星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
ドゴォォォォンッ!!!
突如として、グラウンドを埋め尽くす化け物の群れの中心に、「何者か」が隕石のような凄まじい速度と重量で空から墜落してきた。
コンクリートと土が混ざった地面がクレーターのように大きく陥没し、着地の純粋な質量と衝撃波だけで、周囲に群がっていた十数体の化け物が粉々に吹き飛ぶ。
土煙が晴れたクレーターの中心で、ゆらりと立ち上がった影。
ピタッとした黒い半袖シャツに、ダボついたズボン。そして、まるで獣のように研ぎ澄まされ、筋骨隆々とした圧倒的な肉体を持つ黒髪の男。
その肩には、不気味な芋虫のような呪霊を這わせている。
「あー……めんどくせぇ。確変中だったのによ。五条のガキ、これでチャラどころか相当お釣りくるぜ」
気怠げに首を鳴らしながら現れたその男の顔を見て、伏黒恵が驚愕に目を見開き、言葉を失った。
伏黒「……親父!?」
虎杖「ええっ!? 伏黒の父ちゃん!?」
男――伏黒甚爾(ふしぐろとうじ)は、息子である恵に視線を向けることもなく、口の端にニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。そして、肩に這わせた呪霊の口から、独特の形状をした大太刀をゆっくりと引き抜く。
甚爾「五条の若造から、『万が一高専がヤバくなったら恵たちを頼む。二千万出す』って裏口契約されててな。半分前金で振り込まれたからには、仕事はキッチリやる主義なんだよ」
ノクティス「誰だか知らねぇが……オッサン、気をつけろ! あのバケモノ、普通の術式じゃ装甲を抜けないぞ! 呪力を分解する毒を持ってる!」
呪力を使い果たしかけ、片膝をついたノクティスが必死に叫ぶ。だが、甚爾はその言葉を聞いて、可笑しそうに鼻で笑っただけだった。
甚爾「呪力? 俺にそんなモン、一ミリでもあるように見えるか?」
次の瞬間、甚爾の姿がその場から「消えた」と錯覚するほどの爆発的なスピードで弾け飛んだ。
ノクティスの空間跳躍(シフト)に匹敵する、いや、それ以上の、呪力を一切用いない純粋な物理的筋肉の躍動。
「ギガァッ!?」
化け物が反応するより早く、甚爾の握る大太刀が閃く。硬質化し、呪力を分解するはずの分厚い赤黒い装甲ごと、化け物の胴体をまるでバターでも切るかのように、あっさりと両断してみせた。
プロンプト「なっ……一撃!? 呪力、全然感じないのに!」
イグニス「……あり得ない。呪力を一切持たない人間の、純粋な筋力と物理的破壊力だけで、あの硬化した装甲を貫いているというのか……!?」
甚爾は、生まれながらにして呪力を一切持たない代わりに、極限まで高められた超人的な肉体を与えられた『天与呪縛のフィジカルギフテッド』。
未知の毒は「呪力を分解し、生命力を削る」という凶悪な性質を持つ。しかし、そもそも分解すべき呪力を全く持たず、毒が身体に作用するよりも先に、絶対的な速度と圧倒的な暴力で物理的に叩き潰してしまえば、毒の厄介な性質など何の意味もなさないのだ。
甚爾「ほらほら、どうした? さっさと掛かってこいよ、ゴミ共。チンタラしてるとパチンコ屋に戻る時間が遅くなるだろ」
甚爾は大太刀を鎖に持ち替え、まるでヨーヨーのように振り回す。群がる化け物たちを、次々と無残なミンチに変えていく。血とタールの雨が降り注ぐ中、彼はまるで軽快なステップを踏むかのように、冷酷な殺戮のダンスを繰り広げていた。
七海「……伏黒甚爾。五条さんが彼を切り札として、多額の金で裏で雇っていたとは。相変わらず、あの人の性格の悪さと手回しの良さには恐れ入ります」
七海が深く安堵の息を吐きながら、ずり落ちた血塗れの眼鏡を直す。その表情には、最強の男に対する呆れと微かな敬意が入り混じっていた。
グラディオラス「おいおい……なんだあのオッサン。純粋な腕力だけで、俺の筋力を軽く超えてやがる。世界ってのは、ほんと広いな」
腕から血を流し、息も絶え絶えになったグラディオラスが、呆れたような、それでいてどこか嬉しそうな感嘆の声を漏らした。
一年ズと大人組が命がけで戦い、緻密な陣形を組んでようやく倒していた化け物たちを、甚爾は文字通り「草刈り」でもするように単独で蹂躙していく。
甚爾「おらっ! 恵、ボケッと見てねぇで残りの雑魚の処理くらい手伝え。親に全部任せんじゃねぇよ」
伏黒「……チッ。勝手に出てきて文句言うな。行くぞ、虎杖、ノクティス!」
ノクティス「ああ! サンキューな、オッサン!」
甚爾の圧倒的な暴力によって戦線が完全に崩壊し、烏合の衆と化した化け物たちへ向け、一年ズと大人組が最後の力を振り絞り、反撃の狼煙を上げる。
限界を超えかけていた彼らだったが、甚爾という最強の「物理の矛」が盤面に加わったことで、戦況は一気に逆転した。
ある男が放った、未知の毒と悪意の群れ。
その精緻な企みは、最強の術師が金で雇った「呪力を持たぬ暴君」の理不尽な乱入によって、高専のグラウンドで完全に粉砕されていくのだった。