刀藤綺凛の兄の日常記   作:綺凛*凛綺

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女狐の日常記その1

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 わたくし、クローディア・エンフィールドは本日、お母様から誕生日プレゼントでこの日記帳と《純星煌式武装(オーガルクス)》を、《パン=ドラ》を頂いた。

 これからこの日記に私の思い出を書いていこうと思います。

 これから楽しみです。

 

 

 

(乱暴に何かが書かられている。紙が握り潰された跡がある)

 

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

純星煌式武装(オーガルクス)》である《パン=ドラ》。その能力は未来視。

 3日で1秒の使い切りのストック貯まる。

 代償として、自分が死ぬ未来を見せられる。

 内容は朧気で、どんな内容で死んだのかだけ思い出せます。

 

 お母様から頂いた誕生日プレゼントは最悪な物でした。

 深夜に自分が死ぬ悪夢を見せられ、叫びながら目が覚めた私の目の前にはお母様が居ました。

 

 

「やはり貴女でもこれは耐え難いですか? クローディア」

 

 

 その母の問いに私はすぐに返事は返せませんでしたが、強がってそんなことはないと返してしまい……《パン=ドラ》の契約を切らないと言ってしまいました。

 お父様が仲裁に入ってくださり、嬉しくもありましたがこれはもう後には引けないのです。

 私の意地。ちょっとした反抗です。

 

 今日もあの悪夢を見ることになるのですね……。

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 お父様に首を絞められ私は死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 友人から背中を刺され私は死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 恋人に食事に毒を盛られ私は死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 交通事故で私は死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 私は死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 死にました

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 死んだ

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 死

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 ──────────死

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 死んだ。また死んだ。死にました。死んだよ。死んだ。死んだんです。私は死んでいる。私は死んだ。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。死んだ。死にました。私は死んでいます。私は死にました。私はなんで生きている??? 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 綾斗。絶対に忘れません。綾斗。

 今日はとてもロマンチックな死に方をしました。

 私を護ろうとしてくれる、男の子の腕の中で死にゆく私。

 なんてロマンチックなのでしょう。

 どうせ人はいつか死ぬのです。なら自分の最後の死に様は選ぶべきなのでは……? 

 どんな内容かは上手く思い出せません。

 ですが私はいずれきっと叶えます。この死を。

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 何故? どういうこと? 

 私は今日夢の中で……死にませんでした。

 

 銀色の髪。日本刀を携えた男性。彼が振り返り私に声をかけました。

 

 

『クローディア──おまえは絶対に俺が護る』

 

 

 次の瞬間、ノイズが走り私は目が覚め、《パン=ドラ》を手にして1年、あの悪夢の中で初めて死ななかったのです。

 名前も顔も思い出せない彼。

 彼が居れば……私は死なないのですか? 

 

(濡れた跡がある)

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 もう日記ではなく悪夢の記録になってるのに笑えますね。

 さて、本日は日記らしい日記になるかも知れません。

 

 銀色の髪に日本刀を携えた男性。彼の名前は刀藤綺優。

 

 本日私は来年度から入学予定の《星導館学園》に見学に来て居ました。

 正直見たいものもないため、時間潰しに人のいないところを歩いて居たら、1人の少年と出会いました。

 銀色の髪に日本刀を携えた男の子。

 間違いありません。あの時、たった一度だけ私の夢に現れた人でした。

 

 

「あ、あの! すみま──っ!」

 

 

 どこかへいこうとしたので、駆け出し声をかけようとしたら私は思いっきり転けてしまいました。

 正直恥ずかしかったのですが、彼が手を差し伸ばしてくれて、私を立たせてくれたのです。

 

 

「ありがとうございま──」

 

 

 私は感謝の言葉を最後まで述べられませんでした。

 理由は彼の素顔を初めてちゃんと見てしまったからです。

 

 その瞳は暗く沈んでおり。顔には影が差しており、まるでこの世に《絶望》したかのような表情を浮かべていました。

 どこかで見たことのある顔……あれはこの世の全てが嫌になって、今にでも死にたいと思う人の顔──昔私が悪夢に心をやられ浮かべていた表情にそっくりでした

 

 

「あのお名前は?」

 

「綺優。刀藤綺優」

 

 

 それだけ言い残すと彼は去っていきます。

 唯一私を殺さなかった人。唯一私を死から護ってくれた人。

 私は彼を《星導館》に招待することを心に決めました。

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 刀藤家に綺優への《星導館学園》の特待生枠として迎え入れる準備ができていると、書類を送ったのですが返事がありません。

 すでに何通も送っているのにフル無視ですか。

 

 

 ……そうですか。この私を無視ですか……。

 

 ……ふふふ。(紙が握り潰された跡がある)

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 あれから色々ありましたが、なんとか綺優を《星導館》へ進学させることに成功しました。

 彼への嫌がらせとして、私が作った何の役にも立たない地図を渡したのですが、見事にそれに振り回されて頂けたようで幸いです。

 今まで無視した仕返しですよ。ばーか。

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 さて。入学初日の今日。

 放課後になって、私は綺優に英語を教える建前で生徒会室へと足を運んでいただきました。

 その際に、彼に序列戦のことで参加する気はないのかと質問してみました。

 

 

「今のところは無い」

 

 

 乗り気じゃ無いようでしたので、ここぞとばかりに私は序列入りした時の魅力を彼に語りました。

 少し悩んだ素ぶりを見せたあと、折れてくれました。

 エントリーは私の方でしておくことに……彼の実力を知りたいですから、ね。

 

 

「……クローディア、1ついい?」

 

「はい。何でしょう?」

 

「お前が椅子にしてる人なんだけど……」

 

「ああ、この方ですか? この方は大学部に在籍してる、ロリ・コンディースさんです」

 

「……生徒会長だよね?」

 

「はい」

 

「……そっか」

 

「ええ。そうですよ」

 

 

 椅子が鼻息を荒くして居たのでキツく躾直しておきました。

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 休日外を気分転換に散策していると、カフェで女性と密会している綺優を見つけました。

 あとで調べてみたところ、どうやら彼女は《クインヴェール》の生徒の様です。いつのまに……他学園に友人が……素直に感心です。

 

 戻ってくると1人でまだカフェに居ましたので、今度は私が綺優の元へ行き相席させて頂きました。

 勿論ただ時間潰しをするつもりも無く、色々質問します。

 

 

「綺優は《王竜星武祭(リンドブルス)》に出るとおっしゃっておりましたね。《鳳凰星武祭(フェニクス)》と《獅鷲星武祭(グリプス)》は出られないのですか?」

 

「興味ない。足手纏いになる。そんなの許せないだろ」

 

 

 私は勘違いして居ました。

 彼はもっと優しい人だと思ったのです。

 しかし違いました。その優しさは強者へのみ向けられる物。弱者を許さない強い意志。

 彼の父は昔、息子である綺優と2つ下の娘を護るために、《星脈世代(ジェネステラ)》でありながら一般人にその手にかけてしまい捕まったと聞きます。

 

 彼の星武祭(フェスタ)に願う物、それは父の釈放だと思いました。

 しかしそれならば1秒でも早く助け出したいはずです。

 にも関わらず、《鳳凰星武祭(フェニクス)》と《獅鷲星武祭(グリプス)》には出る意思が無いと答えておりました。

 実は父親を憎んでいるのでは? 

 

 だってそうでしょう? 家族を救いたいのであれば、少しでも早く救おうとするはずなのですから。

 今思えば彼は刀藤家でありながら継承者になることを断っています。

 きっと綺優には別の願いがあってこの《六花》に来たのでしょう。

 

 

「チームで戦うなら対等では無いとダメだ。俺が組める相手はいない」

 

「……恐ろしい人です。自負、されていらっしゃるのですね」

 

「こんなの自慢することじゃない。ただの事実だ。人をバカにするのも程々にしてくれ」

 

 

 彼に睨まれて私は萎縮しました。

 力強い目。己が強者であることを疑わない自信に裏付けされた、今までの経験と積み重ねた努力。

 気になって仕方がありません。彼がいったいどこまでの存在で……強者なのか。

 序列戦が楽しみです。

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 綺優の序列戦は期待……そして予想以上のものでした。

 決闘開始と同時に校章を破壊。それも相手は《在名祭祀書(ネームド・カルツ)》の上級生。

 その様な芸当ができる剣士がこの世界で他に何人いますでしょうか? 少なくとも私の知る限り、《剣聖》の二つ名を持つアーネストしかいません。

 

 

「勝っても表情一つ崩さず去って行く……ですか」

 

 

 勝って当然。敗北などありえない。

 彼を無理して特待生枠として呼んでもらった際に、お母様たちと一悶着ありましたが、今日の戦いを見て喜んでいるようで何よりです。

 精神調整を受けているのにも関わらず。

 その証拠に母、イザベラが直々に綺優の二つ名《白夜叉》を命名したのですから。

 

 

「おめでとうございます綺優。まさかその《純星煌式武装(オーガルクス)》でもあるその日本刀の能力を使わず勝利するとは……流石です」

 

「別に。勝つべくして勝っただけだ」

 

「そこまでとは……」

 

 

 この時の私に向けられた綺優の眼光はまるで、この様な弱者を物差しとして相手に用意するなんて、と訴えている様で恐ろしかったです。

 少なくとも今の私で勝てない相手なのですが。

 その証拠に続く会話で

 

 

「次はいつだ? またクローディアの方で決めてくれていい。ただし相手は慎重に選んでくれ」

 

 

 次の対戦相手の人選は間違えるなと圧をかけられました。

 

 

「はい。次は貴方のご期待に応えられるようにしましょう」

 

 

 そう。最初からまどろっこしい真似はするな……序列1位と戦わせろ。

 綺優はそう言ってるのです。

 

 

「楽しみにしてる」

 

 

 序列1位でも彼のお気に召さなかった場合どうなるのでしょうか……考えない様にしましょう

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

『〜超新星、刀藤綺優。初の公式戦となる序列戦にて《冒頭の12人(ページ・ワン)》序列12位を瞬殺。中等部1年にして《冒頭の12人(ページ・ワン)》入りを果たす。統合企業財体『銀河』は彼に《白夜叉》の2つ名を命名〜』

 

 

 朝からこの話題で《星導館》は──いいえ、アスタリスクが熱を上げられております。

 去年の《孤毒な魔女(エレンシュキーガル)》と今年の《白夜叉》、2年続いての超新星の爆誕。

 人々本当に比べるのが好きですね。

 

 

「──おい、クローディア。どういうことだこれ」

 

 

 すると綺優が放課後に生徒会室に来るなり私にそう聞いてきました。

 

 

「どうやらうちの新聞部があなたのことを記事にした様です。こういうのはお嫌いですか?」

 

「得意では無い。そんなことより、昨日の相手12位だったの? あの人が?」

 

「っ! はい……あの方は当学園の序列12位ですよ。やはりあのレベルの方をあなたの対戦相手に選んだことを怒ってますか?」

 

「……いいや、最終的にクローディアに任せたのは俺だから怒ってはない。

 だけど流石にあれは(いきなり12位を相手にさせるのは)酷い」

 

「そこ、までですか。

 あなたの対戦相手に12位(あの程度の実力者)を選んだのは間違いでしたか」

 

「特待生として招いた以上、俺の実力を見たいのは分かる。でももっとマシ()な相手がいるだろ。下手をすれば何もわからない可能性だってある」

 

「何もわからない可能性、ですか?」

 

え、いや、えっと……そう。コホン。き、昨日だってすぐに戦いが終わっただろ? ああいうことが起きると、実力を知ることなんて無理だ。だから次から相手を慎重に選んでくれ」

 

 

 そういうことですか。

 綺優は私がどれほどの実力者なのか知りたがっていることに気づいていたのです。

 しかし、昨日の綺優からすればたかが序列12位の実力者相手では、何も得られることなどない、そう言いたいのでしょう。

 実際、彼の所有している《純星煌式武装(オーガルクス)》はその能力を発揮することもなく、ただの刀として役目を終えました。

 

 

「はい。次は安心してください。あなたの満足する相手……今この学園で用意できる相応しい人物を選出します」

 

「分かってくれればいい。ありがとうクローディア。楽しみにしてる」

 

 

 綺優のご期待に応えて見せましょう

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

 久しぶりに夢の中で綾斗が現れました。

 彼の腕の中で死ぬ私はとても幸せそうで、羨ましいと思ってしまいます。

 それ以外は何も思い出せず、手がかりもありません。

 どうにか綾斗を見つけて《星導館》へ連れてこなければ……。

 

 綺優が本当に私を護ってくれるかは、彼と接してて半信半疑ですし。プランは複数用意しておくべきでしょう。

 未来は不確定なのですから。

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 綺優が密会している相手の女性の正体がわかりました。

 シルヴィア・リューネハイム。

 今人気が爆増中の若手アイドルです。歌手や女優などでも活躍しており、綺優はそんな彼女のライブに見に行っていました。

 

 知ったきっかけは綺優の実力を探ろうと《影星》を使い、《レヴォルフ》の生徒をけしかけた所、綺優がシルヴィアのライブ会場から出て来て、変装している彼女と夜道を歩いていたので知りました。

 

鳳凰星武祭(フェニクス)》の上位者ということもあり期待したのですが、これがまた瞬殺。

《レヴォルフ》の生徒には申し訳ないのですが、相手が誰なのかわからない状態で戦っていただきました。

 やはり綺優の実力を引き出すにはこの程度ではダメなのですね……。

 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 

「──クローディアごめん。再開発エリアで、オーフェリアと決闘した」

 

 

 

 ……はい? 

 

 

 

「その際、建物を倒壊させちゃったから迷惑をかけるかも知れない」

 

 

 …………はい?? 

 

 

 

✳︎月*日

 

 

 

 あの後、再開発エリアで綺優とオーフェリアの決闘によってでた被害の物的損害を《星導館》と《レヴォルフ》で賠償請求する書類が届きました。

星武憲章(ステラ・カルタ)》に記載されている通り、決闘によって起きた損害は決闘をした生徒の各学園が負担することになっております。

 

 もちろん負担するのは当然、統合企業財体なのですが……そこに内容を細かく、どう言った経緯でそうなったのかを報告書を作って提出するのは生徒会長の仕事になっております。

 

 今の生徒会長は一応ロリ・コンデェースさんなのですが……今後私が生徒会長になった時、綺優が問題を起こしたら私が対処するのでしょう? 

 

 

「……綺優、自重して下さいね?」

 

「いやあれはアイツが悪い」

 

「だとしてもです……因みに勝敗は?」

 

「《星猟警備隊》の人がヘルガさんを呼んでなかったら勝ってた」

 

 

 ……ちょっと待って下さい。それはつまりヘルガさんでなければ解決できないレベルだったということなのでは? 

 …………それに勝ってた??? あの《孤毒な魔女(エレンシュキーガル)》に??? 

 

 

「だけど《魔術師(ダンテ)》の能力が無かったら負けてたと思う」

 

「はい? 綺優あなた《魔術師(ダンテ)》だったのですか?」

 

「そうだけど」

 

「そんなの聞いてません!?」

 

「聞かれてないからな」

 

「特待生枠として入学する際に記入する書類には!?」

 

「《魔術師(ダンテ)》・《魔女(ストレガ)》の能力を書くかどうかは本人の自由だったから、《魔術師(ダンテ)》であることも記入する必要がないと思って書かなかった。何か問題でもあるか?」

 

 

 悪びれもなくそう答える綺優でした。

 ……少し疲れました。もう今日はひとまず考えることをやめることにします。





最後まで読んでくださりありがとうございました。

お気に入りに前から読んでくださっている方がチラホラと…晴輝さんも見かけて嬉しいです。
もっと皆さんとまた再会できたら嬉しいですね

次の日記は兄です。更新は3日以内に上げます
感想お待ちしております。

よろしくお願いします
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