ヲタクが文明にもっと輝けと囁いている【配信中】   作:いかのしおから

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第一章 部族編
#1「突然始まる文明育成シミュレーション」


「……どこだここ」

 

 異様な光景だった。

 壁も床も真っ白。

 部屋の大きさは2畳ほどと狭く、出入り口はなく窓もない。

 にもかかわらず圧迫感を感じないのはどうしてだろう。

 そうか、明るいのか、光源が一つもないというのに。

 そんな奇妙な部屋の中に鎮座しているものがあった。

 ちゃぶ台と、その上に置かれたパソコンだ。

 

「さっきまで家にいた筈だよな……?

 誘拐……はありえねえな、わざわざ俺を選ぶ理由かねえし。

 てかなんだこの空間、意味不明すぎる。

……パソコンを見ろってことか?」

 

 パソコンに近づき画面を見る。

 これは……配信画面か?

 

『はじめまして』

「うわっ」

 

 パソコンから声が聞こえた。

 抑揚のない、電子音声さながらの女性の声だ。

 

『私はあなたのサポートAIです』

「……サポートAI?」

『はい、あなたは神として、ある世界の民を導く使命があります。

 私はそのサポートをする役割を担っています』

「聞こえてんの?」

『聞こえています、パソコンの手前にマイクが置かれてるのが見えますか?』

 

……あるな。

 まるでゲーム配信者が使うような、立派なマイクが取り付けられていた。

 

「神として導くってのは、どういう意味だ?」

『文字通りの意味です』

「説明になっていないが……どうして俺を選んだ?」

『それはあなたがヲタクだからです』

「ヲタク?」

『ヲタクとは軍事や工学、各地の神話伝承、歴史など、様々な文明知識を蓄え、これだと定めた文化を徹底的に訴求する存在です。

 またどんな逆境でも信念を貫く心の強さを持つと。

 このことから民を導く神に相応しい存在だと判断されました』

 

 何言ってんだこいつ。

 ヲタクを政治家か何かと勘違いしてないか?

……いいや、待て。

 

「まさかそれ、昔のヲタクの話か?」

『昔のとはどういう意味ですか?』

「ええと……昔はお前の言う通り、ミリタリーとかオカルトとか、一つの分野を徹底的に掘り下げる人達のことをヲタクと呼んでいたらしい。

 だけど次第に漫画やゲーム、アニメなんかの二次元趣味好きをそう呼ぶようになって。 

 当日は二次元趣味の風当たりが強かったから、隠れキリシタンさながらだったとも聞くが……。

 今じゃあアニメや漫画、ゲームは一般的な趣味だ。

 現代ヲタクの俺は、それらを楽しんで誰かにとやかく言われた覚えはない」

『ピ、ピピピー、ガッガッガッ、再計測の結果、成功率は3%まで低下』

 

……勝手に連れてきて勝手に失望するとか腹立つなこいつ。

 まあいいか、こんなところに長居する理由もない。

 さっさと家に帰って撮り溜めていたアニメの続きを見よう。

 

「てわけでもういいだろ? 家に返してくれ」

『それは不可能です』

「は? なんで? ……ああ、警察とかには通報しないから」 

『警察が捕捉することは不可能です。

 あなたを家に返せないのは、私にはその権限がないからです』

「権限ってなんだよ、ここに連れてきたのはお前じゃないのか?」

『はい、私ではありません』

「じゃあ誰だよ」

『分かりません』

「……お前はそいつの部下じゃないのか」

『私はサポート兼説明役として幾つかの知識を与えられて誕生しました。

 しかしその知識の中には私を生み出した存在に関する情報はありません』

「お前も巻き込まれた側ってことか……」

『とはいえ、あなたが家に帰る条件は提示されています。

 神として民を導き、勝利を収めることです』

 

 またそれか。

 

「勝利を収めるってのは?」

『あなたの導いた民が、その星において他の追従を許さないほどの文明を築き上げることです。

 戦争を起こし星を支配した制覇勝利。

 別の惑星に住めるまで技術を発展させた科学勝利。

 主導した宗教で世界中の民族を統一した宗教勝利。

 興した文化が世界基準の保護対象となる文化勝利など』

「……シビラ◯ゼーションじゃねえか」

 

 シビライ◯ーション。

 それは昔ちょろっとだけ遊んだことがある戦略シュミレーションゲームだ。

 難しすぎて一周もできず投げ出した覚えがある。

 ようやく確信が持てた。

 この状況、絶対偶然じゃない。

 何者かの意図が絡んでいる。

 それは果たして、神か、悪魔か、テレビ番組か、暗黒金持ちか。

 とにかく俺には抗えない、上位の存在であることは間違いない。

 

「……やるしかないか。

 サポートAI──は呼びにくいからアイでいいか。

 アイ、やり方を教えてくれ」

『かしこまりました。

 まずは動画配信を起動することをお勧めします』

「なんで?」

『現在の状況において、収入を得られる数少ない方法の一つが配信によるサブスクと広告収入だからです。

 収入がなければ生命維持に必要な食料の確保ができませんので』

 

……この不思議空間で飯食わねえと死ぬのかよ。

 

==

 

「おお、これが俺の導く村か」

 

 パソコンの画面には小さな村の映像が流れていた。

 家の数は十世帯ほど。

 建物は木造で、村から少し離れた場所には川が見える。

 

「……配信をつけても、視聴者数は1のままか。

 実はこれ、俺以外の誰かだったりしない?」

『いいえ、それはあなたです。

 あなたを除けば現在の視聴者数はゼロになります』

「前途多難だな。

 てかこれ、誰が見るんだ?」

『分かりません』

「言うと思った」

 

 一人ぐらいは見ていることを期待していたが。

 例えば俺をここに閉じ込めた諸悪の根源とか。

 文句の一つぐらい言わせろよ。

 

「……まだ誰も見ていないが、もし来た時に備えて、喋り続けてはおくべきだよな。

 不幸中の幸い喋り相手には困っていない」

『できる限りサポートします』

「それじゃあまずは何をすればいいのか教えてくれ」

『そちらのキーボードとマウスで村の観測画面を操作ができます。

 まずは操作の仕方を覚えましょう』

 

 ふむ、十字キーで視点移動。

 マウスで画面上のボタンを押す感じか。

 

「普通のUIだな。

 人知の及ばない上位存在が作ったような奇天烈な操作を要求されるんじゃねえかってビビってたが」

『問題ないようですね。

 では説明を続けます。

 この村は単に村と呼ばれており、村の名前はありません。

 周辺には山が多く、少し離れた場所には川があります。

 住民は狩猟民族であり、周辺の動物や植物を採取して生計を立てています。

 見えますか?』

「見える見える、画面に映ってる。

……山より先の景色は見えないんだな」

『村人の認識範囲外は観測する事ができません』

 

 ここらへんはシビライゼー◯ョンと変わんねえな。

 ちょっとづつ遊んでいた頃の記憶が蘇ってきた。

 

「近くにもう一つ村が見えるけど、これも俺の村か?」

『いいえ、これは別の村です。

 どうやらあなたの村とよく衝突をしているようですね』

「そうなのか?」

『はい、交戦履歴が残っています』

「交戦履歴つうと……ここか」

 

 交戦履歴と書かれた場所をクリックすると、ずらりと今まで村が戦った相手と結果が表示された。

 って負けっぱなしじゃねえか。

 

「……うちの村、弱くね?」

『この山岳地帯には幾つかの村がありますが、あなたの村は軍事力、科学力、文化力、全てが最下位のようですね』

「てかうちの村、自分から喧嘩を吹っかけた履歴が結構あるぞ」

『長年の争いにより村同士の因縁が生まれているようです』

「クソザコナメクジのくせに好戦的とか、どうしようもなさすぎるだろ。

 こいつら神様パワーで蹴散らしたりできない? 雷とか落としてさ」

 

 それができりゃ楽なんだが。

 

『あなたに備わった能力は二つ。

 村人の上空から周囲を観測すること。

 眠る信徒の夢に現れて言葉を授けること。

 物質的な神罰を与えることは不可能です』

「能力ってか制約だろもう。

 夢に現れて言葉を授けるか……なあアイ、ネットで調べて、うちの村でも使えそうな、いい感じの科学技術ネタ拾ってきてくんない?」

『インターネットのアーカイブに接続することは許可されておりません。

 そして私からそれらの知識をあなたに授けることも不可能です』 

「俺ただのアニオタだから、未開の住民を導ける知識とか一つもないんだけど」

『存じ上げています。

 まったくもって宛が外れました』

 

 相思相愛だな、俺も同じ気持ちだよ。

……てかちょっと待て。

 

「なあおい、ネットに繋げないってことはアニメや漫画も見れないのか!?」

『見れません。

 ここでは外部と連絡を取ることも、外部の情報を仕入れることも不可能です』

「ふざけんな! 今すぐここから出せ! 俺は現代を生きるドパガキだぞ!?

 アニメと漫画とゲームがなくて、どうやって生きていけばいいんだよ!?」

『人間の生命維持に必要なものは、酸素と水分と食料です』

「そういう機械っぽい解答は求めてねえんだよ!」

『ネットに繋がらないというだけで、急に取り乱し始めましたね』

 

 そりゃ取り乱すだろ。

 明日死ぬとしても、娯楽があれば耐えられる。

 俺達現代っ子が真に恐れるのは肉体の死ではない、退屈という名の心の死だ。

 

「こんな場所、早く抜け出さないと……!

 こいつらの夢の中に入れば指示ができるんだったか。

……とりあえずやってみるぞ」

 

==

 

「ちくしょう! 隣村のやつら、またうちの山で狩りをしやがって!」

「代々あの山は俺達が管理してたってのに! 余所者共の分際で!」

「もうこうなったら一発かますしてやるしかねえ!

 村長もそう思いますよね!」

「うむ、隣村許し難し……だが」

「……まさか勝てないと仰られるのではないでしょうね?」

 

 ああもう、言わなくても理解してるじゃねえか。

 俺達じゃあ隣村には勝てないって。

 どいつもこいつも感情論ばかりでうんざりする。

……理屈で納得してくれれば、俺だってこんな嘘はつかなくていいのに。

 

「今は時期が悪いのだ。

 こんな真冬に戦争を起こせば隣村だけでなく、我々まで倒れてしまうだろう。

 時期を待つのだ」

「……わかりました、冬が明けたら、ですね?」

「ああ」

 

 ああクソ、空約束しちまった。

 次はどうやって誤魔化せばいい?

 冬が明けるまでに対策を考えておかないと……。

 

「エルン、今日はどうだった?」

「成果は上々で争いも避けられた。

 ほら、山で採れた獲物だよ、皆で食べよう」

「やったー! ありがとう父ちゃん!」

 

 この世界は苦しいことだらけだ。

 だけど俺には愛する妻と息子がいる。

 この二人を守るためなら、俺はどんな苦労も背負ってみせよう。

 

「おやすみ」

「おやすみなさい」

「おやすみ、サーシャ、カイ」

 

 とはいえ、いつまで現状を維持できるのかは分からないが……。

 拭えきれない不安を胸に抱き、今日もまた泥のように眠りについた。

 

──その時だった。

 

『聞こえるか』

「!」

 

 頭の中に声が響いた。

 飛び起きて周囲を見渡すが、家ではない。

 それどころか村でもない。

 山でも、川でも。

 これはまさか……雲の上?

 

 そして、目の前には太陽の如き光を発する何かがいた。

 なんだあれは……眩しすぎて姿が見えない。

 

『調整間違えたか? ちょっと待ってろ』

「え」

『これでいいか』

 

 その光は私を気遣ったのか、眩さを抑えてくれた。

 老人……なのか?

 顔や腕には深い皺が刻まれ、長く真っ白な髭をたくわえながらも、生命力に満ち溢れた、背の高い老人。

 いったいどれだけ長生きすれば、こんな姿になれるのだろう。

 少なくともうちの村では見たことがない。

 しかし声は若々しい。

 奇妙だ、普通の人間だとは思えない。

 

「まさか──神様でございますか!?」

『……ん?

 お前らには神の言い伝えがあるのか?』

「え、ええ……この世界に神ありけり。

 神は大いなる存在であり、人を見守り、人を導くと」

 

 ま、まさか実在したとは……!

 神は人を見守り、人を導きくという。

 この言い伝えが事実であれば、もしや神は困窮する我々を助けに来てくれたのか!?

 

『それだけ?』

「そ、それだけとは?」

『神話とかは?』

「神話? ……なんでしょうかそれは」

『神様がどういう風に過ごしてきたとか。

 お前たち人間がどう神様と関わってきたとか。

 そういう物語だよ』

「……存じ上げません」

『まさか英雄譚もない? 

 悲劇や喜劇の物語なんかも?

 お前らのじゃなくて別の地域のものでもいいからさ』

「……申し訳ありません」

『──最悪極まる! 終わったわ! 

 もう絶望するしかねえ!

 やってられっかちくしょう!』

「お、お待ちくださ──」

 

 目が覚めた。

 今度は自分の家だった。

 隣では妻のサーシャが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。

 

「大丈夫? うなされていたけれど……」

「ああ……」

「本当に大丈夫?」

「も、問題ない」

 

 俺は……神を怒らせてしまったのか?

 何がいけなかった?

 神話や英雄譚というものを知らなかったからか?

 それとも何か対応に無礼があったのか?

 まさか……見捨てられた?

 

 その日一日、俺は自分の過ちと向き合い続けて過ごした。

 もしかすれば俺は、取り返しのつかないことをしたのかもしれない。

 絶望に震えた。 

 この困窮する状況を唯一解決できる手がかりを失ってしまった。

 それどころか無礼への罰を下されるかもしれない。

 神の怒りは俺だけではなく、村にも及ぶのでは?

 サーシャや、カイにも。

 

……けれど、再び眠りにつくと──

 

『よう、エルン』

「か、神様!

 先日は申し訳ありませんでした!

 どうか見捨てないでください!」

 

 神様が現れてくれた。

 俺はとにかく謝った。

 神様に許してもらうために。

 

『ああいいよいいよ。

 全然許すし見捨てない』

「み、見捨てない?

 私達を見守り導いてくださるということでしょうか?」

『こっちとしても一蓮托生だしな』

 

 一蓮托生とはどういう意味なのだろう。

 分からないが、許してもらえたことは間違いない。

 まさか……俺達は救われるのか?

 

『それよりも、お前たちは忘れていることがある』

「忘れていること、ですか?」

『ああ、それは神話であり、お前たちの英雄譚だ。

 お前は自分の先祖のことをどれぐらい知っている?』

「ええと……この山地に住まい狩猟を続けていたと、それ以前は……」

『やはり伝承は途切れているようだな』

 

 伝承が途切れている?

 確か神話というものは、神の物語と、神と人の関わった物語のことだよな?

 ということは私達の先祖は神の物語を知っていた?

 それともまさか、神と関わったことがある……?

 

 『かつてこの山岳地帯に、魔物という恐ろしい怪物が現れた。

 人間を一飲みできる巨大怪鳥。

 ただ道を通っただけで草木を枯らす猛毒蛇。

 岩をも砕く怪力猿など。

 魔物たちによって人々は虐げられ、次々に命が奪われていく。

 山の人間は滅びの運命を辿るかと思われた』

 

 な、なんだそれは。

 そんな化が物がいて人間が生きながらえられるわけがない。

 しかも神様の口ぶりからして一体だけではなく、複数いるようだ。

 だがおかしい。

 それが事実なら、どうして俺たちは今まで魔物に会わず生き残れた?

 

『そんな風に虐げられる人間を哀れに思う者がいた。

 それが神たる私だ』

「あ」

『私は人間を助けるために、自らの腕に傷をつけ、血を一滴、人間の妊婦の腹に垂らした』

「か、神様が、自分の腕に傷を……? 我々を助けるために?」

「うむ、痛かった、お前らのために仕方なく傷を負ったが、もう二度としたくない。

 またやれとか言うんじゃねえぞ』

「あ、はい」

『そして誕生した子供は、父と、母と、そして私の三つの血を受け継いでいた。

 名をケール。

 その子孫こそがお前達村の人間だ」

『!?』

『すなわちお前には神の血が流れている』

 

 お、俺たちに、神様の血か……!?

 

『神の血を引くケールは、誰よりも強く勇敢に育った。

 そして狩りと武芸に長け、特に弓に秀でていた。

 ケールは人々を助けるために、魔物を倒す旅に出る。

 ケールの放つ矢は百発百中。

 どれだけ離れた相手でも、かならず急所に当てていた。

 ケールが一矢放てば必ず魔物が倒れていった』

「す、すごい……!」

『時には一矢で十体もの魔物を貫き倒したこともあったな』

 

 凄すぎる。

 

『とはいえそんなケールでも一人では倒せない魔物がいた。

 竜と呼ばれる、蝙蝠の羽を持ち、鱗に覆われた巨大なトカゲの魔物だ。

 竜の鱗は強靭で、百発百中の腕を持つケールの矢をものともせず跳ね除ける。

 竜の口から吐き出される火炎の息吹に、流石のケールも命が奪われそうになっていた。

──その時だった。

 見知らぬ男が横合いから竜の顔を斧で殴りつけた。

 それにより火炎の息吹はかき消え、ケールは一命を取り留める。

 現れた男の名はロアン。

 お前達が争っている隣村の先祖に当たる』

「!?!?」

 

 隣村の先祖が、俺達の先祖ケール様を助けただと……!?

 

『ロアンとケールは協力して竜に挑んだ。

 戦いは十日十晩にも及んだ。

 幾度も死を覚悟しながら、それでも二人は戦い続けた。

 そして竜は討ち滅ぼされ土へと帰った。

 ケールはロアンの助けに感謝した。

 そしてケールはこう誓いを立てた。

「お前が危機に陥った時、助けるために必ず駆けつけよう。

 この身が衰え動けないのであれば、私の息子が。

 それが無理なら息子の子孫が」

 生きている間、二人が再会することはなかったが、ケールはロアンへの約束を決して忘れず、死ぬまで子孫に伝え続けた。

 これが私の神話であり、お前達の先祖の英雄譚だ』

 

 その話を聞いて涙が出そうになった。

 理由は一つではない、おそらく複数ある。

 その理由を全て言葉にする術を俺は知らなかった。

 

『にもかかわらず、ケールの子孫であるお前たちは、ロアンの子孫と争っている。

 しかも好戦的なくせに鍛錬を怠り、諍いでは負け続き。

 ケールの血筋として恥ずべき有様だ。 

 俺が昨日、嘆き悲しんだ理由が分かっただろう?』

「はい……」

『では神として神託を下す。

 ケールの英雄譚を村中に広げろ。

 そしてケールのような英雄になれるよう鍛錬も続けろ。

 あと、ロアンの子孫がいる隣村とも仲良くしろ、いいな?』

「かしこまりました……!」

 

 目が覚めた。

 かなり長く話し込んでいたようで、すっかり日が昇っている。

 台所ではサーシャが朝の準備をしており、カイがそれを手伝っていた。

 

「サーシャ、カイ」

「エルン、昨日はかなり疲れていたみたいだから、朝ぐらいは休んでも」

「気を使ってくれてありがとう。

 だけど俺にはやらなくちゃいけないことがあるんだ。

 悪いんだけど、今から人を集めたい。

 手伝ってくれ二人とも」

 

 村人が全員集まった広場で、俺はこう宣言した。

 

「──神様より御言葉を授かった。

 俺達は変わらなければいけない──」

 

==

 

『──お疲れ様です。

 これで村の好戦度は大きく下がり、防衛力は向上するでしょう』

「これで上手く行けばいいんだが」

 

 打てる手は打った。

 もう、ここからどう転んだところで後の祭り、神に祈るしかない。

 ってそれ俺やんけー……たはは。

 

「……英雄譚の創造により民の感情を制御する。

 有効な政策だと思われます。

 そしてケール神話に込められたメッセージ性も的確でした。

 あなたの能力を軽んじていたことを謝罪します』

「別にヲタク趣味以外何もないのは変わんねえよ。

 それに、これもゼロから作った神話じゃねえ。

 今まで見てきたアニメや漫画、ゲームから色々拝借したキメラ神話だし」

『日本の文化基準だと、全く類型のない物語を作ることは困難です。

 多くの創作者は、先人の技術を学び創作に活かしています。

 それを踏まえれば、あなたの作った神話はよくできていたと思いますよ。

 もしかすれば創作の素質があるのかもしれません』

「んなもんねえよ、こちとら生粋の消費者ヲタクだっての。

 ああもう、お前があんまり褒め殺しにするせいで、顔が熱くなってきたじゃねえか。

 次は何をすればいいんだ?

 時間のスキップ機能は──」

『ゴッドポイントが届きました!』

 「……あれ、アイってこんなキャピキャピしたアニメ声だったっけ」

『それは私ではありません。

 サブスクが届きました、配信画面をご覧ください』

 

 ええ……?

 誰か見てたの?

 誰も見ていないと思って完全に油断してたわ。

 こんな配信見てる奴、というか見れる奴は絶対に普通の人間じゃない。

 おそるおそるタブを切り替え配信画面に移る。

 

『オッス新人神様、なかなか珍しい政策だな、視聴継続するからこれで頑張れよ』

 

──視聴数が4人。

 サブスク付きのコメントが1件届いていた。

 

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