星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
フィールドを覆っていた紫の靄と特級シガイの気配が完全に消え去った後、交流会は表向き、両校合同の勝利という形で幕を閉じた。誰もが疲労困憊していたが、その表情には確かな達成感が滲んでいた。
東堂「――ハッ! いい試合だったな、虎杖! それに、そこの大男とも!」
東堂葵が豪快に笑いながら、虎杖とグラディオラスの肩を叩く。
虎杖「あんたも、最後まで一緒に戦ってくれて助かったよ、東堂さん!」
グラディオラス「悪くない連携だったな、東堂。また機会があれば、心ゆくまでやり合おうぜ」
東堂「望むところだ!」
京都校と東京校の生徒たちの間には、いつしか、敵対の色ではなく、共に死線を潜り抜けた者同士の連帯感が生まれていた。加茂もまた、静かにその光景を見つめながら、小さく息を吐いていた。
加茂「――今日のところは、全て水に流そう。……もっとも、次に会う時までとは、言わないがな」
その言葉には、まだ拭いきれない緊張と、しかし確かな敬意が滲んでいた。今日という日を経て、彼の中の何かが、静かに変わり始めていた。
三輪は、疲労困憊しながらも、安堵の笑みを浮かべていた。
三輪「無事に……終わって、本当によかったです……。皆さんが、一緒に戦ってくれたおかげです……」
西宮もまた、箒に腰掛けながら、釘崎へと軽口を投げかけた。
西宮「――ま、今日のところは、あんたの実力、認めてあげてもいいわ」
釘崎「はっ、当然でしょ。あたしの実力、ちゃんと目に焼き付けときなさいよね」
軽口の応酬にも、どこか温かみが滲んでいた。二人の間には、いつしか、ただの敵対関係とは違う、確かな信頼のようなものが芽生え始めていた。
虎杖もまた、東堂やグラディオラスと肩を並べながら、疲労の中にも充実感を滲ませていた。
虎杖「――今日は、本当にいろいろあったな……。でも、なんか、みんなと一緒に戦えて楽しかった」
その素直な言葉に、周囲の生徒たちも、思わず苦笑を浮かべた。緊迫した戦いの後だからこそ、その飾らない一言が、誰の胸にも温かく響いた。
一方、フィールドの外れでは、五条とアーデン、夏油が険しい表情で顔を突き合わせていた。
五条「――さて。今回の一件、只の事故とは思えないよね」
夏油「同感だ。結界の綻び、あまりにもタイミングが良すぎる」
夏油傑が腕を組みながら呟く。アーデンは、努めて平静を装いながら、口を開いた。
アーデン「僕も、詳細を調査する必要があると思っている。何者かが、意図的にこの襲撃を引き起こした可能性が高い」
彼の内心は、誰にも悟られぬよう、静かに凍りついていた。
アーデン「(――僕の細工が、想定以上に利用された。次は、もっと慎重に事を運ばなければ)」
五条「まあ、調査は僕らでやるとして……。今日のところは、生徒たちを労わないとね」
夏油「そうだな。みんな、よく頑張った」
三人はそれぞれの思惑を胸に秘めたまま、フィールドの中央――疲れ果てながらも安堵の表情を浮かべる生徒たちの方へと歩き出した。
夜蛾もまた、遠くからその光景を見守っていた。彼の視線は、ノクティスたち四人へと向けられている。
夜蛾「(――あの四人組、いよいよ底が見えなくなってきたな。……だが、それも含めて、うちの生徒だ)」
静かにそう思いながら、夜蛾は生徒たちの労いへと足を向けた。
その頃、羂索のアジトでは、真人が不満げに頬を膨らませていた。
真人「――ちぇっ、最強が出てくるの早すぎ。もうちょっと遊びたかったのになぁ」
彼の対面に座る羂索――不知は、モニターに映し出された戦闘データを眺めながら、満足げに口角を上げていた。
不知「――上々だ。想定を遥かに超えた、興味深いデータが取れた」
真人「へえ、何それ」
不知「あの四人組――『魂具術式』とやらを操る少年たち。彼らの連携、絆の強度は、私の予想を大きく上回っていた。まるで、記憶を共有しているかのような、完璧な同調だ」
不知の指先が、モニターに映るデータの一角――四人が真人を包囲した際の連携パターンを示す映像を撫でた。
不知「そして、あの少女――純白の魂を持つ娘。シガイの毒への完全なカウンター能力。実に興味深い」
真人「――だよね! 俺、あの子の魂、絶対に手に入れたいんだよなぁ」
不知「焦るな、真人。全ては計画通りに進めればいい。今日得たデータは、次なる段階――シガイネットワークの完成度を、大きく引き上げてくれるだろう」
冷たい笑みを浮かべながら、不知はモニターの奥へと視線を向けた。そこには、まだ誰も知らない、更に壮大な計画の断片――『天元』という文字が、小さく浮かび上がっていた。彼のその瞳には、これまでのどんな成果よりも深い満足の色が宿っていた。
不知「(――次なる死滅遊戯、そして天元同化への完璧な布石。……全ては、順調に進んでいる)」
真人「――天元? なにそれ、聞いたことないんだけど」
不知「今、知る必要はない。君はただ、目の前の楽しみを味わっていればいい」
真人「――ふーん、じゃあまあいっか。次はいつ遊べるの?」
不知「そう遠くない。……全ては、既定路線どおりに進んでいるのだから」
不知はそう告げると、静かにモニターへと向き直った。その口元には、これから訪れるであろう、更なる計画の進展への確かな満足感が浮かんでいた。
その静かな呟きは、誰にも届くことなく、薄暗い部屋の中に溶けていった。
疲れた(´;ω;`)