HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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一番最初に書いた話の改訂版
もう別物といっても過言ではない話


マイスターとして

エンジニア部の部室で一人の男性が熱心に作品を眺めている。

真っ白いスーツを着て、眼鏡をかけた小太りの男性である。

 

少佐だ。

 

子どもの様に瞳を輝かせて、ウタハが作った作品を見詰めている。

 

「随分と気に入ってくれたようだね」

 

「ああ。全く君は素晴らしいね。こんな素敵なものを作り上げるとは」

 

少佐は眼鏡を指で押し上げながら、机の上に並ぶ機械を食い入るように眺めた。

 

エンジニア部特有の油と金属の匂いが漂う部室。その中心で、ウタハは少し照れくさそうに腕を組む。

 

「そこまでいうことかな。君の依頼通りの物を作っただけさ。少佐」

 

「それ以上さ。私としてはただの模型が出来ればそれでよかった」

 

少佐の視線の先にあるのは、小型の飛行船だ。

 

真鍮色の骨組みに、布張りの船体。小さなリベット一つまで妥協なく再現され、模型であることを忘れさせるほどの完成度を誇っている。もはや模型ではない。一つの工芸品と呼ぶべき出来栄えだった。

 

「機能美という言葉があるが、君の作品は違う。美しいから機能するのではない。機能を突き詰めた結果、美しくなっている。そこが実にいい。」

 

少佐の言葉を正面から受け、照れ臭そうにそっぽを向くウタハ。

 

「それはそうと。実際に飛ばしてみるかい少佐?」

 

机の上に置かれた端末を指で示し、赤くなった顔を悟らせないように一歩引く。

 

「何と!もう動くのかね」

 

「完成品だといったはずだよ。マイスターを舐めないでもらおうか」

 

軽く肩を竦め、自信ありげに口元を吊り上げる。

 

「君は本当に素晴らしい」

 

思わず両手を打ち鳴らす。年甲斐もなく頬を緩ませるその姿は、宝物を見つけた子どもそのものだった。

 

「そして、これにはきちんと武装も施してある。少佐の注文通りにね」

 

にやり、と口元が吊り上がる。先ほどまで照れていた少女とは思えない、技術屋特有の悪い笑みだった。

 

「おお……!」

 

「武装の読み上げはいるかい少佐殿?」

 

「是非欲しいね」

 

二人してにやりと笑い、少佐はウタハが差し出した設計ファイルへ食い入るように視線を落とした。

 

「先ずは名前だが、少佐の言っていたDeus ex machinaをそのまま名付けさせてもらったよ」

 

「構わんよ。因みに気嚢部分は?」

 

「全て金属で覆ったさ。注文通りにね。これならネルの攻撃でも簡単には墜ちはしないさ」

 

ウタハの言葉を聞き、もう一度両手を打ち鳴らす。

 

「さて、武装だが。この大きさに全部積み込むのは苦労したよ。何と戦うつもりだい君は。機体下部に砲門を計20。V1・V2ミサイルを搭載」

 

「なるほど」

 

少佐は設計ファイルへ食い入るように視線を落とし、ページをめくる手が止まらない。

 

そんな様子を見て、ウタハは満足そうに笑う。これほど真剣に自分の設計を読み込んでくれる相手はそう多くない。

 

「次は推進機関だが――」

 

「待ちたまえ」

 

少佐の指が設計図の一角で止まる。

 

「プロペラまで金属で覆ってくれたんだね」

 

「当たり前だろう。飛ばしてすぐ落ちるような玩具は作らないさ」

 

にんまりと実機のプロペラへ視線を向ける。

 

「君たちは本当に素晴らしい。流石はマイスターと呼ばれるだけはある」

 

「少佐にそう褒められると困ってしまうね」

 

赤くなった頬を手で覆い、説明を続けるウタハ。

 

「次だが、司令部にするかい?それとも気嚢部分?」

 

「どちらも捨てがたいが……」

 

少佐はもう一度実機をぐるりと見渡す。

 

「いや、まずは司令部を見せてくれ。設計思想が一番現れる場所だからね。」

 

その言葉に一つ頷き、端末を操作する。

飛行船が動き出し、司令部の屋根が開く。

中には操作盤が所狭しと並び、忙しそうに走り回る人形も置かれている。

その中央には、少佐をモデルにした人形が椅子にどっしりと座り、モニターを眺めている。

 

「これはヒビキ君の手によるものかね?」

 

「その通りさ。こういう人形の服も作れるとは思わなかったがね」

 

「この縫製……制服まで再現しているとは。」

 

「ヒビキが一番張り切っていたところだからね。」

 

「素晴らしい。」

 

満足そうに息を吐く少佐。

 

「君の要請通りに約1000人分の人形がこの中には入っているよ」

 

「私は君達を過小評価していたようだ」

 

何度も首を振り、司令部の内装を眺めては溜息を漏らす。

 

「美しいね」

 

「技術屋にとっては最高の褒め言葉だね」

 

少佐はもう一度司令部へ視線を戻す。まるで名画を眺めるように、しばらく言葉を失っていた。

 

「少し一息入れよう。私は喉が渇いたよ」

 

「その通りだね。私も紅茶が恋しくなった」

 

作品を汚さないように丁寧に片付け、シーツをかける。

二人して上気した頬のまま部室外に歩いていった。

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