HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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多分こういうことずっとやってる


バンホーテンのココア

「おおーこれが少佐が言ってたバンホーテンのココア?」

 

「そうですね。これをよく練って作ります」

 

手慣れた動作で手鍋に瓶から粉末を注ぎ。砂糖を足す。

弱火にじっくりとかけながら牛乳を加える。

 

「ね。私もやってみてもいい?」

 

「んーこれは一応少佐用なので。モモイちゃんの分を作るなら止めませんよ」

 

「やった!やるやる」

 

早速、手鍋を探し出し瓶から粉末を取り出す。

砂糖をノアに比べ多めにくわえ、火にかける。

 

「これで牛乳を足す?」

 

「そうですね。そこからよく練ってください」

 

「おっけー!」

 

どぼどぼどぼ。

 

「いや、その量は――」

 

ノアが止めるより早く大量の牛乳が投入される。

 

「あ」

 

「……」

 

「……」

 

手鍋の中には薄茶色の液体と、ぷかぷか浮かぶ大量のダマ。

 

「何で!?」

 

「練る前に入れたからですね」

 

「聞いてない!」

 

「言う前でしたので」

 

「先に言ってよ!」

 

軽く肩を竦め、大量のダマを取り除く。

 

「え、いいの?ノア先輩」

 

「どうせなら美味しいココア飲みたいんじゃありませんか?」

 

「飲みたい!」

 

元気よく返事を返し、早速作り始める。

今度は水を試して、大量の薄茶色の液体を作り上げた。

 

「モモイちゃん」

 

「ん?」

 

「料理において説明を最後まで聞くのは大事ですよ」

 

「うっ」

 

「プログラムでも仕様書を最後まで読まずに作業すると大変なことになりますし」

 

「それは痛いほど分かるからやめて!」

 

何度も失敗を繰り返す。

 

「ふっふっふ。もう覚えたよ」

 

「鍋焦げましたけどね」

 

「それは言わないお約束だってノア先輩!」

 

「私は一旦、少佐にココアを出してきます。ゆっくり思い出しながら作ってください」

 

「はーい。行ってらっしゃい!」

 

「よーししっかり作るぞー!」

 

ノアを見送り、腕まくりをして作業を開始する。

 

「先ずは粉末を鍋に入れて、砂糖を足す。小さじ山盛り2杯が目安。弱火にかけながら牛乳を足していく」

 

ぶつぶつとノアに言われたことを守りながらココアを練る。

 

「ペースト状になったら、中火にして1杯あたり140ccの牛乳を少しずつ加え、よくかき混ぜる」

 

慎重に。

 

慎重に。

 

いつものモモイからは想像もつかないほど慎重に。

 

「……できた」

 

鍋の中には艶のあるココア。

 

ダマもない。

 

焦げてもいない。

 

「おお……」

 

モモイは感動した。

 

「私、できた」

 

自分で作ったココアをカップへ注ぐ。

 

ふわりと甘い香りが広がる。

 

「へへへ」

 

満足げに一口飲む。

 

「うま――」

 

がつん。

 

強烈な甘さが脳を殴った。

 

「甘っ!?」

 

「このココアこんな甘いの!?」

 

「え、砂糖の量間違ってないよね?」

 

おろおろとコップを持ち、右往左往する。

 

「出来ましたか?」

 

「あ、ノア先輩!いいところに。出来たと思うんだけどすごい甘くて」

 

「ふむ。一口貰っても?」

 

「いいよ」

 

ノアはカップを受け取り、一口飲む。

 

「……」

 

「ど、どう?」

 

「甘いですね」

 

「だよね!?」

 

「かなり」

 

「だよね!?」

 

二人してココアを見下ろす。

 

ノアはしばらく考え込み、

 

「ああ」

 

と小さく頷いた。

 

「原因が分かりました」

 

「ほんと!?」

 

「最初に砂糖を増やしましたね」

 

「……」

 

「……」

 

「増やした」

 

「増やしましたね」

 

「増やしたわ」

 

思い出した。

 

最初に作り始めた時。

 

ノアの鍋を横目に見ながら、

 

『甘い方が美味しいでしょ!』

 

と砂糖を追加したことを。

 

「でもレシピ通り作ったよ!?」

 

「レシピの前段階で改造していますので」

 

「仕様変更だった!?」

 

「しかも独断ですね」

 

「ぐぬぬ……」

 

ノアはもう一口だけココアを飲む。

 

そして少し考えてから、

 

「ですが」

 

「うん?」

 

「ちゃんとココアにはなっていますよ」

 

「!」

 

「ダマもありませんし、焦げてもいません」

 

「おおっ!」

 

「単純に甘すぎるだけです」

 

「最後の一言が余計!」

 

モモイが抗議の声を上げる。

 

ノアは小さく笑った。

 

「次はきっと上手くできますよ」

 

「次は砂糖もちゃんと量る!」

 

「それがいいですね」

 

そう言いながら、ノアは残ったココアをモモイへ返す。

 

モモイはもう一度だけ口を付け――

 

「……やっぱ甘っ!」

 

「でしょうね」

 

「飲みきれないなら少佐に飲んでもらいますか?」

 

悪戯を提案する少女のようにノアが囁く。

 

「んー。頑張って半分は飲む」

 

 

「で、これがモモイ君作かね」

 

コップに半分だけ注がれた冷めたココアを何とも言えない目で見ながら少佐は呟く。

 

「ええ。ほぼ成功といっても過言ではないでしょう。私が保証します」

 

「そうだよ!美味しくできたから少佐にもおすそ分け!」

 

「そうかね」

 

少佐はコップを手に取る。

 

ノアは微笑ましそうに眺める。

 

モモイは期待に満ちた目で見上げる。

 

そして一口。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

静寂。

 

「ど、どう?」

 

「甘い」

 

即答だった。

 

「やっぱり!?」

 

「やはりかね」

 

少佐は妙に納得したように頷く。

 

「しかし」

 

そう言いながらもう一口飲む。

 

「ココアとしては悪くない」

 

「!」

 

モモイの顔がぱっと明るくなる。

 

「本当!?」

 

「うむ。きちんと練れているし焦げてもいない」

 

「おおー!」

 

「砂糖を半分にすればなお良い」

 

「半分!?」

 

「半分だね」

 

「半分ですね」

 

少佐とノアの意見が綺麗に一致する。

 

「そんなに!?」

 

モモイは衝撃を受けた顔でココアを見つめた。

 

「私は甘党なんだけどなあ……」

 

「甘党にも限度はあるよモモイ君」

 

「ありますね」

 

「二対一だ!?」

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