魔法科高校の劣等生 欠陥品の魔法師   作:ユウジン

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力の提示

「先輩……俺と模擬戦しませんか?」

 

大翔の前には先輩に挑戦状を叩きつける達也がいる……こうなった訳は少し時間を巻き戻して説明しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業も終わりまるで劣化ウランの如く重い足取りで大翔と達也は階段を上っていた。そんな二人を深雪が……

 

「そんなに嫌ですか?」

「諦めちゃいるがだからと言って嬉しい訳じゃないからな」

 

大翔がため息を吐く。

とは言えどんなにゆっくり歩こうが何れ着く……嫌だ嫌だといっても着いてしまうのだ。

 

『失礼します』

 

三人はドアを開ける。席の位置的にあずさが一番最初に見えるので手を振ると振り返して着た。すると中には初めて見る顔もあった。多分あれが生徒副会長だろう。

一瞬敵意を向けられ……それは瞬時に霧散した。と言うか副会長が深雪の方に意識を向けたからだ。

 

「ようこそ生徒会へ。司波さん」

 

司波と呼んだら二人になるが副会長にとって司波と司波 深雪以外にいないのだろう。いっそ清々しいほど大翔と達也を無視した。

だが愛すべき兄と会って未だに日数は少ないとは言え自分に対して妙に遜ることなく話してくるため好感が持てる兄のクラスメイトを無視するとは何事かと言う雰囲気を出す。

全く副会長は気付いていないが達也がそれを見て視線と口パクで宥める。

 

「さて達也くん、大翔くん行こうか」

 

いつの間にか名前呼びに変わった摩利に手招きされ大翔と達也は向かおうとし……

 

「待ってください。渡辺先輩」

 

副会長が止めた。

 

「何だ?服部刑部少将半蔵どの」

 

何だその長い名前は……と大翔が眉を寄せると、

 

「服部刑部です!学校にもそうして届けを出しています!」

「そう言うな半蔵」

「で!す!か!ら!服部刑部です!!!!」

「全く。細かいことをグチグチと……将来禿げるぞ」

「まあまあ摩利。はんぞー君も譲れないのよ」

 

あんたが言うな!っと次の瞬間その場の全員のここの声が重なったが視線だけに留める。

だが暖簾に腕押し糠に釘馬の耳に念仏と言うように全く堪えた様子はない。

だが渦中の服部刑部少将半蔵副会長は真由美に文句は言わず赤面してあー、うーと言っている。成程分かったぞ。と言うか分かり易すぎる。武士の情けでここで言わないが……読んだ皆様も簡単に分かると思う。

 

「って!そう言うのが言いたいんじゃなくてですね!」

 

少し深呼吸する。

 

「私は反対です。風紀委員の人事に……」

「なに?」

 

摩利は眉を寄せる。

 

「風紀委員は魔法による事件の鎮圧が主な仕事です。雑草(ウィード)に勤まるとは思えません」

「私の前で禁止用語を使うとは良い度胸だな服部……言っただろう。この二人の力は」

「ええ、起動式を読める司波 達也と相手の起動式を的確に撃つ技量を持つ草繋 大翔……ですが戦いが風紀委員の仕事です。今まで二科生が選ばれた前例はなく幾ら珍しいとはいえ二科生の選ばれるような実力が低い者に「違います!」え?」

 

全員の視線が服部から深雪に変わった。

 

「お兄様は決してそんなことはありません!実力が正当に評価されないのは試験の内容が悪いのです!」

「司波くん。お兄様が大切なのは分かるが……」

 

諭すような口調……成程普段は後輩の面倒見もよい良き先輩なのだろうと分かるが……

 

「身内贔屓は辞めておいた方がいい」

「ちがっ!」

 

深雪がなにかを言おうとしたがそれを達也が制した……

 

「分かりましたこうしましょう」

 

達也の視線が鋭利な刃のようなものに変わる。まるで戦闘体勢に切り替わった機械のように……

 

「先輩……俺と模擬戦しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を戻そう。

こうして決闘することになった達也と服部は決闘場に来ていた。

一応正規の書類で届け出を出せば決闘は可能であるが恐らく一科生と二科生の決闘は初めてだろう。内心大翔としては自分が決闘の場に立たなくて良かったと安心したのは秘密だ。

さて二人はそれぞれCADを装備すると向かい合う。

達也は大翔と同じ特化型の拳銃型のCAD……対する服部は汎用型のブレスレット型のCADだ。

基本的に起動式の発動は特化型の方が速い。起動式の展開が速いと言うことはその分魔法式の変換も早くなり結果魔法の発動が早くなる。

だがあくまでCADはその補助……どうしても魔法師自体の実力が基礎となってる以上CADが幾ら高性能だったとしても達也と服部では発動の速さでは雲泥の差だ。

だが達也はあくまで自然体のままだ。なにか勝算があるのだろうか……

 

「では確認だ。相手を死なせたり後遺症が残るような魔法は禁止だ。但しそれ以外なら使用は特に禁止しない。二人とも準備はいいな」

 

達也と服部は摩利の確認に頷く。

 

「では……はじめ!」

 

服部はブレスレット型のCADを起動させ起動式を展開……魔法式へと変化させる。

ここまでの動きに一切淀みは無い。これだけでも服部が高い実力有しているのがわかる。

放つ魔法は単一系移動魔法。単一とは魔法を組み上げる際に工程と呼ばれる手順を踏まえるのだがその手順を一つしか踏まえない魔法のことだ。

工程とは例えば卵を魔法でテーブルからテーブルへ移動させる際には前回説明した16種の魔法の内まず初動を〔加速〕で動かし〔移動〕で微調整して加速の力の逆回しである〔減速〕で速度を遅くしてテーブルの上で今度は移動の力の逆回しである〔停止〕で止める。

これで例えば〔移動〕と〔停止〕を抜くと卵は力加減がずば抜けて上手くない限りテーブルに叩き付けて破砕させるだろう。

このように工程とは魔法を行う上で非常に大切な調整である。

まあ今回のように戦闘で壁に叩き付けても問題ない場合は全開の移動魔法で達也を吹っ飛ばして壁に叩き付けて終わらせるつもりだったのだろう。

だが……

 

『なっ!』

 

始まった瞬間深雪以外のギャラリーと服部が唖然とした。

 

(ちか……)

 

気づけば服部の目の前には達也が居たのだ……

 

「くっ!」

 

移動魔法を放つ際には放つ場所を予め決めておくのだがそこから外れた達也を追って服部は再度座標を設定し直す。

別段これは手間はかからず殆ど達也を視界に入れておけば瞬時に可能だが瞬きした瞬間には服部の視界から達也が消えていた。

 

「え?」

 

服部の背後をとった達也は拳銃型のCADを構え……

 

「あがっ!」

 

次の瞬間服部の体を強い波のようなものが襲う。

 

「が……」

 

平衡感覚が保てなくなった服部はそのまま床に倒れ附した……

 

「あ……しょ、勝者!司波 達也」

 

摩利が唖然としながら勝者宣言をする。

だが達也は興味がないような顔でCADを片付けようと動き出す……だがそうは問屋は下ろせず真由美達が着た。

 

「あ、あの動きは何だ?まさか予め自己加速の魔法を掛けていたのか?」

「まさか」

 

達也は肩を竦める。確かに予め魔法をかけておくのは反則だしそれがないように摩利自身が見ていた。

 

「正真正銘の身体能力です。お兄様は九重 八雲先生の弟子ですから」

『何!?』

 

全員が驚愕とした。

忍術使いの九重 八雲……そう言えば知らぬものなど居ない有名人だ。元は忍者の系譜である九重は体術でも有名でその弟子となればそりゃあ人間離れした身体能力で当たり前である。

 

「じゃあはんぞー先輩は何で倒れたんだ?サイオンの波動が放たれたようにしか見えなかったんだが……」

 

大翔はジーっと達也のCADを見たまま疑問を投げ掛ける。

 

「今使ったのは基礎単一系の振動魔法だ。それで酔ったんだ」

「酔う?」

「魔法師はサイオンを光や音と同様に知覚できる。必要な能力だが今みたいに突然自分とは異なるサイオンの波動を浴びると一時的に船酔いみたいな症状を感じるんだ」

「なら尚更可笑しいわね」

 

真由美が首をかしげる。サイオンは魔法師が常時浴びている物だ。今更多少のサイオンの波動に当てられたからといって酔う筈はない。

 

「波の……合成ですね」

 

そこには鈴音が呟いた。

 

「え?」

「恐らくサイオン波を三回放ち服部副会長に丁度当たるように波動の威力や速さを微調整したのでしょう。そうすれば三角形のような状況になり通常より強力な波動に変わります」

「流石です」

 

達也が拍手した。鈴音の仮説は正解と言うことだろう。

 

「ですがそれだけの処理能力があれば二科生訳が……」

「あのさぁ……」

 

すると大翔が再度口を開く。

 

「それってシルバー・ホーンじゃね?」

 

大翔が指差すと、

 

「ええ!?」

 

ピュン!っと達也のCADに齧り付きそうなほどあずさは顔を近づけた。

 

「本当だ!間違いないですよ草繋くん!」

「やっぱり!」

 

大翔も目をキラキラさせながら近づく。

慌てて達也はCADを背中に隠して下がるが二人は躙りよる。

 

「凄いのか?それは」

 

摩利が聞くとあずさと大翔の目がキラーン!っと光ながら摩利を見た。

 

『知らないんですか!?』

 

摩利はしまったと内心自分の不用意な発言後悔した。

 

「トーラスシルバーとはループキャストシステムを開発した奇跡のCADエンジニアで本名および姿、プロフィールすべてが非公開の天才です!」

「そんな彼がフルカスタマイズした特化型のCADがそのシルバー・ホーン!最小の魔法力でスムーズな魔法発動およびループキャストにももちろん最適化されていてしかも銃身の長い限定モデル!見るのがはじめてなので草繋くんが気付かなかったら惜しくも見逃してました!」

『…………』

 

その場の全員が呆然と聞いていた。なぜこの二人が……しかもあずさは対人恐怖症な部分があるのにこの二人があっという間に親しくなったのかが凄く良く分かった……同じ穴の狢と言うわけだ。

 

『あ、説明し忘れてましたがループキャストシステムとは一回の展開で同じ魔法を魔法師のキャパが許す限り連続して何度でも連続発動できるもので……』

「わ、分かったから二人とも……」

 

摩利が弱冠ドン引きながら二人を落ち着かせる。

 

「というわけで達也もう一回見せて!」

「わ、私も!」

「もう仕舞ったが?」

 

大翔とあずさはガックシと膝を着いた……

 

「ですが可笑しいですね。ループキャストは同じ魔法を放つシステム。振動数は予め設定しておけば良いでしょうが座標・強度・魔法の持続時間全てを完全に調整できてなければ……まさかこの四つの全てを……!?」

 

達也は肩を竦める。

 

()()()()()()()()()()()()ですから」

 

全員がそう言うことかと頷く。深雪がいっていたことはそう言うことなのだろう。

 

「そうか……」

 

摩利が頷くと今度は大翔を見る。

 

「さて次は大翔くんの番だな」

「え?」

 

達也のCAD羨ましげに見ていた大翔は摩利の言葉に唖然とした。

 

「まさか達也くんだけのわけはないだろう。ほら服部も立つんだ。もう起きているんだろう?」

「あら、そうだったの?」

 

真由美は白々しく言う。

 

「あ、いやその……」

 

服部は起き上がった。

 

「ずっと起きていただろ?」

「い、いえ、意識がずっと朦朧としていたと言うか……」

「まあまあ。今は彼のを見ましょう」

 

全員が大翔を見る。

 

「いや、俺は達也みたいな派手なの無いですよ?」

「別にいいだろう。それとも私と戦ってみるか?」

「勘弁してください」

 

摩利の実力はその体から漏れるサイオンで簡単に計れる。

と言うか生徒会長、風紀委員長、部活連会頭の三人は三巨頭と呼ばれていてその実力は折り紙つきだ。そんなのの叩くとは軽く死ねる。

純粋な魔法の戦いになったら多分服部にだって大翔は先に魔法を出されてKOだろう。

無論戦い方と言うものがあって大翔の長所を前面に出して戦えれば話は別だが……

 

「やりゃいいんでしょやりゃ……」

 

大翔は自分のCADであるクロヒョウを抜くとポッケからコインを一枚だす。

こうなったらド派手なやつを見せて度肝抜いたると胸に決めながらコインを指で空中に弾きあげる……

 

『え?』

 

皆が弾きあげたコインを目で追う中大翔はCADを構える。

それと共に起動式がCADから現れ大翔に取り込まれると魔法式に変換……まず大翔は銃口の辺りに空気中の静電気を〔収束〕……更に静電気の動きを〔加速〕……そうすることで電磁場が生まれ……コインを吸い寄せたが次の瞬間全て〔放出〕……

生まれた電磁場の力が反転し吸い寄せる力が弾く力に変わる。

 

『…………』

 

溜め込まれた力が全て放出されその力が音速の速さでコインを飛ばすとコインは真っ直ぐ飛び壁を貫通する……

 

草繋 大翔オリジナル魔法にして殺傷ランクAランク……金属を音速で射ち出す放出系の魔法……電磁石銃(レールガン)……と言うのだが、

 

「あ……」

 

大翔はしまったと顔を青くした……明らかにやりすぎである。幾らなんでも闘技場の壁に穴は絶対に……

闘技場に直径二センチ程の穴を開けた大翔はスパコーン!と摩利に叩かれた。

 

「お前は手加減ができんのか!」

「す、すいませーん!」

 

大翔は摩利に土下座をするはめになったのは余談である。

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