星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

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特級術師の洗礼と、見えざる脅威の影

午後、高専の広大な演習場。

夏油傑と向かい合う形で、ノクティスとプロンプトが構えを取っていた。一年ズの他メンバーと大人組、そして五条とアーデンは演習場の端で見学している。

 

夏油「さて、ノクティス君、プロンプト君。私の術式『呪霊操術』は知っているね? 私が取り込んだ呪霊を自在に操る力だ。今回は手加減して二級以下の呪霊しか出さない。君たちの武器生成と連携、存分に見せてくれ」

 

ノクティス「……手加減、ね。あんま舐めんなよ!」

 

ノクティスが虚空に手を伸ばすと、青白い光と共に重厚な片手剣が顕現する。プロンプトも同時に銃火器を構え、銃口を夏油へ向けた。

 

夏油「では、始めようか」

 

夏油が指を軽く振るうと、彼の足元の影から二体の異形の呪霊が這い出し、猛スピードでノクティスたちへと襲い掛かった。

 

プロンプト「うおっ、速い! ノクト!」

 

ノクティス「任せろ!」

 

ノクティスは剣を前方に投擲する。剣が呪霊の顔面に突き刺さる直前、ノクティスの体が青い光となって剣の位置へと瞬間移動(シフト)した。

 

夏油「……ほう。武器の生成だけでなく、空間跳躍まで。呪力の消費を極限まで抑えた見事な立ち回りだ」

 

シフトブレイクの勢いそのままに、ノクティスは剣を振り抜き一体の呪霊を両断する。

しかし、もう一体の呪霊がノクティスの死角から鋭い爪を振り下ろそうとした。

 

プロンプト「させないっての!」

 

タァンッ!と乾いた銃声が響き、プロンプトの放った呪力を帯びた弾丸が、呪霊の腕を正確に弾き飛ばす。

 

ノクティス「プロンプト、アレ使うぞ!」

 

ノクティスが剣を消散させ、両手に呪力を極限まで圧縮し始める。熱を帯びた呪力がひとつの赤い球体――『炎の結晶石(マジックボトル)』へと変わる。

 

夏油「あれは……呪力を直接物理現象に変換しているのか?」

 

ノクティスが結晶石を夏油の頭上へと放り投げる。プロンプトがすかさず照準を合わせ、引き金を引いた。

 

プロンプト「いっけええええ!!」

 

銃弾が結晶石を撃ち抜き、大爆発を引き起こす。灼熱の炎が夏油と残りの呪霊を包み込んだ。

轟音と共に土煙が舞い上がり、プロンプトがガッツポーズを取る。

 

プロンプト「やったか!?」

 

「素晴らしい威力だね。広範囲の制圧にはもってこいだ」

 

煙が晴れた先には、巨大なペリカンのような呪霊の翼で爆炎を完全に防御し、無傷で微笑む夏油傑の姿があった。

 

ノクティス「……マジかよ。今の一撃、相当呪力持っていかれたのに、傷一つねぇのか」

 

夏油「驚いたよ。あの魔法石の精製は、君の『底なしの呪力』があってこそ為せる技だ。普通の術師ならあれ一発で呪力切れを起こす。それに、二人の連携も事前の打ち合わせなしとは思えないほど完璧だった」

 

夏油は呪霊を影へと戻し、満足げに手を叩いた。

 

夏油「合格だ。君たちの力は、これからさらに進化していく『伸び代』に満ちている。これなら、例の『未知の毒』を相手にしても十分に戦い抜けるだろう」

 

ノクティスは荒い息を吐きながら膝に手をつき、プロンプトも地面にへたり込んだ。

 

ノクティス「……特級ってのは、ほんとバケモノだな。グラディオやイグニスでも、あそこまで涼しい顔はしねぇぞ」

 

見学席では、五条がニヤニヤと笑いながらアーデンに肘で小突いていた。

 

五条「ね、僕の言った通りでしょ? 今年の新入生は豊作だよ。彼らが育てば、上層部のジジイ共も文句言えなくなるね」

 

アーデン「そうだねぇ。彼らの成長速度は僕の想定以上だよ」

 

アーデンは口元では笑いながらも、その眼の奥は冷たく計算高かった。

(彼らのレベルアップの力……黒幕さんが仕込んでいる『未知の毒』をもつ呪霊を討伐させ続ければ、いずれ特級クラスにまで跳ね上がる。羂索の計画を内側から崩壊させるための、最高のジョーカーになるね)

 

演習が終わり、夕暮れ時。

ノクティスたちが寮へと戻る中、アーデンは一人、高専の結界の外れにある人気のない森へと足を運んでいた。

スマートフォンの非通知着信が鳴る。相手は、額に縫い目を持つ男だった。

 

謎の男『……夏油傑が帰還したようだね。彼が地方の仕込みに気づき始めた』

 

アーデン「やあ、君も耳が早いねぇ。夏油君、すっかり警戒モードに入っちゃってるよ? 君の計画、最初から綻びが出てるんじゃないのかい?」

 

アーデンはわざとらしくため息をついて見せる。

 

謎の男『想定内さ。むしろ、高専側に危機感を持たせた方が都合がいい。……アーデン、君には次のステップに進んでもらおう。例の異物たちを、さらに強力に進化させた個体を都内に放つ。君の教え子たちが、アレにどこまで食らいつけるか……データを取ってきてくれ』

 

アーデン「やれやれ、本当に人使いが荒い。僕だって暇じゃないんだけどね。……まあいいさ、君の期待に応えられるよう、上手く誘導してあげるよ」

 

通話を切ったアーデンの顔から、胡散臭い笑みが消え失せる。

冷たい月明かりの下、二重スパイである特級術師は、王子たちを守り抜きつつ盤面をひっくり返すための、次なる一手を静かに練り始めていた。

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