星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
視点は変わり、池袋の廃ビル群。
特級呪術師・夏油傑は、終わりの見えない死闘の最中にいた。
「ギギギ……キシャアアアッ!」
夏油「……妙だな。倒しても倒しても、数が一向に減らない」
周囲を埋め尽くすシガイ化呪霊の群れを前に、夏油は自身の呪霊操術の天敵とも言える事態に直面していた。
未知の毒である「シガイ」に侵された呪霊は、性質そのものが完全に変異しており、夏油が降伏させて「呪霊玉」にして取り込もうとしても、その毒素が夏油の呪力ごと術式を分解しようと反発するのだ。
夏油「(このまま体術と手持ちの呪霊の消費だけで戦い続ければ、いずれジリ貧になる。根本的な解決策が必要だ……)」
特級術師としての冷徹な思考が、極限の戦場の中で高速で回転し始める。
シガイウイルスは、呪霊の肉体に強引に接合され、自己再生のエネルギー源として呪力を食い物にしている。ならば、その「寄生関係」を物理的に断ち切ってしまえばどうなるか。
夏油「……反転術式の応用だ。対象の肉体を治癒するのではなく、対象の肉体から純粋な『呪力』だけを抽出し、物理的に分離させる」
夏油は迫り来る一体の毒に侵された呪霊の顔面を鷲掴みにした。
そして、極めて高度な呪力操作を行い、呪霊の肉体を構成する呪力そのものと、寄生しているシガイウイルスとの間に強制的な「剥離」を引き起こしたのだ。
シガイ化呪霊「ギ、ギィィィ……ッ!?」
夏油の掌の中で、呪霊の肉体から青白い呪力の粒子がごっそりと引き抜かれる。
呪力という寄生先と自己再生のエネルギー源を完全に失ったシガイウイルスは、まるで地上に放り出された深海魚のように痙攣し、自壊して黒い灰となって消滅した。
夏油「……なるほど。これが毒に対する最適解か」
この「呪力と毒の分離」という画期的な戦術を確立した夏油の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。
夏油「さあ、理屈が分かれば後は単純作業だ」
夏油は残存する数十体の群れの中へ、恐れを知らぬ足取りで飛び込んでいった。
流麗な体術で敵の攻撃を躱しながら、彼は触れる端から次々と化け物たちの呪力を引き剥がし、分離させていく。
ほんの数分前まで圧倒的な物量で夏油を追い詰めていた群れは、呪力源を絶たれたことで次々と連鎖的に自壊し、あっという間に池袋の広場は静寂を取り戻した。
夏油「ふう……。少し手間取ったが、なんとか片付いたな。悟やアーデンも、そろそろ終わっている頃だろう」
袈裟の裾を払いながら、夏油は高専本校に残してきた生徒たちの安否を思い、鋭い視線を新宿の方角へと向けた。