「九条ノドカです。本日よりお世話になります。よろしくお願いいたします」
「つーわけで九条さんだ。ご家庭の都合で、先週こっちへ越してきたらしい。学期の途中で何かと大変だろうから、皆、色々教えてやってくれ」
「(ねえ、眼帯……医療用ってやつ?)」
「(てか普通にかっこよくない? ビジュいいな……)」
「(この時期に転校って、絶対ワケありだって)」
「こらー、静かにしろー」
遂に火曜日が来てしまった。
あの衝撃的な初対面から一日……夢だと思って片付けられたら良かったのに、こうして本当に教室に入ってこられると余計に思い知らされてしまう。
いいよな、何も知らないで騒めき立てられる君達は。僕は彼女からとんでもないこと告げられたんだぞ。いろいろ気になる気持ちも分かるが。
まあでも、こんなものだよな。
高校生にとって、転校生というのは非常に話題性のあるニュースだし。僕だって一切の事情を知らなければ、他の皆に混ざってその礼儀正しい振舞いに拍手を送っていたかもしれない。
「確かに……一理……そういう見方も……」
そして、辻セイラだけは昨日から相変わらず。
確かに君はそういうイベントに興味ないだろうさ。新しい人員が入って来ようが『大切な人』にならないために一切接触を取ることもないだろうから、君にとっては一切関係のない人物だ。
でも本当に何をそこまで没頭してるんだ? それが例の「困ったこと」とやらなのか?
可能であれば聞き出したい。
一日経って一切の様子が同じままなんだ。問題は一日で解決しなかったと見るべきだろう。解決に向かっているとも聞かされたが、一日あれば状況に変化が生まれているかもしれないし──何より気になる。
僕の気分が変わるからというだけの理由で言いたくもないことを無理に聞きだすつもりはないが……せめてその困っているものが「体調的なもの」なのか「精神的なもの」なのか。系統だけでも教えてほしい。
しかし、それもできそうにない……。
「九条さんの席は、あの空いてる席だ。瀬尾の斜め後ろだな、ちょうどいい。昨日も言ったが、分からないことは委員長の瀬尾に聞くように」
……どうして斜め後ろなんてところに空きスペースがあるんだよ。
席順に他意は無いんだろう。空いている席がそこしか無いんだから、偶然だ……多分。
「九条さん、こっちこっち!」
「委員長じゃなく俺らにも聞いてくれていいからな!」
「はい。よろしくお願いします、皆さん。それと……瀬尾さんも」
「ああ……よろしく」
通路を行く姿も、着席の所作も、どこからどう見ても「規律を守る側の転校生」でしかない。
クラスの連中の目には、真面目で、少し謎めいた、感じのいい転校生……ぐらいに見えているんだろう。
……でもなあ。そんな風に考えるほどの余裕、僕にはとてもとてもないんだよ。
だって、月曜の昼休み、あんな話を聞かされたんだから……──
*
「──申し訳ありません。只今、解除させていただきます」
「…………は?」
……戻、った?
動ける、動けるぞ。
僕はついさっき、職員室のこの部屋で、九条ノドカに能力を使われ、体の自由が効かない状態になっていたのに、ほんの一瞬使われただけで……もう解除された?
というか……。
……世界平和維持機構日本支部特別対応局第三特務隊隊員?
えっWPPO職員?
君が? 転校生じゃなくて?
「もう動けるはずです。規定に沿った措置ではありましたが、ご不快な思いをさせたのは事実です。お詫びいたします。そのうえで、改めてご説明の時間を頂けますか?」
「え……あ、ああ」
ど、どういうことだ。
先に謝られてしまった。しかも、定規で測ったみたいな直角のお辞儀で。
こっちは今の意味不明な状況に対して説明責任を求めようとしているところだったのに。そのちょうどいい機会を向こうから提示して来たかのような……。
……意味が分からない。
どうしてWPPOが僕に?
そもそも、本当にWPPOなのか?
未来予知能力者? スカウトとは?
一瞬で解除するならどうして能力なんて使った?
君は転校生だったはずでは? 何故こんなことを?
分からないことだらけだ。
いくつか心当たりがない訳でもないが、それでもまだ脳内の80%ぐらいは「?」だぞ。
「……分かった、頭を上げてくれ。説明は聞く……というより、聞かせて貰わないと困る」
「ありがとうございます」
もしかしたらこの九条ノドカが危険人物の可能性だってある。
急に能力を掛けられた訳だから、辻セイラなら危険を察知して逃げ出していただろう。
しかし、僕は逃げられない。
今能力の説明を受けた以上、僕がこのまま逃げ出すことは不可能だ。九条ノドカは今だって眼帯を戻してはいないし、扉に手をかけた瞬間また動けなくなるだけ。
そもそも、本当にWPPOであれば今の行為には正当な理由が存在するはずだ。理由も聞かずに撤退しては相手の言い分を把握できない、後で正当性を訴えるときに不利になってしまう。
「先述したように、私は世界平和維持機構──WPPOのエージェントです。今回は瀬尾マコトさんを『未来予知能力者』としてスカウトするために伺いました」
「それは理解した。だが、君が本当にWPPO公式職員である証拠は存在するのか」
「こちらを」
……手帳型の身分証。
確かに、顔写真も名前も所属も電話番号も載っている。さっき言われたものと一字一句相違ない。多分、ここに書かれているものは全て暗唱できるんだろうな。
……だが、僕は本物のWPPOの身分証なんて見たことがないんだぞ。見比べての判定なんてできる訳もない。それに、こんなものはその気になれば偽造だってできるんじゃないのか?
「この場で電話をかけてご確認頂いても構いません。携帯が無ければ私のものをどうぞ」
「おい、校則違反だぞ」
「今日に限り、学校から許可を頂いています」
「そうなのか、ならいい。僕は使わないが」
校内における携帯電話の使用は厳禁。昨日だって辻セイラを叱りつけたんだ。おかげで昼休み、問い詰める時に少し雰囲気が険悪になってしまっていたが。
それに、相手が準備した借りものの携帯で貸し元の身元を紹介して何になる。心配されなくても、後でWPPO公式とここの電話番号に公衆電話から確認の電話を入れさせてもらう。
しかし、寸分狂いなくこの応答ができると発言するあたり、既にマニュアルで定型化された手順なんだろうか。後で言い逃れする手段を自分で潰しておいて、一切焦っていないのだからWPPO所属は事実なのかもしれない。
「じゃあ、さっきのあれは何だ。初対面の相手にいきなり能力を使っていいものなのか」
「説明不足で申し訳ありません。先ほどの能力行使は職員の安全確保のためです。能力者の方への初回接触では、先手を取ることが規定で認められています」
「……安全確保」
「能力の詳細が分からない以上、職員が初手で攻撃され死亡しかけた前例もあります。先占効果の確認も踏まえ、まず初めに能力の開示をさせて頂きました」
……そうか。規定、なのか。
なるほどな。
まあ、それならいいか。規則なら、別に。
「……理解した。それならさっきの行為には正当性があったと判断しよう。人々を守る組織が、部下を蔑ろにしているようでは信用できない。そういった手順が組まれているのなら、僕に文句はない」
「ありがとうございます」
確かに、筋は通っている。
WPPOとしてはスカウトしたい人材を見つけられたが、能力の詳細も分からない以上、後から攻撃される可能性もある。「死亡した前例」ではなく「死亡しかけた前例」と言っているあたり、最悪の事態は未来予知で防いでいるのだろうが。
そして先占効果の確認も兼ねている……。
もし僕が能力を常時発動しているか、何者かに能力をかけられている場合、自身の停止能力がかからない可能性がある──つまり、停止能力がきちんと動いていれば今すぐに攻撃される可能性は低いと判断できると。
「で、僕を能力者だと疑っている理由は……」
「9月16日の一件です。その日、某テレビ局に所属していた『自らが聞いたノンフィクションとされる話を具現化する能力』を持つ能力者が、ある能力現象を発生させたことが観測されました」
……ああ。
やっぱりそこか。
なんとなく心当たりはあったが。
こんな形で答え合わせを聞くことになるとは。
その『自らが聞いたノンフィクションとされる話を具現化する能力』っていうのは……ああ。怪談って「これは実際に遭った話なんですが」って前置きがあるし、普段の日常の出来事なら具現化されても自覚症状が出ないのか。
となると、犯人は無自覚な能力者だったのか。僕の作った噂は、様々な経緯を経てテレビ関係者まで届き、条件が合致して具現化に至ったと。
3ヶ月前に聞いていればもっと大きなリアクションができたかもしれないな。
だって今はそれどころじゃないからな。
「あの際具現化された『都市伝説』は前日まで一切存在しないものであり、9月14日から急速に拡散されたものでした。内容も『101匹の送り人面犬』という、既存の2要素を掛け合わせたものであり、極めて広範囲に影響しながら物理的な損害は最小限。『101匹』と『犬』という、連想しやすく話を広げやすい内容であることも要因となり、噂は人為的に作られた可能性が高く、我々を呼び出すため作成されたものだと判断されました」
「……そ、そうか」
「自ら能力を行使するのではなく、他人の能力が発動することを予見しての行動。噂の作者である貴方が、『能力者を捕獲するために意図的にWPPOを誘導した未来予知能力者』である可能性が高いと判断され、私が派遣されたという訳です」
す、凄い。全部バレている。
違うのは能力者が誰かと能力者の内容が何かだけ……。
確かに、その噂は僕が作った。
夜の山道で旅人についてきて、相手が転ぶと襲おうとするが、転んだことを誤魔化すと助かるという「送り犬」。犬の顔面が人間の顔になっていて、人語を介するという「人面犬」。
共通項のある二つの都市伝説を融合させ、襲ってくる設定を削除し、代わりに「101匹」というとにかく連想しやすく具現化したら邪魔な要素をくっつけ、「人面」要素で誰にも異常だとすぐ分かるという……。
被害者は発生せず、だけどどう考えても能力によるもので、かつ変に規模が大きいから具現化すると即ニュースになる内容に仕立て上げたんだ。ここまですればWPPOも気づくと思ったが……まさか制作過程や、その意図まで全て読まれているとは。
逆にそこまで読み取れてどうして一番重要なところを見逃しているんだ。
噂の作者っていう面倒な立場にいるのは確かに僕だけども。
「しかし、何故わざわざ転校生という設定なんだ。話をするだけなら呼び出せば済む。転校生がWPPO職員で能力者だと──僕にバラされると困るだろう」
「しかし、瀬尾さんはそうしませんよね?」
「しないが……何故そう思った?」
「WPPOが調査に来ているということは自身あるいは家族に、調査の必要がある問題が発生していると示すことになります。『友人を正当防衛で救った美談』が広まることをよく思わない瀬尾さんであれば、注目を受ける可能性及び家族に迷惑のかかる可能性は避けられるかと」
「……そうだ」
「はい。転校生というモデルは、『そのような方のため』のプロトコルです」
……つまり、僕のような人間相手の対処方法は初めから決められていて、それに沿って行動しただけということか。その中で最も任務を果たしやすいものが「転校生」だと。
確かに、ここでどれだけ腹の立つようなことを言われようが、きっと僕はWPPOに文句の電話を入れて自分の中で完結させる。学校や家に誰か来るようであればきっと周囲から注目を集めるし、母さんも心配する。
しかし、転校生であれば「僕が関わらざるを得ない一般人」として長期間接触することができる。周囲が「瀬尾家の長男がWPPOに調べられてるみたいだ」と噂を立てることも無いし、母さんが「マコトが国際機関の人に連れていかれた……」と心配することもない。
多分その言い方だと、『暴力的な人間』や『精神的に問題を抱えている人間』専用のプロトコルもあるんだろうな。確かに、マニュアルを準備するのは良いことだ。納得できる。
つまりそのプロトコルを適用するために、僕の過去と人間性は調べられていたということになるが。そのために3ヶ月もかかったのか? ところどころ曖昧な言い方をしたり、能力のことに気づいていないあたり、プライバシーにまで踏み入ったりしていないんだろうが。
「呼び出しやご自宅への訪問は、対象の方の生活を害します。WPPOは、守るべき人々の日常を壊さないことを原則としており、同意が得られてから初めて、周囲の方々への説明を行います」
「……その原則のために、学校ごと僕の日常に入ってきたと?」
「学籍は本物ですよ。編入試験も受けました」
えっすごい。
頑張ったんだな。
対象への調査のためにWPPOがそこまでのコストを払う必要性はない。組織として単純に済ませたいなら高圧的に紙きれ一枚送りつけるだけでいいんだ。
しかし、それが対象への害になると分かっているから、僕の日常ができるだけ壊れないためにコストを払っている。そのための出費は組織にとって出して当然の存在だと……。
そこまでして、僕への接触に熱中する理由は……。
「WPPOにとって、方法はどうあれ『未来を知る力』というものは非常に重要です。世界には数々の脅威が存在しており、未来の危機を知覚する手段は多いに越したことがない。人々を守るためにも、我々はより多くの協力者を求めています」
……やはり、世界の治安維持に行き着くのか。
「……既に未来予知能力者がいるのに?」
「そこまでご存じなのですね。やはり未来予知が可能で?」
「いや、今のは……違う」
しかしマズイ、あんまり踏み込みすぎると変に勘違いが加速してしまうぞ。
僕は能力者じゃないし、能力の内容だって未来予知じゃない。
ただ、僕の仮説はこれでほぼ確定になってしまった。
WPPOには未来予知能力者がいる。もっと言えば、未来予知能力者を「集めている」。全ては世界中の危機に対応し、問題を未然に防ぐリソースを増やすために。
そして、その一環として──勘違いの末に僕のスカウトに至ったと。
「そのスカウトは……断れるのか」
「可能です。我々に、能力を強制で行使させる権利はありません。未来予知能力を持っていたとしても、守るべき人々であることには変わらないので。念のため調査は続けさせていただきますが、ご要望があれば調査終了後、こちらから一切の接触を拒否することもできます」
「もし、受ければ……?」
「私と同様、未成年協力員として登録されます。学業との両立が大前提。協力のご要請への対応と、守秘義務。それに対する手当と保護。詳細は書面でお渡しします。即答は求めませんし、お受け頂いた後でも、いつでも撤回できます」
「……能力がスカウトの想定と違えば?」
「想定より良いものであれば、変わらずスカウトを続けさせていただきます。想定より悪い──危険なものであった場合、申し訳ありませんが監視対象になる可能性があります。ご家族にも説明する必要があり、場合によっては能力が暴発しないための厳重なプロトコルが施行されます」
「そうか……」
……つまり。
1. WPPOに協力しないならいつも通り。
本当に能力者なのか、能力が本当は何なのか、実は悪意を持った計画を企てていないか……等々を調査するためにWPPOから職員が派遣されるが、それも日常に変化が無いよう極力最小限で。
それさえ終われば能力があろうがなかろうが、ノータッチを宣言……もし危険行為をするようであれば即座に補足されるだろうが、そうでなければこの来訪は軽いイベントとして終了すると。
2. WPPOに協力するならかなりの好待遇。
今の暮らしの水準を狂わせることはせず、WPPOの未成年職員としての待遇を確約し、いつでもキャンセル可能。本当にそんな能力を持っていたら、悪くはない選択肢だとは……思う。
3. そして、もし「未来予知能力」でないのなら。
そのままスカウトが続くか……家族等にも説明をした上で能力を制限するための措置が取られる。
「──一つ、はっきりさせておきたい」
「はい」
「期待させて悪いが、僕は能力者じゃない。未来なんて見えたこともない。噂を流した理由は……言えないが」
これは取調室なら一発で有罪になるやつだ。「やりました、でも貴方の思っているような真実はありません。理由は言いませんが」だなんて。弁護士が頭を抱えるだろう。
でも、これ以上は本当に無いんだ。あれは僕の秘密じゃない。あの女の、ほとんど命そのものみたいな秘密を、自分の疑いを晴らすために差し出す──その選択肢だけは最初から無い。
「分かりました。ご本人の否定として、そのまま記録します。その上で、調査を続けさせて頂きます」
だが……まあ、それで引き下がる訳にはいかないよな。
反論こそしないが、マニュアルには「この後も調査を続ける」とあるんだろう。
実際、僕が嘘をついている可能性、嘘をついている訳では無いが無自覚な可能性、僕に他の誰かが能力を掛けている可能性……色々可能性は存在するし、相手のことを鵜呑みにして「はい分かりました帰ります」とはならないはずだ。
「調査の期間は?」
「はい。最低でも一週間。状況によっては、二年以上に及ぶ場合もあります。私の学籍が本物である理由の、二つ目です」
「二年……卒業以降も続く可能性があるのか。僕はずっと否定しかしないぞ?」
「それでも、『規則』ですので……ね?」
「そうなのか。規則なら仕方ないな」
「ふふふ」
途中までは「辻セイラも素直に事情を説明すればいいのでは?」と思ったが、2と3の選択肢で「家族への説明」が含まれるなら話は別だ。それはつまり『大切な人』に能力のことを説明する必要があると示している。組織としては立派だし、決して飛ばすことはできない手順だろう。
あの能力は「自分にも」「精神的な問題にも」反応するんだ。まだ未成年の多感な時期に「自分が家族のせいで死んでいると、家族に説明する必要がある」となれば、彼女の精神が壊れかねない。勿論辻家への精神の影響だって無視できない。
そして何より、僕自身WPPOのことを信用しきれない。
WPPOを悪の組織だと思う訳ではないが……僕は彼らのことを詳しくは知らない。一般的な知識の範疇であれば把握しているが、実情がどうなのかは把握できていない。
彼らに頼ることで本当に問題を『無事に』解決できるのか。能力の解除が優先されて『大切な人』が見過ごされてしまうことにはならないか。彼らを頼ることで『新たな』問題が発生する要因にならないか。
WPPOに真実を打ち明ける……そんな、取り返しのつかなくなるイベントを、正確な判断材料も少ないうちに決断することは、僕にはできない。
僕が信じるのはあくまで「筋の通っているルール」であって、「そのルールを司る存在」ではない。WPPOが超法規的な存在とはいえ、だから無条件に従うなんてこと、僕はしない。
「それでは、瀬尾さん──明日から、よろしくお願いします」
「ああ……」
*
「あの転校生、結構賢そうだね。僕は好印象だよ、ねぇマコト?」
「そうだな……」
「……マコト?」
そうだな。
彼女の初対面は好印象──それ以外の感情なんて出てこないだろう。
見た目が良くて、礼儀正しくて、知性が感じられて、新たな場所に馴染もうとする姿勢を見せて、自分の存在を誇示しすぎず、相手を立てようとする。
少なくとも、悪い印象なんて持ちようがない。
──「ねえねえ九条さん、前の学校ってどこ?」
──「県外です。父の仕事の都合で、何度か移っているんです」
──「あのさ、その眼帯って……聞いても平気なやつ?」
──「はい。目の事情で着けているものです。痛みなどはありませんので、ご心配なく」
──「九条さんって部活どうするの? 俺テニス部なんだけど、見学だけでも!」
──「ありがとうございます。しばらくは学校に慣れることを優先させてください。落ち着いたら、ぜひ」
落ち着いたころには受験シーズンなんじゃないだろうか。
別に彼女がいいなら構わないが。
昨日の帰り、実際に電話を入れてみて「九条ノドカ」の証言が事実であることは裏が取れてしまった。彼女は正真正銘の、本物のWPPO職員だった訳だ。
となると、僕がこの後すべき対応はおのずと決まってくる。
1. 僕が能力者であると思わせてはいけない。
僕は実際に能力者ではない訳だし、勘違いされたままWPPOに召集されて母さんに迷惑をかけるなんてことがあってはいけない。調査期間が終わるまで、僕は能力と全く関係ないということを九条ノドカに強調し続ける必要がある。
2. 九条ノドカを辻セイラと引き合わせてはいけない。
辻セイラが本当にWPPOに頼っていいのか。それが分からない状態でWPPOが辻セイラに辿り着く……そんなやり直しの効かない状況を招くわけにはいかない。九条ノドカが側にいるときは辻セイラに近づかず、辻セイラと会話する際は九条ノドカが近くにいないことを確認する。それを徹底する必要がある。
3. WPPOの実情をなるべく調査する。
僕はWPPOの実情をよく知らない。WPPO職員である九条ノドカと僕は「面倒を見る」という名目で何度も接触する必要がある訳だ。その過程で色々な情報を引き出すことができれば……今度のループ解決に役立つし、WPPOと協力する道も見えてくるかもしれない。
つまり、僕の役割は。
現在不安定な辻セイラの事実を庇いつつ、期限まで九条ノドカの追及を振り切り、できるだけWPPOについての情報を集めること。そこに集約されていく訳だ。
「……マコト? どうしたんだい、そんなに九条さんばっかり見て……」
「……え? なんだ、ハルキ?」
「いや…………いいよ別に。僕、あの転校生とは仲良くなれないと思う」
「えっ」
な、長くないですか……?(・ω・`;)
感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)
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