星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜   作:いくと

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重なる疑念の視線と、護るべき温もりの防壁

薄暗い和室。周囲を囲む障子の奥からは、呪術界の上層部たる老人たちの嗄れた声が響いていた。

部屋の中央には、東京呪術高専学長・夜蛾正道と、京都呪術高専学長・楽巌寺嘉伸が正座して向き合っている。

 

上層部の声「――地下施設での一件、五条悟からの報告書には目を通した。正体不明の呪霊『シガイ』の研究施設を掃討したとある。だが、問題はそこではない」

別の上層部の声「東京校に保護されているという、あのイレギュラーな若者たちだ。報告によれば、彼らの力は呪力――負の感情を源とする我が呪術の理から完全に逸脱しているというではないか」

 

障子の奥から、明らかな警戒と嫌悪の入り混じった空気が漏れ出す。

楽巌寺が、目を閉じたまま手元の杖を畳に軽く突いた。

 

楽巌寺「『魂具術式』……と、五条らは呼称しておるそうだな。呪力を持たずして武器を顕現させ、倒した敵の力を吸収して際限なく成長する。さらに、あの非術師の小娘に至っては、呪力を持たずに特異な『治癒』と『浄化』の光を操るとか。……夜蛾よ、貴様はあれら得体の知れぬバグを、このまま高専に置いておくつもりか」

夜蛾「バグ、という表現は控えていただきたい。彼らは地下施設での掃討任務でも、シガイの脅威から身を挺して仲間を護りました。彼らの力は異質かもしれませんが、その心根は確かに『人を助ける術師』のものです」

 

夜蛾の反論に、楽巌寺は鼻を鳴らした。

 

楽巌寺「心を語るな。我々が重んじるべきは秩序と理だ。五条や夏油が彼らを囲い込んでいるようだが、あの二人の制御が効かなくなった時、誰が責任を取る? あの若者たちは、呪術界にとっての爆弾に他ならん」

上層部の声「左様。特にあの小娘の力は危険だ。呪力という前提を不要とする光など、呪術そのものの否定に繋がる。監視、あるいは……」

 

不穏な空気が満ちる中、夜蛾は真っ直ぐに楽巌寺たちを見据え、言葉を遮った。

 

夜蛾「彼らの力は、現在猛威を振るっているシガイに対する明確な『天敵』です。彼らを排除すれば、東京の防衛戦力は著しく低下する。それに、来月には京都姉妹校交流会が控えている。彼らの真価を問うならば、あの場で実戦を通じて評価を下すべきでは?」

 

沈黙が落ちる。

交流会を査定の場とする。それは上層部にとっても、彼らの底と弱点を見極める好機であった。

 

楽巌寺「……よかろう。だが夜蛾よ、忘れるな。少しでも呪術界に仇なす兆候を見せれば、ワシは自らの手で彼らを『祓う』」

 

決定的な溝を残したまま、会議は解散した。

理を知らぬ異端を恐れる大人たちの冷酷な思惑が、静かに彼らを標的に定めた瞬間だった。

 

---

 

だが、そんな重苦しい政治の空気など一切届かない場所で。

東京呪術高専の第2グラウンドは、雲一つない青空の下、眩しいほどの笑顔と活気に包まれていた。

 

プロンプト「うおっ、すげえ! 俺の銃がなんかピカピカ光ってる!」

釘崎「ちょっとルナ、これ私のハンマーにもやって! 絶対可愛くなるし、強そう!」

 

グラウンドの中央で、ルナフレーナは額に薄っすらと汗を浮かべながら、両手から純白の光を放っていた。

彼女が集中すると、その光は淡いベールとなってプロンプトの銃や釘崎のハンマーを包み込もうとするが――直後、形を保つことができずに淡い粒子となってフワリと霧散してしまった。

 

ルナフレーナ「……っ、やはり、駄目ですね」

 

彼女は少し申し訳なさそうに両手を下ろした。

 

家入「無理もないさ。ルナフレーナ、君の力はあくまで『正のエネルギー』に近い治癒と浄化だ。呪力を練って物質化させる『構築術式』とは根本的に性質が違う。武器を強化するような形の定まった装甲を作ったりするのは、君の魂の構造上できないんだよ」

 

白衣姿の家入硝子が、カルテに目を落としながら静かに告げた。

 

イグニス「なるほど。以前、彼女の光が我々の武器の強度を上げたように見えたのは、彼女の祈りがノクトたちの『魂具術式』の回路の疲れを浄化し、一時的に出力を本来の最大値まで回復させていただけに過ぎなかったというわけか」

ルナフレーナ「そう、ですか……。私にも、皆様の盾になるような防壁が作れればと思ったのですが……」

 

落ち込むルナフレーナの頭に、ノクティスがポンと無造作に手を乗せた。

 

ノクティス「バカ、落ち込むなよ。お前は盾になんかならなくていい。お前が倒れたら元も子もねえんだから」

ルナフレーナ「大丈夫ですよ、ノクト。皆様がこうして笑っていてくださるのを見るのが、私の力になるんです」

 

ルナフレーナは疲れを見せず、誰よりも幸せそうに微笑んだ。

その笑顔を見るたびに、ノクティスの胸の奥底で、言葉にできないほどの愛おしさと、絶対に手放さないという強い執着が静かに燃え上がる。

 

グラディオラス「おう! 武器の強化なんてなくたって、俺の筋肉と大剣で京都の連中ごと全部弾き返してやるよ。ルナは俺たちの帰る『陣地』として、どっしり構えてりゃいいんだ」

虎杖「ルナフレーナさんマジですげえよ! いつも俺たちを治してくれてるだけで十分すぎる! これで京都のデカブツ(東堂)が来ても、思いっきり殴り合えるぜ!」

グラディオラス「はっ、東堂の相手は俺がするって言ってんだろ! 虎杖、お前は他の奴らをぶっ飛ばしてこい!」

 

前衛で熱く拳を打ち合わせる虎杖とグラディオラス。

 

伏黒「……交流会まで、あと少しだ。上層部が俺たちをどう見ていようが関係ない。京都校に圧勝して、俺たちのやり方が間違ってないってことを証明するだけだ」

 

伏黒が静かに、だが熱を秘めた声で言うと、全員が力強く頷いた。

 

真希「その意気よ、一年坊ども。京都の連中をボコボコにして、ついでにあのクソジジイ(楽巌寺)の顔を歪ませてやりなさい」

パンダ「おうおう、俺たち二年も全力でサポートするからな!」

狗巻「しゃけ!」

 

二年生たちも合流し、グラウンドはさらに賑やかさを増していく。

 

イグニス「さて、特訓もひと段落したところだ。今日は差し入れに、私が特製のフルーツタルトを焼いてきたんだが……」

釘崎「ちょっとイグニス! 私も原宿でめっちゃ並んで話題のケーキ買ってきたのよ! 合同お茶会にしましょ!」

プロンプト「えっ! マジで!? イグニスと釘崎、最高すぎる!!」

虎杖「やったあああ!! お茶会だお茶会!」

 

木陰に広げられたレジャーシートの上に、イグニスが美しいタルトと紅茶、そして釘崎が買ってきた色とりどりのケーキが並べられていく。

武器を置き、ただの年相応の少年少女に戻って、甘いお菓子に目を輝かせる彼ら。

口いっぱいにタルトを頬張るプロンプトと虎杖の姿に、ノクティスも思わず吹き出し、ルナフレーナは口元を押さえてクスクスと笑い声を上げた。

 

ノクティス「(……ああ。やっぱり、ここが俺の居場所なんだな)」

 

前世の記憶を持たず、突然放り込まれた戦いの世界。

血と呪いに塗れた現実。

それでも、隣には笑い合える仲間がいて、守りたいと心から願える少女がいる。

ノクティスは、柔らかな日差しの中で輝く彼女の金髪を見つめながら、この完璧で温かな日常が、ずっと、永遠に続くのだと信じていた。

 

――だが。

 

光が輝けば輝くほど、背後に落ちる影はどこまでも深く、黒く染まる。

東京の地下深くに広がる、廃棄された巨大な下水道施設。不知(羂索)のアジト。

 

真人「あははっ! ねぇ不知、明日の交流会、俺も遊びに行っちゃ駄目? 高専の結界、アーデンが開けてくれるんでしょ?」

 

継ぎ接ぎだらけの顔を持つ特級呪霊・真人が、バランスボールのように丸めた人間の魂を弄りながら無邪気に笑っていた。

 

不知「駄目だと言っているだろう。明日はあくまで、私が改良した『シガイネットワーク』の起動テストだ。彼らが特級クラスのシガイ群を前にどう動くか……データを取るだけだ」

真人「えー、つまんないの。……でもさ、あの『ルナフレーナ』って女の子、すっごく気になってるんだよねぇ」

 

真人の瞳の奥に、無邪気で残酷な好奇心がギラリと光った。

 

真人「呪力が全くないのに、魂の形がすっごく綺麗なんだよ。あの純白の魂に直接触れて『無為転変』で形を変えちゃったら、一体どんな面白い化け物になるのかなぁ!」

不知「……彼女の魂は、シガイの天敵でありながら、同時に最高の『器』になる可能性を秘めている。だが、急ぐな。まずは明日、彼らの『絆』という名の防壁がどれほどのものか、特等席で見せてもらおうじゃないか」

 

不知の顔に、底知れぬ悪意の笑みが張り付く。




ノクトの術式の名前出しました。
考えに考えて考え付いた末に魂具術式と名前つけました

少しだけ解説で
呪術界における「呪力」をエネルギー源とする通常の術式とは全く異なる、異次元の能力体系。
術者自身の「魂の深淵に刻まれた記憶・形状」を現実世界に強制的に引きずり出し、武器などを具現化できる。

一応ほかのキャラにも術式は決めていますが後ほど出そうかなと
お楽しみで…
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