貞操観念逆転世界で100日童貞を守る   作:奈落ナド

4 / 12
3日目

本日は午後から講義があるが、午前中からレポート作成のため大学の図書館に来ていた。

 

「えーと、参考文献はこの辺りか」

 

目的の本を本棚から探す。沢山ある書物の中から目的の物を探すのは骨が折れる。

 

「っとと、これか」

 

ようやく目的の本を見つけ手に取ろうとした瞬間

 

「あっ」

「あっ」

 

背表紙に二つの手が重なった。

 

「っごめんなさい!」

「いや、こちらこそ」

 

手の主に視線を向けるとそこには小柄な女子がいた。

栗色のふわふわミディアムに眼鏡をかけた、所謂文学女子のような人だった。

 

「そっちもこの本が目的?」

「・・・はい」

「俺もそうなんだよな」

「・・・」

 

いかん、どうやら警戒されているのかも知れない。

なるべく優しい表情を作って話をする。

 

「うーん、どうしよっか」

 

譲ってあげたい気持ちもあるが、これがなくてはレポートの作成が出来ない。

向こうも何かしらの理由があって譲れないのであろう。

少しばかりお互い見合う状況になってしまっった。

 

「あの、この本長く借りるおつもりですか?」

「いや、レポートの作成に午前中くらい使えればいいかなって」

「私も同じです、課題に使いたいので」

「じゃあさ、一緒に使わない??」

「一緒にですか??」

「そう、俺もずっと読むわけではないから、お互いに必要なときに読むって事でどうかな?」

「いいんですか?」

「もちろん」

「ではお願いします」

 

お互いに納得できる形が出来たので、本を取り作業スペースへと向かう。

テーブルにお互いが座ったところで彼女が自己紹介をしてきた。

 

「私は一年の「桜暦」って言います。あの、先輩ですか?」

「俺は萩野真、二年だよ」

「そうでしたか・・・わざわざありがとうございます」

「いいっていいって」

「先、先輩が使って大丈夫です」

「そう、じゃあ遠慮無く」

 

譲ってもらえたので先に作業に取りかかる。

作業を始めてから少し経った頃

 

「むむむ」

「もしかしてお困りですか?」

「あー、ここの部分どう書こうかなと思って」

「そこでしたら、このようにすれば良いかと」

「あっなるほど!!」

 

悩んでいた部分に的確なアドバイスをしてもらえた。

 

「桜さんすごいね!」

「そこは皆さん悩みやすいところなので」

「と言うか、この本使うって事はあの講義受けてるの?」

「はい、私も受けています」

 

どうやら一緒の講義を受けていたようだ。

 

「でもあの講義、大抵は二年以降に取る物なのに一年の内から取るなんてすごいね」

「あの教授の講義には興味があって、早めに取りたいと思っていたんです」

「おおー」

 

勉強をあまり真面目にやっていた俺とは大違いだ。

講義の理解度も俺より進んでいると感じた。

 

「ごめん、もう少しだけ借りるよ」

「どうぞ」

 

その後は互いに本を見つつ順調にいき、無事レポートの作成も完了。

桜さんも自分のレポートの作成をしていたが、ときどき俺のことをチラチラと見てきていた。

まぁいきなり先輩と同席なんて少し気まずいところもあるよなと思い特に言及はしなかった。

 

「ふぅー、終わった終わった」

「私も終わりました」

「おかげで助かったよ、ありがとう」

「いえ、そんなこと・・・」

 

笑顔で言うと、桜さんは照れながら下を向いてしまった。

 

「じゃあ今日はこれで、また講義でね」

 

用事も終わったので別れようとしたとき、

 

「あのっ!!」

 

先ほどまでとは比べものにならない声が聞こえた。

 

「どうした??」

「この後って用事ありますか・・・?」

「いや、特には」

「でしたら、お昼一緒に食べませんか?」

 

なんとびっくり、昼食の誘いであった。

驚きはしたが、断る理由もないのでOKする。

 

「いいよ、学食でいい?」

「はい!!」

 

俺の答えが嬉しかったのか、可愛らしい笑顔で返事をくれた。

 

 

 

 

図書館を出て、二人して学食へと向かう。

桜さんはぴったりと俺の後ろを付いてくる、その間は下を向きながら無言であった。

 

学食に着くと昼時もあってなかなかの盛況ぶり。

 

俺たちが中に入ると、やはり大勢の人たちから視線を向けられた。

だがしかし、今回は俺と言うよりも桜さんの事を見ている女子が多かった。

 

「あー、ごめんね」

「いえ、大丈夫です・・・」

「先席取っといて貰えるかな?」

「わかりました!」

「ついでに、定食でいい?」

「はい」

 

先に席を確保して貰い、俺は二人分の食券を買い定食を受け取り席に戻った。

 

「おまたせ」

「ありがとうございます・・・あっお金払います」

 

急いで鞄から財布を取り出そうとするがそれを制止する。

 

「いいよ、さっき助けて貰ったお礼って事で」

「えっ、そんな、悪いですよ・・・」

「じゃあ、また今度あの講義で困ったら助けて欲しいな」

「・・・分かりました、ではいただきます」

「うん、じゃあ食べようか」

 

一口が小さくゆっくりとご飯を食べるその姿はなんだか可愛らしくて微笑ましかった。

 

「桜さんってもしかして本とか好きだったりする?」

「はい、結構いろいろな物を読みますね」

「そうなんだ、俺もなにか面白い奴あれば読んでみたいな」

「でしたら、オススメのやつがいくつかあります!」

「ほんと、じゃあ教えて欲しいな」

 

ご飯を食べながら雑談していると、どうやら彼女の得意分野に当たったのかテンション高めで話をしてくれた。

 

「・・・あの、もしよかったらなんですけど」

「どした?」

「連絡先教えて貰えないでしょうか??」

「連絡先か」

「いえ!あの!変な意味じゃなくて!本のこととか講義の事とか話できればと!!」

 

顔を真っ赤に染めながら彼女は早口で慌ただしく言った。

 

「大丈夫だよ、そうだね。交換しよっか」

 

恐らく勇気を出して言ってくれたのであろう提案を俺は素直に受け入れた。

俺も女子に連絡先を聞くのってめっちゃ緊張した記憶あるもんな、桜さんの気持ちはよく分かった。

スマホを取出し、連絡先の交換をする。

 

「やったっ!」

「今日はありがとうね、桜さん」

「こちらこそです。その・・・先輩みたいなカッコいい人と知り合いになれて、連絡先まで交換できて。とっても嬉しいです」

 

後輩の子にここまで言って貰えるのは純粋に嬉しい。

 

その後も二人仲良く話をしながらお昼休みを過ごす。

最初は少しおどおどしていた彼女だが、最後の方は明るく話してくれてそれもまた嬉しかった。

そんなこんなで昼休み終了間近。

 

「じゃあまたね!」

「はい、またです!」

 

学食の入口で別れ午後からの教室に向かった。

 

 

 

 

【先輩、今日はありがとうございました!!】

【これ、オススメの本のリストです!】

【ーーーーーーーー】

【ーーーーーーーー】

【ーーーーーーーー】

 

夜部屋で休んでいると昼間知り合った桜さんからライムが来た。

その熱量に少し圧倒されながらも、一生懸命選んでくれた姿が想像でき頬が緩む。

返事をしながら、彼女のことを考える。

今日もまた、素敵な人と知り合いになれた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「ふーん、萩野君ああいうのが良いのかな」

 

 

「あ~萩野っち、可愛い子連れてる~」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

この時の俺は考えてはいなかった。

昼時の学食にはいろんな人がいることを・・・

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。