HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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雨の百鬼夜行

ざあざあと雨が降る。

 

「雨ですねー」

 

随分と強い雨が降っている。

 

里浜ウミカはのんびりと机に頬杖を着き窓から外を眺めていた。

 

「雨ねー」

 

対面では店主である河和シズコが同じような恰好で外を眺めている。

 

今日の百夜堂は珍しいことに閑古鳥が鳴いている。

 

「こんな雨じゃお客さんも来ませんね」

 

「そうね。そういえばフィーナは?」

 

「あの子なら奥で映画を見てキマスと」

 

「あーあの子も好きねえ」

 

のんびりと湯飲みに淹れたお茶を飲み、落ち着いた時間を楽しむ。

本当に珍しいくらいに客が居らず。

後輩二人が好きに過ごす。

何とも嬉しい時間である。

 

「そういえば、社長。新商品のアイデアがーって言ったましたけど何か浮かびました?」

 

「それなんだけど、トリニティの業者に繋ぎが取れたからティラミス風のおやつでも作ろうと思うの」

 

「まあ素敵です!」

 

「おや、随分と美味しそうな話をしているね」

 

「…いつから居ました少佐?」

 

「何、さっき来たばかりだとも」

 

「まあ大変!直ぐにタオルを持ってきます」

 

パタパタと店の奥に駆けていくウミカを横目に店主としてお客様を迎える。

 

「いらっしゃいませ!百夜堂にようこそおいでくださいました」

 

「君のその変わり身は毎回感心するよ」

 

どっかりと適当な椅子に座り込み、袖を簡単に払って水気を飛ばす。

ウミカが丁度いいタイミングでタオルを渡し、それを受け取り頭や顔を拭いていく少佐。

 

「少佐。雨の中ご苦労様です。またカホ様あたりに呼ばれましたか?」

 

「いや、今回はニヤ君だ。エンジニア部の商品のカタログがいくつか欲しいらしい」

 

「それなら少佐が来る必要ないですよね?」

 

机の上、今まで自分たちが使っていた湯飲み等を急いで片付けながら、疑問を口にすれば笑いながら答えてくれる。

 

「こっちに来る用があってね。そのついでだ」

 

「…また厄介事ですか?」

 

「そんなことはないとも」

 

ある程度拭けたのかウミカにタオルを手渡しながら、にんまりと怪しい笑顔で答える。

 

「前みたいにお店に被害が出るようならしっかりとミレニアムに抗議しますからね!」

 

「君は本当にしっかりとしているね。今回は何といったかあの面白い仮面を被っている子たちに用があってね」

 

「…少佐。可哀そうですから止めてあげてください」

 

丁寧にタオルをたたみながらウミカにしては珍しく半眼で抗議する。

 

「…魑魅一座に少佐が何の用があるんですか?」

 

てきぱきとお茶を出しながら、少し距離を取る。

魑魅一座とは百鬼夜行連合学院で活動する問題児集団だ。百夜堂も何度か襲撃を受けたことがある。

その集団に少佐が用など嫌な予感しかしない。

 

「そうだ。魑魅一座だ。こっちの言葉は馴染みがなくて覚えにくくていかん」

 

パンと手を打ち鳴らし、納得したように何度も頷く。

その音を聞きつけたのかパタパタと奥から足音がする。

 

「おー!少佐デース。相変わらず怪しいデスネー」

 

「おや、君も居たのかい」

 

フィーナをまるで近所の子犬のようにあしらいながら、窓の外。

百鬼夜行の風景を見詰める少佐。

その瞳の奥に何を企んでいるのか。

 

「何、今回はそう身構えることはないよ。ただ聞きたいことがあってね」

 

「…まあ、雨が上がるまで居てください。百夜堂のお客様が風邪を引いたなんて噂がたったらたまったものじゃないので」

 

シズコは厨房へ向かいながら、ウミカに指示を飛ばす。

それを受けて、お茶のお代わりや手拭きを用意にかかる。

 

「少佐。今日は一緒に映画を見ないんデスカ?」

 

「すまないねフィーナ君。今日は祭りの仕込みがあってね」

 

「…今回は、百花繚乱がどれだけ動けるか見てみたいと思ってね」

 

誰にも聞こえないように小さく少佐が呟いた。

 

雨は先程より強くなっている。

 

 

すっかり雨脚が弱まり、少佐を見送ったシズコがスマホを取り出し通話を始める。

 

「あ、すいません。河和シズコです。少佐が現れました。何でも魑魅一座に用があるとか」

 

通話口の相手からの悲鳴のような声が漏れる。

 

「仕方ないじゃないですか。あの少佐に何聞いてもこっちが振り回されるだけですって」

 

「はい。一応先生にも今から伝えておきます。そっちもある程度準備をお願いしますよ」

 

通話を切り、大きく息を吐く。

ちらりとウミカとフィーナに視線を送り、拳を突き出す。

安心したように二人が息を吐く。

 

「さ、二人共。準備してこれからお客様を迎えなきゃいけないんだから!」

 

モモトークから先生へメッセージを送る。

 

 

コツコツと石畳を革靴が叩く音が響く。

 

百鬼夜行の奥へ奥へ。

迷うような素振りも見せずに目的地へ向かう。

周囲の風景がどんどんと荒れて、すさんでいく。

それを慣れた様子で眺めながら、少佐は楽しそうに笑う。

まるで祭りが始まる前の子供のように。

 

唐突に少し開けた場所が目の前に広がる。

連絡があったのか少佐の周囲を魑魅一座が囲う。

まるで今にも爆発しそうな爆弾を前にしたように睨んでいる。

 

その中央。

 

1人の少女が現れる。

 

「で、今度はどんな厄介事を持って来たんだアンタは」

 

「失敬な。君達の大好きな楽しい楽しい祭りの時間だよ」

 

嫌そうに少佐を眺める一人の少女はここら辺のまとめ役の1人だ。

前に少佐に関わって痛い目にあったのも記憶に新しい。

 

少佐の発言に少女のこめかみに青筋が浮かぶ。

 

少佐の言う「楽しい祭り」が碌でもないことだけは知っていた。

 

『こんの野郎…!』

 

周囲の熱気が一気に上がる。

周囲で撃鉄が起こされる音が重なった。

今にも銃を少佐に打ち込まんばかりの雰囲気だ。

 

「諸君」

 

周囲の雰囲気などそよ風のようにしか感じないのか舞台役者のように見栄を切る。

 

「祭りは好きかね?」

 

上がった熱気が変わる。

 

「諸君。百鬼夜行で最も退屈なものは何だと思う?」

 

周囲をねめつける少佐の視線。

それに対抗するようにいくつかの声が上がる。

 

「それでは、今から君達が祭りを作ればいい」

 

「百鬼夜行には祭りが多い」

 

「だが最近の祭りは管理されすぎている」

 

「安全で整然としていて退屈だ」

 

「周囲の混乱なぞ知ったことか」

 

「諸君こそが百鬼夜行だというのなら」

 

「それを私に、いや百花繚乱に示してみせろ」

 

「百花繚乱も少々退屈しているようだからね」

 

拳が銃が高々と掲げられる。

 

まるで扇動家だ。

 

「…やっぱりろくでもない大人だよアンタは」

 

「褒め言葉としてもらっておこう」

 

 

 

「あのですね。少佐。もう一度聞かせてください」

 

「いいとも」

 

所変わって陰陽部部室。

 

「魑魅一座が主導する祭りを開催したい」

 

「…何故です?」

 

「その方が面白いからだよ」

 

きっぱりと言い切る少佐にカホは溜息を吐く。

 

誰がこうなると予想できたものか。

 

あの問題児集団が祭りを開催なぞ。

しかもこういう時に限って団結して、もう早や準備を始めているという。

 

「…どのようなお祭りか聞いても?」

 

「さて、伝統の祭りを再現すると楽しそうに笑っていたが」

 

「絶対面倒なことになる!」

 

頭を抱えた私の後頭部に少佐の笑い声が響く。

 

カホの隣で神妙に話を聞いていたニヤがポンとセンスで掌を叩く。

 

「成程。新しい祭りとは面白そうですね。私としては賛成したいところです」

 

「またそんなこと言って私に全て押し付けるつもりですね!?」

 

「うむ。彼女らもきっと喜ぶことだろう。百鬼夜行の歴史に残す祭りをすると息巻いていたからね」

 

「…不安です」

 

「一応警戒だけでもしときます?」

 

「そうですね。百花繚乱にも声をかけておきます」

 

「それでは、私はこれで失礼するよ。この後シズコ君に会いに行くのでね」

 

畳の上から余裕たっぷりに立ち上がり、綺麗に一礼して去っていく少佐を見送り、何ともいえない空気の元、顔を見合わせる。

どちらともなく溜息が漏れる。

 

「…被害額の見積もりをしてきます」

 

「今回は派手になりそうねえ」

 

 

そこは戦場だった。

河和シズコはお祭り運営委員会のトップである。

祭りがあるなら、参加し盛り上げるべきだと使命に燃えている。

 

だから。

 

巻き込まれた。

 

「アンタたちがしたいことって要は火薬や山車を使った派手な祭りでしょうが!それなら何も目新しさがないわ!!」

 

「何をー!そっちだって花火をミレニアムに依頼して映像化して伝統をないがしろにして!!」

 

「あ、あの皆さん落ち着いて…」

 

「ウミカ!少佐を引っ張てきなさい!!こっちは商売がかかってるの」

 

「また金か!祭りは楽しむもんだろうがー」

 

「お金がなけりゃお祭りも何もできないでしょうが!!」

 

喧々諤々というのはこういうことだろうか。

 

ウミカは小さく息を吐いて、そっと会議から抜け出した。

社長がいるのである程度はまとまるだろうが、これでいいのだろうか?

 

あてもなく少佐を探して店内を歩く。

対して広くもない店内でお目当ての人物を発見する。

何をしているのか椅子に座って楽しそうに外を見ている。

 

「あ、少佐。社長がお呼びです」

 

「うん。ありがとう。会議はまとまりそうかね?」

 

「それが全く。魑魅一座の人たちでもやりたいことが違うらしくて。やれ屋台がやりたい。やれ傘回しがしたい等々。まとまる気がしません」

 

「結構なことじゃないか」

 

即答だった。

 

ウミカがぽかんとする。

 

「そうですか?」

 

「祭りとは本来そういうものだよ」

 

少佐は窓の外を眺めたまま続ける。

 

「誰か一人の祭りではない」

 

「屋台をやりたい者もいる」

 

「踊りたい者もいる」

 

「酒を飲みたい者もいる」

 

「喧嘩をしたい者もいる」

 

「だから面白い」

 

「でもこのままじゃ決まりませんよ?」

 

「決める必要があるかね?」

 

ウミカが首を傾げる。

 

少佐は楽しそうに笑った。

 

「百鬼夜行の祭りだぞ?」

 

「全部やればいい」

 

数秒沈黙した。

 

「……はい?」

 

「全部やればいい」

 

「予算は?」

 

「知らん」

 

「会場は?」

 

「探せばある」

 

「運営は?」

 

「頑張りたまえ」

 

「無責任すぎません!?」

 

思わずツッコミが飛ぶ。

 

少佐は肩を竦めた。

 

「だが諸君らの百鬼夜行はいつもそうやってきたのだろう?」

 

「問題が起きる」

 

「誰かが走り回る」

 

「何とかなる」

 

「また問題が起きる」

 

「実に素晴らしい伝統じゃないか」

 

「絶対違います」

 

あぁこの人は楽しめればそれでいいのだ。

今回はそれがたまたま百鬼夜行のお祭りだったというだけで。

 

会議室の扉を開き、少佐が入ってくる。

今まで騒いでいた少女たちが黙る。

ゆっくりと部屋全体を見回し、最後にシズコを。

正確にはシズコが書いたホワイトボードの企画案を見る。

 

ホワイトボードには無数の文字が並んでいた。

 

屋台。

 

神楽。

 

傘回し。

 

花火。

 

山車。

 

演劇。

 

肝試し。

 

大食い大会。

 

射的。

 

仮装行列。

 

途中から誰が書いたのか分からない案まで混ざっている。

 

「夜通し鬼ごっこ大会」

 

「百鬼夜行最強決定戦」

 

「巨大鍋」

 

「巨大鍋?」

 

少佐が首を傾げた。

 

「巨大鍋です!」

 

魑魅一座の一人が胸を張る。

 

「祭りと言えば巨大鍋だろ!」

 

「いや知らんが」

 

即答だった。

 

シズコが頭を抱える。

 

「それで?」

 

少佐がホワイトボードを見回す。

 

全員が固唾を呑む。

 

そして。

 

「全部採用」

 

静寂。

 

数秒後。

 

「「「は?」」」

 

綺麗に声が揃った。

 

少佐は不思議そうな顔をする。

 

「何か問題でも?」

 

「問題しかありません!!」

 

シズコが机を叩いた。

 

「予算!」

 

「知らん」

 

「人員!」

 

「集めたまえ」

 

「場所!」

 

「百鬼夜行は広い」

 

「責任者!」

 

「君だ」

 

「嫌です!!」

 

即答だった。

 

「誰よこの無駄にでかい鍋頼んだ奴!!」

 

「商工会には頭下げなさいって言ってるでしょうが!!」

 

「山車を一から作る!?伝統ならちゃんと許可取って借りてきなさい!」

 

「花火のタネを作りたい?何言ってんのアンタ」

 

 

「何とか…何とか…開催にこぎ着けたわよ」

 

「社長。お疲れ様です」

 

「流石部長デース!」

 

「思ったより混乱も見られんな。魑魅一座も中々やるものだ」

 

感心したように周囲を見回し、退屈そうに呟く。

 

ここ1週間ほぼ寝ずに調整したシズコが切れた。

 

「アンタいつか本気で地獄に落ちますよ!!」

 

「それは大変結構。天国より余程面白いだろうからね」

 

ウミカが手渡した水を一息に飲み干し、グッと力を入れる。

 

「じゃ、周囲見回ってきます。少佐はくれぐれも大人しくして置いてくださいね」

 

颯爽と去っていくシズコの姿を見送り、ウミカが淹れたお茶を啜る。

 

外からドォン!!

 

遠くで花火が上がる。

 

「昼間から花火とは随分豪勢だね」

 

「…これ順調に終わるんですか?」

 

「知らんよそんなことは。私は面白ければそれでいい」

 

そこで言葉を切り、ゆっくりと百夜堂の扉を見る。

1人の少女が入ってくる。

 

「さて、本命がかかったぞ」

 

「…へえ。こっちの行動なんてお見通しってわけ?」

 

百鬼夜行連合学院。百花繚乱紛争調停委員会の幹部が一人。桐生キキョウ。

その姿を見て慌ててフィーナとウミカはお茶の支度にかかる。

 

「まぁこちらに座りたまえ。ウミカ君の作るあんみつは絶品だよ」

 

「貴方が居ない時にいただくとするわ」

 

「何だつれないね。お茶はどうかね?」

 

肩を竦め、対面の席を目で示す。

 

「…今回は答え合わせに来たの」

 

「ほう。ウミカ君、彼女に何か甘いものを」

 

「はい」

 

「フィーナ君は周囲を見てきてくれるかね。キキョウ君一人で来たとは考えずらい」

 

「はいデス!」

 

扉を壊さんばかりの勢いで突撃するフィーナを見送り、席に座るキキョウ。

一度目を閉じ、ゆっくりと目を開く。

 

ウミカがお茶とあんみつを丁寧に置く。

 

「美味しそうね。今度友達もつれてくるわ」

 

「はい。お待ちしてます」

 

頭を下げ、話が聞こえないようにだろう奥に下がっていくウミカ。

 

「いい子が多いねここは」

 

「だからアンタみたいな大人に好き勝手されるわけにはいかないの」

 

淡々と感情を削ぎ落したような声で少佐に迫る。

 

大仰な動作で首を振り、口角を吊り上げる。

 

「さて、答え合わせといこうか」

 

「先ずは分かっていることから、アンタはわざとシズコ達の前に現れた」

 

「百鬼夜行がアンタたちを警戒しているから」

 

「次は魑魅一座。これも表面上は祭りを楽しみたいから」

 

「最後に、私を待っていた。これで狙いが祭りの開催じゃなくて、私達百花繚乱だと分かった」

 

少佐は湯呑みを持ち上げる。

 

「70点といったところかな」

 

「否定しないのね」

 

「君がそこまで辿り着いたことへの敬意だよ」

 

ふぅ、と湯気を吹く。

 

「確かに祭りそのものはどうでもよかった」

 

「でしょうね」

 

即答だった。

 

キキョウはあんみつを一口運ぶ。

 

甘い。

 

だが目の前の男の方がよほど厄介だった。

 

「百花繚乱を見ていた」

 

「正解」

 

「何を確かめたかったの?」

 

少佐は少しだけ考える素振りを見せる。

 

「君達が本当に百鬼夜行を背負えるかをね」

 

その瞬間。

 

キキョウの目が細くなる。

 

「試したと?」

 

「試した」

 

即答だった。

 

「魑魅一座が暴れる」

 

「商工会が騒ぐ」

 

「陰陽部が頭を抱える」

 

「百夜堂が巻き込まれる」

 

「さてその時、百花繚乱はどう動く?」

 

まるで授業でもするような口調。

 

「結果は?」

 

「予想以上だ」

 

少佐は楽しそうに笑う。

 

「誰も祭りを潰そうとしなかった」

 

「誰も魑魅一座を排除しようとしなかった」

 

「誰も自分だけ正しいとは言わなかった」

 

「皆面倒臭そうな顔をしながらも祭りを成立させようとしていた」

 

窓の外。

 

祭囃子が聞こえる。

 

「それが自治だよ」

 

キキョウは黙る。

 

少佐が珍しく真面目なことを言っていたからだ。

 

「百鬼夜行は元々そういう土地だ」

 

「秩序だけでも駄目」

 

「混沌だけでも駄目」

 

「両方が喧嘩しながら共存する」

 

「君達はそれを出来るかもしれない」

 

しばらく沈黙が落ちる。

 

やがてキキョウが口を開いた。

 

「だから百花繚乱をわざと巻き込んだ」

 

「そうなるね」

 

「最低ね」

 

「よく言われる」

 

反省の色は欠片もない。

 

キキョウは額を押さえた。

 

この男に倫理観を期待した自分が馬鹿だった。

 

「じゃあもう終わり?」

 

「いや」

 

少佐が笑う。

 

嫌な予感がした。

 

凄くした。

 

「まだ本番が残っている」

 

「……何をしたの」

 

「何も?」

 

「その顔は絶対何かした顔よ」

 

少佐は窓の外を指差した。

 

その直後。

 

ドォォォォォン!!

 

今までとは比較にならない轟音が響く。

 

百夜堂全体が揺れる。

 

ウミカが厨房から飛び出してきた。

 

「し、社長から連絡です!!」

 

「何かしら」

 

「巨大鍋が爆発しました!!」

 

沈黙。

 

キキョウがゆっくり少佐を見る。

 

少佐は紅茶を飲んでいた。

 

「……アンタ?」

 

「違うとも」

 

「本当に?」

 

「私は鍋を少し大きくしただけだ」

 

「原因じゃない!!」

 

百夜堂にキキョウの絶叫が響いた。

 

少佐は満足そうに窓の外を見る。

 

祭りはまだ終わらない。

 

そして百鬼夜行もまた、いつものように誰かが走り回りながら何とかするのだろう。

 

その光景を眺めながら。

 

少佐は心底楽しそうに笑った。

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