『大切な人を救うために死に戻る能力』   作:破れ綴じ

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[25:02] 周囲の声を聴いてみよう

 8月。

 学生は夏休みの期間だ。

 

 夏休みはいいものだ。

 大人には仕事があるが、学生は1日中家にいることができる。

 一方が確定で家に残れる……つまり、一人は自由に外出が可能になるということだ。

 この時期を生かさない手は無い。そのために、この瞬間まで待っていたんだから。

 

「最後まで聞いてくれてありがとう、ハルキ」

 

「……流石に、あんな話する親友を、途中で無視なんて、できないよ」

 

 普段は辻セイラから相談を受けてばかりだが、今回の件は彼女に一切関係ない。

 となると、僕が話す相手は──小学校以来の親友、宮野ハルキに他ならないんだ。

 

「だけど、マコト……大丈夫なの?」

 

「大丈夫とは何だ」

 

「君は……『二人は親子なんだから』と言われてしまったんだろう」

 

「……」

 

「それで、ショックを受けていないのかい?」

 

 ふむ。

 なるほど。

 

 

 

 

 

「全く?」

 

「……相変わらずだね、君は」

 

 

 

 

 

 何を言っているんだハルキは。母さんの言葉で傷つくなんて一瞬たりともあり得ないさ。

 むしろ母さんのあの言葉は現在の状況を推し量るために母さんが与えてくれたヒントに他ならない。いくら僕自身がパニックになっているからといって、あの言葉をそのままの意味で受け取ってしまうだなんて母さんの息子失格だ。

 

 というか、どうして母さんの言葉で傷つく必要がある。

 母さんの言葉だぞ? 

 愛しい人から受ける言葉で傷つくのは愛が足りていない証拠だ。

 僕は母さんを愛している。母さんが何を言おうとそれで傷つくことはあり得ない。

 

「それは……強がりではないんだね? 君が本当に傷ついていて、それを誤魔化すために、『母さんは悪くない』と自分に言い聞かせているだけなんじゃ……」

 

「違う。実際に母さんは悪くないし、僕は一切強がってはいない。母さんの真意を読み取っているからだ」

 

「真意だなんて。実際にその言葉は、君が聞きたくないものだったはずじゃ……」

 

「そこだ。そこがポイントなんだ」

 

「……へ?」

 

 考えてもみれば分かる。

 母さんは僕の賢さの源だ。その人が理解できていないはずがない。

 そして母さんは優しい人だ。

 それを踏まえれば、ただデリカシーが無いからあの発言をした訳ではないということも自明だ。

 

 

 

 

 

 ──『二人は──親子、なんだから……』

 

 母さんは、あの言葉が僕の望むものではなく、傷つけるものだと分かっていた。

 

 

 

 

 

 僕とアラタは常日頃から母さんに対する愛を叫んでいる。「母さんがいてくれてよかった」「母さんの息子でよかった」「瀬尾家は僕達三人だけでいい」と。そうずっとずっと、あの人が今の状況を後悔しないように言い続けて生きてきた。

 そして同時に、何かあればあの男への呪詛を吐いていた。「存在する価値もないカス野郎」「同じ苗字を共有したくもない」「悪いのは全部あの男だ」と。実際に悪事を働いていたのはあの男だし、母さんの認知をモラハラで歪めて、母さんが反論できないようにしたのもあの男だ。

 

 このこと自体は母さんはおろかアラタでさえ、なんならハルキだって認識している事実だ。その事実を知っていて、「僕があの男と親子である」と突き付けることが僕を傷つけると、理解できないはずがない。母さんはそこまで馬鹿な人間ではない。

 実際、あの日の食卓でも僕はこれ見よがしにあの男に反抗していた。あの場には母さんもいたし、その状況が見えていなかったわけじゃない。母さんは僕があの男を嫌っていると、親子と認めてほしくないということを理解していた。

 

 なのにあの発言をしたんだ。

 

「つまり、あの発言にはもっと重要な意味がある」

 

「……?」

 

「つまりあの発言には、『息子達とあの男の関係を改善したい』という意思があったんだ」

 

 母さんは、あの発言が『自分の息子を傷つける』と分かっていた上で、『自分が嫌われ役になる形で二人を仲直りさせて着地しなくてはいけない』という事情があったということなんだ。

 事実、あの晩に母さんは「あんなことを言ってごめん」と謝罪をしてきた。あの言葉が僕の望むものではないと理解した上で、それでも罪悪感に圧し潰されそうになって、謝罪せずにはいられなかったんだ。

 

 謝罪なんてしなくていいのに。僕は母さんの気持ちをきちんと理解しているんだから。

 母親の真意を理解できず激昂するような息子など息子ではない。

 

「ど、どういうこと? 何か事情があったっていうこと?」

 

「そうだ、何かきっと事情がある。17年ずっと見てきているんだから、僕が母さんの異常に気づかない訳がない」

 

 母さんはあの男からずっと「お前の体が弱いせいだ」と言われ続け、追い込まれていた。

 そういった経緯もあって、あの人の中では、事実とは違うものの、少し歪んでしまった認知が形成されてしまっている。

 

 1. 自分は、あの男が言うように、生まれつき体が弱く、周囲を困らせている人間だ。

 2. おかげで家庭内では対立が増え、息子と父親の関係が悪化している。

 3. そして父親は「お前のせいだ」と言って家を去った。本当に悪いのは自分なのだ。

 4. その自分の失態を埋め、自分を支えるように息子達は各々で努力している。

 5. しかし、学費という問題は息子達だけではどうにもできない。

 6. そこに、「自分のせい」で家を去った夫が、「子供のために」戻って来た。

 7. 自分はなんとしてでも、あの父親との関係を修復しなければいけない。

 

 つまり母さんは、あの男を「家庭を放棄した無帰任な男」ではなく、「自分の尻拭いのために、そして息子達のために仕方なく戻って来て金を準備してくれる恩人」だと認識してしまっている。

 そんな訳が無いのに。あの男の行動は金という反論不可能な事実を盾にして、自分の帰還を正当化しているだけ。母さんの罪悪感と僕の愛情を同時に利用する構造に落とし込んでいるだけだ。

 何かあればあの男はすぐ消えていなくなるに決まっている。離婚届が提出されていない以上、僕達が親子だという事実は存在するが、それさえあの男は母さんに押し付けてまた逃げるはずだ。

 

 しかし、母さんはそれを分かっていて、そうしなかった。

 あの人の中では『そうするしかない』と思うだけの事情があった。

 僕が「奨学金でどうにかなる」と言おうとも、アラタが「あの人は瀬尾家にいらない」と言おうとも、どれだけあの男に酷い目に合わされようとも、それで息子達が傷つくと分かっていても『そうしなければいけない』と思う何かがあったということだ。

 

「……」

 

「……マコト?」

 

 そうだ、そうに違いない。

 母親を信じろ瀬尾マコト。

 お前は誰の息子だ? 

 そうだ、母さんの息子だ。

 

 よし、僕はいつも通りだ。

 思考は冴え切っている。やることも明確だ。

 

 僕はこれから母さんを救い出す。

 あの男を瀬尾家から未来永劫排除する。

 

「そのために、作戦会議をしたいんだ」

 

「……どうして、僕に」

 

「君が、僕の事情を知る、一番の親友だからだ」

 

「……っ!」

 

 僕はあの男から母さんを救い出すための作戦を立てなければいけない。

 だが、作戦というのは一人で立てるものじゃない。視点が主観に定まっていれば本来見えるべきものも見えなくなるし、客観的な意見が無ければほんの些細な想定外で瓦解するような作戦しか立てられなくなる。

 

 しかし、いつあの男が帰って来るか分からない我が家の中で行うのは非常にリスキーだ。

 母さんだって聞いているんだし、可能なら家の外で、全く足のつかない人物と行う方が怪しまれにくい。しかし、相手がいつ帰って来るか分からないということは、僕とアラタの両方が席を外す状況は望ましくないということ。

 僕一人が家の外に出て、外部の人間と協力するしか、作戦会議を行うことはできない。

 そして、辻セイラはこの件に関しては部外者だ。いつもなら彼女と色々暗躍するんだが、彼女は事情を何一つ知らないし、僕を嫌っているんだからこっちの事情に協力してくれる訳もない。

 

 夏休み期間でも、僕と合流することに違和感が無く、かつ既に事情を知っている人物。

 それは目の前のハルキに限られる。

 彼は僕の家庭事情を昔から聞かされているし、7月の時点で既にその領域に踏み込んでいる。

 

 ……勿論、彼が「面倒事は御免だよ」と言ってきたならそれまでだが。

 

「……いいよ」

 

 ……っ! 

 

「僕は正直、君自身の認知が歪んでしまっている可能性もあ、あると思ってる」

 

「……僕の母さんに対する直感は全て正確無比だ。周りが何を言おうと、どう思おうと、僕は母さんの味方をする。例え母さん本人が否定しようと、僕は母さんを救うためにどんなことだってする」

 

「分かってるよ。分かった上で、協力すると言っているんだ」

 

「……」

 

「僕は君が思う以上に、君の力を過信しているんだよ」

 

 ……ハルキ。

 

 ああ、やっぱり、君は。

 僕の、一番の──

 

 

 

 

 

「──その話、オレも聞かせてもらったぜ、委員長!」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「なっ……日高くん!? いつから、どうしてここに……」

 

「いやオレ家が近くだから……」

 

 ア、アサヒ。

 

 一体いつから……いや、「その話、聞かせてもらった」と登場したんだ。彼は九条ノドカじゃない、おそらくすべての会話をきちんと聞いているのだろう。

 思えば、彼も僕のことを心配してくれていた。その答え合わせのような会話を僕達が繰り広げていたら、気になって盗み聞きしようとするのもおかしなことではない。

 

 しかし、全く気付けないでいた。

 普段なら人の気配に気づくのに。僕は周りの視線には敏感な方のはずなんだ。

 なのに、今日は気づかなかった。辻セイラに言われていたように、今の僕はキレが落ちているのかもしれない。その証拠がまた一つ出てきてしまった……。

 

「だけどよ委員長。今の話マジなのか?」

 

「……」

 

「待ってよ日高くん。これは僕とマコトの話で……」

 

「いや委員長とその家族の話だろ」

 

 ……どうすべきだ。

 僕は、ここで誤魔化すべきか? 

 

 7月に、ハルキに気づかれてしまった時は自分でも相当後悔したじゃないか。昔から事情を知るハルキを作戦会議に引き込むならまだしも、本当に一切の事情を知らないアサヒまで引き込むのは横暴が過ぎる。

 だから本来ここは、「何でもない」と言うべき状況のはずだ。母さんのことを聞かれているんだから、「母さんのことは何でもない」と言えばいい。

 

 しかし、アサヒは「聞かせてもらった」と言っている。断片じゃない。相当聞いている。

 ……だとするとどうだ? 今から全部嘘で考え直して辻褄を合わせようとするには……今の僕にはそこまでの元気が無い。彼は7月からずっと僕を気にしていて、そう簡単に言いくるめられるような状況でもない。

 

 しかし……。

 

「なあ委員長。オレ、『抱え込みすぎない方がいい』って言ったろ?」

 

「……言ったな」

 

「今がそれじゃねーのか? オレが言ったのに、お前が一人で抱えてたら、オレの立場ねーじゃん」

 

「……っ」

 

 ……そうだ、彼の言う通りだ。

 

 母さんのことについて嘘を吐くのは不誠実でしかないし、「抱え込みすぎるな」と言ってきた友人に対して自分の悩みを抱え込むのは不義理でしかない。

 ハルキにだけ喋って、アサヒには喋らないというのも筋が通らない。ハルキに相談したのは、彼がすでに事情を察していたからだったが……アサヒは既に全て聞いてしまっている。

 

 その上、僕の話を、遮らずに最後まで聞いていたんだ。

 ハルキなら事情を知っているからこそ理解してくれると思ったから、だから僕は協力者にハルキを選んだ。だが彼は、事情を知らないにも関わらず、こうして協力を申し出るために、話を聞いていた。

 

「委員長は頭良いからな。オレの思いつくような案なら無理だって分かってんだろ?」

 

「……」

 

「でも委員長は頭良いからな。オレじゃ思いつかない案も思いついてんじゃねーか?」

 

「……!」

 

「だったら、ハルキだけじゃなくてオレにも噛ませろよ。友達だろ」

 

「……っ、そうだよマコト! 僕達は友達じゃないか!」

 

 ……僕が正しいかどうかに関わらず「友人だから」協力すると。

 しかも、彼は「手伝うかどうか」を聞いているんじゃない。僕に何か案があると踏んで、「手伝う前提で何をすればいいか」を聞いている。

 覚悟を……もう決めている。

 

 ……僕は何を迷っていたんだ。

 母さんのために全力を尽くすと決めていたじゃないか。そして、ハルキを作戦会議に巻き込み、意見を貰おうとしていた。既に僕は誰かに頼ってでもこの問題を解決したいと思っていたんじゃないか。

 

「二人とも……ありがとう」

 

「! うん!」

 

「おう。委員長に頼られるなんてクリスマスぶりだぜ」

 

「……クリスマス? マコトと?」

 

「あっ」

 

 勿論、僕の判断が間違っていれば……母さんに「事情」が無ければ。

 もしそうなれば、僕の行為には何の意味も無くなってしまう。僕の行為は、金銭問題というのも現実的な問題の解決策に、「父親なんて必要ない」と理想を押し付けて解決しようとするだけの……邪魔……ただの、子供の癇癪による我儘になってしまう。

 しかし、僕はきっと何か事情があると信じている。母さんが何も考えず、僕を傷つけるという可能性を考慮せず、あんな発言をしたとは考えにくい。

 

 なら、頭を切り替えよう。

 ここでするべきなのは、どう誤魔化すかではなく、彼の覚悟を受け入れることだ。

 

 僕が「思いついた作戦」を共有すべきなんだ。

 

「えっと、作戦だが」

 

「うん」

 

「おう」

 

「二つある。一つ目は、母さんの『事情』を聞きだし、それを解決して、父親と離婚することに同意してもらう……というものだ」

 

 母さんにはきっと『事情』がある。

 だから僕とアラタが継続して母さんに説得を続け、その『事情』が何であるかを聞きだし、僕達の力でその問題を解決してしまえば、母さんがあの男に頼る理由はなくなるという訳だ。

 金銭問題はともかく、僕を傷つけてまであんなことを言ったんだから、あの人を説得するにはそこの問題点を解消することが一番重要になってくるはずだ。

 だから、これが所謂正攻法と呼ばれる解決法のはず。

 

 だが、問題がゼロという訳でもない。

 

「それ、うまくいくのか?」

 

「……難しいと思う。僕達もずっと聞きだそうとしているが、一度も成功していない」

 

「そんな……」

 

 問題は、その事情とやらが、思ったより「根深そう」なことだ。

 

 7月のあの日から今日に至るまで。僕とアラタが何度聞きだそうとしても母さんは泣きそうな顔でただ謝るだけ。僕達には言えない……言いたくない事情があるということだろう。

 僕とあの男の仲を取り持たなくてはいけない事情とやらが何かは分からないが……現状、正攻法で解決するには母さんに無理を強いる必要がある。それはしたくない。

 

 何より、その「事情」が存在しなければ、この方法は何の意味も無くなってしまう。

 

 となると、次に取るべきは第二の選択肢。

 

「もう一つが……」

 

 

 

 

 

「あの男の、不貞の証拠を突きつけるというものだ」

 

 

 

 

 

「不貞?」

 

「そうだ。あの男は確実に浮気をしている。証拠は無いが、僕もアラタも母さんも確信しているし、それは間違いない」

 

「……確信してんなら、やる意味あるか? 要は委員長のお袋が離婚する気になればいいんだろ?」

 

「いや、それでは足りないんだ」

 

「?」

 

 もし、「事情」が存在しなくて、母さんが抱えているのが金銭問題だった場合。

 ……それはそれでショックだが、僕達だけでもどうにでもできる。

 

 しかし、重要なのはそこではない。

 重要な点は、母さんの懸念点が金銭問題「だけ」になるという点だ。

 

 つまり、母さんが資金の援助のためだけにあの男を受け入れて、ある程度の不貞も離婚せず受け入れようとしているのなら──金銭問題が解決すれば、逆説的にあの男を家に入れる必要がなくなる。

 

 僕達に必要なのは、「穏便な離婚」ではない。

 相手の過失を証明したうえでの「金銭の譲渡を含む離別」だ。

 

「! そうか、もし不貞が原因の離婚なら、慰謝料と養育費が受け取れるんだ!」

 

「あーなるほど! 金が原因で別れられないなら、金だけ払わせて追い出せばいいのか!」

 

「その通りだ。通常の離婚ならそれができないからな」

 

 母さんが、あの男に特別な執着を持っている訳でないのなら、金を払ってくれるという状況になった瞬間、家から追い出すことに同意してくれるはずだ。そうなれば金銭問題は解決しつつ、あの男との離別も果たせる。

 そして母さんはあの男に特別な感情なんて抱いていない。抱いている訳がない。

 だからこの方法でも、解決はできるはずなんだ。

 

 だから、僕の行動方針としては。

 1. 家の中では母さんの説得を続け。

 2. 家の外ではあの男の尾行を行う。

 母さんを直接説得するか、間接的に母さんが納得する用意をこちら側で準備するかどうか、それだけの違いしか存在しない。夏の暑さがキツい任務ではあるが、やることは非常にシンプルだ。

 

 そして僕は、この作戦の正当性を第三者の目線からチェックしてほしい。

 どこかに穴が無いか、法的に問題が無いか、本当にこれで解決できると思うか……それさえ保証してくれれば、後は僕とアラタの二人で……。

 

 

 

 

 

「じゃあ、僕と日高くんは」

 

「その男の尾行をすればいいな?」

 

 えっ? 

 

 

 

 

 

「い、いや待ってくれ。協力してほしいのは作戦の正当性があるかどうかの確認だけだ。そこまで危険な真似をさせる訳には……」

 

「また抱え込んでるぜ。どう思うハルキ?」

 

「マコトはこうなんだよ。役割分担さえすれば尾行は一人で十分とでも思ってるのかな?」

 

 ……あっ。

 

 そ、そうだ。

 僕はアラタが家で、僕が尾行をすればいいと考えていたが……尾行とは必ずしも一人でできるものとは限らないじゃないか。追加で二人いれば交代しながら見張ることができるし、実利的に人手が重要だという点を僕は反論できない。

 確かに、その通りだ。

 

 ああ、本当に駄目だな。キレがなくなっている。

 辻セイラの言う通りだし、アサヒの言う通りだ。僕はやっぱり冷静な思考ができなくなっているし、周りに頼ることができなくなっている。さっきもそうやって自分を見つめ直したはずじゃないか。

 覚悟を決めた二人を、僕に突き放す権利は無いんだから。

 

「……分かった。二人とも、ありがとう」

 

「いいよマコト。僕は君を信じてるから」

 

「はっはっは。前も思ったがヒーローのヒーローになるってのはいい気分だな!」

 

「じゃあ、段どりを決めよう。まず、コイツの写真を渡すから……」

 

 ああ。

 やっぱり僕は、友人に恵まれている。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

「どした委員長? 電話か?」

 

「みたいだ」

 

「……誰からだい?」

 

「辻セイラだな……ちょっと出てくる」

 

 ……っと、何故そんなに睨むんだ、ハルキ。

 別に彼女からの連絡は珍しくないだろう。

 しかも今回は無関係なんだから作戦に引き込むとかでもないし。とりあえず簡単に返事するだけじゃないか。何をそんな不機嫌に……。

 

 じゃないじゃない。今は電話だったな。

 彼女の方から連絡が来るとなると……何かあったか。

 

「よし……もしもし」

 

『あっマコト』

 

「やあ辻セイラ。もしかして、『アレ』が起こったか?」

 

 考えられるのは……いや正直考えたくないが。

 おそらく今回の電話は『ループ発生』についてではないか? 

 

 今このタイミングとなると……正直、時期が悪いとしか言いようがないが。

 しかしこうして電話してきているということは僕に何か相談したいことがあるということ。自分は周囲に相談に乗ってもらっておいて、相手の相談は無視だなんてそう都合よくも行かない。

 

 とりあえず一旦話だけだ。余裕があるようであれば、細かいことは後で聞こう。

 一旦、男三人組の作戦が片付いてから、再度かけ直す旨を伝えればいい。

 

『まあ、うん、そう』

 

「やっぱりか……悪いが辻セイラ、猶予はどれぐらいある?」

 

『ああいや、そうじゃなくて。戻って来た証拠があるんだけど』

 

 ……ん? 

 そうじゃ、なくて? 

 

 え? 

 

 

 

 

 

『──アンタのお父さん、能力者なんだって?』

 

 は?




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