシアを落ち着かせるように言う。
「え?」
「だって今頃、俺が作った
「そんなものいつ……あっ! 先ほど書いていた術式!」
「そ。 アレ、俺を転移する術式じゃなくて、術式外部から内部に入ろうとする者を俺が作った異空間に転移させる術式なんだ。 今回は前に遊び心で作った迷宮に飛ばした」
失敗はしてないと思う。 別にあいつらが死んで困るようなこと俺にはないけど、この土地の管理者であるリアス部長が困るかも知れない。 だから殺さず遠くに行ってもらった。
にしても、まさか
ちなみに、迷宮の方はゴールにたどり着くか一時間経つと出られる仕組みだ。 安全策が無いと俺が出られなくなる可能性があるからだ。
「それじゃあアーシア」
「はい、何でしょうか?」
「あの人蘇らすから手伝ってくれ」
何でもないように言って俺が指差したのは絶命しているこの家の主人だ。
「………えっ、ええぇぇぇぇ〜〜〜!?」
この日何度目かの絶叫が家に響き渡るのであった。
ようやく一巻の終わりが見えてきました。
長かった。 本当に長かった。
お付き合い頂いた方感謝いたします。
感想やアンケートお待ちしてます!