オカルトファンタジー 作:匿名の筆者
俺は死んだ、らしい。ふよふよと浮かぶクラゲのような奴が、俺に話しかけてくる。
「享年二十二歳、早世ですね」
「誰ですか、天使様?」
「まあ、それに近い存在です」
「知らなくてもいいでしょうけど、ここの惑星で死んだ魂は、僕の自由にしていい、っていう協定があるんです」
「なぜ教えてあげたかというと、宇宙の政治について喋りたいんですよね」
クラゲはふわふわと浮きながら、声を発した。
声というかテレパシー、超能力みたいなことをやっている。
「はあ……天使様は、なぜ俺を選んだんですか?」
「うーん、答えるのがめんどくさいな。別の話題にしない?」
「きみから見ると、僕は人型の生命体じゃないでしょ?」
「これは魂だけの状態だからなんだ。」
「きみは球体型。これからどんどん指を生やしていけば、僕みたいな見た目になると思う。」
「魂に触れられるのは魂だけだからね、指がないと回収するのにも面倒ってわけよ。」
質問は無意味だと今ので完全に分かった。
「なるほど、ちなみに魂を回収して何に使うんですか?」
「あんまり、強いていえば内部留保?かなあ。魂を移動させて、総数を保ちつつ、まとまった単位で把握するというわけよ。」
「これから君を含めた数万人を、別の惑星に飛ばす。魂だけの状態というのも初めのうちは苦労するだろうから、肉体をあげる。」
「あ、そうそう話したい宇宙の政治についてなんだけどね、ここいらの恒星系の権利は僕が持ってるの。でも最近ちょっとした争いがあってね」
「僕の所有する銀河に生きる生命体、まあ君たち人類のことだ。」
「人類に変なことをしようとしてる奴がいるんだよ。」
「そいつは魂を自由貿易で取引しよう、とか言ってるんだけど、相手の持ってる銀河系には生命が多いわけ。」
「微生物とか、植物とかそういう話じゃないよ?魂のある生き物だよ。」
「まあ君の知識にないから分からないだろうし、ちょっとだけでも話してあげる。銀河系に生命体が多くいるなら、まあその生命の多さが魂の多さに繋がるわけなんだけど……ああ、聞いてもやっぱり分からないか。」
「まあいいよ、どうせ理解してもしてなくても変わんないし。」
「で、相手が主張してる自由貿易っていうのがこれまた嫌でね。だってさ、自分の土地にある財産を、勝手に貿易ってことにして持っていこうとするんだよ?傲慢だと思わない?」
「それはとても大変そうだと思います」
「その、ところで……私って、どんな処遇になるんですか?別の惑星と言っても、いろいろ……」
「一人称くらいわざわざ畏まら無くてもいいよ。」
「処遇について?まあさっき話した通り。」
「さっき言った通り、君は別の惑星に魂の状態で行く。安心しなよ、ちゃんと肉体も用意しとくから、大人しく順番を待ってほしいね。」
「死んだ瞬間に魂を吸い上げて、横取りしようとする奴がいるから、死んだ魂は肉体とくっ付けてないと面倒なんだよね」
「ひどいと思わない?僕の土地だよ?」
「だから、仕返しをしてやろうと思ってね。プランを組んでみたんだけど、選ばせてあげる。どれがいい?」
「まずプランA・プランBのうち、プランAを喋ろう。」
「君の知識で例えてみよう。私掠船、というものを知っているかな?」
「君にはそれをやってもらいたい。」
「具体的にプランAを喋ろうか、まず魂を持って行かれて僕は大激怒さ。」
「そこでちょうどフリーな魂がある、そう数万人の魂だ。」
「それを別の銀河に存在する惑星に送り、原住してる知的生命体の魂を宝として持ってきてもらう。もちろん、魂を刈り取るためにサポートをしよう。」
「いわゆる海賊みたいなやつさ。」
「僕はAがオススメなんだけど……ま、プランBも喋ってあげる」
「Bはね、クレーンゲームってあるでしょ?あれの景品になってもらうの。具体的にいえば魂の所有権を掛けたゲームってやつ。」
「ああ、一定時間取られなかったら問題は無いよ、こっち側の魂として戻ってくるだけ。」
「アームに掴まれなかったのなら、玉としての役目は終了。どっちを先にやりたい?僕としては、プランAをやってもらってからBに行くということを想定してるんだけど」
「天使様、質問いいですか」
「いいよぉ?好きなだけ聞きなよ。」
「何でも答えてあげる。たとえば銀河の〜」
「プランBで回収されたなら、その相手に私の魂が行くんですか?」
「そうだね。魂が持ってかれるというより、所有権が行くから、別に僕のものじゃなくなるだけでどうも変わりはしないよ。」
「ま、相手次第だけど。ずいぶんとナメた真似してくれたし、窃盗も許せないし、こっちからしたらブチ切れなんだよね」
「惑星同士をぶつけて破片の大きさを競うとか、そういうの苦手でさ」
「惑星ってほら、デコボコしてるじゃん、表面掴んだらすぐ割れるし」
「だからクレーンゲームで対決しようっていう感じなんだけどね。その裏で魂を奪おうとするとか、失礼極ま〜」
「天使様、遮ってごめんなさい、プランAは具体的にどういう事するんですか?」
俺は、質問ができるであろう千載一遇のチャンスを絶対に逃せない。
興味が無いものに関しては回答をしない、というスタイルの人なのだ、言質を取った時くらいしかこういうことを聞けないだろう。
「プランA?プランAは、まあ説明してあげる。」
「まず僕は魂を入手したいでしょ?」
「でも直接、惑星を握り潰したりとかして迷惑起こすと、他のやつらからブチ切れられるわけ。」
「そこで、君たちの出番。」
「まず原住民族たちを一掃するとは一筋縄でいかないけど、倒してほしい。魂は僕が回収するから、魂を回収した分だけポイントをあげる」
「ソウルポイント、ってやつで各種機能を解放してあげる。」
「ほら、ええとなんだっけ?ダンジョンマスター?君の故郷の本で似たような話あるよね?だいたいアレみたいな感じだからさ、気軽に気軽に。」
言い切った途端、クラゲの手が俺を掴んだ。
触られている部位は一つだけなのに、磁石かのように掴まれる。
「じゃ、別の惑星に向かって投げるから。着弾した所で頑張ってね」
「投げる!?もうちょっと丁寧にしてくれませんか──」
俺が文句を言おうとした瞬間、あまりの加速度で意識が途絶えた。