星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

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不協和音の来訪者たちと、魂の共鳴

高専本校を襲った未曾有の特級呪霊(シガイ)の同時多発テロから数日。

破壊された結界の修復と、グラウンドに散乱した化け物たちの残骸の片付けに追われる東京校に、重苦しい足音が響いていた。「カツン、カツン」という杖を突く乾いた音が、静寂を取り戻しつつあった高専の空気を再び冷たく張り詰めさせる。

 

呪術界上層部の意向を色濃く反映する京都校の学長・楽巌寺嘉伸を先頭に、東堂葵、禪院真依ら京都校の面々が、東京校へと足を踏み入れていた。彼らの視線の先にあるのは、特級の襲撃を生き延びた東京校の一年ズと、見慣れぬ武器を携えた転生者たちである。

 

楽巌寺は半ば閉じたような目を僅かに開き、グラディオラスやノクティスたちをねっとりと値踏みするように見回した。その顔には、長年培ってきた保守的な呪術界の理に固執する頑迷な思想が深く刻み込まれている。

 

楽巌寺「ふむ……特級呪霊の脅威を退けたと聞いていたが、ただの『異形の寄せ集め』か。呪力の流れも性質も、古来より伝わる我らの理とは一線を画している。イレギュラー……いや、呪術界の秩序を侵す『澱み』そのものだな」

 

その声は低く、しかし確かな侮蔑と警戒を含んでいた。千年以上続く呪術の歴史において、彼らの存在は秩序を乱すバグに他ならない。

その淀んだ空気をさらにかき回すように、楽巌寺の背後から禪院真依が嘲笑を浮かべて前に出た。彼女の冷ややかな視線は、ノクティスたちの傍らで不安げに目を伏せるルナフレーナへと真っ直ぐに向けられる。

 

真依「何よ、この集団。呪力の正体も知らずに武器を振り回して、まるで野良犬ね。特にそこのお嬢さん、あなたは一体何? 呪力も持たない非術師が、あろうことか呪術師の巣窟に居座るなんて。足手まとい以外の何物でもないでしょ?」

 

真依の言葉は、ただの挑発ではない。名門・禪院家に生まれながら呪力に恵まれず、這いつくばるようにして生きてきた彼女にとって、呪力を持たない非術師が「特例」として守られている状況は、受け入れがたい理不尽だった。

 

その瞬間、ノクティスの瞳から色彩が消えた。

 

彼が放ったのは呪力ではなく、歴代の王たちが背負ってきた、決して他者を寄せ付けない圧倒的な「拒絶」の意志だった。教室内の空気が一瞬で氷点下にまで冷え込み、真依の喉元に、言葉にならない圧迫感が物理的な質量を伴ってのしかかる。

 

ノクティス「……二度と言うな」

 

ノクティスの言葉は静かだった。声を荒げたわけでも、武器を構えたわけでもない。だが、そこにいた全員が感じた。彼を本気で怒らせれば、ここにあるすべての命が塵となって消える――そんな生存本能を直接揺さぶる、底知れぬ殺気を。

 

真依は息を呑み、思わず一歩後ずさる。楽巌寺でさえ、その規格外の威圧感にピクリと眉を動かし、杖を持つ手に力を込めた。東京校と京都校の間に、もはや後戻りできない決定的な断絶の線が引かれた瞬間だった。

 

東堂「ハッ! 良い殺気だ! だが、睨み合いだけで終わらせるには退屈すぎるな!」

 

極限まで張り詰めた空気を強引に、そして暴力的に引き裂いたのは、京都校の巨漢・東堂葵だった。彼は上着を乱暴に引きちぎり、筋骨隆々の肉体を晒しながら、虎杖悠仁とグラディオラスに向けて不敵な笑みを浮かべて前に出る。

 

東堂「いい! 実にいいぞ! その溢れんばかりの躍動! どんな女が好みだ、と聞こうと思ったが……貴様らはそんな問いすら無粋に思わせるほど『魂の熱量』が一致している!」

 

東堂の規格外のパワーが爆発し、地面のコンクリートを粉砕しながら虎杖へと一直線に襲い掛かる。それに対するのは虎杖だけではない。「盾」としての本能を滾らせるグラディオラスが即座に反応し、重戦車のような巨体で東堂の突進を正面から迎え撃った。

 

東堂「虎杖、お前はやはり我が親友(ブラザー)だ! そしてそこの大男、貴様もまた、退屈な日常を破壊する暴力の体現者よ!」

 

東堂の強烈な張り手が、グラディオラスの構えた大剣を叩き折らんばかりに弾き飛ばす。しかし、そのほんの一瞬の隙を突き、虎杖の重い拳が東堂の腹部を正確に捉えた。

だが、東堂は狂気的な笑みを浮かべたままそれを正面から受け止め、逆に虎杖の身体を地中深くまで沈めるような強烈な衝撃波を打ち込む。

パワーとパワー、呪力と魂がぶつかり合う、まさに「肉の饗宴」。グラウンドに轟音が響き渡り、土煙が舞い上がる。

 

その前衛の激突という極度の混乱に乗じ、禪院真依が動いた。

 

真依「……隙だらけよ」

 

彼女はリボルバーを構え、後方で待機していたルナフレーナへ向けて、威嚇の呪力弾を躊躇なく放った。

 

プロンプト「……させないっての!」

 

銃声が響くより早く、プロンプトが瞬時に無骨な銃器を中空から顕現させ、一切の迷いなく引き金を引いた。彼の恐るべき動体視力と銃撃センスは、音速で迫る真依の呪力弾を、自らの弾丸で空中で正確に撃ち落としてみせたのだ。火花が散り、二つの弾丸がグラウンドに転がり落ちる。

 

真依が驚愕に目を見開いた直後、すでに東京校のカバーリングは完了していた。

 

伏黒「……無駄な真似はやめろ。京都校の意図は分かっているが、俺たちの仲間を侮辱するなら、ここで式神がその首を食いちぎっても文句は言わせないぞ」

 

伏黒恵が冷酷な声で告げると同時に、彼の影から顕現した『玉犬』と『鵺』が、いつでも喉笛に喰らいつける距離で京都校の面々を牽制する。

 

釘崎「あら、随分と好戦的ね。あんたたちのプライドとやらで呪術界の理を語るなら、その安っぽい理屈を一度、私のハンマーで叩き割ってやりましょうか? かかってきなさいよ、ボコボコにしてあげる」

 

釘崎野薔薇がハンマーと五寸釘を構え、好戦的な笑みを浮かべて挑発する。言葉を交わす暇すらない、完璧な連動。彼らが「ただの素人の寄せ集め」などではないことを、圧倒的な実力で証明した。

 

激しい肉弾戦を繰り広げながら、東堂はその完璧な布陣を視界の端で捉えていた。

ノクティスの静かなる威圧、プロンプトの超反応、グラディオラスの剛腕、そしてそれらを繋ぐ東京校の術師たち。

 

東堂の目には、その見事な連携の裏にある「かつて共に世界を救った魂の記憶」が、黄金色の残光となって見えた。それは単なる戦闘技術ではない。魂の根底で、互いを唯一無二の存在として認め合った者にしか到達できない絶対的な領域。

 

東堂は口元から流れる血を乱暴に拭い、恍惚の表情で天を仰いで笑った。

 

東堂「なるほど……貴様ら、前世でどれほどの苦難を共に超えてきた。その絆、この東堂葵が保証しよう!」




東堂は何なんでしょうね…、魂まで全部わかるんでしょうね。ブラザーって何なんでしょうね
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