星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
一年ズと大人組が真剣な面持ちで作戦会議をし、木刀や呪具を手にしてフォーメーションの確認を始めた姿を、少し離れた校舎の四階の窓から見下ろしている者たちがいた。
夜蛾正道、五条悟、夏油傑、そしてアーデンの四人である。
夜蛾「……自分たちの能力の限界と欠点を洗い出し、連携のすり合わせを行っているようだな。ただ得たばかりの特異な力に溺れるのではなく、己を客観視し、他者の力を借りる冷静な自己分析ができている。……成り行きで呪術の世界に入ったにしては、随分と肝が据わっている」
腕を組んだ夜蛾が、サングラスの奥で目を細めて深く頷いた。
夏油「ええ。彼らの能力は、成長すれば間違いなく特級クラスに育つポテンシャルを秘めています。ですが、やはり最大の弱点は『自己治癒能力の欠如』ですね。呪術戦において、反転術式による回復手段を持たないまま、あの『未知の毒』を持つ強敵と近接戦闘を行うのは、あまりにも死のリスクが高い」
夏油は窓枠に手をつき、ノクティスの動きを鋭い視線で追いながら懸念を口にした。
夏油「あの毒は、呪力を分解し、生命力を直接削り取ります。一発でも重い一撃を貰えば、倒せば総量が向上する特性があろうと、その前に致命傷になりかねない」
五条「そこで、ルナフレーナちゃんの出番ってわけだ」
五条悟が目隠しの下でニヤリと笑い、長い脚を組み替えながら指をパチンと鳴らした。
五条「硝子から報告が上がってるんだけどね、彼女の内に眠る『正のエネルギー』は、僕らが知る反転術式よりもずっと純度が高くて特殊らしいんだ。今はまだ、触れた相手の筋肉の強張りを解いたり、温かい光を出せる程度だけど……いずれ、どんな猛毒でも浄化できるような本格的な治癒能力に目覚めるはずさ」
五条の言葉に、夏油が少し驚いたように眉を上げた。
夏油「彼女が? 呪力が完全にゼロの非術師が、正のエネルギーだけを扱うというのか。……まさに天与のヒーラーだな。ヒーラー不在の彼らにとって、彼女はパーティーを完成させる最後のピースというわけか」
夜蛾「とはいえ、非術師である彼女を最前線の戦地に連れ出すことには多大なリスクが伴う。彼女を守るために陣形が崩れれば本末転倒だからな。だが……彼らの特異な戦闘特化の呪力と、彼女の純粋な正のエネルギー。まるで、最初からそう組み合わさるようにデザインされているかのようだな」
夜蛾の重々しい言葉に、アーデンは壁に寄りかかりながら、帽子の下で密かに口角を吊り上げた。
アーデン「(……イレギュラーな戦闘能力を持つ少年たちと、不思議な治癒力を持つ非術師の少女。まるで初めからRPGのパーティーみたいじゃないか。彼ら自身に前世の記憶なんてないのに、なぜか奇妙に惹かれ合い、歯車が噛み合っていく。本当に、どこまでもお節介で退屈しない連中だよ)」
アーデン自身にも前世の記憶はない。だが、胡散臭い男として暗躍する彼の直感は、彼らがこの世界の理を覆す「特異点」であることを正確に捉えていた。
アーデン「いやぁ、まさに青春だねぇ。自分たちの弱点を理解して補い合って、愛する彼女が回復役として覚醒するのを待つ。僕みたいな汚れた大人には、眩しすぎて直視できないよ」
アーデンは自販機で買った缶コーヒーを口に運びながら、わざとらしく芝居がかったトーン[cite: 1]で会話に加わった。
夏油「茶化すな、アーデン。彼らが立っているのはゲームの世界じゃない。……だが、彼らが完全に育ち切るまで、あの『未知の毒』を裏で撒いている厄介な連中が、大人しく待っていてくれるかどうかが問題だ」
夏油の眼差しには、地方で化け物の痕跡を追ってきた特級呪術師としての、冷徹な危機感が宿っていた。
五条「待たせるさ。彼らの青春と成長を阻むような野暮な障害があるなら、僕と傑で全部更地に変えてやるまでだよ。上層部のジジイ共が何か言ってきたら、適当に書類の束でも燃やしておけばいいし」
五条が飄々とした態度で笑い飛ばす。その言葉は決して強がりではなく、現代最強と呼ばれる彼なりの「生徒を守る」という絶対の自負だった。
アーデン「(……頼もしい限りだね。でも、黒幕さんは君たち最強の二人をどう盤面から退場させるか、もう手を打ち始めている頃だろうけどね)」
最悪の呪詛師と裏で繋がっているアーデンは、心の中で冷たく呟きながらグラウンドを見下ろした。
そこでは、虎杖とプロンプトが肩を組みながら笑い合い、伏黒とイグニスが真剣な顔で前衛と後衛の連携について議論し、ノクティスとグラディオラスが木刀で激しい打ち合いの訓練を始めていた。
異世界からの転生者たちと、現代の呪術師たち。
異なる二つの力が交わり、互いの長所と短所を理解し合うことで、彼らは確実に新たな強さの輪郭を掴み始めていた。
見えざる脅威の影がすぐそこまで迫っている中でも、彼らが紡ぎ始めた絆は、この呪われた世界を生き抜くための最も確かな武器になろうとしていた。