──彼に会う日は少し困る
いつもよりメイクを丁寧にして
新しい服を選んで
髪を何度も巻き直して
気付けば鏡の前に立っている時間が長くなるから
本当に困る
だって彼は何も知らない顔で笑うのだ
──似合ってるね、シルヴィ
その度に私は
もっと好きになってしまう
綺優に会える
たったそれだけで
今日という日は特別になる
入学式を前日に控えた今日。
俺はシルヴィと遊びに出かけていた。
彼女はもう今やトップアイドルで、『クインヴェール』の序列1位にして、生徒会長にまでなった。
努力を惜しまないシルヴィの姿に俺は力を貰えている。
そんな彼女だからこそ入学式が終わり、また新学期が始まれば忙しくなるのは当然。
だからこうしてその前に息抜きに、日本にあるテーマパークに遊びに来ていた
「うーーーん! 日本最高! 日帰りで行ける距離にあるってやっぱりいいよね!」
「それは本当に思う。色々手続きがめんどくさいけど。あとシンプルに──」
「──交通費が痛いよね」
「それ」
往復で数万円が飛ぶ。お互いに《
それにお金とは大切なのだ。そんなぽんぽん使っていいものじゃない。
なのでこうやって散財するのはごく稀だ
「……? 綺優どうかしたの?」
「その服もだし、髪もかな? ──似合ってるね、シルヴィ」
「……。当たり前でしょ! ねね! そんなことよりもお腹すいちゃった! 早く行こ?」
「あ、ちょっと待ってシルヴィ! そんな急がなくても」
シルヴィ急に話題変えたな。夢の国でご飯食べる予定だったのに、コンビニ入るなんて。
ま、日本のコンビニはすごく美味しいし、起きたのも深夜で準備とかもあったからお腹空いてても不思議じゃないか。
コンビニで軽食を摂り、早速夢の国へと向かった。
有料パスなんかも購入済みで、今日はとことん散財するって決めてたから遊び尽くした
「綺優、本当にいいのこれ?」
シルヴィにブレスレットをプレゼントした。
とある雪国のお姫様がモチーフになっているものだ
「え、綺優も買ったの?」
「うん」
「同じやつ、だよね?」
「そうだけど」
「……そっか」
その後の沈黙が居た堪れなくなって俺は恐る恐るシルヴィに聞いた
「嫌だった?」
「ううん! 嬉しい! ありがとう綺優。それに私とペアルックしたいなんて可愛いところあるじゃん」
めちゃくちゃ恥ずかしかった。
その後、夜のパレードを見て俺たちは帰って来た。
どうやらシルヴィも日記を書いているみたいで、帰りの電車の中で書いていたから見たかったけど
「え!? む、むりむり! 絶対ダメ! 人の日記を見るなんていけないよ綺優」
ダメって言われた……。まあ俺も見られたくないし、流石にデリカシーがなさすぎたか。
もう遅いし、俺もそろそろ寝るか
今日は入学式。遂に俺たちも中等部3年。
アスタリスクに来て3年目になるわけだ。
今日は去年と違ってバタバタした1日だった。
まず一つ目の理由として、クローディアの友人である、
ユリス・アレクシア・フォン・リースフェルト
(名前長すぎだよ。めんどくさいな)
さんが転入して来て、転入初日から決闘を挑まれた
「私の名は(↑)! 《白夜叉》刀藤綺優に決闘を申し込む!!」
名前もめんどくさいやつだと思ったら、言動もめんどくさいやつだった。
それにしても本当にクローディアはすごいな。
ユリスはきっと俺に決闘を挑むだろうから、その時は受けてあげて欲しいと言われていた。
なので決闘の申し込みに頷き、始まって速攻、《縮地》に接近して抜刀で終わらせた。
それに手を抜くのは良くないからね。
こんなに早く終わったのは1年の時以来かな
「……っ! ここまで、実力差があるのか……っ!」
すごい悔しがってたけど仕方ないよ。お姫様で、しかも新入生なんだから。
転入生だけど戦いのない日々から来たんだからルーキーと同じだよな。
それに《
そこら辺からも実践、ようは経験不足を感じる。
俺や《
大丈夫、今後積み上げていけば強くなれるさ
「実力はあると思う。でも経験不足をだな。《
「……ッ!」
「次戦う時はもっと強くなっているのを楽しみにしてる」
その意味を込めてこう言っておいた。
よっぽど悔しかったのか顔を真っ赤にしてた。
あれは将来強くなるね。楽しみだ
「綺優……やりすぎです。相手は転入初日の少女……しかもお姫様なんですよ?」
「え、でも手加減したら失礼でしょ?」
「はぁ……あなたのそういうところですよ綺優」
なのにクローディアに呆れられた。
言われた通りにしただけなのに……
天霧綾斗がどこにも見当たらないと思ったら、どうやら来年から来るらしい。
てっきり今年からだと思ってた。
クローディアが自分の命を賭けるんだから、どんなやつか楽しみだったんだけどな。
早く会ってみたい
例年の文化祭。
一昨年と去年は興味がなくて行かなかったけど、今回は『クインヴェール』の出し物を見て来た。
理由はシルヴィのライブがあったからだ。
最近全然行けなくなってたけど、久しぶりに見れて楽しかった。
ウィンクと投げキッスをしてたけど、文化祭の後で通話した時にライブ中に俺を見つけたからサービスしたんだよと言われた
「うおおおお! シルヴィア!!」
「いま! 今俺にウィンクした!?」
「ばっか! おまえ! 俺に決まってんだろ!」
「シルヴィアァァァア! 大好きー!! 結婚してくれー!!」
って感じでファンは大盛り上がり。
皆んなが楽しんでくれてるならよかった
……あれ? 《
ワンチャン《
いや優勝しないと始まらないからそれはとりあえず後回しだな。
未来の俺頑張れ
夏休み。今年は日本に帰らないと決めている。
今年は《
だからアスタリスクに残って、仕上げると決めた。
それとクローディアの懐刀になった。
と言ってもやることはただ彼女の要望、命令に従い叶えること。
副会長になって欲しいと言われているので、来年は生徒会に入る予定だ。
──だから許して欲しい。クローディア
「クローディア、ごめん訓練所が壊れた」
「……はぁ。私がいないときに限って……それはもういいです。どれぐらいですか?」
「えっと……半分くらい?」
「半分?」
「……ごめん。よく見たら全損かも」
「────」
お腹をさすっているクローディアの姿を見て申し訳なくなった。ごめん
夏も終わり秋が訪れようとしているこの頃。
ユリスが《
しかも二つ名で《
めちゃくちゃかっこいいんだけど……ユリスは名前が長くなる呪いでもかかってるのかな?
本名も渾名も長すぎて呼ぶ側が疲れる。
でもそっか、あのお姫様で間合いも知らなかったユリスが序列5位か。
才能はあったし努力家の彼女だからこそ、この短期間で達成できたんだろう。
いつだったか忘れたけど
「綺優恥を偲んで頼みがある。私と模擬戦をして欲しい。また叶うなら稽古をつけて欲しい」
俺自身《
師匠は剣で滅多刺しにしてくるし、ヘルガさんは中々時間がないから、俺にも利があった。
でもこうしてユリスが何か達成したのを見ると、俺も嬉しい気持ちになる
「ちなみにですが綺優、ユリスは多くの√で綾斗と仲良くなってますので、無理ですよ?
まあ、あくまでも私の見た夢の話ですのでなんとも言えませんが」
クローディアになんか変な勘違いをされた。
俺が異性として好きなのはシルヴィだけで、ユリスはなんかこう弟子? 妹? 的な感じだ。
てか綾斗はどうやら複数人の女の子に手を出しているらしい……しかも綺凛にも手を出している√があるとか。
もし綺凛に手を出すことがあれば……うーん、斬るか……いやでもクローディアの好きな人なんだからきっと素敵な人物なんだろう。
うん。きっとそうに違いない。
よし。なら斬る時はせめて一太刀で終わらしてやろう
冬が訪れる。そして──《
俺の初戦の相手は『レヴォルフ』の生徒だった。
『《
「《白夜叉》くたばりやがれ!! うおお『──試合終了! 勝者、刀藤綺優』──えっ?」
勝利。実況者の方が何か言っていたけれど特に書くことはない。この
初戦から躓くことなんて許されない。
決勝ブロックまで抜刀による最速で行く。そう決めた
俺とシルヴィ、そしてオーフェリアも決勝ブロック進出が決まった。
この時点でベスト16だ。
それと今大会が始まって知ったけれど、オーフェリアは前回の《
オーフェリアがそうだったんなんて知らなかった。
それに前回俺と小競り合いした時は毛ほども全力を出していなかったこともわかった。
そんなオーフェリアと当たるのは決勝でのみ。
しかもシルヴィとオーフェリアが同じブロックにいる。2人が順当に行けば戦うのは準決勝戦でだ。
よって俺が決勝で戦うのはシルヴィかオーフェリアのどちらかになると思われる。
誰が来ても変わらない。全力で斬る。それが例えシルヴィでも。
むしろシルヴィの性格上、手加減なんかすれば俺のことなんて嫌いになるだろう。
親父、もう少しだけ待っててくれ
綺凛やお母さんに叔母様がアスタリスクへやって来た。
どうやら俺とシルヴィの応援に来てくれたらしい。
明日はシルヴィとオーフェリアの準決勝の試合がある。
どうか無事に終わって欲しい
勝敗の結果は──オーフェリアの勝ちだった。
シルヴィは自身の《
最終的に《
オーフェリアは決め手に欠けていたけれど、まだまだ余裕がある感じだった。
オーフェリアの強さはその圧倒的な《
けれど強い。それで去年の《
そんなオーフェリアに一撃入れたシルヴィは流石だろう
「あちゃちゃ、私負けちゃったのか」
その後、医療室に向かうと丁度シルヴィが目を覚ました。
ペトラさんから特に重傷と言える傷は負っていないと聞いたため一安心した
「悔しいなぁ……しっかり準備したつもりだったんだけどまだまだだったみたい」
「シルヴィ……」
「あ、いや! 安心して! 確かに悔しいし、今にもうがー! って叫びたいけど、そんな落ち込んでもうだめだぁ、みたいな気持ちはないから」
「……強いねシルヴィは」
「心の強さなら誰にも負けないよ! なんちゃって──え? あ、綺優!?」
この時、俺は思わずシルヴィを抱き寄せた。強く強く抱きしめた
「シルヴィ……俺、絶対に勝つ」
「……うん。頑張れ綺優。私、精一杯応援してるから。信じてるよ」
シルヴィに触れていると胸の奥が暖かくなる。
俺は最低かもしれない。
心のどこかでは決勝戦の相手がシルヴィでなくてよかったと思っている自分がいる。
もちろんシルヴィが相手でも本気でやるつもりだった。
でも出来ることなら彼女を傷つけたくないとも思った。
明日は遂に《
俺は絶対に勝つ。
勝って、親父を救い、綺凛を安心させ、シルヴィに告白する。
絶対に負けない。何が起きても俺は勝たなければない
『──さぁさぁ! 今宵! 《
『『『うおおおおおおお!!!!』』』
刀藤綺優は控え室で会場の熱が高まっていくのを感じていた。
実況者がここぞとばかりに観客たちの熱を、更に熱く情熱的なものへも押し上げる
『頂点を歩み続ける魔女、《
「人外決戦勃発ですね」
控え室へと入って来たクローディアがそう呟く。
それに刀藤綺優は少し嫌そうな顔を浮かべた
「人を化け物扱いするな」
「あらあら、私から見たらあなたは化け物ですよ……そして同時に、オーフェリアも化け物です」
オーフェリア・ランドルーフェン。
彼女の強さは刀藤綺優も既に分かっている。間違いなく今まで自分が相対して来た相手の中でも上位クラスだろう。
下手をすれば己の師匠よりもずっと強いかも知れない相手だ。
少しでも油断をすれば対応しきれず、為す術もなく押し込まれる……それほどの相手なのだ。最凶の魔女と呼ばれる彼女は
「怖いですか?」
「怖くないか怖いで言ったら……正直怖い」
「前は私に勝ってた、なんて言ってましたのに?」
「あの時のオーフェリアが戯れに遊んでただけなのはもう十分わかった……本気のオーフェリアはどれぐらい強いのか想像もつかないよ」
「刀藤綺優選手、入場の時間です」
部屋がノックされ係員がやって来た。
遂に始まるのだ。最後の戦いが
「でも、負けるつもりはないよ。全てを賭けてオーフェリアに勝つ」
「……行ってらっしゃい綺優」
それに刀藤綺優は手を振って応えた。
ステージに入場すると、会場が盛り上がる。多くの人の熱がステージにいる2人を襲った。
対戦相手であるオーフェリアを強く見つめる
「久しぶりね綺優」
「あの時のお返しをしに来た」
「そう……」
「オーフェリア。全力で──」
「──どうしてあなたはそんな目をしていられるの」
「は?」
自身の意気込みを伝えよう……そう思った矢先、刀藤綺優はオーフェリアにそんなことを聞かれた。
質問の真意が理解できない。彼女は何を聞きたいのだろうと。
ただ伝わったものがある。オーフェリアは、自分に何かを見ている。それが何なのかが分からない。
刀藤綺優はそれが何なのか聞こうとしたが──時間だ
『遂に合間見える2人!! もうこれ以上は何も言いません! それでは《
『もちろん。もう語ることは全部語りました。あとはこの2人の戦いを見届けるだけです』
『そうですね!! それでは!! 行きましょうか!!』
機械音が試合開始の合図を告げる。
『──《
戦いの火蓋が切って落とされた
最後まで読んでいたただきありがとうございました。
次回、決勝戦。そして後日談入れてからの、原作突入となります
次回もよろしくお願いします。
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