第433歩兵師団の担当戦域にストームトルーパーがやってきたのは春のことだった。兵士達は帝国アカデミーのポスターで見た白きエリートを待望と期待の眼差しで見つめた。肩章に真っ白なヘルメットとアーマー、ライフルや重火器。彼らがいれば前線は容易く突破できる。ソフィアを含めた地上軍トルーパー達はこの紛争を終わらせる救世主の到来に安堵し、塹壕生活の終わりを心待ちにした。
司令部は確実に“ゲーム”を終わらせにきている。ソフィアはトルーパーの姿を見られない負傷した同士たちにも彼らの存在を伝え、励ました。間もなく全てが片がつくと。
彼女が自分達の“ねぐら”に戻ると、中でミーゴとロンがサバックに興じていた。掩蔽壕は薄暗く、簡易ベッドと武器ラックが並んでいる。試合に没頭する二人の間のコンテナには掛け金代わりの糧食が置かれており、二人の様子をルーキーがベッドに座りながら眺めていた。
「外の様子見に行きました?」
「外の様子?」カードを見つめながらミーゴが聞き返す。
「何が起こったんです?」
裂傷だらけの顔を向けるロン。医療技術と悪運のお陰で部隊に留まれたが、外見は大きく損なわれた。負傷する前と同じなのはその青い瞳だけだ。
「ベイダー卿でもおいでに?」
笑うミーゴとロン。
ソフィアは微かなため息をつきながら答える。
「ストームトルーパー。彼らが来たのよ」
「ストームトルーパー?」
ミーゴとロンが目を見合わせる中、ベッドに座っていたルーキーが反応する。この分隊の新入りコレバンだ。
「彼らが来たんですか? この戦域に?」
「そう。かなりの数いたわ」
ソフィアはルーキーに顔を向けてそう答えると、ヘルメットを脱いで、自分のベッドに投げ捨てた。そして髪留めから解放された長いブロンドの髪を頭を振って整える。
「すげぇや」と、ロン。「俺ちょっと見に行ってきます」
「逃げ出す気か? “坊や”」ミーゴはカードから視線を逸らさずに言った。「後少しで俺が勝つから、それまでここにいろ」
「そんなつもりは──」
ミーゴの後ろで彼の手札を覗くソフィア。彼女が笑って首を縦に振ると、ロンは負けから勝ちに意識を変え、席に座り直す。
「まぁ、いいでしょう。一戦だけですよ」
「ああ」
ミーゴが負けて自分のカードを投げ捨てた時、クラリオとヤスルが掩蔽壕の中に入ってきた。
「隊長、見ました?」
「ストームトルーパーか? ああ、見た」
ソフィアの問いにクラリオは落ち着いた声で答える。そこには興奮も期待もなかった。
「ミーゴ、ロン。また賭け事か? 禁止したはずだろう」
「違いやすよ」と、ミーゴは取られるはずだったムジャフルーツのデザート入りパックをロンから掻っ払った。「これは“ただ”の遊び。へへ、だろ?」
「ええ、そうですよ」少し膨れた顔でロンが言った。「多分ね」
「凄い数ですよね?」ソフィアは想像と違った隊長の反応に戸惑いつつも、そう聞いた。「彼らがいたら一気に戦況が好転しますよ」
「大隊か連隊規模ならな。あんな僅かの人数では駄目だ。奴ら一個中隊も揃ってない」
「アレでは一回の攻勢で使い物にならなくなります」と、ヤスルが静かに言った。「前線の穴埋めにはなるでしょうが」
少女のように期待していたソフィアの心は現実に引き戻された。「私はそうは思いませんけど」それが精一杯の反応だった。
「どうだかな」と、クラリオ。
「ストームトルーパーよりもAT-STを期待していたんですが」ヤスルが言った。「塹壕を抜けるにはアレが必要になるでしょうからね」
ソフィアはムッとした表情を浮かべながら願った。
自分の期待が間違っていないことを。
ストームトルーパー達が戦況を好転させ、仲間達を救ってくれることを。