師匠との稽古から三日が過ぎた。寺子屋はしばらく休みの期間に入っており、私この三日間、朝から父の店を手伝っていた。
私たちの店は、諸国の珍しい小物を扱う小さな雑貨屋だ。父が仕入れてくる品はどれも筋が良く、派手さはないが確かなものばかりだった。
「……恋文、奥の瀬戸焼を後で包んでおけ。向かいの茶屋が買取ると言った」
帳場の奥から、父の低い声が飛んでくる。
『あら、そうですか。わかりました』
私は、一つ前に父から頼まれた品物の梱包を終えると、手元は次の仕事に移り変わる。
私の父は無愛想な人だ。客と余計な世間話もしないし、顰めっ面があんまりにも怖いからと、本人ではなく、私が文句を言われることだってある。商売を成功させるなら多少の愛想くらい必要だと思うのだけれど。しかし、私が思うに父は金儲けを目的としているようには見てなかった。物を取り扱うのが好きなのは見ていればわかる。そんなの、幼い時から知っている。小さな私が父の膝に座って、流れ行く人の波をこの目で見ていたんだ。どんな会話をしていたかなんてちっとも覚えていないが、目を瞑っていても思い出せるのは父の声がとても優しいことくらい。今は歳を重ねて行くに連れ、その重みは増すばかり。私はそれを不器用な優しさだと呼んでいる。
私は包みの木箱を棚から取りだし、その木目を指でなぞった。ふと頭に浮かんだ私な考えはこう言った。
ーー父は成功よりも、なにか……別のものを望んで、商人をやっているのだと思う。依然そうだった。それを誰よりも知っているのは側で見てきた息子の私なのだから、私はそれを信じていたいのだ。
何度も言うが、父は無愛想だ。無愛想なのは歳のせいだが、唯一変わらないところがある。品物を扱う手つきは誰よりも丁寧で、どんな客の話も優しく聞いてやるところは、いつも安心して見ていられる。そんな父が大好きだ。
「よう若旦那、精が出るね。お父上は相変わらずかい?」
馴染みの客がやってきて、私は手に取った木箱を一度置いて、ゆったりとした足取りで店頭に出て行く。彼は猟師で、頻繁に山へ潜るため小物を入れる根付を度々買いにくる。根付を度々買うとは些かマニアックに思えるかもしれないが、嘘みたいな頻度で根付を無くすのだ。
私は少し離れた机に両手をつきながら、彼に合わせた態度をとる。左寄りに首を傾げつつ彼の目を見て、私は呆れたようにこう言うのだ。
『ええ、見ての通りですよ。今日はいい根付が入ってます、見て行かれますか?』
私は、奥の帳場で茶を啜り、なかなか崩れない顰めっ面の父に視線をやった。馴染みの客は「無愛想だなぁ」と言いつつも、根付を手に取っては「ーーが、物は悪くないんだよなぁ」と顎に手を触りながら品定めをしている。
『お決まりになられましたら、声かけて下さいね』
そんな何気ないやり取りを交わしながら、私は頼まれた瀬戸焼を包み合えると、父の隣で別の帳簿を整理していく。
これが、商人の息子である私のごく普通の日常だった。