刀藤綺凛の兄の日常記 作:綺凛*凛綺
私、シルヴィア・リューネハイムは変装して今日、散策していたらとても不思議な子に出会った。
名前は刀藤綺優。日本の男の子。
手に持っている地図を見ながら周りを見渡していて、どうやら迷子になっているみたいだった。
私もこの後用事があるけれど、時間に余裕があるので力になろうと思い声をかけた。
「ねぇ、君どうしたの? 迷子?」
綺麗な銀色の髪。澄んだな藍色の瞳。長い睫毛にびっくりするぐらい整った顔立ちだった。
『聖ガラードワース学院』の子かな? と思ったら、どうやら『星導館学園』の生徒で、同い年の今年中等部1年になる子だった。
いざ渡された地図を見ると、それはもうぐちゃぐちゃでこれを作った人は腹黒いでしょ、って思わさせられる。誰なんだろうね。
スマホでナビつけなよって言ったら、使い方も分からないって言ってるし、面白いよね。思わず笑っちゃった。なんか可愛い。
ナビをつけてあげると「ありがとう」と返事を返して、歩き出す綺優。
私は思わず呼び止めた。信じるの? って。
だってこの子1回騙されてるんだよ? そしたら
「え? いたずらしたの?」
「いや、してないけど……」
「え、うん。なら……着くんでしょ?」
すごいよね。全く疑わない私のことを信じてる。
日本人だからなのか彼だからなのかはわからない。
でも私からしたらそれが新鮮だった。
あんなに騙された直後にこれやられたら、スクロールとかして目的地を確認するでしょ。
なのに綺優はそれもしない。
綺優は他人を信じれる優しい子なんだねって思う。それが利用されたりしたらって思うと心配になるよ。
今度こそお別れしようとしたら、
「シュビア! 連絡先教えて欲しい。今度お礼がしたい」
「え? いいよいいよ。気にしないで。それに連絡先はもう追加しておいたから」
私は自分の端末の画面を見せながら手を振る。
これも何かのご縁。それに昔日本にいた時に助けれてくれた子と雰囲気が似てたのもあり、私は彼と連絡先を交換した。
綺優は頷くと手を振って今度こそ解散となった。
連絡が来るのが楽しみだ。
……綺優から連絡が来ない。
普通私ぐらい可愛い子と連絡先交換したら連絡してくるものじゃないの!?
私から連絡するのも負けた気がするからなんかやだ。
まあ、昨日の今日だしそのうち来るよね
ぜんっぜん連絡が来ない。どういうこと?
(文字が力強く書かれている。紙が少し潰れている)
今日は数週間ぶりに綺優に会った。
商業地区にあるカフェに寄ったらたまたま1人でティータイムを楽しむ綺優を見かけた。
背後から忍び寄って声をかけると、びくっ、て反応してて可愛いかった。
「綺優連絡くれないから生きてるか心配だったよ」
「ごめん。ちゃんと生きてるよ」
「ならもっと連絡してよ」
「いや、迷惑かなって」
「もぉ〜。友達なんだから。ね?」
最近のお互いの近況報告をして学校生活がどうなのか話し合った。
慣れない英語は、放課後に同世代のクローディア・エンフィールドさんに教わっているらしい。
綺優と同じ学園なら私が教えてもよかったのに。
「綺優はさ、どうしてここにやって来たの?」
「それは……」
悩んでいた。いろんな感情が読み取れた。
1番読み取れたのは後悔の念。悔しそうにしていた。寂しそうにしていた。怒りもそこにはあった。
私は両親のことやこの芸能界に身を置いているせいか、人の感情が他の人よりも機敏で深く読み取ってしまう。
気になった。彼がそこまで感情を現す理由が。
「ごめん。言えない」
でもそれは無神経だった。どこか苦しそうな綺優の表情を見て私は後悔した。
「……俺は誰よりも強くならないといけない。そのためならなんでもする」
怖かった。この時の綺優からはとんでもない迫力があって、気が溢れていた。
彼はいったい
ただ……どうか道だけは踏み外さないで欲しい。私はそう心に願った。
その後上手く会話を広げたかったけど、綺優の瞳に影が差してて上手く話せなかった。
その後、電話があって仕事の時間になりお別れした。
けれど綺優のあの顔が忘れられなくて集中できずに1日を終えてしまった。
……今度あったら綺優のこと笑わせたいな
んー、私らしくない。
どうやら態度に感情が出ていたようで、マネージャもしてくれるペトラさんに何があったのか聞かれたらから事情を話したら、それで集中してくれるならと、綺優の近況を調べてくれた。
すると明日綺優は公式序列戦に参加するようで、相手はいきなり《
さらには特待生枠だったこともわかった。
「……シルヴィ、彼は何者なんですか?」
「分かんないよ。ここに来て初めて会ったんだから。でもそっか、特待生枠だったんだ綺優」
「特待生枠だからと言ってこれは異常です。公式序列戦で《
統合企業財体の1つであり、水上学園都市アスタリスクの6つある学び屋の1つ、『星導館学園』を運営する『銀河』。
そんな『銀河』が特待生枠として招いた綺優。
ますます気になる。
「ねぇペトラさん明日のスケジュール聞いてもいい?」
「調整します。刀藤綺優の決闘の中継が見たいのでしょう?」
「さすが。よろしくお願いします」
「ええ。私も気になりますから」
さてと。不思議で惹かれる綺優くん。お手並み拝見、楽しみだね
綺優の公式序列戦は……規格外すぎた。
決闘が始まった直後、綺優の姿がブレると次にその姿をはっきり映した時には既に相手の校章が破壊されていた。
『
昨日日記を書いた後、刀藤綺優ついて色々調べたけど彼の経歴は何も出なかった。
唯一ヒットしたのが、日本の剣術の1つ刀藤流を主派とする刀藤家の長男であること。
ただ彼が主流に扱うのは別の剣術であり、後継者ではないという事がわかった。
そんな彼が今日、12位相手に一太刀で勝利。
会場はシーンと静まり返り、綺優はそれがさも当然かのように気にする事なく会場を後にしていた。
「シルヴィ、本当に彼は何者なんですか?」
「だから知らないって。私が知りたいぐらいだよ? ちょっと強過ぎないかな綺優」
あの迷子がギャップすぎるんだけど。
機械が触れない地図がおかしいことにも気づかない人がこれだけ強いって笑える。
いや、強さに関しては全く笑えないんだけど。
ペトラさんが今後、綺優のことを調べて何か分かったら教えてくれるって。
もっと綺優のこと知りたいから嬉しい。
……連絡こないなぁ
わお。朝からこのニュースで学園はもちきり。
クラス中のみんなも騒いでて、昨年の超新星《
『銀色の髪を靡かせ、剣を振るうその姿はまさしく———“夜叉”』
のキャッチコピーを掲げての《白夜叉》。
かっこいいじゃん。
クラスのみんなに綺優のことを自慢したい気持ちをぐっと抑えて聞き耳だけ立ててた。
「言うほど貴女も何も知らないのでしょう……シルヴィ」
ペトラさんにそう言われる。
そうだけどさぁ……やっぱり友達が活躍するのは嬉しいじゃん?
でも少し複雑だな〜。
こんな感じで綺優を知ったら怖い一面以外にも優しいところもあるんだよって分かって貰えないし。
でもまぁ、それならそれで私だけが知ってるってのもなんか嬉しいかも。
「……シルヴィ、あなたはアイドルですからね」
「……? 分かってるよ。もっともっと頑張りますよって」
「そうではなく」
「はいはい! じゃあレッスン再開!」
ペトラさんが何かいいたげだったけど私は無理やりレッスンを再開させた。
小言は聞きたくないもん
綺優から連絡が来ないから思い切って私から昨日の夜寝る前に連絡した。
連絡する口実もできたから。
『綺優、序列戦みたよ! すごい強いんだね! 《
私もいつかは《
あ、綺優から返事が来た!
……。
親指を立てたグッドだけのスタンプが送られてきておしまいだったんだけど??
(紙が握り潰された跡がある)
綺優の序列戦が終わった週末。
今日の夕方からスタジオを借りての、ライブがあったからそこに綺優を招待した。
ソロ活動を始めて数ヶ月。まだまだ未熟者でダメなところも多いけど、綺優に変装も何も隠していない、私のことを知って貰いたかった。
有難いことに観客はそれなりに居て、楽しくやれた。
全部終わった後に綺優と合流して感想を聞いてみた。
「すごくよかった。またチケット貰えたら行きたい」
「本当!? 嬉しいありがとう! じゃあまた準備するね」
「お金とか必要なら言ってくれ」
「いいよいいよ! いつもチケット数枚招待用で貰えるんだ」
「そっか。あの人と仲がいいんだな」
あの人ってペトラさんのことかな? 綺優と少し話してたみたいだし、きっとそうだ。
「うん! もうね、色々面倒見てくれるからさ〜。もう本当にお姉ちゃんだよね。すごく良くしてもらってるんだ」
「なるほど、どうりで。別に疑ってないよ」
「ははは。分かってるよ。だって綺優はあの地図を信じるぐらいなんだから。ね?」
「……やめてくれ」
本当に恥ずかしそうにしてる綺優が可愛くて、つい揶揄ってしまう。
そんな帰りの夜道。二人組の男性が声をかけてくる。
「お。可愛いじゃん。そんなガキと遊んでねぇで、俺らと遊ぼうぜ?」
「結構な上玉っすね。これは中々」
相手は私たちよりも年上で大学部の『レヴォルフ』の生徒だった。
しかも見覚えがある二人組で《
何かと問題行動のある『レヴォルフ』だから内心焦っていると
「どけ。この子に手を出すな」
「あん? なんだクソガキテメェ。『星導館』の生徒は目上に対しての口の利き方がなってねぇな?」
「……?? こいつどっかで見たような」
「シュビアに手を出すなら容赦はしない」
「はい今のムカついた。お前くたばっとけ」
相手が拳を振りかぶってくると、綺優は相手の手首を掴んでやや下に強く引っ張り、相手の重心が前に倒れてきた所に、相手の顔へ膝打ちをお見舞いした。
そのまま流れるようにもう1人の相手の顎に蹴りを入れて気絶させる。
瞬く間に、
「あ、綺優怪我は──っ!」
その2人を見下ろしてる綺優の瞳は酷く冷たかった。
私には優しい眼差しをむけてくれる。優しい表情を浮かべてくれる。
なのに、この時の綺優は別人のように冷たく、冷えた鋭い眼光で2人を見下ろしていた。
私に振り返った綺優はいつもの表情に戻り心配してくれる。
「シュビア大丈夫? 怖かったよな。絶対護るから」
「……うん。ありがとう」
その後、綺優は寮まで手を繋いで送ってくれた。今この日記を書いている。
綺優のことをもっと知りたい。
あの怖い綺優も、人のことを信じて、護ろうとしてくれる綺優のことも。
でも……絶対護る……護るかぁ……。困ったなぁ。本当に困った。
とりあえず日記はここまでにしてお風呂に入って寝よう。
かなり原作、そして前作から√や内容が変わってきます。
よろしくお願いします
最後まで読んでいただきありがとうございました。
またよろしくお願いします