ヲタクが文明にもっと輝けと囁いている【配信中】   作:いかのしおから

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第三章 漫画編
♯29「夢のバーチャルアイドルへ」


 画面には男のVTuberアバターが映っていた。

 それは俺の動きに合わせて動き出す。

 

 アバターの制作を依頼した絵師は、俺のイメージにあったものを用意してくれると言っていた。

 となれば当然、匂い立つような色気を放ち、ダークで大人っぽく、黒のロングコートが似合うタイプの、漆黒の翼とか生えてそうなイケメンを想像するだろう。

 しかしお出しされたのは、少年漫画風の絵柄で子供っぽい顔立ちのギザギザ頭の少年である。

 

 かなりイメージから外れている気がしたが、まあ許容範囲だ。

 むしろこんな見た目から溢れ出す色気のギャップに女性リスナーは鼻血を吹き出し、血の海に沈んで窒息死して、遺族から多額の慰謝料を請求されるに違いない。

 慰謝料を払う金はないので、色気を出すのは程々にしておくべきだろう。

 鎮まれ……静まるのだ俺の色気……!

 

「どうよ皆!?」

『思ってたより悪くねえな』

『戻して』

『結構似合ってんじゃん』

『デフォルトゴッドの方がよかった』

『嫌いじゃない』

『これでオル神も遂にVTuberデビューかー

『顔出ししろ』

『アバター購入おめでとう/100GP』

 

 賛否は丁度半々ぐらい。

……ちょっと色気を抑えすぎたかな。

 

『今日何すんの? 自己紹介配信?』

『キャラ設定決めた?』

「いいや、まだ何も決めてない。

 そんなわけで自己紹介配信はまだ準備が整っていなくてな。

 今日のところはお披露目だけして、いつも通り神様配信を行いたいと思う。

……俺の身体は画面のどこに置いたもんか」

『アイちゃんと逆側の画面端でいいんじゃない?』

「そうだな、ここでいいか」

『リアル寄りの3Dアバターと、2次元系の2Dアバターが並ぶと違和感あるなぁ』

 

 お、いいこと言ったな。

 俺がせっかくVTuberデビューしたってのに、アイがいては人気が分散する。

 ちょうど目障りに思っていたところだ。

 

「やれやれ、俺は別にアイを残してもいいと思ってたんだが、皆が嫌がるなら仕方がない。

 それじゃあアイのアバターは消させてもらおうか」

『そういう意見が出ると予想して、事前に用意していましたぜ旦那!【リンク】』

「……は?」

 

……何言ってんだこいつ。

 このページに飛べってことか?

 嫌な予感がするが、撮れ高的に避けてはならないと、俺の配信者本能が告げている。

 しゃあない、行ってみるか……ってここ、ゴッドショップじゃねえか。

 このページは……VTuberアバターの……。

 

「まさかこれ、アイの二次元2Dアバターか……?

 なんでこんなものが売られているんだ。

 しかも無料で。

 まさか──お前作ったのか!?」

『ご明察』

『おー可愛いー』

『確かにアイちゃんを二次元系の画風に落とし込んだらこんな感じだよな』

『ありがとうございます、とても助かります』

『へへへ、アイちゃんにお礼言われちゃった』

「おいふざけんな!

 俺がVTuberになりたくて金策頑張ってたの知ってただろうが!

 どうしてアイには無料で作ってんだよ!?

 俺に作れよ!」

 

 どいつもこいつもアイばっかり特別扱いしやがって……!

 

『その反応が見たかった……!』

「は?」

『ワイはオル神が苦労したり可哀想な目に遭う姿が見たかったんや。

 だからオル神のアバターは作らなかった。

 金策に苦労しているオル神を見るのは最高やったし、今のキレかたもたまらん!』

「……なんだこいつ、俺のアンチか?」

『いいや、ファンだと思うぞ。

 だいぶ様子がおかしいけど』

『最近変なリスナー増えたなー。

 分母が増えたのもあるから仕方ないけど』

『リスナーの傾向は配信者に似るとは言うが』

『アイちゃんも好きやけど、ワイが一番好きなのはオル神や。

 オル神愛してるぞ/10000GP』

「おい、ふざけんな! こんな流れで10000GP投げてくるんじゃない!

 初めて10000スパチャ貰った思い出がこれとかキモすぎる!」

『オル神の初めて奪っちゃった』

「キモ!」

 

 ゾワゾワする。

 なんだこいつ、1万GPくれたことには感謝してるが、それはそれとしてキモすぎるんだけど!

 

『マスター、アルヴェリア王国政府から書状が届きました』

「書状?」

『内容を要約すると要点は二つ。

 一回挨拶しに来い、貴族になる意思はあるか? 

 以上です』

「……意図は?」

『オルフェナは文化革命をタルミナで起し、支配層のガルダン商会を粛清しました。

 これはアルヴェリア王国の支配層から見れば警戒に足る出来事でしょう。

 オルフェナが敵か味方か、その判断をしたいのだと思われます』

 

……もしかしてアクセル踏みすぎたか?

 だけどホワイトレンジャーを公開しないと、タルミナに攻め込まれてたかもしれねえし。

 

「無視するのは……まずいよな?

 オルフェナって飛び地だから、流石に攻め込んでは来ないと思うけど。

 でも貴族になったら税を納めなくちゃいけないし……」

『最近は演劇や漫画、関連グッズでかなり稼げてるじゃん。

 金持ってるタルミナとも仲いいし。

 流石に人口減少までは行かないんじゃねえの?』

「あ、そういやそうじゃん。

 忘れてたわ」

 

 昔と今では前提条件が違う。

 これならアルヴェリア王国に所属して税を払っても、食いっぱぐれはしないだろう。

 

「ええと、オルフェナがアルヴェリア王国の一部になっても、俺は干渉できるんだよな?」

『信徒の信仰が続く限り、神託を送ることは可能です』

「アルヴェリア王国の一部になると文化勝利ルートから外れたりは」

『問題ありません、文化勝利の条件は都市ではなく文化にあります。

 あなたの生み出した文化が消えるまでは、敗北条件は満たされません』

「実はこの呼び出しは罠で、送った使節団が捕まえられたりは」

『ないとは言い切れませんが、アルヴェリア王国から見えればオルフェナは小勢力です。

 呼び出しを断り反感を買うよりはマシかと』

 

……送り込むしかねえか。

 

『あんまりマイナスに考えんなよ。

 貴族になれば、もし外国に攻め込まれた時、政府や同国の貴族が助けに来てくれるかもしれないし』

『そうそう、ガルダン商会みたいな悪党も結局は平民の小悪党だ。

 貴族の権力があれば、ビビって突っかかってこなくなると思う』

「……分かった。

 王様に頭下げに行くとなれば、こっちもトップを連れて行くべきだよな。

 とりあえず町長は決定で。

 菓子折りとかも用意しておいた方が良いのか?」

 

 一応ポテトチップスとかの作り方は教えているが、王様が庶民の駄菓子を気に入るだろうか。

 

『なあ、菓子折りって、マジのお菓子送るつもりでいる?』

「そうだけど?」

『こういうのって普通、宝石とかの高級品だろ。

 相手は王様だぞ』

「……言われてみれば確かに。

 となると宝石贈ればいいのか?」

『待て、あっちが俺達を引き込もうとした理由はおそらく、オルフェナの芸能文化だけじゃない。

 製紙技術や印刷技術にも目をつけた筈だ。

 贈るべきは技術だろう』

「ええ〜!? 紙と印刷技術〜?」

 

 めちゃくちゃ時間かけて開発したんだけど!

 

『ここで出し渋ったら、反抗の意思があると思われかねない』

「でも、これはオルフェナの切り札だし……」

『よく切れる刀だからこそ、相手に預けて安心させるんだ』

「うーん」

『製紙技術と印刷技術を広めることはオル神の趣味とも一致してると思うぞ』

「? どういう意味だ?」

『他所でも独自に漫画が作られ始めるかもしれない』

「!」

 

 それは確かに魅力的だ。

 他所で作られた漫画が読めるなら、手放す意味はあるか。

 

『この際王様に頼んで特許も貰っちまえ。

 作り方自体は簡単なんだ、いずれバレる。

 なら高く売りつけたもん勝ちよ』

『王国に特許法ってあったっけ?』

『なけりゃ制定してもらおう』

「よし……そんじゃあまず貴族にはなる。

 製紙技術と印刷技術は王様にプレゼントする。

 んで、特許も取る。

 この方針で神託送るわ」

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