HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話 作:海鮮横丁
山海経。
玄武商会が一室。
普通の客が決して使うことはない部屋。
そこで、店主である朱城ルミは頭を下げる。
「この度はご迷惑をおかけしまして」
「いやいや。私から首を突っ込んだことだ。この美味い料理に免じて頭を上げてくれ」
「……そう言ってもらえると助かるよ」
謝罪を受けた男は非常に上機嫌だった。
目の前には山海経でも滅多にお目にかかれない高級料理が並び、空になった皿がその満足度を物語っている。
ルミはようやく胸を撫で下ろした。
「色々な学校を見てきたがここもまあ面白い」
「閉鎖的で伝統を後生大事に抱えてるだけですよ」
「そこがいいね。goodだ。美味い料理に面白い建物。それだけで十分に満足だ」
伊達男と名乗った怪しげなスーツの男が何度も頷く。
「…貴方は先生と同じように外から来たのかい?」
「ああ、あの御仁か。同じところではないが、外からではあるだろう。私は少佐の命令に従ってここに居て、動いているだけだからね」
空になった皿が下げられ、部屋に残るのはルミと伊達男。そして扉の傍らに控える付き人兼護衛のレイジョだけとなった。
「さて、難しい話は置いておくとして。トランプでも一つどうかね?」
「生憎ですが、余り遊んだことがなくて…」
「何と勿体ない。そこの君もこっちに来て一緒に遊ぼうじゃないか」
懐から真っ新なトランプを取り出し、手慣れた動作でカットを始める。
一瞬、悩む素振りを見せるが、ルミがレイジョに頷きを返す。
渋々といった態度でルミの近場の椅子を引き座る。
「簡単なものから始めよう。ババ抜きや7並べは聞いたことは?」
二人が首を振るのを見て、にやりと笑う。
いくつかのゲームのルールを二人に教えていく。
最初は乗り気ではなかったレイジョの顔が徐々に楽しそうに上気する。
ルミの方も未知に興味が強いのだろう。輝かんばかりの眼で吸収していく。
「大体ルールを飲み込めたようだね。それでは実践と行こうか」
カードの束をレイジョに差し出し、シャッフルするように促す。
おっかなびっくりシャッフルをするレイジョに笑みを深くする。
「そ、それでは配ります」
手の中のカードが順に配られる。
各々の目の前にトランプの山が出来る。
それを集め、手札とする。
「えっと。同じ数字を捨てる」
「これ並べた方が分かりやすかったりします?」
「さて、そこは好みだね」
3人の中央に捨て札が積み重なっていく。
「…うん。これで全部捨て終わったはずです」
「結構頭使うねえ」
「準備は終わったようだ。さて、誰から引くかね」
暫く考え込むように顎に手を添える二人。
「…会長から時計回りでどうですか?」
「私は構わないよ」
「了解した。どうぞ、ルミ君」
スッと彼女に目の前にカードを出す。
残念ながら伊達男の手にはジョーカーはなかった。
迷う素振りを見せながらも慎重にカードを引き抜き、数字が合ったカードを捨てる。
「あー成程。これは面白いかもしれない」
「じゃ。次どうぞ」
「これをもらおうか」
適当に選んだレイジョのカードを引く。
ハートの7。残念ながら手札にはない。
「おや、残念ながらついていないようだ」
順々にカードを引き合い、時にジョーカーが顔を出し二人の顔がコロコロと変わる。
「そろそろ最後かな」
手札の残り枚数も少なくなった。
レイジョが差し出すどちらかのカードがジョーカーだ。
不安そうに揺れる瞳を見る。
先に上がったルミが興味深そうに二人の手札を眺める。
「いや、これジョーカーの扱い難しいね」
「そうとも。だから面白い」
「…滅茶苦茶疲れますけどね」
覚悟を決めたのかスッとカードを差し出すレイジョ。
躊躇うことなくカードを引く。
結果は、ジョーカー。
「何と今日は本当についてない」
「…良かったぁ。これで何とかなった」
「でも難しい盤面だよレイジョ」
軽く指を使ってシャッフルする。
その動きを見極めるつもりか真剣な目で見てくるレイジョ。
「さて、どっちがいいかね?」
「…こっちにします」
迷いながらカードを掴み、引き抜く。
恐る恐るカードを確認し、どっと机に倒れ込む。
「勝てたー!」
「おめでとうレイジョ」
「やれやれ。今日は本格的にダメな日のようだ」
場のトランプを綺麗に纏め、何度かカットする。
それをトンと机に置き、挑戦的に二人を見る。
「で、もう一戦どうだね?」