どうやら俺は死んだらしい。
目の前には神様?らしき人物がいて周りは真っ白な空間。自分の姿を見ようとしたら火の玉みたいになっている。
「残念ながら君は死んでしまった」
「えっ…マジっすか?」
「享年30、過労死が原因じゃ」
「あー、ついにやっちまったか」
ブラック企業勤でいつ体を壊してもおかしくなかった。
「それで死んだ俺がどうしてこんなところに?」
「それはじゃな、可哀想な人生を送り死んでしまった君にチャンスをあげようと思ってな」
「それって!異世界転生とかってやつですか!?」
これは今までたくさん見てきた異世界転生してチート人生送れるやつではないのか!?
遂に俺もその立場になれるのかと喜ぶ。
「あー、それは少し違うかもれしん」
「…と言うと?」
「君に行ってもらうのは、今までの世界と少しだけ違う世界じゃ」
「違う世界?何が違うんですか?」
「貞操観念逆転世界」
「それって!!」
知っているぞ…!男が少なくて簡単にモテまくったり、ハーレム作れたりする奴だ!!
「なんだ、それめっちゃ良いじゃないですか!」
「ワシはチャンスをあげると言った」
「へ??」
「君は童貞のまま死んだな?」
そう、俺は前世では童貞どころか彼女すらいないまま死んでしまった。
「うっ…そうですが…」
「このまま君を新しい世界に送って、うまく行く姿を見ても面白くない」
「いやいや、それで良いじゃないですか!?」
「と言う訳で、君が幸せになる為の条件を出す。これを無事にクリア出来れば後は好きに生きると良い」
何の条件を出されるが分からないが、それさえクリア出来れば俺の幸せハッピーライフが待っていると言うことだな!
「それで条件とは?」
「…100日間……童貞を守り抜く事じゃ!!!」
「な、なんだと…!?」
嘘だろ、貞操観念逆転世界なんだろ?簡単に童貞捨てられるじゃん!!って思ってた喜びを返せよ!!
「それ、あまりにもキツすぎませんか??」
「なに、君が100日間誘惑に負けずに我慢すればいいだけだろう?」
「…ちなみに、破ってしまったらどうなるのですか?」
「致してた時の記憶は無くなり、初日に戻る。君が100日間耐えない限り、永遠にそのループは終わらない。未来永劫その輪廻の中に閉じ込められる」
「マジかよ…覚えてないのか、そして耐えないとその先は無いのか」
俺の知識によるとその世界では女性の性欲が増し増しで男なんて簡単に喰われてしまうイメージだ。その中で100日間童貞を守り抜けって??それめっちゃハードモードじゃないのか??
おまけに俺は女性に対しての耐性がない、うまく対応出来る自信もない。
「そうだ…容姿は!?」
せめて容姿が悪ければ、相手にされる事も減り比較的容易にクリア出来るかもしれない。
「もちろん、世の女性達が好む姿になるぞ」
「なっ!」
「当たり前だが、家に引き篭もるなどして時間を過ごすのは禁止じゃ、せっかく若者に戻るのだから青春を謳歌するんじゃよ」
希望が打ち砕かれた、日陰者として生きていこうかと思ったがそれも難しいみたいだ。
「ともかく、このチャンスを掴むために頑張るんじゃぞ〜」
神様の気の抜けた声最後に俺の意識は薄れていった。
かなりの難題だが、せっかく得たチャンス。
今度の人生は幸せになるんだと意気込む。
「100日間…絶対に童貞を守り抜く!!」
「ここは…」
目が覚めると一人暮らし用の部屋が目に映った。
意識は朧げとしているが、神様との会話の内容は全て覚えていた。
「俺、本当に生まれ変わったのか…」
ベットから抜け出し、洗面所で鏡を見る。
「あの野郎…」
そこに映るのはガッシリと鍛え上げられた肉体に、黒髪で目鼻立ちクッキリの好青年がいた。
「はぎのしん…萩野真」
名前は前世と同じだった。
前世の体とは大きく違うことに違和感を覚えたが、すぐにこれは自分なんだとしっくり来た。
そして同時に、この状況についても自然と理解が出来た。
どうやらこの世界は、昨日までは元の世界と変わらない物だったが、今日を境に貞操観念逆転世界になった様だ。
身近な状況から世界情勢など一気に変わると混乱などが起きそうだが、元々そうであったかの様に問題がない様になっている。
この辺りは神様の御都合主義といったところか。
そして俺はここまでの人生では女性との関わりは無く、童貞みたいだ。
「引きこもりはダメか…」
言われたことを思い出し、籠城の計画は無し。
恐らく、あの神様は女性との関わりを持ちつつ童貞を守る事をルールにしているはずだ。
「となると、やっぱり参加しないといけないよな」
俺の現状は、地方都市の大学2年生。
今日は4月13日。新学期がスタートして間もないところだ。
「参加者はっと、やっぱり女子ばっかか」
今日は同じ学部での飲み会があるらしい。
この世界は飲酒喫煙が18歳以上かららしく皆飲める訳だ。
「貞操観念逆転世界って言われても実際の所、女子達がどうなっているか分からん」
いきなり飛ばされてきたのだ、前知識はあっても現実がどうなってるかは不明。
今日は講義が無く、夜の飲み会まではフリー。
案外すんなり100日経つかもしれない。
少しだけ希望を持つことが出来た。
「まぁ、なるようになるか」
時刻は19時を過ぎた頃。
飲み会の会場となる居酒屋に着いた。
「今日は来てくれてありがとう〜!」
幹事の子らしき人から声をかけられた。
「あぁうん…」
急に声をかけられたものだからビックリした。
「じゃあ皆中入ろうか!」
号令がかかると入り口いた人達が店へと入っていく。
俺もとりあえず1番後ろについて入店。
「でさ〜」
「わかる〜」
「あの講義面倒だよね〜」
飲み会が始まって1時間が経過した頃だろか。皆良い感じに仕上がっている。
そんな中俺は
「………」
1人テーブルの片隅でビールを飲んでいた。
チラリと当たりを見渡すと女子、女子、女子!!!
今回の飲み会、男子は俺1人だった。
あれ??いくら貞操観念逆転世界だからと言っても、学部に男子は何人かいたよな??
最初にテーブルに着いた時、周りの女子達が何やらキャーキャー言ってた気がするが、男がいる事にはしゃいでいたのかもしれない。
(男1人の飲み会に参加するわけないだろ!!)
心の中で強く思うが、これも神様に仕組まれた事だったのだろうか…
ただ意外だったのは、俺への扱いである。
飲み会の最初は結構な人が声をかけてくれたけど、どれも優しい感じで、その嫌な言い方をすればガツガツした感じはなかった。
身構えていた俺からすればある意味肩透かしを喰らっていた所だ。
あんまり上手く出来たかは分からないが時々、会話に混じりながら今に至る。
(なんだよ神様、意外と楽勝か〜)
この状況に少し気が抜けたのか、手元にあったビールを一気に飲み干す。
「おぉーいい飲みっぷりだね!」
「ん??」
ジョッキを置くと隣から声をかけられた。
「どうどう?楽しんでる?」
「おぉ、楽しんでるよ」
隣に座り声をかけてきたのは「安藤朱莉」。
黒髪ロングで目元もパッチリ。スタイルも良くて性格も明るい。学部内での中心人物だ。
「まさか萩野君が来てくれるなんて思わなかったよ!」
手をパチリと合わせながらテンション高めに安藤は言った。
「せっかくだから皆んなと仲良くなるのも良いかなって」
「うんうん、良い心がけだね!他の男の子達は皆こう言う場には来ないからさ」
「あー、やっぱりそうなのか?」
「あはは、女子が集まってお酒飲んでる場所とかねー、萎縮しちゃうみたいで」
どうやらこの世界の男達に積極性はないみたいだ。
「だから萩野君が来てくれて、皆テンション高めだよ」
「それなら来て良かったかも」
「それに、私も萩野君と話してみたくてさ。機会伺ってたんだよ?」
笑いながら言う安藤はめちゃくちゃ可愛い。この世界女性の容姿レベルが前世より格段に良いみたいで、学部の女子達も可愛い子が多い。その中で安藤は頭一つ抜けて可愛いと思う。
「安藤さんにそう言ってもらえるなんて嬉しいな」
「ほんと?やった!あっ、ジョッキ空だね?ビールで良い?」
「うん、ありがとう」
俺のジョッキが空なのを見て、安藤が追加でビールを注文する。
「はい、ビールどうぞ!」
届いたビールを手渡してくれる。
「じゃあ今日は仲良くなれた記念で、乾杯!」
手に持ったグラスをこちらに向けてきたので、ジョッキをぶつける。
こんな可愛い子とお酒を飲む事が初めてだった俺はつい嬉しくなり、一口でジョッキの半分を飲んだ。
「萩野君って結構体ガッシリしてるけど、何かスポーツとかやってるの?」
「いや特には、元々筋肉つきやすい体質なのかも」
「二の腕とかすごーい!ねぇねぇ、触ってみても良い?」
「いいよ、ふんっ!」
酒も周り気分が良くなっていた俺は腕を曲げ、力こぶを作る。
「わっ!すっごい硬い!」
そう言いながら安藤が俺の腕を触ってくる。
こそばゆい感覚だけど、悪い気はしなかった。
「ほんとすごい…カッコいいな〜///」
酒が入ってるからか、頬が赤く染まり少し潤んだ瞳でこちらを見てくる。
「っ!!///」
耐性が無い俺にはその仕草はあまりにも強烈だった。その瞳に耐えられずに、手元のジョッキを空にした。
「…ビール無くなっちゃったね。お代わりするよね?」
「あぁ…」
そしてまた運ばれてくるビール。
内心ドキドキしている俺はそれを誤魔化す為にまたジョッキを空にする。
「こうやって萩野君と沢山話が出来て、お酒も一緒に飲めて私すっごく楽しいな!」
「俺も…同じかな、ごめんトイレ」
ビールを飲み過ぎたのか一度トイレの為に席を立つ。
(いきなりあんな可愛いこ子と仲良くなれるなんて最高かよ〜、神様ありがとー!!)
用を足しながら上機嫌になる。
酒が回った頭ではこの世界の事、条件の事などすっかりと忘れていた。
「ただいま〜」
「おかえり〜待ってたよ」
手元にはビール満タンのジョッキ。
「お代わり、頼んでおいたよ!」
「あぁ、ありがとう」
何も考えずにまたジョッキを口に運ぶ。
隣で可愛い子が話をしてくれる。
気分が良い、その後も何杯もジョッキを空にした。
「はーいそろそろお開きにするよー」
遠くで幹事の声が聞こえる。
結局安藤が隣に来てからは彼女とずっと話をして酒を飲んでいた。
皆んなが席を立つに合わせて俺も席を立つ。
「っとと」
「大丈夫?」
流石に飲み過ぎたのか、席を立つ時にフラついてしまった。
その姿を見かねたのか、安藤が隣で支えてくれた。その瞬間、彼女の服の上からでも分かる大きな胸が腕にふにょんと触れ、一気に顔が熱くなった。
「ごめん…」
「大丈夫だよ、気にしないで」
そう言いつつも、彼女に支えられながら店を出る。
「はーい、じゃあこれで解散!2次会行く人は各自でー!」
幹事の挨拶の後は皆散り散りになっていった。
酩酊状態の俺は2次会行く元気は無く、このまま帰ろうとした。
「安藤さん…今日はありがとう…楽しかった」
「こちらこそ」
「じゃあ…またね」
彼女の体から離れ、帰り道に向かおうと歩き出した瞬間、手を握られた。
「…もう少し、一緒にいられないかな?」
女の子のそんな顔、初めて見た。
全ての思考が吹っ飛んだ。
「俺も…一緒にいたい」
その言葉を聞いた彼女はもう一度俺に体を寄せ、皆んなとは違うネオン輝く方向に俺を連れていった。
「ふふっ、簡単すぎ」
何か聞こえた気がしたが、今の俺には分からなかった。
「っ!!」
目が覚めて飛び起きる。
スマホを見ると日付は4月13日。
そう、2回目の4月13日だ。
「俺は…」
うっすらと覚えているのは、店を出た所辺りまで。
その先の記憶がない事と、今日が4月13日である事を考えれば答えは一つ。
「俺、喰われたのか…」
あの後は安藤に美味しく頂かれたみたいだ。
残念ながらその記憶は一つもないが。
「ぐあああああああ、やられたああああ」
元の世界でも女の子酔わせてお持ち帰りなんて常套手段だろ、そんな簡単なことにも気づかないなんて。
「完全に浮かれてた…」
ここが貞操観念逆転世界である事を完全に失念してた。まさか初日からやらかしてしまうとは。神様が邪悪な笑顔でほくそ笑んでる姿が目に浮かぶ。
「こんなんじゃ先が思いやられる…」
だがしかし、安藤のやり方は分かった。
同じミスはもうしない!!!
「よし、リスタートだ!!」
決意を新たにする。
「今度こそ童貞を守ってみせる!!」
貞操観念逆転世界での童貞ライフは始まったばかり。