星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
地下施設での「シガイ」掃討任務から数日後。
京都姉妹校交流会に向けた本格的な準備を始めるため、東京校一年ズと転生組は、五条悟の呼び出しにより高専のグラウンドに集められていた。
五条「はーい、みんな揃ってるね! 今日は交流会に向けて、君たちの特訓相手を呼んでるよ。頼れる先輩たちの登場だ!」
五条がもったいぶってグラウンドの入り口を指差すと、そこから三つの影が歩いてきた。
長柄の呪具を肩に担いだ、ポニーテールの勝気な少女。
口元を衣服で隠した、小柄な少年。
そして――。
プロンプト「えっ!? パ、パンダ!?」
虎杖「マジだ! パンダが歩いてる! しかも喋りそう!」
パンダ「おう、パンダだぞ。よろしくな」
プロンプトと虎杖が目を丸くして驚く中、パンダは愛嬌よく手を挙げた。その後ろで、口元を隠した少年が小さく手を振る。
狗巻「しゃけ」
真希「……ちょっと悟。今年の一年は随分と大所帯じゃない。それに、見慣れない顔が何人かいるけど」
禪院真希は、鋭い視線をノクティスたち転生組に向けた。
特に彼女の視線が長く留まったのは、ノクティスの傍らに静かに立つ、白いワンピース姿のルナフレーナだった。
五条「紹介するよ。二年の禪院真希、狗巻棘、そしてパンダ。で、こっちが今年編入してきたノクト君たちだ。彼らの特殊な力については、あとで身をもって体験してもらうとして……」
五条が適当に自己紹介を済ませる中、真希は真っ直ぐにルナフレーナの前まで歩み寄った。
真希「……あんた、呪力が全然ないわね。一般人ってわけでもなさそうだけど、なんでこんな血生臭いところにいるの?」
その言葉に、グラディオラスとノクティスが僅かに顔をしかめ、ルナフレーナを庇うように半歩前に出ようとした。だが、ルナフレーナは彼らを細い手でそっと制止し、自分から一歩前へ出た。
ルナフレーナ「初めまして、禪院先輩。ルナフレーナと申します。……先輩のおっしゃる通り、私には術式はおろか、呪力すら一切ありません。ですが、私は……彼らと共に歩み、支えるためにここにいます」
真希は、ルナフレーナの透き通るような青い瞳をじっと見つめ返した。
呪力を持たない非術師。本来なら、高専の結界内にいることすら許されない存在。禪院家という呪術界の御三家に生まれながら、天与呪縛によって呪力を持たずに生まれた真希にとって、「呪力がない」という事実は痛いほど理解できる重みだった。
真希「支える、ね。……ここじゃあ、綺麗事だけじゃ生き残れないわよ。あんた自身が自分の身を守れなきゃ、結局は仲間の足を引っ張るだけになる」
言葉は厳しいが、真希の声音には単なる冷やかしではない、実体験に基づく確かな『気遣い』が混ざっていた。ルナフレーナもそれを正確に感じ取り、ふわりと微笑む。
ルナフレーナ「はい。ですから、今は家入先生の元で医療を学んでいます。それに……最近、自分の中に眠る温かい力が、少しだけ形を持ち始めている感覚があるのです。それがいつか、皆を守る盾になれるようにと、願っています」
真希「……ふーん」
真希は小さく息を吐き、肩に担いでいた呪具を下ろした。
真希「その覚悟が本物かどうかは、これから見せてもらうわ。……釘崎」
釘崎「はい! なんですか真希さん!」
釘崎が背筋を伸ばして返事をする。
真希「今度の休日の午後、私の部屋にお茶とお菓子持ってきなさい。そこのルナフレーナも一緒にね。……呪力を持たない女がどうやってこのイカれた世界を生き抜くつもりか、じっくり話を聞かせてもらうから」
釘崎「お茶会……! 了解です! ルナ、真希さんの特注スイーツ、買いに行きましょ!」
ルナフレーナ「はい! 喜んでお伺いします、真希先輩」
パッと顔を輝かせるルナフレーナを見て、ノクティスは毒気を抜かれたように小さくため息をつき、頭を掻いた。
ノクティス「……なんだよ。結局、女子同士ですぐ仲良くなってんじゃん」
パンダ「まあまあ、いいことじゃないか。男どもは俺たちでみっちりしごいてやるから安心しろ。なぁ、棘?」
狗巻「ツナマヨ!」
プロンプト「えっ、男組は特訓なの!? 俺もルナフレーナさんたちとお茶会したいんだけど!」
グラディオラス「甘ったれんなプロンプト。先輩方が胸を貸してくれるって言ってんだ、ぶっ倒れるまで付き合ってもらおうぜ」
イグニス「頼もしい限りだな。では、特訓の後は私が皆の分の夕食を振る舞おう。……裏山の空気も良い。今夜は少し冷えそうだから、焚き火でも囲んでキャンプ飯と洒落込むのはどうだろうか?」
虎杖「うおおお! キャンプ飯! 肉! イグニスさんの肉!!」
五条「いいねえ、青春だねえ! じゃ、そういうことで先輩たち、可愛い後輩の面倒、よろしく頼んだよ!」
こうして、東京校の二年生と転生組は、不器用ながらも確かな形で交わり始めた。