星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
池袋での殲滅戦を無事に終えた夏油が新宿へ合流し、三人の特級術師が顔を揃えた。
破壊された路地裏の真ん中で、彼らは短い情報共有を行った。
五条「へえ、『不知』に『シガイ』、それに謎の呪物ねえ。傑の方は、呪力と毒の分離か。相変わらず器用なことするよね」
夏油「そちらが遭遇した黒幕の目的が気になるな。単なる破壊ではなく、実験のような意図を感じる」
アーデン「まったく、人騒がせな奴らだよ。さあ、高専に帰ろう。生徒たちが心配だからね」
高専へと向かう帰還の道中、五条はスマートフォンを取り出し、裏で雇っていた伏黒甚爾へと連絡を入れた。
五条「あ、パパ黒? お疲れ様。高専の方はどうだった?」
甚爾『あぁ? 雑魚の群れを一掃してやったところだ。ガキ共は生きてるぜ。さっさと残りの金を振り込め』
五条「オッケーオッケー。それより、追加の裏仕事を頼みたいんだけど。『不知』って名乗る縫い目の男と、そのアジトの調査だ。報酬は弾むよ?」
甚爾『……チッ、人使いの荒い坊ちゃんだ。金次第で動いてやるよ』
甚爾との通話を切り、五条は小さく息を吐いた。高専の無事が確認できたことで、三人の足取りは少しだけ軽くなった。
高専に到着した特級三人を迎えたのは、グラウンドに広がる凄惨な残骸と、疲労困憊になりながらも生き延びた一年ズや大人組の姿だった。
七海やイグニスから、防衛戦の過酷な経緯と、グラディオラスが毒に侵された絶体絶命の危機、そしてルナフレーナの覚醒についての詳細な報告を受ける。
五条「なるほどねえ……。ルナフレーナちゃんが、その毒を完全に浄化したと」
医務室へ向かった五条は、ベッドで眠るグラディオラスと、その傍らで疲れ切って微睡むルナフレーナを見下ろした。
五条は目隠しを少しずらし、『六眼』を解放してルナフレーナの周囲に漂う活性化したエネルギーの残滓を視認・分析する。
五条「……傑、硝子。これはすごいよ。明確な違いがある」
夏油「違い、とは?」
五条「硝子の『反転術式』は、肉体の外傷や物理的な破損を再構築する『体(外側)』の治癒だ。でも、ルナフレーナちゃんの『神凪の祈り』は違う。外傷も多少は癒せるだろうけど、それ以上に、未知のウイルスや精神の不浄そのものを祓う『精神・魂(内側)』の治癒に特化してるんだ」
その言葉に、家入硝子も深く頷いた。
家入「ああ。私の反転術式が完全に拒絶された毒を、彼女の純粋な祈りの光だけが中和した。呪力を持たない彼女の力が、このシガイという未知の脅威に対する最大のカウンターになっている」
夏油「家入は体、ルナフレーナは精神……完璧な役割分担だな」
彼らのパーティーにおいて、ルナフレーナが単なる非術師の少女ではなく、絶対に代替不可能な「魂のヒーラー」であることが明確に証明された瞬間だった。
アーデンは部屋の隅で深く帽子を被り直し、誰にも見えないように口角を吊り上げた。
アーデン「(本当に、君たちは最高のジョーカーを引き当てたよ。黒幕さんの計画、ここからどうひっくり返してやろうか)」
記憶を持たない転生者たちと、現代の術師たち。特級の帰還と神凪の覚醒を経て、彼らの絆はより一層強固なものとなり、新たな戦いへの準備が静かに整えられていった。
不知って何だろうなあ…