星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

14 / 22
混ざり合う異能と、限界突破の模擬戦

初夏の青空が広がる呪術高専の第2グラウンド。

夏油傑との手合わせで己の力の限界を悟った一年ズと転生組は、回復手段を持たない弱点を補うため、互いの術式を深く理解し合うための合同訓練を開始していた。

 

伏黒「……まず、現状の戦力を整理する。ノクティス、お前の『空間跳躍(シフト)』は目視できる範囲ならどこでもいけるのか?」

 

伏黒恵が地面に木の枝で簡単な陣形図を描きながら、ノクティスに尋ねる。

 

ノクティス「ああ。剣を投げた場所か、あらかじめロックオンした対象になら瞬時に移動できる。ただ、連続で使いすぎると呪力の消費が激しいのと、俺の身体ごと突っ込むから軌道が直線的になりやすいのがネックだな」

 

伏黒「なら、俺の『鵺(ぬえ)』と組み合わせる。鵺を上空から特攻させ、敵の視界と意識が上に向いた瞬間、お前が死角からシフトで懐に潜り込め。雷撃の光と音に紛れれば、被弾のリスクは極端に減るはずだ」

 

ノクティス「なるほどな。囮を兼ねた奇襲か。……悪くない。俺のシフトの弱点を完全にカバーできる」

 

特有の観察力と課題発見力を持つノクティスは、伏黒の的確な戦術眼をすぐに理解し、頷いた。前世の記憶を持たない彼だが、自らの弱点を客観視し、仲間の力を信じて素直に意見を取り入れるその柔軟な姿勢は、彼の中に眠る王としての器を感じさせた。

 

釘崎「プロンプト、あんたのその銃は射程どれくらいなのよ。私の『芻霊呪法(すうれいじゅほう)』は中距離が基本だから、遠距離はあんたに任せたいんだけど」

 

釘崎野薔薇がハンマーを肩に担ぎながら、プロンプトの構える無骨な銃火器を値踏みするように見つめる。

 

プロンプト「射程自体は結構長いよ! 狙撃もできるし。ただ、弾の代わりに自分の呪力を消費してるみたいでさ。遠距離から援護できるのは強みだけど、調子に乗って乱射してると、すぐ息切れしちゃうんだよね……」

 

釘崎「ふん、なら無駄撃ちは厳禁ね。私が『簪(かんざし)』で敵の足元を爆破して体勢を崩す。あんたはその一瞬の隙を狙って、確実に急所に撃ち込みなさい。外したらぶっ飛ばすわよ」

 

プロンプト「ひえっ……! わ、わかった! 釘崎の爆発に合わせて、一撃必殺で狙うよ!」

 

プロンプトは釘崎の気迫に押されながらも、明確な役割を与えられたことに嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

虎杖「前衛は俺とグラディオさんで決まりだな! グラディオさんの大剣、マジでデカくて頼りになるし!」

 

グラディオラス「おう。俺が身の丈ほどの巨大な大剣でデカい的になって敵のヘイトを稼ぐ。虎杖、お前はその機動力で遊撃に回れ。俺の死角を補うように立ち回ってくれれば、前線は崩れねぇ」

 

虎杖「おっしゃ! 『逕庭拳(けいていけん)』でガンガン崩していくぜ!」

 

イグニス「全体の後方支援と戦況のコントロールは、私と伏黒君で担おう。私の鋭い短剣から漏れ出る初歩的な『炎(ファイア)』は、攻撃だけでなく牽制や分断にも使える。状況に応じて指示を出すから、各自対応してくれ」

 

イグニスが眼鏡を押し上げながら、知的な声音で全体をまとめる。

 

虎杖「すっげー! なんか本格的なチームっぽくなってきたじゃん!」

 

記憶も過去も持たない彼らだが、呪いという不条理な世界で生き抜くため、そして「誰も死なせない」という共通の目的のために、彼らの魂は急速に結びつき、新たな陣形の輪郭を形作ろうとしていた。

 

グラディオラス「よし、打ち合わせは済んだようだな。それじゃあ、実践で試してみるか」

 

グラウンドの端から声をかけたのは、大人組のグラディオラスだった。彼は肩で大剣を回しながら、不敵な笑みを浮かべて一年ズの五人を見据える。

 

イグニス「夜蛾学長から、グラウンドの使用と模擬戦の許可は得ている。我々大人組二人を相手に、君たち五人がどこまで連携できるか見せてもらおう」

 

プロンプト「えっ!? グラディオとイグニスが相手なの!? いくら五対二でも、その二人って大人組のエース級じゃん!」

 

釘崎「ビビってんじゃないわよプロンプト。こっちは特級の夏油先生のシゴキを生き抜いたのよ。おじさん二人くらい、サクッと捻ってやるわ」

 

グラディオラス「はっ、言うじゃねぇかお嬢ちゃん。なら、手加減なしで行かせてもらうぜ!」

 

グラディオラスの足元の地面が、彼の重い呪力によってひび割れる。

一年ズの五人が一斉に戦闘態勢に入った。

 

イグニス「行くぞ、グラディオ」

 

イグニスが短剣に炎を這わせ、弾かれたように駆け出す。グラディオラスも重戦車のような突進で虎杖とノクティスに迫った。

 

虎杖「うおっ! はやっ!」

 

グラディオラス「甘ぇ!!」

 

グラディオラスの大剣が、空気を切り裂きながら虎杖へと振り下ろされる。

 

伏黒「鵺!」

 

間一髪、伏黒の影から飛び出した怪鳥『鵺』が、グラディオラスの顔面目掛けて電撃を放った。

 

グラディオラス「チッ、目障りな鳥だ!」

 

グラディオラスが咄嗟に大剣で電撃を防いだ瞬間、彼の死角となる上空から、青白い光の軌跡が閃いた。

 

ノクティス「もらった!」

 

事前の打ち合わせ通り、鵺の雷撃に紛れて空間跳躍(シフト)したノクティスが、グラディオラスの背後から片手剣を振り下ろす。

 

ガキィィィンッ!!

 

しかし、その剣撃は、いつの間にかグラディオラスの背後に回り込んでいたイグニスの炎を纏った短剣によって完璧に弾き返された。

 

イグニス「奇襲のタイミングは見事だ、ノクト。だが、グラディオの死角は私が補っている」

 

ノクティス「……っ、さすがに硬えな!」

 

前世の記憶がなくとも、魂に刻み込まれた無意識の連携(リンクストライク)は鉄壁だった。視線すら交わさず、事前の打ち合わせなど一切ないのに、互いの隙をカバーし合うその動きに一年ズは舌を巻く。

 

釘崎「プロンプト! 今よ!」

 

釘崎がイグニスの足元に呪力を込めた釘を撃ち込む。

 

釘崎「『簪(かんざし)』!」

 

足元の地面が爆発し、イグニスの体勢が僅かに崩れた。その瞬間、後方から狙いを定めていたプロンプトの銃口が火を噴く。

 

プロンプト「当たれえええっ!」

 

放たれた呪力の弾丸が、イグニスの肩口を正確に捉えようとした。

だが、グラディオラスがイグニスを庇うように前に出て、その頑強な腕で弾丸を弾き落とす。

 

グラディオラス「連携の形は悪くねぇが、威力が足りねぇな!」

 

虎杖「なら、これはどうだ!!」

 

グラディオラスがプロンプトの弾丸を弾いた隙を突き、虎杖が懐に飛び込んで『逕庭拳』を叩き込む。二重の衝撃がグラディオラスの巨体を揺るがした。

 

激しく交錯する呪力と異能。

世代を超えた模擬戦は、互いの長所を引き出し合う熱狂の渦へと発展していった。

 

だが、模擬戦が始まって数十分。

大人組の圧倒的な戦闘経験の差と鉄壁の連携の前に、一年ズは疲労の色を濃くしていた。回復手段を持たない彼らにとって、長期戦は極めて不利だ。

 

プロンプト「はぁ、はぁ……っ。全然崩れないじゃん、あの二人……!」

 

伏黒「ああ。だが、確実にダメージは蓄積しているはずだ。……次で決める」

 

伏黒の言葉に、ノクティスが小さく頷いた。

ノクティスの頭の中で、これまでの戦闘経験と、一年ズの術式の特性がパズルのように組み合わさっていく。課題発見力が、彼に新たな戦術を閃かせた。

 

ノクティス「……プロンプト、伏黒。ちょっと無茶なこと試していいか?」

 

ノクティスが二人に小声で作戦を伝える。それを聞いたプロンプトは目を丸くした。

 

プロンプト「えっ!? それ、タイミングずれたら俺の弾がノクトに当たっちゃうよ!?」

 

ノクティス「お前なら当てないだろ。信じてるぜ」

 

プロンプト「……っ、もう! やるしかないか!」

 

ノクティスは深く息を吐き、青白い光と共に片手剣を構え直した。

 

ノクティス「虎杖、釘崎! 二人の気を引いてくれ!」

 

虎杖「おうっ!!」

 

釘崎と虎杖が正面から同時に突撃し、グラディオラスとイグニスに猛攻を仕掛ける。大人組の意識が前衛の二人に釘付けになった瞬間。

 

伏黒「『蝦蟇(がま)』!」

 

伏黒の影から巨大な蛙が現れ、その長い舌でグラディオラスの足首を絡め取って一瞬だけ動きを封じた。

 

イグニス「グラディオ!」

 

イグニスがカバーに入ろうとしたその時、後方のプロンプトが銃を空に向けて発砲した。

 

プロンプト「ノクト、いけえええっ!!」

 

空高く撃ち出された呪力の弾丸。

次の瞬間、ノクティスはその「空中の弾丸」を目標に空間跳躍(シフト)を発動させた。

 

グラディオラス「なっ!? 弾丸を足場にしやがった!?」

 

空中の弾丸に追いついたノクティスは、さらにその位置からイグニスの背後へと二度目の連続シフトを行う。直線的だったはずのシフトの軌道が、空中で鋭角に折れ曲がったのだ。

 

ノクティス「これで、終わりだ!!」

 

完全に死角を取られたイグニスの首筋に、ノクティスの片手剣の刃先がピタリと寸止めされた。

同時に、足止めされていたグラディオラスの腹部にも、虎杖の拳が突きつけられている。

 

「……そこまで!」

 

グラウンドの端から、見学していた夜蛾学長の野太い声が響いた。

 

イグニス「……ふふ、見事だ。空中の弾丸を起点にして軌道を変えるとは。完全に意表を突かれたよ」

 

グラディオラス「はははっ! やるじゃねぇかお前ら! まさか俺たちが一本取られるとはな!」

 

大人組の二人は武器を消散させ、負けを認めながらも清々しい笑顔で一年ズを称えた。

 

ノクティス「はぁ……っ、疲れた……」

 

ノクティスは剣を消すと同時に、その場に大の字に倒れ込んだ。呪力を限界まで使い切り、全身の筋肉が悲鳴を上げている。虎杖やプロンプトも芝生の上に転がり込み、荒い息を吐いていた。

 

「皆さん、お疲れ様でした」

 

そこへ、柔らかな声と共にルナフレーナが駆け寄ってきた。

彼女は倒れ込むノクティスたちの傍らに膝をつき、その両手をそっと彼らの胸元にかざす。

 

ルナフレーナ「少しでも、痛みが和らぎますように……」

 

ルナフレーナの白く透き通るような手から、淡く温かい純粋な『正のエネルギー』の光が波紋のように広がっていく。まだ傷を完全に塞ぐほどの力はないが、限界まで酷使された筋肉の疲労と呪力の枯渇感を、清らかな泉で洗い流すように優しく癒やしていく。

 

プロンプト「うわぁ……なんか、すっごくポカポカする……。温泉に入ってるみたいだ……」

 

虎杖「ルナフレーナさん、マジですげぇ……。疲れがスーッと抜けてくぜ……」

 

ノクティス「……サンキュー、ルナ。助かったわ」

 

ルナフレーナ「ふふ。皆さんが無事でよかったです。素晴らしい連携でしたね」

 

ルナフレーナの慈愛に満ちた微笑みに、一年ズの面々は照れくさそうに笑い合った。

 

その光景を校舎の窓から見下ろしていた特級術師たち。

 

五条「いやー、いいチームになったじゃない。ノクティス君のあの変則シフト、なかなかエグいセンスしてるよ」

 

夏油「ええ。互いの術式を理解し、完全にパズルを組み合わせていた。そこにルナフレーナの癒やしの力が加われば、彼らは本当に、どんな過酷な任務でも生き抜ける部隊になるだろう」

 

アーデン「(……『王』を支える仲間たちと、癒やしの光をもたらす『姫様』。役者は完全に揃ったねぇ。さあ、あの男が次にどんな毒を仕掛けてきても、彼らなら簡単にひっくり返してくれるはずさ)」

 

アーデンは帽子の庇を深く下げながら、誰にも見えないように満足げな笑みを浮かべた。

記憶を持たない転生者たちと、現代の呪術師たち。彼らが紡いだ絆と新たなる陣形は、やがて訪れる未曾有の危機に立ち向かうための、何よりも強靭な光となろうとしていた。




いったん能力理解や発展させようかな
いつか設定とかも出せたらいいな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。