星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
シガイが消滅した後。
地下施設には静寂が戻っていた。
しかし。
誰も安心はしていなかった。
目の前にいた存在。
あれはただの呪霊ではない。
人間でもない。
誰かによって作られた存在だった。
虎杖「……あれ、本当に元は人間だったのかな」
伏黒「分からない、でも、少なくとも誰かが意図的に作った」
釘崎「人間を材料にして?」
釘崎は顔をしかめる。
釘崎「最悪ね」
七海は何も言わず、施設内を見渡す。
七海「感情的になるのは分かります。しかし、今は情報を集めるべきです。この施設の目的を知る必要があります」
イグニスが周囲を確認する。
イグニス「まだ記録が残っている場所があるようだ」
プロンプト「よく分かるね」
イグニス「施設の構造を見る限り、ここが実験区画なら管理用の場所が別にあるはず」
七海は少し驚いたように見る。
七海「分析能力が高いですね」
イグニス「必要なことをしているだけです」
七海「……そういうところは似ていますね」
イグニス「誰とですか?」
七海「あなた達全員です」
イグニスは少し黙る。
七海は続ける。
「自分が目立つことより、全員が生き残ることを優先している。そういう人間は珍しいです」
イグニス「……仲間ですから」
七海はその言葉を聞いて、少し目を細める。
七海「そうですか」
施設のさらに奥。
管理室。
そこだけは比較的、破壊されていなかった。
中央には端末。
そして大量の記録。
プロンプト「これ、まだ動く」
プロンプトが操作する。
画面に古い記録が表示される。
『研究記録』
『対象:シガイ』
『目的:呪力による肉体変化』
伏黒「肉体変化?」
七海「続きがあります」
画面が切り替わる。
『通常の呪霊』
『人間由来の呪い』
『シガイ』
『比較』
虎杖「比べてたってこと?」
七海「恐らく、呪いという存在そのものを研究していた」
ノクトは画面を見る。
理解できない。
でも。
嫌な感覚だけは分かる。
ノクト「……強くするためじゃない」
虎杖「え?」
ノクト「こいつらは何かを探してる」
伏黒「何を?」
ノクトは答えられない。
分からない。
ただ。
戦うための力を求めている感じではない。
もっと別の何か。
さらに記録が表示される。
『実験記録 20』
『呪霊支配』
『成功例あり』
『ただし保管不可』
伏黒「呪霊を操る?」
七海「……」
七海の表情が変わる。
七海「これは重要な情報です」
虎杖「何が?」
七海「呪霊を操る術式は存在します。しかし、この記録は術式ではなく別の方法で支配しようとしているように見える」
釘崎「つまり?」
七海「まだ分かりません。ですが、これを研究している人物がいるなら、目的は単純な戦力強化ではないでしょう」
その時。
端末の奥から一つの映像データが見つかる。
破損している。
しかし。
一部分だけ再生された。
???「シガイは器として成立する」
???「問題は魂への適応」
???「次の段階へ進むには――」
映像が途切れる。
虎杖「魂……?」
伏黒「また魂か」
ノクトはその言葉に反応する。
理由はない。
でも。
なぜか引っかかった。
七海「今日はここまでにしましょう。これ以上進むと危険です」
グラディオ「まだ奥があるだろ」
七海「ええ。ですが、情報が足りません。敵の目的が分からない状態で進むのは危険です」
グラディオは少し考え、頷く。
帰還準備。
ノクトは最後に一度だけ施設を見る。
何かが残っている気がした。
でも。
それが何なのかは分からない。
ノクト「……」
プロンプト「また何か感じた?」
ノクト「いや、ただ、ここで誰かが苦しんでた気がする」
プロンプトは黙る。
グラディオも。
イグニスも。
その言葉の意味を考える。
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その頃。
地下施設最深部。
誰も入っていない場所。
アーデンは一人で記録を確認していた。
画面には。
シガイ。
融合実験。
呪霊操作。
そして。
天元に関する断片的な情報。
アーデン「……なるほど、君はこれを利用するつもりか」
アーデンは笑う。
しかし。
楽しそうではない。
アーデン「人間でもない、呪霊でもない。その境界を作り変える」
画面を閉じる。
アーデン「不知、君は一体、何を見ている?」
答えはない。
ただ。
アーデンは知っている。
この研究を五条達に話せば。
計画は崩れる。
そして。
自分との縛りも終わる。
アーデンは静かに歩き出す。
アーデン「まだだ、今はまだ、見る時だ」
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数時間後。
高専。
五条は報告書を見る。
五条「へぇ、ちゃんと帰ってきたね」
七海「当然です」
五条「シガイは?」
七海「撃破しました、ですが」
七海は少し間を置く。
七海「今回の件は、単なる呪霊討伐ではありません。誰かが意図的に研究していた」
五条は笑みを消す。
五条「……誰か、ね」
七海「はい」
五条は窓の外を見る。
そして。
小さく呟く。
五条「面倒なことになりそうだ」
その頃。
まだ誰も知らない。
地下施設で発見された研究が。
後の死滅回遊。
そして。
五条悟封印へ繋がることを。