星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
東京都立呪術高等専門学校、学生寮。
急な編入が決まったノクティスとプロンプトのために用意されたのは、それぞれ広々とした個室だった。
プロンプト「うっわー! なにこの部屋、広っ!? しかもベッドふかふかじゃん!」
虎杖「だろ! 俺も最初に来た時びっくりしたんだよなー。隣の部屋が俺で、その隣が伏黒な! よろしく!」
荷解きと言っても、彼らは生得領域に巻き込まれた時の制服姿とカバンしか持っていない。必要最低限の日用品は、五条のポケットマネー(と称する経費)で既に買い揃えられていた。
虎杖悠仁は人懐っこい笑顔でノクティスの部屋に上がり込み、興味津々な様子でキョロキョロと見回している。
ノクティス「……おう。サンキュー、虎杖」
虎杖「悠仁でいいぜ! 同級生なんだし。しっかし、お前らマジで素人だったんだな。伏黒が『只者じゃない』って警戒してたから、どこのエリート術師かと思ったぜ」
伏黒「……俺は別に、過剰に警戒などしていない」
いつの間にかドアの枠に寄りかかっていた伏黒恵が、ため息混じりに訂正する。
そこへ、「あんたたち、うるさいわよ」と釘崎野薔薇も顔を出した。
釘崎「編入早々、男子どもで集まって修学旅行気分? ほんとバカね。……で? あんたたち、結局どんな術式なわけ? 呪力はなんかチグハグだし、全然読めないんだけど」
伏黒「俺も気になっていた。お前たちの呪力は、俺たちのように『腹から練り上げる』というより、外側から何かが流れ込んでいるような……異質な感じがする」
三人の視線が、ノクティスとプロンプトに集まる。
プロンプトはノクティスと顔を見合わせ、頭を掻いた。
プロンプト「術式とか呪力って言われても、俺たちもよく分かんないんだよね。ただ、あのバケモノ……えっと、呪霊? あいつを攻撃した時に、なんか『レベルアップ』したみたいな感覚があってさ」
虎杖「レベルアップ!?」
ノクティス「ああ。倒す度に、自分の中のタンクがデカくなって、力が底上げされる感じだ。それと……」
ノクティスが右手をスッと前に出す。
青白い光の粒子が空中で収束し、重厚な片手剣が顕現した。
釘崎「なっ……呪力から直接、武器を創り出した!?」
伏黒「……構築術式か? いや、それにしては呪力の消費が少なすぎる。それにその剣、最初から尋常じゃない呪力を帯びているぞ……」
ノクティス「これも感覚なんだけどさ。俺たちが強くなれば、この武器自体も一緒に強くなるみたいなんだ。グラディオ……俺たちの保護者みたいなデカい人も、大剣を出せる。イグニスは短剣で炎を出せるし、プロンプトは……」
プロンプト「俺はこれ!」
プロンプトが指を鳴らすと、無骨な銃器が彼の手に握られた。
虎杖「かっけーーー!! なにそれ! 男のロマンじゃん! 俺も武器出したい!!」
釘崎「ちょっと虎杖、はしゃぎすぎよ! ……でも、確かに反則みたいな能力ね。倒せば倒すほど強くなるなんて、チートじゃない」
ノクティス「チートって……別に好きで手に入れたわけじゃねぇよ」
ノクティスは剣を消し、ベッドにドカッと腰を下ろした。
彼には前世の記憶がない。だが、この剣を握るたびに、胸の奥が締め付けられるような、重い「責任」の感覚が蘇るのだ。
ノクティス「でも、この力があれば……俺の大切なやつを守れる。それだけ分かってれば、今は十分だ」
その瞳には、明日この高専へやってくるはずの、ルナフレーナへの強い想いが宿っていた。
伏黒はノクティスのその真っ直ぐな瞳を見て、少しだけ表情を和らげた。
伏黒「……守りたい奴、か。お前がそのために戦うって言うなら、これ以上は聞かない。明日、夜蛾学長との面談があるはずだ。そこでその『覚悟』を証明できれば、お前は正式に俺たちの仲間だ」
虎杖「おう! 面談、結構ビビるかもしれないけど、気合で乗り切れよ!」
プロンプト「えっ、面談ってそんなヤバいの!?」
同世代の五人は、夜が更けるまで語り合った。
呪いという不条理な世界に引きずり込まれたノクティスとプロンプトにとって、虎杖たちの存在は、この異質な世界に繋ぎ止めてくれる確かな『日常』の光だった。
同じ頃。
高専の教師寮の一角では、大人組のグラディオラスとイグニスが、アーデンから渡された資料に目を通していた。
イグニス「……呪術界の御三家、呪詛師、そして特級呪霊……か。我々が思っていた以上に、この世界は複雑で、そして腐敗しているようだな」
グラディオラス「ああ。ノクトたちをあんなバケモノどもの餌食にさせるわけにはいかねぇ。俺たちがしっかり盾にならねぇとな」
静かな夜の裏側で、大人たちもまた、子供たちを守るための刃を研いでいた。