刀藤綺凛の兄の日常記   作:綺凛*凛綺

20 / 26
〜鳳凰乱武〜
女狐の日常記その5


 

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 綾斗が昨日、刀藤さんに勝利を納め見事、序列1位の座につきました。順調です。

 二つ名は《叢雲》を命名しました。かっこいいですね。

 それと来年度からの《獅鷲星武祭(グリプス)》の参加規定人数が5人から6人へと引き上げられました。

 6対6による戦いになるわけですが、今までの《獅鷲星武祭(グリプス)》はどう変わるのか、来年になるまでお楽しみにということでしょう

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 いよいよ本格的に《鳳凰星武祭(フェニクス)》が見えてきました。

 優勝に向けて綾斗&ユリスペア、綺優&沙々宮さんペア、そしてマクフェルくんたちも熱を上げております。

 綾斗とユリスはひたすらお互いに対人戦を行っており、お互いの弱点と得意な部分を明確にし組み立てるつもりのようです。

 綺優と沙々宮さんたちはどんな訓練方法を行っているのか気になり本日覗きに行ったのですが……

 

 

「ちーがーう! もっとこう! こうやって、こう!」

 

「こ、こうか?」

 

「だから! 綺優のはこう! もっと私の腕と足のつま先の角度を確認して欲しい! これをこうしてこう!」

 

「……刀藤さん、あの2人は何をしてるのですか?」

 

「あ、会長お疲れ様です。えーっと、どうやら入場した際の決めポーズを考えてるみたいで。

 さ、紗夜さんが決めポーズをするならお互いに背中を合わせて腕を組むのが一番だって」

 

「それで体のあちこちの角度を調整してると?」

 

「はいぃ……」

 

「あのサングラスは?」

 

「あれは兄さんの拘りです……」

 

「なるほど。−×−ではなく、−+−でしたか」

 

「……? どういう意味ですか?」

 

「プラスに働くと予想してましたが、余計酷くなったって意味です」

 

 

 学園でもトップ3を争う問題児の2人が組んだことでお互いが抑止力になるかと思ったのですが、雲行きが怪しくなってきました。

 残る1人は言うまでもなくユリスです。

 ここで言う問題児とは私の胃をダイレクトアタックしてくる人たちのことを指します

 

 

「それが会長……そうでもないんですよ」

 

「あれで?」

 

「見てたら……わかると思います。もうすぐ始まりますよ」

 

 

 刀藤さんの視線に続いて2人の方を眺めると訓練用である人形達の相手を始めました。

 綺優が飛び出して沙々宮さんが後方からの援護射撃。

 当然その形になるのですが普通とはかけ離れておりました

 

 

「……綺優はどうやって、射線を一切に見ないで背中を向けたまま弾を避けてるのですか? 

 私が知らないところで既にもう連携は出来上がったということですね」

 

「違うんです……兄は《識》を使ってステージ全体を把握してるので弾を見なくても避けれるんです」

 

「なんて頼もしいのでしょう。敵になった時は恐ろしいですね」

 

「兄さんは《千里眼》と《識》を併用して戦えるので不意打ちの類はまず届かない……なら正面からの戦闘しか他はないと普通は考えるけど、敢えてここは──」

 

 

 刀藤さんは綺優の戦い方を見て分析を始めました。

 この兄妹は一体どこまで強くなるのでしょう? 

 ああ、綾斗、ユリス。もしかしたら今大会、1番の強敵はアルルカントや他学園ではなく、身内かも知れませんよ

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 刀藤さんと沙々宮さんが一緒に出かけており、綺優が1人で訓練所にいました。

 訓練所を崩壊させられても困るので私が訓練相手に申し出たのですが、ふと思い出したことがありそれを聞くことに

 

 

「そう言えば綺優、あなたの師である沖田さんはどちらに? 星武祭(フェスタ)に出るのですからまた稽古をつけてもらえればいいのでは?」

 

「師匠もちょくちょく来てはくれてるよ。ただ俺が《超速再生》ができる限度があるせいか、前よりやりづらそうなんだよね」

 

「あら、そうなのですか? でも確かに前みたいに斬り刻むわけにもいきませんからね」

 

「うん。だから全然相手してくれなくて。別に斬ってもいいですよって言ったんだけど」

 

 

 この時は私はそれを当たり前のように聞いておりましたが、今日記を書いてて冷静になるとかなり危ない発言をしています。

 自身の体を別に斬ってもいいですよは常人ならば普通言いませんよ

 

 

「なんかもう『私の剣じゃ貴方を斬ることが叶わないところまで来ました。教えられるのは心構えぐらいな物ですよ』って言われてさ」

 

「……何か引っ掛かりますね」

 

「やっぱり? 俺もなんだよね。なんか師匠らしくないんだよ」

 

「沖田さんらしくない?」

 

「うん。師匠が俺に一番最初に教えてくれたことなんだけど、剣が折れたら鞘で、鞘が折れたら素手で。死ぬまで戦いなさいってずっと言われて来たんだよね。その師匠がなんかもうないって断言するのが、んー? ってなってるんだよね」

 

 

 色々とツッコミたいところはありますが……何かおかしいと言えばおかしい。

 ですがなにがおかしいかと聞かれれば分からない、それが答えですね。

 いつかその違和感は時間が解決してくれるでしょう

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 さて遂に《鳳凰星武祭(フェニクス)》が始まりましたね。

 我々星導館ペアのチームは全員予選ブロックで当たる事がないので安心です。

 ただマクウェルくんたちが予選で当たる、レヴォルフの《吸血暴姫(ラミレクシア)》たちと戦うことになりそうで心配です。

 全員無事1回戦は勝ち進み今のところは順調。

 綺優と件のアルルカントのパペット、アルディとリムシィの試合を観戦しました

 

 

「レヴォルフの《冒頭の12人(ページ・ワン)》相手に1分間の猶予を与えた上での勝ちですか。

 どうですか? 綺優、あなたにあの障壁は破れますか?」

 

「実際にやってみないとことには分からないけど、破れると思うよ」

 

「その根拠は?」

 

「相手が人じゃないなら使える剣技がある」

 

「なんですかその物騒な剣技は」

 

「師匠が必ず殺すって決めた相手に使う剣技だよ」

 

 

 綺優を一方的に切り付けていたあの沖田さんが相手を確実に仕留めるための剣技……考えるだけでも恐ろしいです。

 それと同時に怖いもの見たさで見てみたい気持ちも。

 明日以降の戦いも注目ですね

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 大会5日目。

 会場に向かっている途中で沖田さんとヘルガさんが2人で話しているところを見かけました。

 久しく話していなかったため、声かけました

 

 

「おや、クローディアさんじゃありませんか」

 

「クローディア? ああ、エンフィールドのとこの。久しぶりだな。《王竜星武祭(リンドブルス)》以来か?」

 

「沖田さん、ヘルガさんお2人ともお久しぶりです。本日も警備のほどありがとうございます」

 

 

 軽く挨拶と世間話を交えた後、私は会った時に聞こうと思っていたことを質問しました

 

 

「私が綺優に言った言葉ですか?」

 

「はい。もう私ではあなたを斬ることはできない、そう綺優に言ったと聞いております」

 

「沖田お前、綺優に言ったのか?」

 

「いや言ってはないですよ!? ただもう私じゃ斬ることはできないから──っったぁ! た、叩くことはないじゃないですか!?」

 

「おまえも言うべきではなかったと後悔しているから距離をとっているんじゃないのか?」

 

「それはーそのーえー……はい」

 

「あの、もしかして綺優に何かあるのですか?」

 

 

 私の質問に2人が真面目な表情を浮かべると少し悩んだ末、私に言いました

 

 

「悪いが話せない。綺優本人も知らないことを君たちに話す訳にはいかないんだ」

 

「綺優本人も知らない、ですか?」

 

「これ以上は何も話すことはできない。すまないな。行くぞ沖田」

 

「はーい! っと、それではクローディアさんまた」

 

「……はい。またぜひ機会があれば」

 

 

 私は振り返り立ち去ろうとしたら、沖田さんが耳元で最後にこう呟きました

 

 

「──綺優に一撃入れれるぐらい強くなったら分かりますよ」

 

 

 すぐ振り返りましたがすでに姿はなく《縮地》で移動したのだと分かりました。

 綺優に一撃ですか……正直今の私にはまだ難しいそうですね。

 つまり今はまだ知る時じゃない、というわけですか。

 

 そして残念ながらマクフェルくんペアは《吸血暴姫(ラミレクシア)》の前に敗退。

 応援に来ていた綺優と沙々宮さんに刀藤さんの3人と一緒に、マクフェルくんとフックくんを労いにきました

 

 

「マクフェルまた負けたのか」

 

「おい紗夜!?」 「紗夜さん!?」

 

「ぐはっ」

 

「レ、レスター!? おいこのちび! レスターになんてことを!?」

 

「お前言われたくないフック。私もわかっている。レスターは弱くない。これでも一応《冒頭の12人(ページ・ワン)》強い。

 だけどいつも相手が、相性が悪いだけ。次は頑張れ」

 

「……もうそれくらいにしといてくれ」

 

 

 流石に可哀想でしたね

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

「──俺と戦いたい?」

 

「はい。できればハンデをお願いします」

 

 

 大会7日目。

 私は予選を残すあと1回となった綺優に練習試合を申し込みました。

 その時に頂いたハンデは綺優は《千里眼》と《識》を使わないことと、左手の使用禁止を条件をお願いしました

 

 

「待ってよクローディア。それじゃあ幾らなんでも相手にならないって」

 

「私も《純星煌式武装(オーガルクス)》は使いません」

 

「それなら五分五分か? わかったやってみよう」

 

「構いませんか沙々宮さん?」

 

「うん。好きにやればいい。私と綺凛は観戦させて頂く」

 

 

 試合開始の合図は2人にして貰い早速斬りかかりました。

 当然私の剣などすぐに受け止められてしまいます。私は2振りの剣で挑んでおりますが、綺優は片手で難なく相手をしています。

 しかしこの試合、私の目的は綺優に勝つことではありません。

 隙を見て私は綺優に本気の一撃を入れることに成功しました

 

 

「っ! クローディア!? やりすぎだろ」

 

「すみませんつい」

 

「ストップ。エンフィールド、そこまでやっていいとは言ってない。流石にやりすぎ。綺優大丈夫?」

 

「いや、いいよ。今治すから」

 

 

 綺優は私の剣によって裂かれた腹部を再生しました。

 当然私のやったことに対し皆さんは怪訝そうに、なぜこんな事を? と見て来ます。

 大会5日目の時、沖田さんと会い、言われた言葉を皆さんに教えました

 

 

「師匠がそんな事を?」

 

「それがなんなのか私にも分からない。でもエンフィールド、流石に《鳳凰星武祭(フェニクス)》の期間中にこれはやり過ぎ。終わってからにして欲しい」

 

「……おっしゃる通りでしたね。申し訳ございません」

 

「クローディアがどっかの学園に裏切ったのかと思ったよ」

 

「そんなまさか!」

 

「そう思われても仕方ない一撃だったって。本当にもう《鳳凰星武祭(フェニクス)》が終わってからにしてくれよな」

 

「……はいそうします」

 

 

 今日記を書いてて思ったのですが、《鳳凰星武祭(フェニクス)》が終わったら斬ってもいいと言うのはまた変な話ですよね。

 綺優のせいで価値観がおかしくなりそうです

 

 

 

 

*姉の外伝録その1*

 

 

 

 

+月*日

 

 

 

 明日私、天霧遥は死ぬかもしれない。

 そんな直前になって日記をつけるのはおかしいかな? 

 でもこれは必ず帰ってくるという覚悟でもある。

 帰って来てこの日記を書き続けよう。

 今日戦ったあの小さな子供。刀藤綺優くん。

 彼は本当に強かった

 

 

「ねえ、君。どうして剣を振るうの?」

 

 

 彼の目には深い絶望と無力感。それと同時に小さな一条の光。必ず強くなる。という気持ちが汲み取れた

 

 

「大切な人のために」

 

「……そっか、私と同じだね」

 

「おまえもそうなの?」

 

「む。年上のそれも女性に向かっておまえなんて! このこの」

 

「……」

 

「……ふぅ。君名前と歳は?」

 

「刀藤綺優。10歳。来年ここの星導館に入る」

 

「ってことは早生まれか。私の弟と同い年だね」

 

「弟?」

 

「そう。弟。可愛いんだよ。君とはいいライバルになれるかも」

 

 

 綾斗をあんな形で置いてくることになって心苦しかった。でもきっと私のことを追いかけてくるから。

 そうなったら綾斗も無事では済まない。

 私はそうもは思い綾斗を置いて来た。追いかけてこれないように力を封じて

 

 

「あんたより強いの?」

 

「今まだ私の方が少し強いかな」

 

「じゃあ無理だよ。相手にならない」

 

「へぇ……言うね? 私よりも君の方が強いって言いたいのかな?」

 

「試す?」

 

「いいね。なら試してあげる」

 

 

 軽い気持ちで始まった立ち合いだった。彼は……強かった。

 まだ10歳なのに剣の本質を分かっていた。

 どんなに綺麗事を並べても剣とは、剣術とは命を奪うための技術だということ。

 その剣には殺意が込められていた。《星脈世代(ジェネステラ)》相手に普通の日本刀じゃまず殺すことなんてできない。

 だけど彼の剣は殺しうる。そう思わせるほどの迫力と殺気が私に襲いかかった。

 それだけじゃない

 

 

「……っ! 再生があるとは言え傷つくの怖くないの?」

 

「……」

 

「さっきからとんでもない無茶な攻め方してるけど」

 

 

 どんなに傷ついても立ち向かってくる。手加減なんて出来ないから私も本気で振っていた。

 だからこそ生々しく深く剣が食い込むけれども、そんなのお構いなし。

 再生で治して更に1歩踏み込んでくる

 

 

「痛いのは我慢すればいい。時間が経てば薄れる」

 

「……」

 

「勝つ。負ければ悪。この世界は──弱肉強食だから」

 

 

 悲しくなった。

 この子をこんなふうに変えてしまったナニか。

 大切な人を失ったのか、怪我をさせたのかもしれない。

 だから救いにアスタリスクに来ようとしている

 

 

「……私の負け。降参するよ」

 

「……わかった」

 

「納得してないって顔だね。だって手抜かれてるし、君本気じゃないでしょ」

 

「本気でやってないのはそっちもでしょ?」

 

「私は本気だったよ」

 

 

 本当に怖い子だよ。

 私も《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を使わないといけないとこまで来てたから、潮時だった。

 こんな時まで殺し合いなんてしたくなかったから

 

 

「君、大切な人っている?」

 

「……妹や家族がいる」

 

「そう。私も弟や家族がいるの」

 

「そのために戦ってるの?」

 

「どうなんだろ……私にももう分かんない。だけど1つだけ言えるのは、家族に今の私を胸張って見せることはできない」

 

「……」

 

「君、家族が大事なんでしょ? 私が言うのも何だけどさ。家族に見せられない姿をするのはやめた方がいいよ。

 今の君は自分の姿を見せれる?」

 

「……無理」

 

「でしょ? じゃあもうそんな狂犬みたいに殺意を振り撒かないの。全く。しっかりしなさいお兄ちゃんなんだから」

 

 

 綾斗の時みたいに私は頭を撫でた。この小さな剣客に弟の姿を重ねた。

 私が死んだら綾斗もこんな風になるのかも知れない。

 だから私は死ねない。絶対に生きていつか綾斗とお父さんとまた一緒に暮らすんだ。

 

 それと刀藤綺優くんごめんね。本当に本気でやってたの。

 君にバレないように戦いながら鎖を仕込むのに意識を割いてたから手加減してるように感じたんだろうね。

 

 君の力はすごく危険だと私は判断した。だからその力をある条件を満たした時に封印するように鎖を仕組んだ。

 鎖が刀藤綺優くんの《星辰力(プラーナ)》と完全に混ざり合った時、彼の力の一部となったタイミングで縛るように。

 それを解くための鍵もちゃんと君の中にある。

 

 いつかまた会えるといいな

 

 





最後まで読んでくださりありがとうございました!

感想、お気に入り登録ありがとうございます!励みになります〜!
次回から戦闘描写多めに書かれればと思っております!

次回もよろしくお願いします!
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