今日はクローディアの初めての序列戦が行われた。
クローディアが、それも生徒会長の初の序列戦となると『星導館』の生徒たちは全員が注目する。
クローディアの経歴は実はすごい。地方の大会でも優勝した経験があり、実績も十分。まさに才女と呼ぶに相応しい存在。
でもそんなクローディアは今まで序列前に参加しないでいた。
そして今日、クローディアの対戦相手は《
「実際のところ勝てそうなの?」
「ふふふ。さぁ? やってみないと分かりませんね」
「相手は今流行りの攻撃全振りの剣と銃の使い手だね。銃から剣に切り替える時、必ず隙ができるからそこ狙うといいよ」
「あら? 嬉しいことを聞きました。ではその様にさせてもらいます」
クローディアはそう言い残し決闘が始まった。
そして始まった瞬間、クローディアは目を瞑って自然体になる。
誰もが驚いた。そして戦慄した。クローディアは終始目を瞑ったまま相手と戦い、一度も被弾することなく、勝利してしまう。
クローディアのもつ《
俺のアドバイスなんて必要なかった……恥ずかしすぎる。
その後クローディアが冗談だと思うけど、俺と決闘しようと言ってきたので全力で断った。
正直心が折れそう……しばらくクローディアと決闘をしようとする生徒は現れないんじゃないか?
あとクローディアに人外化け物って呼ばれた……俺嫌われてるのかな
「──綺優、何度も言いますがその《
本日の稽古が終わると師匠にそう言われた。
もう何度目になるか分からない忠告。
なんでも師匠から譲り受けたこの《
因みにどんな《代償》なのかは既に聞いている。
だからこそ俺は師匠のことが心配だった
「安心してください。私は何とも思わないですから」
「……師匠が思わなくても俺が嫌です」
「ふふーん。綺優ったら、沖田さんのことが本当に好きなんですね! それに今は私もその子を手放している身ですから」
すると師匠が咳き込んだ。昔から病弱なのにこの人は無理をする。俺なんかのために
「久しぶりにその子を使ってるせいです。お気になさらず。最近は安定してたんですよ」
「嘘ばっかり」
「仮にそうだとしても、別にあなたのためというわけではありません。なので本当に気にしないでください。私がしたくてしてることですから」
「……ありがとうございます」
その後、もう少しだけ剣を交えたあと解散した。
明日は休みでクローディアに、生徒会室へ来る様に言われている。大切な話があるらしい。
なんだろう? 彼氏でもできたのかな
……よし。書くか
今日学園は休みで朝トレーニングをしたあと、クローディアに呼ばれていたので生徒会室へ行った。
中に入るとクローディアが胡散臭い笑みを浮かべながら、机の上に《パン=ドラ》を置いた状態で俺を迎えてくれた。
ここからはその時クローディアと話した会話を書こうと思う
「来てくださりありがとうございます。綺優。早速本題に入りますね。私の今後の計画とこの《パン=ドラ》について聞いて貰いたいのです」
「わかった」
「ありがとうございます。立ち話もなんですから、こちらへ。長くなります」
クローディアの正面に座り彼女を見据える。
淹れてくれた茶を飲みながら彼女の話に俺は集中した。
まずクローディアが話してくれたのは《パン=ドラ》の能力とその代償だった
「はぁ……3日で1秒のストック……それに毎晩違う自分が死ぬ悪夢。おまえすごいな」
「あら、可哀想とかあんまりだと、心配したり怒ってくれないのですね」
「可哀想だとは思う。それでもその《
「なるほど。またあなたがどんな人なのかを知った気がします」
「俺のことはいいから。それで次は今後の計画ってやつか?」
「はい。単刀直入に言います。私は自分の望む『死』を迎えたいのです」
「……続けて」
「人はいずれみんな死にます。老衰、事故死、病死、死に方は色々ありますよね。ならば私は……どうせ死ぬなら自分の望む形で、望む死を叶えたいのです」
「そのクローディアが望む『死』ってのは?」
「愛する人を守り、彼の腕の中で死ぬことです」
「クローディアの言うそいつの名前は?」
「綾斗。私の危機に駆けつけ、私を守るために戦い、私を救ってくれたヒーローです」
「……いや死んでるでしょ」
そう答えるとクローディアは一度ポカンとして肩を振るわせながら笑っていた
「ふ、ふふ。そうでした。そうですね。私死んでました」
「笑うとこじゃないだろ」
「いやおかしくてつい。以上が私の秘めた想いになります。あ、私と綺優の2人だけの秘密ですよね? シルヴィアにも言っちゃダメですからね」
「もちろん。その綾斗ってやつにもでしょ?」
「ええ。当然です」
「じゃあその綾斗ってやつに会わせてよ。とりあえず」
「……ません」
「ん?」
「その、ですね……まだ見つかってないんです。綾斗が」
……。どうやらクローディアは夢の中でだけその綾斗なる想い人に出会っており、今彼を探しているらしい。前途多難すぎるだろ
「じゃあそこを見つけるところからだな」
「はい。なのであなたには私の懐刀、副会長を務めて欲しいのですが」
「なのでがよく分からないけど、とりあえずクローディアの懐刀になるのは構わない。なんだかんだクローディアには恩を感じてる。でも副会長はダメだ」
「副会長はダメ、ですか。それはどうしてです?」
「俺は
「適当にやってくださってもいいのですよ?」
「そんな無責任なことは無理。したくない。それなら最初からやらない方がマシだよ」
「……話してみるものですね」
「は? どう言う意味」
「いいえ。こちらの話です。さて、もう遅いですね。お開きにしましょう」
「待ってクローディア。最後に一つだけ。なんで俺には話したの?」
「……実は私、《パン=ドラ》の見せる悪夢の中でたった1度だけ死ななかった日がありました」
ここまで言ってくれれば流石の俺でも分かる。
その唯一死ななかった悪夢では俺が居たらしい。他の悪夢には1度も出て来ず、そのたった1度だけ現れた俺。
そして唯一死ななかった悪夢らしい
「なのであなたには邪魔されたくないのです」
「……言い方が冷たいな」
「綺優。くれぐれも……邪魔、しないで下さい。そしてどうか私に協力して欲しいのです。お願いします」
クローディアが初めて頭を下げた。真剣な顔つきだ。物言わさぬ顔をしていた。
俺はそれに頷き、生徒会室を後にし帰路に着いた。
そして今日記に綴っている。
でもクローディア、悪いけど俺は平気で約束を破るよ。悪夢で唯一死ななかったんだろ?
なら簡単だ
クローディア──おまえは絶対に俺が護る
夏が終わり秋がやってくる。
そして同時に今年の
《
そしてその《
「クローディア、《
「いや、えっと……待ってください。あなた《
「当然。誘えるメンバーがいなくて出れてないだけで、《
「……色々私は勘違いしていたようですね。そして綺優、あなたも勘違いしています」
「どういうこと?」
「私は本年度の
どうやら今回の《
俺にはその必要性が分からないけど、きっと賢いクローディアのことだ。意味があるんだろう。
クローディアとなら《
今日は久しぶりにシルヴィとお出かけしていた。
シルヴィは当然として俺も念のため変装をしている。
理由としては最近のシルヴィの人気と知名度の上昇が異常だった
「きっと恋を知ったからだね? 恋する女の子はすっごいんだから」
「うっ……反応に困る」
「あー、寂しいなぁ。いつ迎えに来てくるんだろうな? あーあー、早く結ばれたいなぁ」
そう言うシルヴィは本当に楽しそうだった。
反応には困るけれど、シルヴィにそう思ってもらえているのはありがたいことだ。
だからこそ俺は来年の《
親父のためにも、家族たちのためにも……そしてシルヴィのためにも
「綺凛や母さんたちは元気だった?」
「あー、そういえば私も綺優の家族も綺優とは夏の間会えてなかったもんね。うん元気だったよ〜。相変わらずご飯も美味しくて美味しくて」
「連絡はもらってたからみんな楽しんでたのは聞いてるよ。でもやっぱり直接みたシルヴィから聞きたくてさ……楽しそうだったみたいで何より」
「冬は帰るんでしょ? 綺凛ちゃん、寂しがってたよ」
「それはそうなんだけど、綺凛のやつ《
「え? そうなの!? どこで泊まるの?」
「イザベラさんに話して特別に『星導館』の寮、俺と同じ部屋で寝泊まりしてもらうことにしたよ。幸い《
「え!? ずるい!!!! 私も泊まる!」
「いやいや!? このお馬鹿さん何言ってるんだ。無理に決まってるでしょ」
「それは! ……そうだけど……うぅ……ならせめて綺凛ちゃんを私の部屋に泊まらせて! 私も《
「あー、それは確かに。ペトラさんに聞いてみて」
「あ、あれ? いいの? そんなにあっさり」
「うん。『星導館』じゃどんなに頑張っても絶対男共に見つかるだろ? その度にそいつらの目をくり抜いてたキリないし、綺凛の身の安全を考えたらやっぱり『クインヴェール』が1番かなって」
「うわぁシスコンでた」
「ちょ、褒めんなよ。照れるだろ」
「いや褒めてないから。でもわかった! ペトラさんに聞いてまた連絡するね」
そのあとは普通に遊んだり食事をしたり楽しんだ。
寝る前に綺凛の滞在期間をシルヴィに送らないとな
辺り一面、地平線のように広がる水溜り。
その水面には無数の星々たちと満月が輝いていた。
しかし空を見上げれば雲一つない明るい青い空……そしてそこに浮かぶ黒い太陽。
歪。けれども神秘的なその世界の中心で刀藤綺優は佇んでいた
「ここどこだよ」
「──なんじゃ。お主、自分の心象世界に来たことがないのかえ?」
女性が立っていた。刀藤綺優は一目でわかった。
目の前の見た目麗しき女性は武術家であること……そしてこの人物がかなりの強者であることも
「それにしてもまた立派な
儂の名は范──いや、この姿じゃからのぅ、汪小苑と名乗るべきか?」
「……? もっとちゃんと喋ってくれ聞こえない」
「おお、すまんのう。この際儂が誰なのかはさして重要ではない。刀藤綺優よ。すこしばかり儂と遊んではくれまいか?」
「別にそれは構わないがいきなり現れて──ッ!?」
直後、女性の姿がブレる。そして次の瞬間には刀藤綺優の目の前に彼女の拳が迫っており、咄嗟に刀藤綺優は両手を交差させ防ぐ。
しかしその場で止まりきれず吹き飛ぶことに。
水面にその身を何度かバウンドさせ、四つん這いになる形で体勢を立て直し
けれどもすでにその姿はなく周りを見渡すが見つけれなかった
「ッ! 上か!」
巨大な《
「ほほう! 流石じゃのう! これを切り捨てるか! 見事な抜刀術じゃ! あっぱれ!」
刀藤綺優の手には彼の師から頂いた愛刀が握られており、彼女の攻撃を抜刀で防いだ
「さて次は何で──」
「おい、調子に乗りすぎだ」
「ッ……!」
意趣返し。今度は刀藤綺優が超速で動き空に立っている彼女を叩き落とす。
しかし彼女は水面に身体を叩きつけることなく、水飛沫1つあげずに着地をしてみせた。
刀藤綺優の全力をいなしたのだ
「よい! よいぞ! 刀藤綺優! つまみ食いするつもりが、もう止められん! 儂を失望させるなよ?」
「さっきから何言ってるのか意味が分かんねぇよ。なんでいきなり殴られるんだよクソが。絶対に斬る」
「かか! お主怒っておるのか!? よいぞ! 怒れ怒れ! お主のようなタイプは怒ってた方が面白いからのう!」
「納刀。《縮地》──
「ッ! くるか!!」
刀藤綺優が彼女に迫る。超速から放たれる刀藤綺優の抜刀を彼女は完璧に見切り、平地の部分を掌で叩き落とし防いだ。
だがそれも想定済み。目の前にいる敵はこれぐらいの芸当は難なく出来ると刀藤綺優は読んでいた
「──
「なんと! まだ速度をあげれるのじゃな!?」
先ほどよりも1段階更に加速させた速度。だがまだ足りない。目の前にいる敵を斬るには更に上の速度が必要だ
「──
「──!」
彼女の表情から余裕が消える。
更に、また更に上がった刀藤綺優の速度。
そしてそこから放たれる3度目の抜刀──
「ッ……! この、化け物が」
「ふぅ。ほほっ! 今のは危なかったのぅ! あっぱれ! 実にあっぱれじゃ!」
──真剣白刃取り。
横から振り抜かれた刀藤綺優の刀を彼女は両手で捕らえた。
刀藤綺優は確信する。この女性には勝てないと……だが最悪の場合を想定していた。そしてこれは刀藤綺優にとって想定内だった
「──待て、お主この剣は!」
「──《
「……!?」
刀藤綺優はいつの間にか入れ替えた刀に《
その圧倒的な《
当然《
2人とも水面に身体を打ちつけ吹き飛ばされる
「はぁはぁ……ちっ、これもダメか」
「か、かか! 自爆とはのう! これは想定外! 一本取られてしまったわい!」
刀藤綺優はすでに《
一方彼女は直前に《
「ん? ……お主、その力は《
「……《超速再生》それが俺の能力だ」
「ふむ。《超速再生》……いやこれは……なるほどのぅ……今回はここら辺にしておくかえ」
「なに、逃げんの?」
「かか! 虚勢も立派立派。なに、今このまま戦うと次戦う時、つまらなくなってしまうからのう」
「……そんなに俺は弱いのか?」
「ふ……ふふ、ふはは! 誤解させたようじゃの! 逆じゃ逆。このまま戦えばお主は儂との戦いを楽しめなくなる。それは儂としても避けたいところじゃ」
彼女が手印を結ぶと意識が覚醒していくのを感じられた
「全くあんなでかい穴に、あっち側の世界と、監獄の鎖まであるとは……お主、天然キメラか何かかえ?」
刀藤綺優は意識が薄れていく。言い返したいがすでに体は気だるくなっており、言葉を発せれずにいた
「さて刀藤綺優よ。楽しかったぞ。今度は遊びではなく、お主と戦えることを楽しみにしておる。達者での」
「……!!」
強く。強く強く歯を食いしばる。彼女にとっては今の戦いは、戦闘なのでなく遊びに分類されるやりとりだったのだ。
刀藤綺優は全力を尽くした。当然出し切ったわけではない。
けれども全力で勝つべく挑んだ。だけど彼女にとってそれは遊びでしかなく、戦いと呼べるものではなかったことが明らかになる。
その事実に刀藤綺優は強く深い悔しさを覚えたのだった
最後まで読んでくださりありがとうございました。
急遽時間ができたため、急いで更新。
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