『──《
機械音の宣告と同時に刀藤綺優とオーフェリアの2人は動き出した。
まず先にオーフェリアが自身の周りに瘴気を纏った障壁を作りだす。
以前、刀藤綺優と戦った時にと同じ展開……当然刀藤綺優もそれを予測しており、前回同様、左拳を振り抜く。一撃で破壊することに成功した。
そのまま校章へと迫るが、刀藤綺優の手首をオーフェリアは右腕で掴み受け止めた
「相変わらず乱暴ね」
「特殊な訓練を受けてるからな」
「か弱いレディに手を出すなんていけない人」
「お前は十分化け物だよ。オーフェリアッ!」
空いた右腕で抜刀──しかしオーフェリアの左手が柄頭を抑え阻止される。
ならばと、刀藤綺優は口で校章の破壊を試みる。
すかさずオーフェリアは後退し距離を取った
「……変態」
「勝つためには手段は選ばない」
「良い心がけだわ。綺麗ごとを並ぶ人よりもよっぽど好印象よ綺優」
「《縮地》、
刀藤綺優の加速。けれどもオーフェリアからすればほんの少し速度が上がった程度。
対応できない程ではない。
一直線に迫ってくる刀藤綺優に対抗すべく、オーフェリアは瘴気の腕を即座に5つ作り出し、進行方向に構える──いや、作り出す前に既にそれらは
「……!?」
能力が行使できずに終わった予想外の事態に、オーフェリアは刀藤綺優から大きく距離を取った。
その直後に先程までオーフェリアが立っていた場所に刀藤綺優の刀が振り下ろされる。少し判断が遅ければ切られていただろう
「ふぅ……流石に判断が早いなオーフェリア」
『おっとぉ!? 今何が起きたのでしょうか! オーフェリア選手が能力を行使しましたが不発に終わりました! ヘルガ隊長は何が起きたのか分かりましたか?』
『はい。我々《
『なんですとぉー!? つまりオーフェリア選手の攻略法が今遂に明かされたのですね!』
『いえ。それは違います。こんな芸当ができる《
ヘルガの答えに多くの人が驚いた。
しかしこれは決して刀藤綺優がヘルガを上回っていると言うわけではない。
刀藤綺優の持つ《千里眼》に天霧辰明流に伝わる知覚の拡張《識》。この二つの技術が合わさって初めて成せる技
『それに刀藤選手は《
「……私に対して随分と多くの策を準備してきたのね」
「別にお前だからってわけじゃない。最善を尽くした結果だよ。ユリスとの稽古で《
《
「ユリス? ……そう来てしまったのね」
「知り合いだったのか」
「あなたには……関係ないわ」
再び展開される魔法陣。今度は先の3倍、15本の腕を作り出した。
だが再び魔法陣は斬られる。放たれる15本の斬撃。間髪入れずにオーフェリアはまた能力を行使するが、何度やっても結果は変わらない。
そして遂に刀藤綺優の間合いにオーフェリアを捉えた。
──届く!!
そう確信した刀藤綺優だったが、本能が警報を鳴らす。
躊躇うことなく、その予感に従いその場から飛び退こうとしたが、突然の方向転換に身体が追いつかず右足をオーフェリアの作り出した瘴気の腕に掴まれた。
即座に右脚を斬り落とす。激痛が走り脳を焼く。しかし痛みは慣れている。それに構う暇もない。
即座に右脚を再生し今度こそその場から離脱した
『な、ななな!? なんだぁぁぁ!? 刀藤選手が自ら脚を斬った次の瞬間には右脚が生えてきたぞ!?』
『知らない人も多くいるでしょう。刀藤選手は《
『ち、チート! そんなのズルすぎません!?』
『再生にはそれ相応の《
「……腕の数、もっと出せたのか」
「えぇ。15が限界だなんて言ってないわ」
「そうか。でも問題ないな。俺が同時に斬撃を放たれるのは30。20になったところで問題はない。次から30まで出せると想定して動くだけだ」
「……そう」
再び構え直す。15が限界だと思っていたが、今の攻防で20本の腕を作り出せることが判明した。
刀藤綺優は内心自分を叱る。相手の限界を決めつけていた。それは良くないことだ。次からは最大の30。そう想定して動くとインプットする──が、それも刀藤綺優の致命的なミスと言えた
「ねぇ、綺優」
「……なに」
「私、30が限界だなんて言ってないわよ」
「……う、そだろ」
『な、なな……ま、マジですか?』
『……校章の反応なし。《
会場にいる全ての人が驚きのあまり言葉を失っている。
辺りを埋め尽くす魔法陣。数の暴力、その数実に──
「──私が1度に作り出せる数は、
「……ッ!!」
「──
100本の瘴気の腕が刀藤綺優へ迫る。
斬撃を続け様に放つことで半分近くの腕を斬ることに成功するが、残った腕が襲いかかる。
それらを《連鶴》を用いて斬り続けた。
《連鶴》に果てなし。刀藤流が掲げる《連鶴》は49ある剣技を組み合わせ繋げることで、剣士が剣を振るう限り永遠に続く剣技だ。
そして刀藤綺優が使う《連鶴》は《千里眼》と《識》によって、高度な未来予測を可能とした更に先を読むことができる《連鶴》となっている。
《連鶴》を超えた《連鶴・改》を更に超えた《連鶴・極》と呼ぶべきだろう
『強い! 強すぎる《
『試合が始まる前まで私は刀藤選手の方が有利だと考えていました。
決勝に至るまで苦戦のなかった刀藤選手と違い、強敵を相手に勝ち上がってきたオーフェリア選手。
そしてオーフェリア選手の情報。またお互いの能力の相性などを考慮した上で、です……しかしこれを見ると浅はかだったと言わざる得ません。
今までの試合では15本で事足りた。ただそれだけ。私たちはそれがオーフェリア選手の限界だと決めつけてしまっていました。それと……いえ、これは言わないでおきましょ』
『非常に気になりますが、今は刀藤選手に注目です!!』
迫る。斬る。迫る。避ける。迫る。掠める。再生。
それらの繰り返し。刀藤綺優はギリギリのところで踏みとどまっていた。
数の暴力による攻撃。斬ったとしてもすぐに次の腕が迫り、新たに作り出された迫る。
現状の突破口を見つけられずにいた
「……! ……ッ!」
「……どうして? どうしてあなたはそんな目をしていられるの?」
「……!」
「痛いでしょう? 苦しいでしょう? 怖いでしょう? あなたの運命は強いわ。でも、それ故にあなたを傷つけている。もう諦めなさい。楽になっていいのよ」
「……勝手に決めつけんなよ」
「ッ……!!」
刀藤綺優の《気》がオーフェリアを襲う。
それと同時にオーフェリアの作り出した瘴気の腕が、次々と先ほどよりも速く斬られていく
『もう今日は何度驚かされるのでしょう!? 刀藤選手! なんと!! 2振りの刀で《連鶴》を繰り出しております!!』
右手には愛刀を。左手には逆手で握った《
右手の《連鶴・極》と左逆手の《連鶴・裏》。2振りの刀を持ってして、このオーフェリアの理不尽の攻撃を防ぎきったのだ。
流れが変わる。会場が再びどっと湧き上がった
「これすらも想定したと言うの?」
「いや、右手と左手……しかも逆手での《連鶴》は今思いついた」
「……今?」
「今まで《連鶴》を片手で振るうことなんて考えたことがなかった。でも今この局面を突破するにはこれしかなかった。ありがとうオーフェリア。お前のおかげで俺は更に強くなれた」
そう答える刀藤綺優の表情はどこか楽しそうであった。
負けられない戦い。けれど刀藤綺優は心のどこかで強者との戦いを楽しんでいる。
そして今更に自分が強くなったとことを実感していた。
そんな刀藤綺優の様子を見て、オーフェリアの表情に影が差す
「どうして……どうしてあなたはそんな目をしていられるの!!」
「……ッ!!」
刀藤綺優が初めて見るオーフェリアの感情。
それが《気》となって刀藤綺優に襲いかかる。感じられるのは不快感。
それはその《気》を不快に感じたのではなく、オーフェリアが刀藤綺優に対して不快になっていること。
そして強い怒りと……僅かなナニか。そのナニかは、刀藤綺優の心に強く訴えかけていた。
オーフェリアに聞き返そうとした時、異変が起きる
「な、なんだ……こ、れ?」
「あなたが斬った腕、全ては瘴気の毒よ。私が込めた毒はあなたの五感に作用するもの」
「……?」
「ああ、もう聞こえなくなっているのね。聴覚が奪われたのね。もう届かないでしょう……だけど伝えておくわ。残り全ての五感、触覚、視覚、味覚、嗅覚、奪わせてもらうわ」
「……ッ!!」
咄嗟に刀藤綺優はその場で刀を振り出す。
《連鶴・極》と《連鶴・裏》──いや、既にこれは《連鶴》と《連鶴・裏》と呼ぶべきだろう
「ああ、可哀想な綺優。もう目も見えないのね」
そう。刀藤綺優が剣を振り出した理由。
視覚が奪われたからだった。
何も聞こえず何も見えない。そこで刀藤綺優がとった選択は、超高速で止まることなく《連鶴》を繰り出すこと。
それにより例え相手が迫っても対応が難しく、再び腕で攻撃しても突破することは難しいだろう……しかしそれが続くのも刀藤綺優の体力がある限り。
刀藤綺優とて体力が無尽蔵にあるわけではない
『い、今恐ろしいことを言わなかったすか?』
『……この攻撃を許してしまう《
一方、観客席ではクローディアが生徒会のメンバーに綺優の心拍数を確認するよう伝えた。
《
五感を奪われる。後遺症が残った場合の時のことを考えると、ゾッと体中が冷える。
校章が故障してて、刀藤綺優の心拍数を正確に測られていない可能性を考えていた
「う、うそ」
「どうしたのですか!? 早く! 手遅れになる前に!」
「ひゃ、115。115です……平常です!」
「なっ!?」
校章は壊れてなどいなかった。刀藤綺優は寧ろ落ち着きすぎているぐらいだ。
隙を作らないために高速で両手に握った刀を休むことなく振り続けている。それを考えれば寧ろ低い方だろう
(刀を握ってる感覚も消えた。嗅覚もなにも感じられない。味覚は……正直わからない。
意識の拡張の間合いも怪しくなってきた。気配だけじゃ正確な情報は汲み取れない。
ひとまず校章を守る。それから──)
冷静に現状を分析して、どう対応し打破するか考えている。
そんな刀藤綺優を見て、オーフェリアは困惑していた。
あの目はまだ諦めていない。一切の光を映せていないあの目。五感を奪ってなお、彼はまだ自分に勝つつもりでいるのだと分かった。
絶望のほとりに立っている。でも臆することなく、進もうとしている。立ち止まってはダメだと
「……して……どう、して」
オーフェリアは理解できない。
彼女は気づいている。彼、刀藤綺優の中には自分と同じ《穴》があることを。あちらの世界と繋がっていることを。
そしてお互いに絶望を味わった人間だと。
オーフェリアはその時に悟った。全て無意味なのだと。運命は決まっていて、それに沿って世界を進むのだと。
しかし刀藤綺優は違った。それでも尚、違うのだと、まだまだこれからだと、前へ進む。明日を信じて
「──ッ!
無慈悲。再び100本の腕が刀藤綺優へと迫る。
当然今の刀藤綺優にそれらを全て捌くことは不可能。
殴られ、投げられ、叩きつけられ、潰される。
しかしそれでも諦めない。校章は守り抜く、違和感を感じた部位を再生する。
手も足も出ない状況。それでも諦めなかった
「……そう。ならもう終わらせるわ」
100本の腕が1つに纏まっていく。本来なら出来上がる前に刀藤綺優に斬られていただろう。
しかし今の刀藤綺優にはそれは不可能だ
「っ……! さようなら綺優」
魔女の鉄槌。拳が上から振り下ろされる。
それを綺優は──交わした
「……!? あなた! いつのまに!?」
「《縮地》──
「うぅ……ッ!!」
一瞬の隙をつき、オーフェリアに自身の出せる最大の速度で迫り抜刀を繰り出す。
オーフェリアはそれを両腕でガードしたが、ステージの壁にまで吹き飛ばされ叩きつけられた。
煙の中からオーフェリアが出てくる。決定打にはなり得ないと分かっていたため、刀藤綺優は特に落胆することなく構え直した
「はぁはぁ……よし、待たせたなオーフェリア。第二ラウンドだ」
「……どうやって? どうやって取り戻したのかしら」
「おまえが扱うのは毒の瘴気。毒なら抗体を作ればいい。散々ぶん殴ってくれたよな。周りに漂っているお前の《
正直再生させるだけなら簡単だった。でも抗体がない中で再生してもすぐ五感を奪われた。だから俺は先に抗体を手に入れることにした。
上手くいくかわからなかったけど成功だな」
「……ああ、そういうこと。あなたは知らないのね」
「……?」
オーフェリアは気づいた。実況席の方へ視線を移す。その視線に気づいたヘルガは呆れ顔を浮かばせながら頷いた。
刀藤綺優の《超速再生》を理解しているのは4人。
彼の師である沖田総司、ヘルガ、《万有天羅》、そしてオーフェリアとなった
「1つ答えて欲しいわ」
「……なんだよ」
「あなたはどうして立ち上がれるの? 知っているのでしょうアレを。絶望を」
「……おまえも知ってるのがオーフェリア」
「ええ。絶望を知った。それでもなお立ち上がるのはなぜ? 運命は変わらない。なのに立ち止まらず明日に向かって、前へ前へと進めるのはどうしてなの?」
「……妹がいるからだ」
「え……?」
「親父に託された。妹を家族を。守りたい大切な人がいる。失いたくない人がいる。俺を信じてくれる人たちがいる。
それに応えたい。逃げ出したくない。それだけだ」
「……そう」
「なあ、オーフェリア。おまえにもいるんだろ? 大切な人が」
「……」
「おまえを救いたいって言ってたぞ」
「……ええ。知ってるわ」
「そっか……ならもう何も言わない」
「もう終わりにしましょう」
緊張が会場を包む。既に《
そしてオーフェリアもいつでも瘴気の腕を展開できるように準備を整えていた。
刀藤綺優は内心焦っていた。今までにない再生の繰り返しと、抗体を作るために無理に酷使したせいか、《超速再生》ができなくなっている
(……多分オーフェリアの《
今までのように肉を切らせて骨を断つの戦略が取れない。刀藤綺優がもっとも得意とする戦闘スタイルは使えない。
ならここは慎重に──など、あの刀藤綺優がなるわけなどなかった。
攻めが最大の防御と考えている彼に、攻めない選択肢はない
『おっと! 刀藤選手から動きましたぁ! オーフェリア選手に《
「今更そんな攻撃……っ!?」
腕を使っては視界が隠れる。そのため少し体を逸らし避けようとしたが、突然その《
煙が舞い上がりオーフェリアの視界を奪う
『爆発した!? 剣に見えましたがダイナマイトか何かの爆破物だったのでしょうか!?』
『違いますね。あれば《
『し、失敗ですか? 成功ではなく?』
『はい。《
刀藤選手はそれを逆手に取り、投擲の寸前で一度に《
何度も《
全ての失敗を刀藤綺優は活かしている。失敗を失敗で終わらせるのではなく、失敗を経験として新たな選択肢として身につけて行った。
目の前が見えないことでオーフェリアは身動きが取れない。
今ここで煙を晴らそうと動けば、その隙に攻め込まれる。
かと言って抜け出そうとすれば煙の動きに合わせ斬られる。
そこでオーフェリアの取った選択は、複数の方向へ腕を伸ばすことだった
「……! ちっ、全部腕か! オーフェリアは……上か!」
「ああ、本当にあなたは自由なのね」
オーフェリアは刀藤綺優の戦い方を見ていてどこか気持ちが晴れていくのを感じた。
オーフェリアも多くの強者と戦ってきた。彼らにはみんな自分の戦い方があり、それが通用しなくとも基点にして挑んできた。
だが目の前にいる刀藤綺優は違う。通じないならば別の手を。手がないならば考え作る。
その戦い方を見てオーフェリアは刀藤綺優の発想が自由に思えた。ならばと
──私も彼に見習って、自由にやってみようかしら
上空から迫る瘴気の腕による数の暴力。
それを刀藤綺優は慎重に捌く。被弾は許されない。
1本、また1本と丁寧にそして確実に斬り捨てた。
そして最後の腕を斬り落とし上空にいるオーフェリアを見据える。
オーフェリアは上空で球体型で瘴気に包まれており、姿が見えなかった。
刀藤綺優は迷わずオーフェリアが何かする前に斬撃を放つ──しかしそれはオーフェリアに届く寸前で霧散した。
そして遂に──殻を破り、魔女は現れる
『な、なんなんすかあれ。オーフェリア選手、ですよね?』
球体が割れその中から現れたオーフェリア。
彼女の背中には3対6枚の漆黒の翼が羽ばたいていた
「──phase next。ルシフェル。とでも呼びましょうか」
「随分とメルヘンな姿になったなオーフェリア」
「ええ、私も女の子だもの。メルヘンなものは好きなのよ。ああ、あとその羽に触れない方がいいわ。死ぬわよ?」
「……!!」
刀藤綺優はその警告を素直に聞き飛び退く。
上空からはオーフェリアの翼が羽ばたいたことで、羽が宙を待って地へと落ちてきた。
そしてその羽が触れた場所が塵となっていく。これはオーフェリアの使う技の1つ、《
上空には無数の羽が舞っている……そう、そのまさかだ
「これ全部が……」
「ええ。それともう再生は無理みたいね?」
「……嫌なやつだ」
「褒め言葉として受け取っておくわ。ならそうね、この羽を降らせるのはやめてあげる。その代わり──こんなのはどう?」
上空を舞っていた羽から魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣から様々な武器が現れる。
剣、槍、斧、弓矢、実に様々な武器の数々が上空に現れ──刀藤綺優へ向けられていた
「……おいおい嘘だろ!?」
「降り注ぎなさい」
オーフェリアのその合図と共に無数の武器たちが刀藤綺優へ襲いかかった
『ヘルガ隊長……これ夢っすか?』
『いえ……現実です。今までオーフェリア選手は瘴気の腕しか作っていませんでしたが……どうやら刀藤選手との戦いで何かを掴み、彼女もまた成長したのでしょう。瘴気の腕に拘らず、自由に姿形を変える術を覚えた。オーフェリア選手は1段階さらに上のステージへと上がりました』
今まで最強と呼ばれる彼女、オーフェリアを追い詰める存在は居なかった。
だが今回、刀藤綺優と戦うことでオーフェリアは成長した。
弾丸のように弾幕のように迫る数々の武器を刀藤綺優は捌き続ける。
1つ1つが必殺と呼ばれる威力を持っていた。
再生が使えない以上、食らえば負け。今まで以上に神経を集中させていた
「反則……ああ! だろ!?」
「あら? どんなに攻撃しても再生してくるあなたに言われたくないわ」
「おまえのは人を殺しかねないものだろうが!!」
オーフェリアに不満を叫びながら刀藤綺優はステージ中を駆け回る。立ち止まれば集中砲火に合い負ける恐れがある。立ち止まることは許されなかった
「そうね。確かに幾ら私でも《
攻撃の雨が止む。しかし油断はできない。
今の相手は進化したオーフェリアなのだから
「ならこんなのはどうかしら」
ステージに巨大な魔法陣が浮かび上がる。
刀藤綺優は即座に斬撃を飛ばそうとしたが、再び上空から攻撃の雨が降り中断せざる終えなかった。
そしてその魔法陣から現れたのは
「……おいおい、嘘だろ」
『……は、はぁ? う、嘘っすよね?』
『……』
「私も初めてだから名前はないの……そうね、黒龍・バハームト、とでも呼ぼうかしら」
「Rrrrrrrrrrrrrrrrr!!」
全長30mに及ぶオーフェリアに作り出された黒い龍。
それに会場は今日1番の盛り上がりを見せた。
対して刀藤綺優は今からこれと対峙するのだと考えると冷や汗が止まらなかった
「蹂躙なさい」
魔女の号令。目の前の黒龍が雄叫びを上げながら刀藤綺優へと襲いかかった。
横から迫る爪を受け止め、上から振り下ろされる尻尾を避け、食いかかろうとする顎を弾く。
先ほど同様、どれもが重く被弾の許されない攻撃だった
『ヘルガ隊長、私本当に自分もあの2人と同じ《
『あの2人は《
生きる伝説であるヘルガ・リンドヴァルにそう言わしめる存在……それが今のオーフェリア・ランドルーフェン、《
このままでは勝てない。そう判断した刀藤綺優は黒龍ではなくオーフェリアの校章を破壊するべきだと解を出す。
上空でオーフェリアが何かを準備していることは感じ取れていた。
これ以上彼女の好きにさせれば本当に負ける。
ならばもうやるしかないと
「《縮地》──
黒龍の周りを駆け巡る。まだ足りない。もっと速く
「……ッ! さ……くっ!
刀藤綺優は上空にいるオーフェリアに向かって、観客を守るためにステージを覆っている《
刀藤綺優をオーフェリアの元へ行かせたいと黒龍がその翼を羽ばたかせ追いかけた──そして刀藤綺優は待っていたと言わんばかりに、方向を黒龍の方へと転換した
「
限界を超え更に限界を超えた速度。
そして落下の力も加えて黒龍の首へ迫る
「堕ちろォォォォォ!」
「Grrrrrrrrrrraaaaaaa!?」
「はぁはぁ……やられっぱなしは、はぁ……性に合わないんだ」
『『『うおおおおおおお!!!』』』
黒龍は刀藤綺優に斬られ地面に叩きつけられ霧散し消えた。世界中の至る所で人々が湧き上がる。
──龍を斬った鬼
この戦いを見届けた者達によって、刀藤綺優は龍を斬った存在として語り継げられることなる。
今度こそオーフェリアだ、と刀藤綺優は上空を見上げた。
その直後だった
『《
空で機械音が告げる。
オーフェリアの側には巨大な魔法陣が出来上がっていた。
そこに込められた《
「刀藤綺優、この勝負あなたの勝ちでいいわ」
「は? お前何言ってるんだ」
「本心よ。でもその代わり──あなたを試させてもらう。これは私があなたにおくる試練」
「ふざけんな。真剣に──」
「──真剣よ。絶望を知ってもなお! 運命を変えられると信じて前へ進もうとするあなたを、私は試さなければならない!」
『──オーフェリア・ランドルーフェン選手の《
『ッ!! 全員逃げろ!! 今すぐこの会場から出るんだ!! 《
ヘルガの緊迫した叫び声が会場全体を包む。
《
「ソレを知ってなお! 諦めないと! まだまだこれからだと! 未来は希望に満ちているというのならば!! 乗り越えなさい! ──私に示して」
「オーフェリア……ッ」
紡がれる。魔女の願いが
命の灯火は潰え
世界は静寂へ沈む
魔女は願う。勇者たるものよ、私に永遠の夢を
魔法陣から現れるは巨大な槍。
そこに込められた《
ここ水上学園都市アスタリスクを沈めうる力が込められていた
「……ふぅ、わかった。来いオーフェリア」
覚悟を決める。そしてそんな刀藤綺優を、その目を見てオーフェリアは笑みを溢した
放たれる最強の魔女の槍。
刀藤綺優は真正面からそれを受け止め、斬り伏せると決めた
「……ごめんなさい師匠。起きろ《煉獄》出番だ」
刀藤綺優の持つ刀から赤黒い炎が漏れ、全身が包まれる。
彼の師から譲り受けた《
炎の中から現れた刀藤綺優は後ろと横髪が腰の辺りまで伸び、銀色の髪に少し桜色が加わっていた
『────』
「わかってる。行くぞ」
《
オーフェリアの槍と刀藤綺優の剣が交わる。
衝撃で観客を守っていた障壁は割れる、すぐさま《
やがて眩い光に包まれ──光が収まり2人の行方はどうなったかとステージへ全員が目を向けた
「……」
「見届けたわ。綺優。ありがとう」
気を失い元の姿に戻った刀藤綺優を抱え、3対6枚の翼を広げ舞い降りるオーフェリア。
やがて地上へ降り立ち彼をそっと下ろした。
そして実況席へと振り返る
「私の負けよ。《
『え!? あ! はい! 《
《
勝者──刀藤綺優。
これにて閉幕
最後まで読んでくださりありがとうございました。
オーフェリアの格を落とさず、綺優に勝たせないとなぁと考えてたらなんかこんな長くなりました()
前作から知っている方は覚えてたらですが、あっさりと勝ってしまったそれを変えたかったので今回の展開は新鮮で届けられたと思います。
とりあえず次回後日談、シルヴィの日記を1回挟んで、原作突入です
1ヶ月ほど休みたいかなとか考えてます(遠い目)
長くなりましたが改めて最後まで読んでくださりありがとうございました。
感想、お気に入り登録、お待ちしております