大翔は非常に整った顔立ちをしている。
姉である真由美と同じ少しタレ目な丸い目に背中に届く髪を後ろで一本に縛り平均的な背丈だが引き締まっているのが分かる体……一人で歩くと結構な確率で逆ナンパされ中学時代は女子生徒にモテた……(一部の男子生徒からも……)
これで分かると思うが非魔法系の部活には大翔は良い広告塔になるのだ。序でに女子中心の部活動でもマネージャーとして大翔を奪おうとするものもいる。(これを機会にお近づきになろうとしているのが丸わかりだ)
そんなこんなで大翔は大勢の人間に囲まれるが強引に弾き返すこともできない。男子なら別に大丈夫だろうが女子も混じっているのだ。しかも大翔に抱きついたり髪を引っ張ったりと男子が相手なのを良いことにやりたい放題で大翔を引っ張っていこうとする。
「は、大翔く……きゃ!」
「あーちゃん先輩!」
人混みにあずさは突き飛ばされる。このままじゃ危険だ。
「ちっ!」
大翔はクロヒョウを抜くと地面に向け起動……起動式を取り込み魔法式を構築していき……〔収束〕の魔法で空気を収束……そしてそれを〔放出〕の魔法で射出すると突風が辺りを駆け抜ける。そういった突風にたいして人間の咄嗟の反応として視界を一瞬閉じる。
その間に大翔は姿勢を低くしながら走り出すとあずさを見つけて抱きかかえあげる。所謂お姫様だっこと言う奴だ。
「は、大翔くん!?」
「舌かみますよ!静かに!」
「は、はぃ……」
あずさはたった今まで人々を魅了?した顔が間近にあるため顔を真っ赤にしていた……
「はぁ……事件が起きないように見回る筈が自分が起こしてちゃ世話ないですね……」
「あはは……」
大翔が肩を竦めるとあずさは苦笑いした。
現在二人は校舎の影に潜んでいる。今だ大翔を追いかける者がいるのだ。
「でも大翔くんすごい魔法でしたね」
「ただ突風起こすだけです。大したもんじゃありません」
攻撃力皆無だし……
「でも大翔くんって……その……」
「何で二科生なのかって?」
「はい。これで大翔くんの魔法を直接みるのは二度目ですがどうしても二科生に分類されるような実力じゃなくてですね……」
「うーん……まあ良いか。あーちゃん先輩になら」
「え?」
大翔は立ち上がる。
「俺は魔法が特定の条件でしか使えないんです」
「……はい?」
「昔ですね……ちょいと事故にあいまして……その時に脳が……と言うか脳の魔法演算領域が閉じちまいましてね……医者が言うには一種の防衛本能が脳を守るために起こした行動らしいんですがお陰で魔法使おうとするとひどい頭痛起こすわ目眩するわ下手すると意識喪失するようになってしまいまして」
「そんなことあるんですか?」
恐らく大翔が言う事故とは魔法系の事故だろう。あずさにもそれは分かる。そして魔法演算領域に異常を起こす場合もあるのも分かる。だが飽くまでそれは医学が発展した今では殆ど一時的な物である。後は精神的なものだ。
「医学が発展しても脳の行動は制御できませんからね」
催眠術とか……色々使えば別でもあるがそれも効果はなかった。
「まあそこで例外があるんですけどね」
大翔は自らの手を見る。
「俺はこういう風になる前から姉さんと同じで〔放出〕の魔法は得意だったんです。そのせいかですね……最大で5工程くらいは魔法を練れるんですが最後に絶対〔放出〕を工程に持ってこないといけないんです」
「ええと……つまり?」
「つまり俺は〔放出〕系の魔法しか使えなくなってます。しかも事故の時の後遺症の性か演算速度も落ちてるし干渉能力も落ちてる……そんでもって書き換える速度も並になってしまいましてね。その辺はこのCADで何とか誤魔化せますがそれにも限度はありますしね」
まあ実はもう1つ例外が存在するがそれはあずさであっても言えない。
「これでわかったでしょう?俺が七草を出た理由……」
七草は
「魔法が特定の条件でしか使えない七草なんて欠陥品扱いですからね」
大翔はどこか寂しげな表情を浮かべる。
魔法が使えたうちは周りの人間は優しかった……だが使えなくなったら欠陥品扱い……変わらない扱いをしてくれたのは姉とか妹達くらいなものであったが結局耐えきれず逃げるように家を出た……
「大翔くん……」
「ま、そんなところでしてね……楽しい話題じゃないですよね?すいません。どうかしてました。忘れてくだ……え?」
突然あずさは大翔の近くに来るとプルプル背伸びをしながら手を伸ばす……そして頭を撫でられた。
「つ、辛かったですよね?凄く大変だったと思いますが……その……」
「………」
ジン……と心に何か染みた気がした……目が少し熱くなる……
「さ、さあ!見回りいきましょうか」
「あ、そうですね」
大翔があずさの手をどかせながら歩き出すとあずさは着いていく……
ダメだ……調子が狂う……
「あ、今剣道部のデモンストレーションやってるんですね」
武道館前を通るとあずさが声を漏らした。
「好きなんですか?」
いまだに調子が狂ったままに大翔はあずさの言葉でやっとあずさを見る。
あまりこういったものが好きそうには見えないが……
「いえ、剣道部じゃなくて剣術部の方なんですけど服部くんの知り合いの桐原さんが出られるんです」
「あ~……なら少し見ていきませんか?」
「え?でも……」
「良いからいきましょ」
少し別にことで気を閉め直さないとならなかった大翔はあずさを強引に連れていった……
「意外と剣道部の人口多いんですね」
「っ!」
バシンバシンと竹刀がぶつかり合うのを見てあずさは音が出る度にうわっ!とかふぇ!と体を震わせる。
でも……
「ありゃ試合じゃなくて殺陣ですね」
「え?」
「事前に申し合わせてやってますよあれ……」
大翔は呆れ半分みたいな声を出す。
すると片方が立ち面を脱ぐ……女子だった……デモンストレーションに出てると言うことは2年か三3年だろう……
「うわ~美人ですね~……」
「そうですね……って何で最後の方元気なくなるんですか?」
「大きい……」
「?」
大翔は勝った方の先輩を見る。そんなに背が大きいだろうか……確かにあずさと比べれば大概の女性は大きいだろう。それゆえに今更……ああ、
「胸……」
「大翔くん怒りますよ?」
あずさが見せたはじめての殺気だった……
「ア、ハイ……」
大翔はこれからあずさには胸の話題は出すまいと強く誓った。
すると……
「ん?」
突然剣道部の部員が吹っ飛んだ……その前には面を着けていない逆立った髪のつり目男……
「あ!あれが桐原くんです!」
「何かさっき勝った剣道部の女の人と言い合ってますね」
なんか不穏な空気だと思うとその言い合ってた桐原と剣道部の女子が竹刀を構える。
「今回は真面目な勝負ですね……」
大翔が呟いた瞬間二人は駆け出す……
基礎に乗っ取った面と小手……二人とも高い実力を持っている。だが、
「こりゃ桐原先輩の敗けですね」
「え?でも桐原くんも剣術部の主将ですよ?」
剣道と剣術の違いは魔法の有無だろう。
純粋な剣を極めるのが剣道……それにたいして魔法を併用するのが剣術……
そして今の戦いは見たところ魔法は使わないらしい。そうなると純粋な剣の腕に殆ど差はない。なのに桐原は面は打たないし手加減を加えてるのが分かる。
そうなったら……
「決まった!」
桐原の肩に女子の突きが決まった……
勝負あり……のはずだ。
「なんでしょう……まだ何か言い合ってますが……」
「……っ!」
次の瞬間ガラスを引っ掻いたような不快な音が響き渡る……あれは確か振動系魔法の……
「高周波ブレード……」
使えば竹刀のような物でも切れ味を持たせる殺傷度Bランクの魔法だ。
「耳が痛い……」
あずさは耳を抑える。
仕方ないだろう。慣れないうちは耳栓をするような人間がいるくらいだ。
だがそうこうしてる間に桐原は女子に竹刀を振る。女子の方は避けるが胴着が少し切れた。
「これ以上はヤバイな」
剣道部と剣術部の喧嘩なら見逃したがあれはアウトだ。止めねばなるまい……すると、
「達也!?」
女子と桐原の間に何と達也が割り込み次の瞬間船酔いみたいに気持ち悪くなった。
「なんだありゃ……」
すると桐原の魔法が解除されそのまま達也に組伏せられた。
「魔法の不正使用者一名確保しました……連行しますが怪我をしてるため念のため担架を」
達也が連絡をいれる。
静かになったこの場ではやけによく響く。
「おい!何で桐原だけなんだよ!」
「魔法の不正使用ともうしましたが?」
本人にその気はないのだろうが相手の神経を逆撫でするには充分だった。
「んだとてめぇ!」
剣術部の一人が達也に殴りかかる。だが達也はそれをあっさり躱して剣術部の男は転んだ。
「な!」
「くそ!」
「てめぇ!」
次々と達也を狙って来る……だが全て見切って避けていく……洗礼されたその動きは誰もが息を飲む……更に、
「ふざけぶぼっ!」
ふざけんな!っと言いながら達也につかみかかろうとした男が横からのドロップキックに吹っ飛んだ。
「大翔……」
達也は突然の登場に少し驚く。
視線を動かすといつの間にか乱闘地帯に向かっていた大翔を見てあずさがオロオロしていた。
「さっきぶりだな。実は少しモヤモヤしててさ。混ぜてくれ」
「ここは鬱憤ばらしの場じゃないぞ?まあ構わないがな」
達也と大翔は自然と背中あわせになる。
「行くぞ」
「おう!」
剣術部総勢15名と