HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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黒服と会話させてえで出来た話


ミレニアムの新店舗

とぽとぽとグラスの中に液体が注がれる。

 

ガーネットのように輝く液体をグラスに満たす。

 

「さて」

 

グラスに指を絡め、匂いを楽しむ。

先ずはラズベリー。ついでカシスのような匂いが鼻を擽る。

ゆっくりとグラスを回す。

熟成された重みを感じるような匂いが漂う。

 

「ふむ。随分といいものだ」

 

匂いに満足し、口に運ぶ。

随分と酸味が抑えられている。

 

「酸味が穏やかだ。これならワインに慣れていない者でも楽しめる」

 

『少佐に喜んでいただけてなによりです』

 

対面に座り、同じようにワインを楽しむ黒服の男性。

特徴的な頭部は今は静かに喜びに震えている。

 

「しかし、君から贈り物があるというから何かと思えば、ワインとはね」

 

「ええ。マエストロが前にインスピレーションを頂いたお礼をしたいと言ってましてね」

 

グラスを回し、楽しそうに飲む黒服。

 

「あぁ。彼の作品は面白いね。私には無い発想のものばかりだ」

 

テーブルの上のチーズに手を伸ばし、満足そうに咀嚼する少佐。

 

「彼も喜びますよ。完成すればミレニアムの生徒にもお披露目できる日が来ると張り切っていますよ」

 

「ほう!それは素晴らしい。かの作家の新しい大作がこの目に映るときを楽しみにしているよ」

 

グラスを掲げる。

それに応えるようにグラスを小さく合わせる。

 

しばらく近況報告や次の目標についての意見交換を行いながら、杯を重ねる二人。

どちらも酔った素振りなぞ見せずに話し合う。

 

「あぁ、そうだ。少佐、私もお願いがあって来たのでした。余りにも楽しいので忘れてしまった」

 

「ん、何だね。私に依頼するより先生の方が確実だろう」

 

くいっと軽い調子でグラスを空ける。

手酌でワインを注ぎ、ゆっくりと揺らす。

 

「今回は、ミレニアムの教師に用があるのですよ」

 

「ほう!聞こうか」

 

ソファから身を乗り出し、その特徴的な頭部を見る。

それを見て、嬉しそうに身体を揺する黒服。

 

「今回私は、というよりゲマトリアはミレニアムの一角に店を出すことになりましてね」

 

「…あぁ、前にデカルコマニーやマエストロが言っていたあれかね」

 

「そうです。経営自体は生徒主導で行い、名義は我らが貸す。社会実験の一環ですね」

 

足元に置いていた鞄からいくつかの書類を取り出し、机に並べる。

 

「成程、商品自体はゲマトリア制の物を主力として扱う。それを買った生徒の情報をある程度把握する」

 

「神秘のデータをパターン化出来ればいいのですがね。そこまで大規模にするつもりはありません。ちょっとしたアクセサリーショップですね」

 

黒服の持ってきた資料の中に、商品のラインナップも写真付きで書かれている。

商品説明を一瞥した少佐は思わず笑う。恐らくマエストロが担当したのだろう。

外装も内装も一般に女の子受けしそうなデザインではなさそうだ。

だが、ミレニアムの生徒になら受ける可能性は高いだろう。

 

「面白いね。手を貸そう。店の場所は?」

 

「廃墟近くにいい塩梅に古びた元倉庫がありましてね。そこを使おうかと」

 

「それもいいが、どうせならもっと人通りが多いところはどうだね」

 

ミレニアムの概略図に店の位置を丸く囲んである場所を見る。

そこから指を伸ばし、ミレニアムタワーの前に持っていく。

 

「ほう!そこは資金面から諦めた一等地ですが、少佐が声をかけてくれるなら実現可能ですね」

 

「やはり君はそういう目も効くね。芸術家は借金に苦しめられるものだと歴史が言っているよ」

 

にんまりと悪戯を思いついた子供のように笑う少佐。

 

「成程、一本取られました。この件、少佐にお預けします」

 

「任されよう。場所については決まったら連絡する」

 

「お願いします」

 

一つ頭を下げ、話は終わったとばかりに杯を開ける黒服。

 

夜は静かに更けていった。

 

「少佐、最近話題のアクセサリーショップの噂聞きました?」

 

今日も元気に脱走したようで、少佐の周りをウロチョロと歩くコユキ。

 

「ん。どの店だね」

 

「あれですよ。何か突然、ミレニアムタワー近くにできた怪しい店!」

 

「あーユウカ君が監査に行って何も出なかったという店か」

 

納得したように笑みを浮かべ、何度も頷く少佐。

 

「何かお土産までもらったみたいでズルいですよね!だから私も行きます」

 

「そうかね。戦果を期待しているよ」

 

適当に敬礼をして走り去っていくコユキの後ろ姿を眺め、ぽつりと呟く。

 

「やれ、光るネックレス型心電図なんて売れるんだねえ」

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