星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
王と仲間たちの転生と、覚醒する魂の残響
見慣れた新宿の路地裏が、水飴のように歪んで溶け落ちた 。
ノクティス「……は? なんだこれ 」
プロンプト「ちょ、ノクト! 周りの景色、おかしくない!? 」
高校の帰り道、ノクティスとプロンプトが足を止めたときには、すでに手遅れだった 。コンクリートの壁は赤黒い臓肉のような質感に変わり、空にはひび割れた紫色の月が浮かんでいる 。生得領域――呪霊の心象風景が現実を侵食した空間だ 。もちろん、平凡な高校生である彼らにそんな知識はない 。ただ、本能が警鐘を鳴らしていた 。
グラディオラス「ノクト! プロンプト! 無事か! 」
背後から飛び込んできたのは、近所で兄貴分として慕っているグラディオラスと、彼と共にカフェを営むイグニスだった 。二人は偶然近くを通りかかり、ノクティスたちが不気味な空間に呑み込まれるのを見て、迷わず飛び込んできたのだ 。
ノクティス「グラディオ! イグニスまで……! 」
イグニス「何事かと追ってくれば、とんでもない厄介事に巻き込まれたようだな 」
イグニスが鋭い視線を巡らせたその時、空間の奥から『それ』が現れた 。
無数の人間の腕を寄せ集めたような巨体 。顔にあたる部分にはぽっかりと暗い穴が空き、そこから耳障りな笑い声が漏れ出ている 。特級に分類される未登録の呪霊 。その圧倒的な負のエネルギーを前に、四人は息を呑んだ 。
ノクティス「……逃げるぞ。こいつはヤバすぎる 」
ノクティスは即座に判断した 。脳裏に、学校で別れたばかりの彼女、ルナフレーナの笑顔がよぎる 。こんな所で死ぬわけにはいかない 。だが、呪霊の動きは彼らの思考よりも早かった 。巨大な腕が鞭のようにしなり、四人をまとめて薙ぎ払おうと迫る 。
(死ぬ――!)
強烈な死の恐怖が四人を包み込んだ瞬間 。
彼らの魂の奥底、決して手の届かない深淵で、何かがパチンとはじけた 。
『王よ』『友よ』『兄弟よ』
言葉にならない記憶の残響が、彼らの呪力を爆発的に引き上げる 。
ノクティス「ッ……来い!! 」
ノクティスが虚空に向かって手を伸ばすと、青白い光の粒子が収束し、重厚な片手剣が顕現した 。
同時に、グラディオラスの両手には身の丈ほどの巨大な大剣が、イグニスの手には鋭い短剣が握られ、プロンプトの手には無骨な銃火器が握られていた 。
プロンプト「なんだよこれ……でも、いける気がする! 」
プロンプトが引き金を引く。放たれた呪力の弾丸が呪霊の腕を弾き飛ばした。
その瞬間、プロンプトの身体に奇妙な熱が走る。
プロンプト「……え? なにこれ、力があふれて……」
敵の一部を完全に破壊し『討伐』した瞬間、確かな「力」が己の中に流れ込んでくる感覚。彼らの術式には、呪霊を倒すことで自らの呪力総量や身体能力が向上するという、まるでRPGの「レベルアップ」のような特性があった。理屈は分からない。だが、全員がその事実を『感覚』として直感的に理解していた。
最初は、ただ顕現した基礎的な武器を振り回すことしかできない 。イグニスが手にした短剣からごく初歩的な「炎(ファイア)」が漏れ出し、ノクティスはただ愚直に剣を投げてそこへ瞬間移動(シフト)するだけだ 。
だが、戦いの中で奇妙な現象が起き始める 。
グラディオラス「ノクト、そこだ! 」
グラディオラスが大剣で呪霊の体勢を崩した瞬間、ノクティスの体が勝手に動いた 。
ノクティス「(なんで……俺、グラディオが次にどう動くか分かるんだ……!?) 」
イグニス「プロンプト、後方を頼む! 」
プロンプト「了解っと! (って、なんで俺、イグニスの意図が読めたの!?) 」
視線すら交わしていない 。事前の打ち合わせなど一切ない 。それなのに、誰かが隙を作れば誰かが死角を補い、呼吸を合わせるように流れるような追撃が繋がっていく 。
前世の記憶などない 。術式の使い方も知らない 。なぜこんなにも連携が取れるのか、彼ら自身にもまったく分からない 。だが、魂の奥底に刻み込まれた「感覚」だけが、無意識の完璧な連携(リンクストライク)を引き出させ、特級呪霊を相手に互角の立ち回りを演じさせていた 。
しかし、特級の壁は厚かった 。
呪霊が咆哮を上げると、周囲の空間が圧縮され、目に見えない重圧が四人を叩き伏せた 。
プロンプト「ぐぁっ……! 」
イグニス「ここまで、か…… 」
膝をつき、レベルアップの恩恵をもってしても抗えない圧倒的な力 。巨大な腕が、今度こそ四人を押し潰そうと振り下ろされた 。
アーデン「やれやれ。若い芽を摘むのは、あまり感心しないな 」
ひらり 。
芝居がかった軽薄な声と共に、赤紫色の髪に黒いコートを羽織った男が空から舞い降りた 。
呪術高専教師、アーデン 。特級呪術師である五条悟と双璧をなすとも噂される、正体不明の男 。アーデンが指を鳴らすと、彼の周囲に無数の赫い武器の幻影が展開された 。
アーデン「ほら、おいで 」
呪霊が怒り狂いアーデンに襲い掛かる 。だが、アーデンの動きは踊るように軽やかで、それでいて老獪だった 。呪霊の攻撃を紙一重で躱し、無駄のない動きで的確に急所を削り取っていく 。圧倒的な戦闘経験の差 。特級呪霊の巨体が、アーデンの展開した無数の刃によって文字通り「解体」され、黒い塵となって消滅した 。
領域が崩壊し、見慣れた新宿の路地裏が戻ってくる 。
ノクティス「……助かった、のか? 」
息も絶え絶えなノクティスたちを振り返り、アーデンは胡散臭い笑みを浮かべた 。
アーデン「やあ、少年たち。素晴らしい力だねぇ。どう? 僕の教え子にならない? 『呪術高専』って言うんだけど 」
怪しすぎる勧誘 。だが、アーデンの帽子の下にある瞳は、決して笑っていなかった 。
(……まったく、運命というのは皮肉なものだ) アーデンは現在、最悪の呪詛師である羂索と接触し、その壮大な企みに乗るふりをしている 。彼自身、世界がどうなろうと知ったことではないと思っていた 。だが、羂索の計画を知った時、魂の奥底で警鐘が鳴ったのだ 。『これは防がねばならない』と 。
そして今日、この少年たちを見た瞬間、確信した 。彼らを死なせてはならない 。羂索の盤面から彼らを遠ざけ、自らの手で保護し、導く 。それが、二重スパイとして暗躍する自分の、真の役割なのだと 。
アーデン「悪い話じゃないと思うけど? 君たち、もっと強くなれるよ 」
ノクティス「……胡散臭ぇおっさんだな。けど、あんたがいなきゃ俺たちは死んでた。少しだけ話を聞かせろよ 」
ノクティスが警戒しつつも立ち上がると、仲間たちもそれに倣った 。
夜空には、いつの間にか澄んだ星々が瞬いていた 。
現代の東京に転生し、前世の記憶を失った彼ら 。しかし、彼らが振るった剣の重み、なぜか完璧に成立してしまう背中を預け合う無意識の信頼、そして胡散臭い男が胸に秘めた切実な使命感は、間違いなく彼らの魂に刻まれたものだった 。
かつて、果てしない旅の末に星の病を祓い、世界に夜明けをもたらした、真の王とその仲間たち 。彼らの新たな戦いが、この呪われた世界で今、静かに幕を開けた 。
設定がばがばなので何かおかしな点あれば随時教えてほしいです。
ノクトたちの術式の名前思いつかん…