HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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ポーカー

「ん。ここでチェック」

 

机を挟んで2人の男女がゲームをプレイする。

アビドスの制服に身を包んだ犬耳の少女に対するはスーツを上品に着こなした伊達男。

 

場には5枚のカードが置かれ、それぞれキング・3・エース・ジャック・8の5枚。

 

テキサスホールデムの簡易版である。掛け金なしの全くのお遊びである。

 

「おや、もうよろしいので?」

 

「ん。いい手が来たから大丈夫」

 

手札である2枚の持ち札を振り、余裕をアピールする砂狼シロコ。

 

対する伊達男は手札に視線を走らせて少し悩む素振りを見せる。

 

「……いい手、ですか」

 

軽く笑うその声には、揺れがない。楽しんでいるというより、盤面を計算している人間のそれだ。

 

「では、こちらも確認させていただきましょうか」

 

場にあるコミュニティカードは——キング・3・エース・ジャック・8。

 

一見バラバラで、ストレートの気配は薄い。フラッシュも当然成立しない。

 

だが、問題は“手札2枚”だ。

 

伊達男はカードをそっと伏せるように見せながら、視線だけをシロコに向けた。

 

「チェックに対して、コール。では……ショーダウンといきましょうか」

 

静かに2枚のカードが開かれる。

 

――エース・ジャック。

 

場がひり付く。

 

満足そうに頷き、少女を促す。

 

満足げに顎を引き、指先で軽くテーブルを叩く。

 

「さぁ。こちらは見せましたよ」

 

視線が、ゆっくりとシロコへ滑る。

 

促される、というより――引き出される。

 

砂狼シロコは一度だけカードを見下ろし、それから小さく息を吐いた。

 

「ん」

 

短い返事。

 

そして、伏せていた2枚を机の上に置く。

 

――キング・キング。

 

一瞬、音が消える。

 

場にすでにあるキングと合わせて、成立するのは――スリーカード(キングのスリー)。

 

さっきまで静かだったテーブルの空気が、はっきりと“変わる”。

 

「……ふむ」

 

伊達男の声は、驚きよりも納得に近かった。

 

「なるほど。そこでその“いい手”ですか」

 

軽く笑うが、その目は笑っていない。

 

キングのワンペアでは勝てない。エース・ジャックでも届かない。

 

完全に一段上の、シンプルで、強い勝ち筋。

 

シロコはカードを戻しながら、何事もなかったように言う。

 

「いい手、だったでしょ?」

 

その一言だけが、やけに静かに残った。

 

「やった!シロコ先輩が勝った!!」

 

「といっても20戦してやっと1勝ですけどね」

 

「まあまあ。勝ちは勝ちですよ」

 

「ん!私の勝ち!勝ったよホシノ先輩」

 

1人だけ机に座って眺めていたホシノに笑顔で駆け寄る。

 

ホシノはシロコの勢いに少しだけ肩を揺らして笑う。

 

「良かったねえ。これでおじさんも楽ができるねえ」

 

「ホシノ先輩はまたそんなこと言って!」

 

「セリカちゃんも落ち着いたくださいな。先輩のいつもの冗談ですから」

 

楽し気な笑い声が部屋を満たす。

伊達男、トバルカイン・アルハンブラは眩しい物を見る眼でそれを眺め、カードを片付ける。

 

「あ、もうお帰りですか?」

 

「随分と楽しい勝負をさせてもらったからね。ギャンブラーは引き際が肝心というでしょう?」

 

人を食ったような笑みを浮かべながら優雅に一礼。

 

「ん!また来る。今度は全部勝つ」

 

「今度は私も勝つからね」

 

「次はトランプ以外でも遊びましょうねー」

 

「うへー。じゃあお疲れ様」

 

お別れの言葉を口にし、次の再会を期待する。

どうせこの変な大人はまた来るのだ。

言いたいことがあるなら次でいい。

 

「ええ。それではまたいつか」

 

帽子で目線を隠し、袖口からトランプを無数に放つ。

視界一杯をトランプが覆い、その後にはもう姿がない。

 

消えたのだ。

 

「相変わらず派手ねー」

 

「最初見た時は驚きましたねえ」

 

「ん。でも手品のタネが全然わからない」

 

「まぁそれで食べているなら、おいそれと教えないと思いますよ」

 

和気藹々と喋る後輩を視界に収めながら、小さく呟く。

 

「…出来れば来ないで欲しいなあ」

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