ヲタクが文明にもっと輝けと囁いている【配信中】   作:いかのしおから

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閑話「オルフェナ旅行記」

「パパ、ママ、私もう待ちきれないよ!」

「俺も俺も! この列車いつ着くの?」

「少し落ち着きなさい」

「次の駅のはずだが……お」

 

 車両のスピーカーからアナウンスが響いた。

 どうやら目的の駅に着いたようだ。

 暫くすると列車が止まる。

 車両から降りて駅から出ると、そこには夢にまで見た景色が広がっていた。

 

「遂に来たぞ……オルフェナへ……!」

「パパママ! あっち! あっち見て!」

 

 娘が指差した方向には、見慣れたマスコットキャラクターの着ぐるみが立っていた。

 どうやら新作商品のPRを行っているようだ。

 

「ねえパパ! 俺あのお店に行きたい!」

「私も私も!」

「気持ちは分かるが、それは先約を済ませてからだ」

「そうよ、既にチケットを買っているのだから」

「……はーい」

 

 不満げに口をとがらせる二人。

 とはいえ子供たちの機嫌は目的地につくとすぐに直った。

『オルフェナ資料館』

 オルフェナ神話に纏わる壁画や石碑、工芸品などが並ぶ展示施設だ。

 まだ幼い二人が神話資料館で機嫌を直すのか? という疑問はあるだろうが、それには明瞭な答えがあった。

 

「あれもしかして英雄ケール?」

「あっちは水の英雄ルキア様かしら?」

「よく分かったなお前たち」

「だってこの壁画、スマホのゲームとかによく出てくるし」

「私のやってるゲームだとルキア様かなり強いのよ。

 水の魔法と回復の魔法が強力で」

 

 流石はオルフェナ教の発信力だ。

 オルフェナ神話は、あの時代に作られた物語としては、群を抜いて娯楽性が強いと専門家にも評価されている。

 多くの創作に影響を与え、言わば現代エンタメの始祖とも呼べる存在。

 当然神話伝承を題材とするゲームを作るとなれば、採用されて当然だろう。

 

「おお! これがエルヴィス様直筆の聖典石板か!

 しかもエルン様の槍と弓まで展示されているだなんて……!」

「おーかっけー」

「……なんか今日のパパ子供みたい」

「パパは子供の頃からオルフェナに行くのが夢だったのよ」

 

 復興の伝道師エルンと無血の統一者エルヴィス。

 オルフェナ史を語る上で外せない大英雄二人の遺品を見れるとは……!

 これを見れただけでも旅行に来た甲斐があった……!

 

「ねえあなた、そろそろ移動しないと演劇が始まるわよ」

「演劇っってオルフェナ神殿劇団の!?」

「やった! 楽しみにしてたのよね!」

「くっ、名残惜しいが見逃すわけにはいかん! 行くぞお前達!」

 

 展示館の敷地内の通路を通り、向かったのはオルフェナ神殿。

 ここオルフェナ山岳地帯の部族が統一された記念に建てられたというオルフェナ教最初の神殿だった。

 神殿設立以降、神に物語を捧げるために神官はここで演劇を繰り返していたという。

 

「ではこれより、オルフェナ神殿劇団による演劇を開始します。

 演目は『山の神オルフェナ』です」

 

 おお、最初はこれか。

『山の神オルフェナ』

 それはオルフェナ神話の主神オルフェナについて描かれた物語だった。

 僕は好きだが、他のオルフェナ神話の伝承とかなり毛色が違うため、子供たちが退屈するのではと心配したが、流石はオルフェナ神殿劇団。

 気づけば子供たちは劇団の演技力に目を奪わていた。

 

「ご覧いただきありがとうございました。

 続きましては、『ケール英雄譚』となります」

「うおおおお!」「待っていました!」「ケール英雄譚万歳!」

 

 とはいえやはり大本命は英雄譚。

 子供たちだけではない、大人も負けずと歓声を上げている。

 それも仕方がないだろう。

 オルフェナ神殿劇団の演劇は長年各国でテレビ放送されている。

 それもクリスマスや正月といった記念日の特番枠でだ。

 一度は現地で鑑賞したいと憧れを抱くのは、テレビを見て育った現代人であれば当然だろう。

 彼らは念願の夢を叶えている最中なのだ。

 どうか寛容な目で見守ってあげてほしい。

 

「あなた、ちょっと耳が痛いのだけれど」

「おっと、すまない」

 

 勿論その歓声の中には僕もいた。

 

第一章 村編 完

 

 

 




 第一章完結です。
 ここまで読んでくださりありがとうございました。
 続きは需要を見つつ検討したいと思います。
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