アルマダ総督は、総督府のゆったりとした執務室から戦況図を眺めていた。ホログラムで表示された戦況図は敵味方の部隊の位置が示されている。地表の大部分を帝国軍が占めていたが、それでも敵の数は多い。特にレマ山脈周辺に広がる荒野は惑星シールドジェネレーターに繋がる要所であり、師団規模の敵が数個配置されていた。
「一ヶ月前と何も変わらないな。どうやら軍はベストを尽くすという意味を分かってないらしい」
そうアルマダが呟くと、彼の側で立っていた女将校の目が僅かに動く。シャイエ・ヘランはデロに駐留する帝国軍を指揮するターログの若き腹心で、彼の代わりに状況報告をしにアルマダのもとにやってきたのだ。
「無能めが」
アルマダは吐き捨てた。
「閣下、お言葉ですが……」
「よせ、言い訳は聞きたくない」アルマダは溜め息をついた。「まったく……それにしても初手でシールドジェネレーターを取られたのは痛かったな。軌道上から奴らを葬ってやったのに」
「将軍は一時防御に徹し、増援を待ってから攻勢をかけるべきと。敵は防御を固めており、現在の戦力では突破不可能です」
「駄目だ」とアルマダは顔をしかめた。「増援を待ってから攻勢をかけるべきだ? それでは私は恥さらしではないか。他のモフどもに笑われる。こいつは自分の星系を掌握できない無能だとな。将軍に伝えろ、攻勢をかけ続けろとな。敵に圧をかけ続けるのだ」
「……はい、総督閣下」
総督がトワイレックの奴隷を部屋に呼ぶと、シャイエはその場を後にした。自動扉が静かに閉まる音が、女性とアルマダの笑い声をかき消した。
非難の代わりに深いため息をつき、彼女は自分を待つ軍用シャトルへと向かった。
◇
帝国軍前線司令部では、通信士たちが絶え間なく報告を読み上げていた。戦況表示盤には赤い損害報告が次々と点灯し、部屋全体に重苦しい空気が漂っている。
戦況図を示すホログラムの前では、ターログ将軍が腕を組み、無言で配置を見つめていた。白い髪と髭。決して若くはないが、その目は透き通っていて、活気があった。
その背中へシャイエが歩み寄る。
「将軍」
ターログは振り返らなかった。
「戻ったか……総督は攻勢の続行を?」
「ええ」シャイエは将軍の隣に立ち、膠着状態の戦況図を見つめる。「攻勢を継続せよとのことです。将軍の提案は却下されました」
ターログは静かに笑った。
「だろうな」
小さく息を吐く。
「期待はしてなかったが」
「この先どうされます? このままシールドジェネレーターへの攻勢をかけ続けますか?」
「それしか手はないだろう。敵はシールドジェネレーター周辺を固く防御しているが、ここを落とせなければ、我々に希望はない。逆にここを突破すれば直ぐにケリがつく。要請していた増援は到着したか?」
「ええ、少数ですが戦闘準備を整えております」
「結構」将軍は腕を組んだ。