星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

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渋谷の空、最強の蹂躙

けたたましいサイレンが鳴り響き、東京の主要都市に降ろされた漆黒の帳。

その一つ、渋谷のスクランブル交差点上空に、五条悟はふわりと降り立った。

 

帳の内側は、すでに阿鼻叫喚の地獄と化していた。

信号機はへし折れ、無残にひしゃげた車が炎を上げている。アスファルトには赤黒いタール状の体液がこびりつき、逃げ惑う一般人の悲鳴を、異形の化け物たちの耳障りな嗤い声が掻き消していた。

 

五条「……なるほどね。こりゃあ確かに、一級レベルを何人集めたところでどうにもならないわ」

 

五条は空中に浮かんだまま、眼下で蠢く群れを冷徹な六眼で見下ろした。

新宿の廃工場で一年ズが遭遇し、地下で大人組が討伐した『未知の毒』を纏った化け物。それが、ここでは特級呪霊に匹敵するほどの巨大な個体を中心に、数十体規模で群れを成している。

さらに厄介なことに、彼らが撒き散らす毒は、周囲の建物のコンクリートすらもジュウジュウと音を立てて溶かし、腐食させていた。

 

「ギィィアアアァッ!!」

 

上空の五条に気づいた一部の化け物たちが、跳躍力に任せてビルの壁を蹴り、一斉に彼目掛けて襲いかかってきた。鋭い爪と、あらゆる呪力を分解するという猛毒の粘液が、四方八方から最強の呪術師へと殺到する。

 

五条「でもさ、相手が僕じゃ、分が悪いよね」

 

五条がポケットに手を入れたまま、薄く笑う。

直後、化け物たちの爪も、吐き出された毒の粘液も、五条の身体に触れる数ミリ手前でピタリと完全に静止した。

 

「無限」――彼と対象との間に存在する「無限級数」を現実に持ってくる術式。

いかに呪力を分解し、生命力を削る未知の毒であろうと、五条悟に「触れる」ことができなければ、何の意味もなさない。

 

五条「生徒たちが今頃、本校で頑張ってるんだ。グレートティーチャーとしては、パパッと片付けてカッコいいところを見せないとね」

 

五条が右手の人差し指と中指をそっと立てる。

 

五条「術式順転『蒼(あお)』」

 

彼の指先に、吸い込まれるような美しい蒼色の呪力が収束した。

それは「マイナス」の距離を生み出し、あらゆる物質を強制的に引き寄せる力。

五条が指先を軽く振ると、宙で停止していた化け物たちはもちろん、スクランブル交差点を覆い尽くしていた群れ全体が、凄まじい引力によって一箇所へと猛スピードで吸い寄せられていく。

 

「ギャアアアッ!?」

 

何十体もの化け物たちが、互いの肉体を衝突させ、ドロドロの毒の装甲を絡ませ合いながら、空中の巨大な球体となって凝縮されていく。逃げ遅れた一般人や周囲のビルを一切巻き込むことなく、敵だけを完璧に分別して引き寄せる、神業のような精密な呪力操作だった。

 

五条「ほーら、一箇所に集まった。それじゃあ、お掃除の時間だ」

 

五条は立てた二本の指に、今度は「反転術式」によって生み出された正のエネルギーを流し込んだ。

蒼い光が、反転の理によって眩い赫色の光へと変貌する。

 

五条「術式反転『赫(あか)』」

 

指先から放たれたのは、「発散」の力。

圧縮されていた無限が一気に爆発し、凝縮されていた化け物の巨大な球体に向けて、レーザーのような赫い衝撃波が一直線に撃ち抜かれた。

 

ドゴオオオオオオンッ!!!

 

渋谷の空に、太陽がもう一つ生まれたかのような閃光が走る。

圧倒的、かつ絶対的な破壊力。

呪力を分解して進化するという未知の毒の特性すら、適応する暇も与えずに細胞レベルで完全に消し飛ばす。

爆発の余波は空の彼方へと抜け、周囲のビル群には傷一つつけないまま、特級相当の個体を含む化け物の群れは文字通り「チリ一つ残さず」消滅した。

 

五条「……ふぅん。確かに毒の波長は厄介だけど、核を完全に吹き飛ばせば再生はしない、か」

 

ゆっくりと地上に降り立った五条は、靴の裏で微かに残ったタールの焦げ跡を踏みにじりながら、目隠しの下で鋭く目を細めた。

 

五条「(……この数の化け物を同時に三箇所へ配置し、僕たちを分断する。そして手薄になった高専本校を、恐らくこれ以上の物量で叩き潰す。……性格の悪い誰かさんのやりそうなことだ。甚爾がちゃんと仕事してくれてることを祈るよ)」

 

五条はスマートフォンを取り出し、次なる戦地へと向かうため、軽やかにアスファルトを蹴った。

最強の蹂躙劇は、開始からわずか数分で幕を閉じたのである。




核つぶせば終わりなんですよね…
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