星の病と呪いの理〜記憶を持たない転生者たちの新たな戦い〜 作:いくと
初任務から数日が経ち、ノクティスとプロンプトは呪術高専での生活に少しずつ順応し始めていた。
午前中の座学を終え、一年ズの五人は中庭のベンチで昼食の時間を過ごしていた。
プロンプト「いやー、今日の呪術規定の授業、マジで眠かった……。漢字ばっかりで何言ってんのか全然わかんなかったし」
釘崎「あんたねぇ、素人なんだから人一倍勉強しなさいよ。ただでさえ呪力の扱いが特殊なんだから、せめて知識くらいは頭に叩き込んどきなさい」
虎杖「まあまあ釘崎、俺も正直半分くらい寝てたし! なぁ、伏黒?」
伏黒「……俺を巻き込むな。お前らが単細胞なだけだ」
ノクティス「はぁ……。ルナの作ってくれた弁当が美味かったから、午後も寝そうだわ」
ノクティスが空になった弁当箱を満足げに眺めていると、プロンプトが羨ましそうに声を上げる。
プロンプト「いいなぁノクト! ルナフレーナさんのお手製弁当! 俺も家入先生のところで手伝いしてるルナフレーナさんに頼みに行こうかな……」
ノクティス「やめとけ、あいつ今、反転術式の基礎だとかで分厚い医学書みたいなの読んでるからな。邪魔すんなよ」
初陣以降、ルナフレーナは家入硝子の指導の下、自らの内に眠る「正のエネルギー」を引き出すための訓練と、医療の基礎知識の習得に励んでいた。直接戦闘には参加できずとも、自分なりのやり方で仲間を支えようとする彼女の決意は揺るぎない。
「やあやあ、新入生諸君。青春してるねぇ」
ふと、背後から胡散臭い声が響いた。
振り返ると、黒いコートを羽織り、深く帽子を被ったアーデンが、自販機で買ったらしい缶コーヒーを片手に近づいてくる。その後ろには、グラディオラスとイグニスの姿もあった。
プロンプト「あ、アーデン先生! グラディオにイグニスも!」
グラディオラス「おう。お前ら、しっかりやってるか? 座学で寝てたって話が聞こえた気がしたが」
ノクティス「……気のせいだろ。そっちこそ、大人組の任務はどうなんだよ」
イグニス「我々の方は、都内を中心に発生している『未知の毒』を纏った化け物の調査と討伐を請け負っている。アーデン先生の引率の元でな」
アーデン「僕としては、彼らが優秀すぎてただのお散歩係になってるんだけどね。……おや?」
アーデンが言葉を区切り、ふと高専の正門の方へ視線を向けた。
その視線の先から、見慣れない長身の男がゆっくりと歩いてくる。袈裟のような黒い服を身に纏い、長い黒髪を後ろで一つにまとめた男。その顔には、穏やかでありながら底知れぬ凄みを湛えた笑みが浮かんでいた。
虎杖「あっ! 夏油先生だ! 任務から帰ってきたんだ!」
ノクティス「夏油……先生?」
男――特級呪術師・夏油傑は、一年ズの元へ歩み寄ると、優しげな声で口を開いた。
夏油「ただいま、悠仁、恵、野薔薇。……そして君たちが、悟やアーデンから聞いていた新しい生徒だね。初めまして、夏油傑だ」
ノクティス「あ、どうも。ノクティスです」
プロンプト「プロンプトです! よろしくお願いします!」
夏油「うん、よろしく。……君たちの特異な呪力については報告を受けているよ。倒すたびに呪力が底上げされる、まるでゲームのような能力だとね。それに……」
夏油の細められた瞳が、グラディオラスとイグニスに向けられる。特級呪術師としての圧倒的な気配が、僅かに漏れ出た。
夏油「そちらの大人二人は、かなり鍛え上げられているね。一級術師に匹敵する呪力量と、隙のない立ち姿だ。君たちがいれば、高専の戦力もずいぶんと厚くなる」
グラディオラス「へっ、買い被りだ。俺たちはこいつらの盾になりに来ただけだからな」
イグニス「お見知りおきを。イグニスと申します」
「傑ーっ! おかえりー!」
グラウンドの向こうから、両手を振りながら五条悟が駆け寄ってきた。
夏油「ああ、ただいま悟。……アーデンも、私の留守中は一年を任せてしまって済まなかったね」
アーデン「いいんだよ、夏油君。僕だって可愛い後輩たちの面倒を見るのは嫌いじゃないからねぇ。それにしても、随分と長い任務だったじゃないか」
五条「そーそー! 傑がいなくて僕寂しかったんだからね! で、どうだったの? 地方の呪霊の動きは」
夏油が五条とアーデンに向けた表情が、少しだけ険しいものに変わる。
夏油「……妙な動きがあったよ。悟たちも東京で遭遇しているだろう? 呪力を持たない、謎の毒を放つ『未知の異物』の存在に」
その言葉に、その場にいた全員の顔が引き締まる。
夏油「地方の山間部でも、アレと同じ性質を持った化け物の痕跡を見つけた。誰かが意図的に、この国全体にあの『毒』を散布しようとしている節がある。……早急に原因を突き止めなければ、いずれ呪霊以上の脅威になるかもしれない」
アーデン「(……へえ。黒幕さんは、東京だけじゃなく地方にまで『未知の毒』の種を蒔いていたのか。本当に手広くやってくれるねぇ)」
アーデンは表面上は思案するような顔を作りながら、内心で羂索の暗躍の規模に舌を巻いていた。
五条「ま、相手が誰であれ、僕と傑がいれば問題ないっしょ。それに、今年は面白い生徒がいっぱい揃ってるしね!」
五条がノクティスたちの肩をバンバンと叩く。
夏油「そうだね。……せっかく私が帰ってきたんだ。午後の実技演習は、私が彼らの実力を見させてもらおうか」
夏油の提案に、虎杖が目を輝かせる。
虎杖「マジで!? 夏油先生の手合わせ、久しぶりだ!」
ノクティス「特級術師……五条先生と同格の強さか」
ノクティスは自身の手に視線を落とし、小さく拳を握り込んだ。未知の毒を持つ化け物との戦いを経て上がった自分のレベルが、この世界の頂点に近い存在に対してどこまで通用するのか。彼の魂が、強者との手合わせを前に静かに熱を帯び始めていた。