星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

17 / 25
蹂躙される高専、回復なき防衛戦

「シャアアアァッ!!」

 

鼓膜を突き破るような金切り声を上げながら、赤黒い毒を纏った化け物たちが着地の衝撃もそのままに、グラウンドを埋め尽くすように押し寄せてくる。

腐った泥と鉄錆が混ざったような悪臭が、一年ズの鼻腔を容赦なく犯した。

 

七海「『十劃呪法(とおかくじゅほう)』」

 

先陣を切った七海が、無駄のない動きでナタを振るう。対象の長さを線分し、強制的に「七対三」の比率の点に弱点を作り出すその一撃は、分厚い毒の装甲ごと先頭の化け物を唐竹割りにした。黒い飛沫が宙を舞う。

 

七海「装甲が呪力を分解する性質を持っていますが、芯まで深く両断すれば問題ありません。ただし、再生能力が異常に高い。確実に一撃で仕留めてください」

 

虎杖「おっしゃ! グラディオさん、前衛頼む!」

 

グラディオラス「任せとけ! オラァッ!!」

 

グラディオラスが身の丈ほどの巨大な大剣を顕現させ、迫り来る化け物たちを嵐のように吹き飛ばす。尋常ではない腕力から繰り出される大剣の軌跡が、複数の敵をまとめて薙ぎ払った。

そこに虎杖が飛び込み、体勢を崩した化け物の顔面に黒閃に近い強烈な『逕庭拳』を連続で叩き込んでいく。

 

伏黒「『玉犬(渾)』! 『鵺』!」

 

伏黒が強力な式神を呼び出す。玉犬が鋭い牙で敵の足首を食いちぎり、上空からは鵺が雷撃を落として化け物の群れを感電させ、足止めする。

 

プロンプト「食らえええっ!」

 

プロンプトが無骨な銃火器を構え、伏黒の式神が作った一瞬の隙を正確に狙撃していく。呪力を込めた弾丸が化け物の眼球や関節を撃ち抜き、確実に行動力を奪っていく。

 

イグニス「釘崎君、右翼が手薄だ!」

 

釘崎「わかってるわよ! 『共鳴り』!」

 

イグニスが炎を纏わせた短剣で流麗なステップを踏みながら化け物の四肢を切り飛ばし、釘崎がその切断された部位に呪力を込めた釘を打ち込み、本体の奥深くに直接ダメージを与える。

模擬戦で確認し合ったそれぞれの術式の特性。互いの死角をカバーし合うその陣形は、序盤こそ完璧に機能しているように見えた。

 

ノクティス「はあっ!」

 

ノクティスが青白い光となって空間跳躍(シフト)を発動し、戦場を縦横無尽に飛び回る。手にした片手剣が閃くたびに、化け物たちの首が次々と落とされていく。

敵を完全に破壊し討伐するたびに、彼らの内に確かな『力』が流れ込み、呪力総量が底上げされていく感覚がある。

 

だが、敵の物量が異常だった。

倒しても倒しても、結界の穴から這い出るように新たな化け物が降り注いでくる。さらに最悪なことに、彼らが纏う「未知の毒」は、戦闘を重ねるごとに彼らの攻撃パターンを学習し、打撃や斬撃に対する耐性を強めて装甲を硬質化させ始めていたのだ。

 

七海「(……まずいですね。敵の適応速度が早すぎる。それに、いくら倒せば呪力総量が上がるとはいえ、これほどの物量で押し切られれば、彼らのスタミナそのものが底を突く)」

 

グラディオラス「くそっ……硬ぇ! さっきより明らかに装甲が分厚くなってやがる!」

 

グラディオラスの全力の大剣が、カキィンという甲高い音を立てて化け物の腕に弾かれた。逆に、弾かれた反動で隙を見せた彼の太い腕を、別の化け物の鋭い爪が深く切り裂く。

 

虎杖「グラディオさん!!」

 

プロンプト「俺の弾が……弾かれた!? 嘘だろ、急所を狙ったのに!」

 

反転術式による自己治癒能力を持たない彼らにとって、被弾は即ち命取りになる。グラディオラスの傷口から出血が始まり、その血の匂いに興奮した化け物たちがさらに群がってくる。

戦闘が長引くにつれ、呪力消費の激しいノクティスのシフトのキレも目に見えて落ち始め、一年ズと大人組の完璧だった陣形に少しずつ、しかし確実に綻びが生じ始めた。

 

ノクティス「はぁ、はぁ……っ。キリがねぇ……。プロンプト、もう一度あれ(炎の結晶石)を……!」

 

プロンプト「ノクト、ダメだよ! さっきから何回も作ったせいで、ノクトの顔真っ青じゃん! これ以上呪力を無理やり絞り出したら、絶対に倒れちゃうよ!」

 

ノクティスは荒い息を吐きながら、己の呪力の底が近づいているのを感じていた。敵を討伐することによるレベルアップの恩恵を、魔法石の精製による尋常ではない呪力消費が上回ってしまっているのだ。

 

イグニス「……完全にジリ貧だ。七海殿、このまま平原で囲まれれば全滅する。一度校舎内へ後退し、狭い通路で局地戦に持ち込むべきでは!」

 

イグニスが短剣で敵の目を潰しながら、切羽詰まった声で提案する。だが、七海は歯を食いしばって首を横に振った。

 

七海「……ダメです。校舎には非術師の補助監督たちや、家入さん、ルナフレーナさんがいます。呪力を分解し、生命力を直接削るあの毒を持つ化け物を建物内に一匹でも入れれば、抵抗力を持たない彼らが真っ先に犠牲になる」

 

七海はボロボロになったスーツの袖を破り捨て、血の滴るナタを構え直した。その顔にも、絶え間ない戦闘による深い疲労が刻まれている。

化け物たちが、弱った獲物を見つけたハイエナのように、不気味な嗤い声を上げながら包囲網をじりじりと狭めていく。

 

ノクティス「(ルナのところに、こいつらを絶対に行かせるわけには……っ!)」

 

ノクティスは前世の記憶を持たないながらも、魂に刻まれた「王」としての強烈な自己犠牲の精神を働かせた。

足元がふらつき、視界がぼやける中、彼は残るすべての呪力を両手に込め、己の命を削るような特大の魔法石を作ろうと、包囲網の中心へと単身で前に出た。

 

プロンプト「ノクト、やめろ!!」

 

プロンプトの悲痛な叫びが響き渡った、その瞬間だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。