これを2026/08/06に投稿できなかった翌日補填とさせてくださいm(__)m
……いやあ、とにかく大変な三連休だった。
怪談は……確か、辻セイラに提案された土曜のうちに書き上げた。
我ながら早業だったと思う。辻家の居間で辻カリンからの意見も聞きながら骨子を固めて、そのまま仕上げまで終えていた。あらかじめ「すでに具現化したあの怪異に似せればいい」と分かっていたからか、条件を紙に並べて、穴を埋める作業だと割り切ったのが功を奏したんだろう。
人生で一番真剣に取り組んだ創作が、よりによって世間を騙すための怪談になるとはな。
守るべき条件は、四つ。
1. 早急に、問題が起こること。3日以内にWPPOが飛んで来ざるを得ないように。
2. 対処法が存在しないこと。対処が簡単であれば、WPPOは来ないかもしれない。
3. 実話として語られる形式であること。実は存在しないだと具現化しないかも。
4. 宵坂ヨミの創作と傾向を似せて……何かと何かを、融合した内容にすること。
2と3と4は、要は元ネタへの寄せだ。能力者の琴線がどこで鳴るのか分からない以上、一度具現化した実績のある形へ寄せるのが一番確度が高い。それでいて傷害や殺傷系は避けつつ、シンプルに邪魔・面倒で範囲が大きい物を用意して……。
「……どんな内容にしたんだったか」
条件は言える。今でも四つとも、すらすら言える。なのに、肝心の中身が出てこない。僕は何と何を融合させたんだった? どこに現れて、何をしてくる話にした?
自分で書いて、自分で3日間広め続けたはずの話なのに……駄目だ、枠だけあって、中身が真っ白だ。根本のテーマすら出てこないのは、流石におかしくないか? なんか数にまつわるものにしたんだが……。
……いや、疲れか。同じ話を3日も喋り続ければ、頭だって飽和する。疲れのせいにしておこう。思い出そうとするほど逃げていく気はするが。
広める算段は、辻カリンから始めた気がする。効果は聞いていた通り……いや、それ以上だ。教えた翌日には学校の友人たちへ回って、月曜には「友達の友達から聞いた話」として、僕らの怪談が逆にカリンへ返ってきたらしい。中学生の伝播力、恐るべし。
セイラから伝って桐島ミオと三好ルナ、および彼女達のSNS上の知り合いにも伝播して行った。特に辻セイラがアカウントをいくつも使い分けて、目撃談の体で時間差投稿していたのには驚いた。怪談の投稿窓口、掲示板、匿名の場……およそ書き込める場所には全部書き込んでいたし。挙句の果てには僕の名前で、宵坂ヨミが訪れていた地方局にも勝手に投稿していた。こわい。
僕もバイト先で店長に頼み込んだ。「知り合いから聞いた話なんですけど」の一言で、あの人は面白がって乗ってくれたし、やって来たお客さん用にも噂を流してくれた。あとは交友関係の総動員だ。番号を暗記している知人全員に、世間話のついでのような顔で同じ話を流して回った。
できることは、全部やった。
「……全部やった、はずだ」
本当は、3日間ずっと街を回りたかった。
でも、あれ以上バイトを休むわけにはいかなかったんだ。
この三連休はフルで入ると決めていたし、その初日の土曜を既に潰してしまっている。夏に空けた穴の借りを返すどころか、新しい借りを上乗せした形だ。これ以上は店にも店長にも顔向けできない。
だから日曜と月曜は、休憩の1時間を利用して働きながら合間に広げた。レジで「いらっしゃいませ」と口が動いている間も、頭の中は怪談の伝播経路のことばかり。あまり夜遅くなりすぎると、あの怪異と遭遇してしまう可能性もあるし、動ける時間は限られている。
そして月曜日終わりには辻カリンの様子を見るために、辻家でお泊り……。
本当に忙しすぎる3日間だった。正直、相当疲れていた覚えがある。
「もし失敗したら……考えたくないな……」
もし、今回で解決しなかったら。
それはすなわち、「能力の発動条件に合わなかった」あるいは「能力者まで話が届かなかった」ということだ。となると、次に取る行動は自ずと決まってくる。
まずは、どの層に広めるか。今回は学校と友人関係、SNSが中心だった。相手の能力者は「この街で仕事をしている人間」……そこまでは絞れている。だとすれば、学生の網では届いていない可能性がある。次は年齢層を上げるか、経路ごと変えるか。張り紙、地域の掲示板、口伝て……。
怪談の中身にも見直しがいる。四つの条件のどれが外れていたのかは、失敗の仕方から逆算できるはずだ。広まりきらなかったのなら経路の問題。起こったのに小さすぎたのなら中身の問題。何も起こらなかったのなら、条件そのものか……あるいは、そもそも能力者に届いていないか。
失敗の形が、そのまま次の修正点になる。あまり失敗を前提に次の計画を立てるのは気が進まないが、今の僕達はWPPOという「能力者を特定できる組織」を利用すること以外道が見えていない。
「……で」
辻カリンの様子は、どうだったんだっけ。
辻家に来て、玄関をくぐって、それから……僕は何を見た? 誰と、何を話した?
歓迎された覚えはあるが……タイムリミットはどうなったんだったか。WPPOからの公式声明は出ていたか? 二体目の怪異は辻カリン死亡に間に合ったのか? 何故だか何も思い出せない……。
というか。
今、僕はこれをどこで考えている?
ここは……どこだ?
……夢、か?
【……】
じゃあ……あの女は、何だ?
*
【私、キレイ?】
コイツが例の……。
長い髪。白いマスク。九月に分厚いコート。そして……下半身が、無い。
聞いていた通りだ。何から何まで、辻セイラから聞いていた通り。口が裂けているかどうかはマスクの下だから分からないが……確認したいとも思わない。
実物を見るのは初めてのはずなのに、初めての気が全くしないのは……三日間、辻セイラとこの化け物の話ばかりしていたせいだろうな。万が一にも途中で遭遇して、僕が死んでしまわないように……口で説明して、文章に起こして、頭の中で何度も反芻して。
あれだけ擦り込めば、そっくりそのまま夢に出たところで何の不思議もない。
……というか、これ夢なんだよな。
そうだよな。夢だと気づいた途端に、これだ。
いや、順番が逆か。こいつが視界に入ったから、夢だと確信できたんだったか。
どちらにせよ、この女が現れるのは夜道か夢の中だけだ。
だから記憶が曖昧だったのか。
「……いや、うん。分かってはいたけど、本当に下半身が無いんだな、君」
【私、キレイ?】
「…………はいはい。キレイだキレイだ。世界一キレイだよ、君は」
我ながら、ひどい返事だ。
にも関わらず、怒りもしなければ、マスクを外して「これでも?」と続けるでもない。
本当に伝承の台本に沿わず、宵坂ヨミの創作の通りに動いているのか。
口裂け女の名折れだぞ、君は。
でも許してくれ。こっちは三日間働きながら街中に僕が作った怪談を撒いて、疲れ切った挙句、せっかく辻家に泊めてもらって眠れたと思ったら、夢の中でまで君の相手なんだ。問答に真面目に付き合う気力なんて、もう一滴も残っていない。
正直に言えば、恐怖の方も同じだ。怖がる元気すら、今の僕には残っていない。壁も床も曖昧な空間の癖に、君の輪郭だけ妙にはっきりしているのも、拵え物っぽくて興醒めだ。
【脚、要ル?】
「誰が答えるか。君のせいでどれだけ苦労したと思ってる」
【エッ】
例えば辻カリンだ。
あの子は何も知らないんだぞ。にもかかわらず20回も君に殺されてしまっているんだ。君と出会って二三会話を交わしたというだけで。それがどれだけ理不尽なことか、君に分かるのか?
第一だな。起こしていたら強制的に眠らせて来るというその行いが気に入らない。ルールというか、後付けじゃないかそれは。君は「夢から逃げたら現実でも追いかけて来る」というれっきとした伝承が存在するじゃないか。なら、対象が起きていたからといって君が取るべきなのはその場に顕現することであり、相手を無理やり眠らせることでは無かったはずだろう。勝手に新ルール作り出して何をやっている。
【……テ、手ヲ寄越セ】
「誰が答えるか。どう応えても殺すつもりなんだろう、君は」
【エェ……】
桐島ミオと三好ルナの苦労も知っているか?
彼女達は僕達……主に辻セイラの無理な頼みに付き合って、報酬も準備できないというのに懸命に情報拡散に努めてくれたんだぞ。あの二人が女子に人気のある高い知名度の人間だったから、3日間という短い期間で広範囲に情報を広げることができたんだ。
特に桐島ミオの献身はなんと健気なことだったか。
こんな風に人の夢の中に現れて驚かすだけの君には分からないだろうが、彼女は「え~セイラ~……チェーンメールなんて今時流行らないと思うケド……?」と諭してくれたんだぞ。
僕が「僕からも頼む。頑張って書いたんだ」って言ったら「え、ええ、えええっマママママコっちがぁっ!?」ととにかく驚いていた。普段真面目そうな僕が「この創作怪談を広めてくれないか」と言ってきたのがとにかく驚きだったんだろう。
にもかかわらず、即座に協力してくれた。あの献身には感謝してもしきれない。
君がいなければその苦労を強いることも無かったんだぞ。
【ソノ、私ノ話ハ……誰カラ聞イタ?】
「分かって言っているんだろ。性格悪いぞ君」
【ナニコイツ……】
店長……あの人にも大きな迷惑をかけてしまった。
辻セイラが相談に来て、色々作戦を煮詰めていき、怪談を造り上げて……おかげで潰れた土曜日。当日にバイトへ行けないことを伝えた時のあの店長の焦ったような顔。後で「恨むからね瀬尾少年……」とも追加連絡が来たし。翌日職場に赴くのがどれほど緊張したか……。
にもかかわらず、僕が「店長、この店でこの怪談広めてもいいですかね?」って聞いたら、「聞いたことない提案だ……」とか言いながら、面白そうという理由で許可してくれたんだ。
自分の店の店員が「客に怪談を話していく」というあまりにも珍妙な光景にゴーサインを出してくれたんだぞ。「なんか事情があるんでしょ。ガキが遠慮すんなー」と言ってくれたあの横顔のなんと頼もしかったことか。その日のバイトは僕だけかなり厳しかったが。
僕を茶化しにやって来た友人達も「バーガーショップの店員が怪談語ってる」という珍妙な光景を面白がって拡散してくれたが。あの時受けた「マジで言ってんの?」みたいな冷ややかな目は忘れられない。
そういう迷惑があったことも、君にとってはどうでもいいんだろう。
ただ歩き回って話しかけるだけで標的が作れるから楽でいいもんな君。
【アー……私ノ脚ハドコニアル?】
「知らないよ。名神高速道路って言ったら怒るんだろう」
【ソンナコトハ……】
じゃあなんだ。正しい答えは何だったんだ。
君の元ネタになった宵坂ヨミは君の対処法をどこまで正確に作り込んだんだ?
まあ元の仮死魔霊故は電車に轢かれて死んだ霊ともいうからな。
高速道路に脚があるってそもそもおかしい解答だと思ってたんだ。
まあ、どちらにせよこんな問答に真面目に応じるつもりはない。
まず、これが夢であることは確定でいい。辻家の玄関をくぐってからの記憶が繋がらないまま、こんな場所に立っている時点で、現実の続きではあり得ない。
なら、残る問題は一つだけだ。目の前のこれは、疲れた頭が拵えた偽物か。それとも──「夢の中に現れる」という、あの怪異の性質そのままの本物か。
そしてそれがどちらだとしても、僕が対応を変えることで何か変わることは無い。
1. もし目の前の存在が本物なら?
それはすなわちWPPOが間に合わなかったということだ。彼らが問題を解決していれば本物が現れるような事態にはならないはずだし。
その場合、僕は死ぬ。正答は意味をなさないと聞いているし、誤答の場合も殺された、とも。つまり本物相手なら、何をどう答えようが僕が死ぬという結末は同じだ。
しかしその場合、この後辻カリンも殺されてしまうことになる。君は健在な訳だから。
そうなればループ発動だ。非常に遺憾ではあるが、僕がここで本物の仮死魔霊故に媚を売って殺されようが、徹底的に反抗して殺されようが、どちらにせよ巻き戻るから結果は変わらない。
つまり、目の前の君が本物だとして、僕がどうしようと迎える末路は変わらない。
2. 逆にもし目の前の存在が偽物なら?
それならこれはただの夢だ。怒りに身を任せて愚痴を零そうが殺されることは無い。
ほら、結論は一緒だ。
結果は「僕が死んだ後、巻き戻ってその死が無かったことになる」か「僕は死なずに目が覚める」の二択。君の問答に付き合って良いことがある……そんな未来は存在しない。
というか、なんだか腹が立ってきたぞ。
これで正体が本当に過去に悲劇のあった悲しき霊なら遠慮していたところだが……君はそうじゃない、ただの創作を基に能力が勝手に作り出した存在なんだろう。
生憎だが、前々から君には文句を言いたかったんだ。
【エッ】
いいか、よく聞けよ。
どうせ夢の中なんだから直接口に出さなくても聞こえてるんだろう。
【ソンナ無茶ナ】
大体、人様の夢の中に勝手に入ってきているんだからそちら側から配慮を見せるべきだ。
なんで初手が「私、キレイ?」なんだ。「突然お邪魔させていただいて申し訳ありません。二三聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか」だろう。ここを誰の夢だと思っている? 夢の中でまで時間外労働をさせて、こっちは休日を返上して働いて疲れ切って夢の中に入った身なんだぞ。
偽物なら偽物で、僕の頭から出てきた癖に、問答だけ律儀に回すのは何なんだ。
本物なら本物でもっと悪い。誤答なら見逃して3日後に予約を取り付ける、正答ならその場で殺す……そこまではまだ分かる。どうしたってここでどちらにせよ殺すと分かっているのに再度問答を行うんだ。回答者の生死に一切関与しない試験を実施するな。手続きが完全に形骸化しているぞ。
宵坂ヨミの創作で描かれていたのは主人公の死だけだ。夢の中でどう殺すのかは描写が無かった……なのに君は殺すと分かっていて問答を行うのか。どうしてそこだけ元の伝承から引っ張ってきているんだ。描写が曖昧であれば君も曖昧であれよ。何中途半端に元ネタに倣おうとしている。
というか君。どれだけ君が怖くても強くても理不尽でも辻セイラのループには抗えないのはどう言い訳するんだ。君は怪異なんだから怖がらせることが本業だろう。人間には抗いようが無い、理不尽の側の存在のはずだろう。普通の女子高生に進捗を丸ごとリセットされてるなんて……怪異としてそれはどうなんだ。
分かっているのか? 君は辻カリンと偶然ループ前に会話をしていたから厄介だった訳で、ループ期間が4日間だっただけで簡単に対処されてしまう存在だったんだぞ? 真に強力であり恐るべきなのは、一女子高生が持つ能力であって、君は怪異の癖におまけ程度の存在でしかなかったんだ。
前の周では僕を殺したとも聞いているが……つまり君の恐怖も殺しも、辻セイラの巻き戻りの内側で完結する程度の代物な訳だ。超常を名乗るなら、人間の手に負えないところまで突き抜けてこその本業だろう。理不尽の看板を掲げておいて、格ではたった一人の姉に届いていない。それこそ中途半端じゃないか。
【ォォォォ……】
「何が『ォォォォ』だ。どうせ夢、怖いものなんか無い。どうせ朝には忘れる啖呵だ」
【ォォォォ……!】
「だいたい君はだな! 怖がらせることだけが守るべきルールのはずだろう! ならたった一人の能力くらい、凌駕してみせろ! それもできない中途半端が、怪異の顔で問答なんか──」
【ォォォォォッ!】
──ゾクッ……!
……な、なんだ今の悪寒は。
これは夢だぞ。ついさっき、どう転んでも結果は変わらないと結論を出したばかり。
僕は「3日後に会いましょう」の予約を受けていないんだ。予約していないのに君が危害を加えてこようとするのは宵坂ヨミの台本からも逸脱した明確なルール違反じゃないのか。
もし逆に君が偽物でも、その場合の君は僕の頭の中の材料でできているはずだ。僕を怖がらせる手札まで含めて、全部僕の持ち物のはずだろう。それなのに、今の悪寒に覚えが無いのは何なんだ。
【…………】
「……おい、何か言ったらどうなんだ。一瞬叫んで終わりか。言いたいことがあるならはっきり言え。問いかけだけするのに意思疎通は苦手だなんて随分都合のいい……」
【サッキカラウルサインダヨ! 怪異ニ説教スルカ普通!?】
「『何か言ったらどう』ってそういう意味じゃないだろ! 雰囲気ぶち壊しだぞ君!」
【ナンナンダヨオ前ハァァァッ!】
いやだって急に喋り出したら怪異としての恐怖半減だろ!
そこのところも理解せずに何が怪異……。
あっ、やば。
殺され──
*
……!?
……あれ。
あの女は?
「あ、起きた」
「……辻セイラ?」
「そうですが。寝起きに見るのが私の顔で不満?」
「……まさか」
……ああ、なんだ。
よかった。
普段なら良い気分じゃないだろうが……。
この朝日と一緒に見る分には……まあ、悪くないぞ。
あー、だんだん頭が冴えてきた。
悪夢はいいよな。すぐ目が覚めて来る。
僕が眠ったのは月曜日。朝日が見えるということは──今は火曜の朝ということだ。
つまり、さっきまで見ていたのは正真正銘、ただの夢だったということ。
……だとすると分からないのは、どうして僕が辻セイラの部屋のベッドで寝ているのか。
なんで君はコーヒー片手に隈作って起きてるんだ。
「昨日……何があった?」
「アンタ、カリンの部屋見ててって言ったのに途中で寝落ちしてたの」
「えっごめん」
「それより、邪魔。私は夜通しカリン見守ってたんだから、眠たいの。どいて」
「あ、ああ……」
じゃあ僕は、本来僕がやるべきだった辻カリンの見張りを君に丸投げしてしまったことになってしまうのか。流石に申し訳ないぞ。
それに、邪魔だと言うならわざわざ君のベッドで寝かせなくても。客間に転がしておけば良かったじゃないか。僕のこと嫌いなんだから雑に扱っておけばよかったのに。
……いや、君からすればそれどころじゃなかったか。
何しろ、これで解決するかどうかの瀬戸際だったはずだからな。問題が解決するかどうか確認したい以上、僕が寝る場所なんてどうでもよかったんだろう。
「……辻カリンは? WPPOは間に合ったのか?」
「カリンは今朝元気にご飯食べてる。WPPOは昨日の夜に『異常実体を観測したから能力者ごと保護します』って公表して、10分後には『解決しました』って言ってたよ。二体目の怪異が発生することもなく終わり」
「やば」
仕事早すぎだろ。
ということは……やっぱり予知して次の怪異が具現化されるより先に潰したのか。
いざ被害が出るとなれば早めに対応してくれるとは思ったが……いくら地域が絞れているとはいえ、能力者の特定を10分で? 未来予知能力者がいてもそんなに早くは無理だろ。
しかし……やっぱり、良かった。
僕の考案した……『101匹の送り人面犬』は上手くいったんだな。
3日間、僕達が流した噂はなんとかこの街のどこかにいる能力者の元まで届き、僕の作った創作はその能力者の条件に偶然合致したということだ。
能力者が既に保護されているなら、能力の解除も既に行われているだろう。予告されていた死も、こうして火曜日が来ている以上、消えたと考えていい。
なら、あれは夢だったんだな。
一番肝心な夜に、当の発案者は寝ていた、と。
なんであそこまで考えた創作をついさっきまで忘れていたんだろう。やっぱり夢の中だったから?
「それで。さっきどうして跳ね起きてたの」
「え……そうだったか?」
「そうだったよ。悪夢でも見たみたいな顔してさ」
「あ、ああ、そうだったんだ。仮死魔霊故の夢を見て。その最中に、急に背筋がぞくっとして……もしかしたら本物か、と思ったんだ」
あの瞬間を見られていたのか。なんだか気恥ずかしいな。
僕としても驚きだったんだ、何の前触れもなくいきなり出てきたし。どう対応するかは迷わなかったが急に謎の悪寒がしたから、最悪の事態を想像してしまって……。
それにしても、あの悪寒は何だったんだろう。
脅威は事実では無かった上、布団に包まれていたにも関わらず寒気を感じてしまう……風邪か?
「そういやWPPOが気温3℃下げたんだって。残暑がどうとかって」
「そっちかよ!!」
これで6周目終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
寝てる間に夢の中で死んだら全然原因分かんないんじゃね? と思って書きました。
おかげでだいぶ長い&ややこしいことに。次はもっとコンパクトを狙います。
可能であれば、感想や意見や評価やここすきを頂けると嬉しいです。大喜びします。
それでは、次話以降も宜しくお願いします(´・ω・`)