《
生徒会選挙なんかも終わり、色々落ち着いて来たので今日は久しぶりに綺優と遊びに出かけた。
幸せいっぱい。
ご飯を食べて軽く散策してウィンドウショッピングを楽しむ。
門限が迫りお別れの時、綺優がプレゼントをくれた。
それは私がウィンドウショッピングで気になっていたヘアーアイロン。
「私にくれるの……?」
「うん。それ気になってたんでしょ?」
「綺優……ありがとう。私何も用意できてない……」
「お返しが欲しいから買ったわけじゃない。シュビアの髪が綺麗だから買いたかった。あとこれも」
「これは?」
「足首に使うサポーター。痛めてるんでしょ?」
「っ……もしかして今日ずっとゆっくり歩いたり、休憩を何度も挟んだのって」
「色々見てて楽しかったし、疲れが溜まってるから俺が休憩したかっただけだよ。これ、おすすめだから使って」
「……ありがとう」
私を見つめる彼の瞳は本当に綺麗で、私を気にかけてくれる彼の言動はずっと優しくて……私を困らせる。
あーあ。私アイドルなのになぁ
どうしよう……本当に困った。
久しぶりに今日は私のライブに綺優を誘って来てもらった。
帰り道綺優に今日のライブの感想を聞かせてもらった。
「前回、後ろ側にいた人たちが見えなかったから、ライトの調整と色合いを変えたんだね。後ろから見やすくなってたと思う」
「え、そう! 気づいてくれたんだ」
「もちろん。それに振り付けを少し大きくして動作が増えた分、早く動かして遠くからでも分かりやすく、近くにいる人は迫力が感じられて、すごくいいと思ったよ。
ただ一つ心配なのは、マイク調整かな。あの調整だと喉に負担が大きい気がして心配……素人の俺が何言ってるんだってとこはあるけど」
「……綺優は本当によく見てくれてるね。嬉しいよ」
本当に嬉しかった。私のことをちゃんと見てくれている。みんなの為にって沢山悩んで練習してみんなで作り上げたものを綺優はこうしてちゃんと見てくれる。
それがたまらなく嬉しかった。伝わってるんだって。
でも……
「シュビアのお姉ちゃんは本当努力家だよな」
「え? わた、しのお姉ちゃん?」
「うん。シュビアのお姉ちゃん、シルヴィア・リューネハイムさん。ファン1人1人を楽しまさせる為に毎回ライブに工夫を入れてる。それはすごいことだと思う」
言っていることが一瞬、意味が分からなかった。
綺優はどうやら私とシルヴィア・リューネハイムは別人だと思っているみたい。
綺優にとって変装している時の私は
シュビア・リューネハイム
そしてステージに立っている時の私は
シルヴィア・リューネハイム
思いかしてみれば今まで何度か、あれ? って思うことはあった。
でもそれは綺優が英語が苦手なだけで……って思ってたけど、違ったみたい。
私はすぐにその誤解を解こうとした。でも綺優が──
「あ、あのね綺優──」
「本当にすごいよ。俺なんかじゃ無理だ。凄すぎて近づき難いよね」
「っ……!」
「ん?? シュビア何か言いかけた?」
「……あのさ綺優、も、もし……もしだよ? もし綺優が、シルヴィア・リューネハイム……お姉ちゃんと友達になれる……ううん、友達で私と同じぐらい仲がよかったらどうする?」
「うーん……距離を置くかな」
「っ……!?」
「だって今人気上昇中のアイドルでしょ? そんな人の周りに友達でも男性がいるって分かったら周りの人達がなんで思うか分からないからね。
俺のわがままで相手に迷惑をかけたくないし……ちゃんと適切な距離感で友達でいたいなって思う」
(濡れた跡がある)
やだなぁ。綺優と遊べなくなるの……絶対バレちゃだめだ
肌寒くなって来たこの頃。
冬物の新しい洋服が欲しいから買い物に出かけたら、たまたま綺優の姿を見かけた。
綺優もプライベート、休みで外を歩いているんだろうし声をかけるつもりはなかった。
「クローディア荷物多すぎ」
「これぐらいは持ってくださいな。前の訓練場の件をお忘れですか?」
「いや、あれは俺じゃなくて適当な管理をしてる《星導館》が悪いでしょ」
「どう考えてもあなたです。ほら次行きますよ」
……デートしてた。
綺優と一緒にいた女性は《星導館》の生徒会長になったクローディア・エンフィールドさん。
とても綺麗な女性だった。事前に知らなかったら年上だと勘違いするぐらいには大人っぽい。
思わずこっそり後をつけてしまう。
綺優はエンフィールドさんの買い物を外で待っている間、ぼうっとして周りを眺めているようだった。
すると突然立ち上がりどこへ歩き出す。
おろおろしている5歳ぐらいの女の子前に止まると、同じ視線の高さまで屈んだ。
「こんにちは。迷子?」
「うっ、ぐすっ……ママ……お兄ちゃんママがいないの」
「そっか。ママの名前はわかる?」
「う、うん。ぐすっ……うわ──ーん」
「大丈夫。放送でママを呼んでもらおう。きっとママも君のことを探してるよ。だからもう少しだけ頑張れるか? お兄ちゃんが一緒に探すから。な?」
迷子になり泣き出してしまった女の子。
幼い少女を綺優は両手で抱き抱えて、迷子センターの方まで連れて行き女の子の母親がくるまで付き添いをしていた。
胸が温かくなる。怖い印象がある綺優。
世間からは《白夜叉》なんて呼ばれている綺優。でも私は知ってる綺優が優しいことを
「どこに行ってたのですか綺優」
「クローディアごめん。小腹が空いて」
「レディをほっといて?」
「悪かったって。代わりにほらこれ、美味しそうだったからクローディアの分も」
「お気持ちは嬉しいのですが私甘いものは少し苦手で」
「知ってる。甘さ控えめのやつ」
「まあ。それならお言葉甘えていただきますね」
……あ、あれ? もしかして2人って付き合ってる?
羨ましい……私もあんなふうに堂々と綺優とデートしたいのに
綺優とエンフィールドさんの関係が気になる!
こんなことのためにペトラさんに時間を使わせるのも申し訳ないから、綺優にメールで直接聞くことにした
「綺優へ。今度のライブのチケットを2枚送りました。もしよかったら親しいご友人、それこそ彼女さんがいるならぜひ誘って一緒に来てください」
……これでよし。
はいそこ、未来の私。これ直接聞いてるとは言わなくない? なんて言わない。
今の私にはこれが限界
昨日はライブに綺優とエンフィールド……クローディアが来てくれた。
ライブが終わったあと2人に合流して色々感想を聞く。
その後、ご飯を食べに行き綺優が席を外すタイミングあって、クローディアと2人で話した
「えっと、クローディアって呼んでいいんだよね?」
「はい。私もシルヴィアと呼ばせていただきますね。もっとも……綺優の前ではシュビアでしょうか?」
「あー、気づいちゃった?」
「ええ。彼に誤解させたままでよろしくて?」
「……分かんない。でも誤解が解けると綺優は私から距離を取る置く気がしてやだ」
「あら。綺優のこと相当気に入っているのですね。でしたらご心配なく。私と彼は文字通り友人の関係……も怪しいですが、ただの学友です。親密な仲とかではありませんよ」
「べ、別に! ……気になってないから」
「ふ、ふふふ。他のことは上手く誤魔化せるのに自分の感情には素直なんですね」
「っ!! クローディアうるさい」
綺優から性格が悪い腹黒いって聞いてたけど本当にその通りだった。
でもこうして話せる友人ができたのは嬉しかった。
あーあ、私も《星導館》に行くべきだったかな……2人が来てくれたら解決なんだけどね〜。
綺優、女の子になってくれないかな
その後、綺優が戻ってきて帰ろうとしたら会計を済ませてくれていた。
綺優のそういうところ嬉しいけど、少しやだ。
君とは対等な関係でいたいのに……でもそんなこと言うのは人として間違ってるから、ちゃんとありがとうって伝えた。
今度ご飯行く時は私が持つ! 絶対!
来週からもう12月。あっという間に時間が過ぎて行った気がする。
電話でクローディアに色々と愚痴を吐いたり、心につっかえていることを聞いてもらったりした。
クローディアには前に綺優に言われたことを話してある。
それでもクローディアは綺優なら離れないと思うと言ってくれたけど……そんな確証はないよね。
そう思うと怖くて誤解を解くなんて無理だった。
するとそんな私にクローディアが1つ提案してくれた
「──今度のクリスマスライブに向けてその準備の間、綺優に護衛して貰う……いいの?」
『もちろんタダではありません。あなたがちゃんと《W&W》・生徒会長・ペトラマネージャに話を通し、可決された上で、今送った私の提案が実現できるのであれば、ですよ』
「やってみる。ありがとうクローディア」
ここまで纏めてくれたら、私はただあと提出するだけみたいなもの。
クローディアもなんだかんだ優しいよね
「──シルヴィ、綺優の件通りましたよ」
「ペトラさん本当!? ありがとう〜!」
だけどどこか顔が浮かないペトラさん。
私は気になってどうしたのか聞いた
「少し引っかかることがありまして。ひとまずはあなたの希望が通ったことを喜びましょう。これで集中できますよね?」
「うん。本当にありがとうね」
「タレントのメンタル管理も仕事ですから。アイドル辞めて、女優と歌手に路線変更でもいいのですよ。あなたならそれでも十分にやっていけます」
「……そうだね。考えてみる」
「するなら早めに。じゃないと後悔するとこになりますからね」
ペトラさんが何を言いたいのかはわかっている。
でもまだ不安だらけの何も約束されてない未来だから、今すぐに決めることなんて難しい。
焦らずちゃんと、向き合って考えて答えを出そうと思う
「──ご存知の通り刀藤綺優です。ご依頼された護衛、精一杯頑張ります」
遂に始まった。
授業が終えたあと、綺優がクリスマスイベントで使われるライブ会場に来てくれた。
これからは毎日、稽古場・スタジオ・ライブ会場、このいずれかにきてくれることになる
「あの、シュビアはいないんですか?」
「っ……うん。今彼女も多忙で手が離せないみたいなの。ごめんね?」
「いいえ。無理はしないで、とだけ伝えてほしいです。あいつ、頑張りすぎるところあるので……いやシルヴィアさんの方が詳しいですよね。出過ぎた真似をすみません」
「ううん! 全然! むしろそんなに気にかけてくれて嬉しいよ! ありがとう……ちゃんと、伝えておくね」
心が苦しい。罪悪感に襲われる。
それでもこうなってしまったのは私のせい。私が決めたことなんだから受け止めなければならない
今回のライブ会場は2年後に《
イベント当日には多くの著名人がやってきて、私はそんな、大物たちの前座になってしまうけど頑張ってみんなの記憶にシルヴィア・リューネハイムを刻みたいと思っている
「綺優どうかしたの?」
「シルヴィアさんお疲れ様です。2年後にここで《
「……出るつもりなんだよね?」
「はい。願いがありますから」
「そっか。実はね私も《
「えっ」
綺優が驚くと私の体をつま先から上まで視線を動かす。
それが面白くてつい笑ってしまった
「軽く手合わせしてみる?」
「い、いややめときましょ。万が一怪我なんかしたら」
「む。私が弱いって言いたの?」
「そうではなくてですね、本当に万が一予期せぬ事態のせいで怪我とかされますと、護衛の意味が」
「ぷ……あはは! 冗談だって。ごめんね?」
「……」
「あー! 拗ねないでよ。もうレッスン始まるからまたあとでね! 綺優!」
綺優が拗ねて私から離れて行った。
あれは照れ隠しも混ざってるやつだったね。ついつい揶揄いたくなる。
でもそっか……《
その時はちょっと、頑張らないとだね
クリスマスのライブイベントまで1週間を切った。
今日はスポンサーさんや出演される他のメンバーさんたち全員との顔合わせで、ちょっと大変だった。
そのうちの1人……ドク・ズーデスさんが本当に厄介だった
「君可愛いな? どうだ俺の女にならないか? もし俺の女になったらもっと上にいけるようになるぞ」
本当に最悪。いつかはこういうことも言われるって覚悟してたし、今までセクハラやそういう発言もあったけど、ここまでドストレートに言われたのは初めてだった。
私は笑顔を絶やさず丁重にお断りしたけど、どうやら気に入らなかったみたいで、怒りを露わにしてた
「本当にいいのか? 俺が声かけるなんて中々ないぞ? 今素直に俺のいうことを聞いてないと後々、必ず後悔する……それでもいいのか?」
「私がやれるだけのことやってダメだった時は仕方ありません。自分の力でどこまでやれるのかやってみたいんです。こんな私にせっかくお声をかけてくださったのに、ご期待に添えず申し訳ございません」
「はぁ……言い方を変えるぞ? もしこの業界に残りたいなら俺の女になれ。さもなければ痛い目に──」
「──失礼します。彼女に触れることは許されておりません」
ドク・ズーデスさんが私に触れようと手を伸ばそうとしたら、その手首を綺優が捕まえて抑えてくれた
「……おい、手を離せ。なんの真似だ」
「私は彼女の護衛の者です。異性の方が彼女に触れることは許されておりません」
「お前気に入らないな。名前を言ってみろ」
「刀藤綺優です」
「刀藤……ああ、日本にある廃れた剣術の家系か。通りで見窄らしいわけだ。下民の分際で俺の手を触るのか? 離せ」
手を振り払われ綺優は握っていた手を離した。
本当にやっていること、言っていることが最低で私は今にでも怒りをぶつけそうになった。
でも綺優がチラっと私の方を向いて、「大丈夫だから」って微笑んでくれて溜飲が下がっていく。
ちょろい自分が嫌になる
「これ以上、彼女に無礼を働く場合、然るべき処置をとらせていただきます」
「そうか。やってみろ。その瞬間、おまえの家──刀藤家は終わりだと思え」
ドク・ズーデスさんは綺優を無視してまた私に触れようとしてきた。
すると綺優はその手を再び掴み、地面にドク・ズーデスを押さえつける。
周りの人たちが騒動に気付き集まってきた
「っ! お、おい! こいつを摘み出せ! なんの真似だ!? 死にたいのか!? ああん! 何みてるんだ! 早くコイツを退かせろ!!」
「警告したはずです。然るべき処置をとらせていただくと」
「貴様……!!」
「刀藤綺優さん離してあげてください」
「おいマジかよ。イザベラ・エンフィールド、《銀河》の最高幹部だ」
「しかも隣は《W&W》のペトラさんに幹部まで」
統合企業財体の幹部たちの登場に周りがざわつく。
綺優は言われた通り、彼から手を離した
「っ!! 何をしてる早くこいつを──」
「ズーデスさん。一連の流れは見ていたので知っております」
「なら話が早い。早くこいつを──」
「彼は与えられた仕事を全うしただけに過ぎません。彼女、シルヴィア・リューネハイムに許可なく触れようとしたのですから」
「何を馬鹿なことを。彼女も私に触れることを望んでいる!」
「そうなんですかシルヴィ?」
「いいえ。私は一度もそんなことは口にしてませんし思ってません」
「なっ!! おいおまえ!!」
「とのことです。規約に基づき一度ご退出を願います」
「ッ……!! ……後悔するぞ」
それだけ言い残しドク・ズーデスさんは去って行った。
その後はまた賑やかな雰囲気が戻ってきて、綺優も少し離れたところで私を見守ってくれた。
守ってくれた綺優は本当にかっこよかったなぁ。
惚れ直しちゃった。
ライブまであと少し。しっかり準備しなきゃ
「──少し遅れちゃった。急がないと」
1日の授業が終わりリハーサルに向かおうとしたシルヴィアだったが、突然生徒会の仕事が入り対応することになる。
統合企業財体《W&W》から会長と副会長揃っての対応をするようにと指示が出されたため、出席せざる得なかった。
そのため彼女は今、急いで会場へと向かっている
「あーもう! 近道するしかないかなこれ」
正規のルートでは余計に遅れると判断したシルヴィアは信号のない狭い道、路地裏を通ることを選択。
彼女は師であるウルスラを探すため、日々アスタリスク中を歩き回っているため、道に詳しかった。
詳しかったため──油断してしまったのだ
「ッ……!?」
複数人に捕らえられ口が塞がられる。
そのままシルヴィアは意識を失ってしまい車の中へと詰め込まれてしまった。
次に彼女が目を覚ました時、そこは廃墟と思われるビルの中だった。
柱に体を縄で拘束されているため身動きが取れない。《
「目が覚めたらようだな」
「っ……!! ドク・ズーデスさん」
「全く手間のかかる子だよ。最初から俺の言うことを聞いていれば怖い思いをせずに済んだと言うのに」
「やってること最低ですよ」
「だらかなんだ? 俺は欲しいと思ったものはどんな手段を使ってでも手に入れる。どんな手段でもだ」
「そうですか。その心意気はすごいですが、やってることは軽蔑します」
「好きだけ言えばいい。さて、もう一度聞こうか。私の女……いや、愛玩動物、ペットになれ。飼い主としておまえを飼ってやる」
ドク・ズーデスはシルヴィアの前にまで来ると屈み、そう提案した。
当然シルヴィアはそれを断る。そんなことを言われて頷く人などいないだろう。
しかしそんなシルヴィアの返答を分かっていたのか、ドク・ズーデスは下卑た笑みを浮かべ続けた
「そうか。なら仕方ない。刀藤家の人間には全員死んで貰おうか」
「なっ……!?」
ドク・ズーデスが端末を取り出しシルヴィアに見せる。
そこには刀藤家に襲撃するために武装した集団が、指示を待っているところが表示されていた
「なんで!? 私を手に入れたいからって綺優を巻き込まないでよ!!」
「くくく、言い方がなってないが……それはまあ躾ければいい。この間、あいつは俺に生意気な態度を取ったからな。だからあいつの大事な物を全部奪うことにした」
「こんなの絶対許されない。貴方もただじゃ済まないよ」
「これが許されるんだな!! 俺が所有している《
「だからってそんな……」
「どうにかなるんだなこれが。それだけ《
『了解』
「っ!! 待って!」
「待たねぇよ!! ははは!」
命令を出し端末を切るとドク・ズーデスはシルヴィアに手を伸ばし、制服の胸元部分を引き裂いた。
彼女が着ていた下着が露わになる。
シルヴィアは恥ずかしさに顔を染め体を動かすが、自由が効かずその場で揺れる程度。
そんなシルヴィアの反応をみてドク・ズーデスは楽しんでいた
(怖い。怖いよ綺優)
シルヴィアは《
しかし精神が乱れた乱れた状態でその力を行使するのは難しい。
まだ齢13歳。未成年の子供なのだ。なんとかしろと言う方が酷であろう
(──けて……助けて)
「それじゃあ早速味見させてもらうぞ」
ドク・ズーデスの手がシルヴィアの顎を持ち上げた
(助けて……助けて綺優!!)
────
突然轟音が鳴り響く。
シルヴィアとドク・ズーデスが音のした方向をみると壁が崩れて煙が上がっている。その煙の中に人影が見えた
「なっ!? ここは15階だぞ!? 誰だおまえ!!」
煙の中で人影がブレる
「お、おまえは──」
「黙れ」
拳一閃。綺優の右拳がドク・ズーデスの顔を捉え振り抜かれた。
彼はそのまま奥の壁に直撃し突き破り飛ばされる。
綺優は拘束されていたシルヴィアの縄を解き、上着を脱ぐと彼女に着させた。
シルヴィアは目尻に涙を浮かべており、思わず綺優に抱きついてしまう
「綺優……っ!」
「すみません。遅れました。でももう大丈夫です。ペトラさんたちも向かってますから」
「うん……ありがとう綺優」
「お、おまえぇぇぇぇぇぇ!!」
ドク・ズーデスの叫び声。綺優はシルヴィアを自身の背後に隠し彼と向き合った
「おまえ!! 何度も何度も邪魔をしやがって」
「黙れって言っただろ。お前を絶対に許さない」
「ふ、ふふ……ふはは! 許さない? 絶対に許さないって? それはこっちのセリフなんだよ! ばぁぁぁぁか!! いいか? 今テメェの実家は俺の部下たちに襲われて大変なことになっている。テメェの大切なものを全部奪っ──」
ドク・ズーデスがいい終わる前に再び綺優の追撃。今度も蹴りが彼の腹部に叩き込まれる。
またしても壁に吹き飛ばされるが、ぶつかる寸前で綺優がドク・ズーデスの服を掴み力を逃さないように、回転させ床へと背中を叩きつける。
ドク・ズーデスは背中からの衝撃で肺にあった空気が無理矢理出され、うまく呼吸ができない
「お、おま、ヒュヒュ、ほん、と、にこ、ころ、ころ、す」
「言い忘れたけど俺の実家には今、沖田総司がいる」
「っ……!」
「《銀河》に身を置いて、幹部になろうとしているあんたならこの意味わかるよな?」
《新撰組》。それは《銀河》が持つもう一つの諜報機関であり、日本に拠点を置いている。
《影星》と違い《新撰組》は表だって行動することが多い。
しかしそれはあくまでも日本での《
けれども本当の彼らの姿は違う──暗殺。《銀河》が日本で要人を暗殺する時に彼らを使うのだ。
そしてその《新撰組》に身を置いているのが、沖田総司。綺優の師にあたる存在。
過去にヘルガの下、《
「シルヴィ!! 無事ですか!?」
声の主はシルヴィアのマネージャーと《クインヴェール女学園》の理事を務めるペトラ。
そして彼女の後ろには《銀河》の幹部と最高幹部やイザベラの姿もあった
「イザベラさんお疲れ様です」
「刀藤綺優くんお疲れ様です。度々ご迷惑をおかけします。彼はまだ……生きてますねよかったです」
「まさか今回の一件見過ごすおつもりなんですか?」
「いいえ。これを理由に彼を裁判にかけ、彼の持つ《
「……ずっと泳がせていたんですか?」
「娘から……クローディアから聞いていたとおり感の鋭い子ですね」
「俺の家族が危険に晒されました」
「分かっています。また予想できましたから事前に沖田をそちらに配置させました」
「それでもです。はい分かりましたよかったです、で終われません」
「……」
すると外から騒音が聞こえてきた。
どうやら騒ぎを聞きつけた野次馬たちが集まっているようだった
「ひとまず彼を捕えてください。ペトラさん、避難の準備を」
「はい。シルヴィ、立ってください」
「ちょ、ちょっと待ってペトラさん自分で歩けるか──ま、待って!」
「えっ……シュビア?」
シルヴィアが立ち上がった瞬間、ペトラがシルヴィアの頭部にヘッドホンを装着させた。
それは普段シルヴィアが使っている変装器具であり、今綺優の目の前で綺麗な紫色の髪が茶色へと変わっていく
それを見た綺優は目を大きく見開き友人の名を呼んだ
「ち、ちが! 違うの綺優! これには理由が!」
「シルヴィ! 早く行きますよ! 話は後で!」
「ま、待ってペトラさん綺優の誤解を──」
「シュビア……いいや、シルヴィア。早く行ってくれ。みんな、困ってる」
「っ……! あ、綺優! ねえ! 綺優あとで、あとで話そう! お願い!」
「……」
綺優は無言でシルヴィアに背中を向けた。
そんな綺優の出した答えにシルヴィアは足元から何かが崩れるような錯覚に陥る。
隣でペトラがずっと声をかけ聞こえるが届かない。何を言っているのか分からない。
シルヴィアは放心した状態のまま無事避難した。
──そして、翌日。綺優はシルヴィアの護衛を辞退した
最後まで読んでくださりありがとうございます
誤字脱字報告も本当にありがとうございます。誤字脱字報告で懐かしい読者様のお名前をみて、嬉しくなりました
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